バルトークはお好き?
2023 MAY 22 16:16:07 pm by 吉田 康子
サガンの小説に「ブラームスはお好き?」というのがありましたが、私は「バルトークはお好き?」と訊いてみたい。以前の東さんの記事に「人はバルトーク派とストラヴィンスキー派に分かれる」という吉松隆説についての記載がありましたが、私も両方好きな欲張り派です。
しかも好きなものは「聴く」にとどまらず何とか味わってみたい。以前には「春の祭典」連弾版や「コントラスツ」「兵士の物語」という無謀な挑戦をして大変な思いをしました。それでも懲りもせずバルトークのピアノ五重奏曲を選ぶ自分に呆れていますが、やはり怖いもの見たさの気持ちをくすぐる麻薬のような魅力があるのかもしれません。
バルトーク ピアノ五重奏曲
あまり知られていないこの曲は、23歳1904年に作曲(SZ.23)されロマン派を思わせる曲想。初めて聴いた時にはバルトークらしからぬ甘ったるい長い曲という印象でしたが、改めて見直すとR.シュトラウスやワーグナーの匂いが感じられ、ジプシー風の旋律やリズムにバルトークの才気が散りばめられた魅力があります。
4つの楽章を通して弾き、全部で1700小節あまり。ピアノ譜で170ページ、演奏時間45分という長さゆえに演奏機会が少ないのかも。以前にDenijs Dille校訂のBudapest Editio Musicaの楽譜を手に入れて温めていましたが、ようやく日の目を見ました。
各パート全員が技術的に難しく皆で苦労している状態ですが、少しでも自分達の表現を盛り込めたらと思っています。本番は8/11のライヴ・イマジン52、今年の夏も熱いです。
Categories:ライヴ・イマジン
西村 淳
5/23/2023 | 9:55 AM Permalink
若きバルトークの意欲満点の作品ですね。ただ細かいテンポ設定やポコポコとかとにかく書きすぎてる感じがします。もう少し奏者に自由を!!といった感じでしょうか。
ピアノパートはまたやたらと音符が多くて大変そうです。
吉田 康子
5/23/2023 | 11:14 AM Permalink
そうですね。わざわざ4つの楽章に分けなかったのも全曲を大きな観点で見たかったのかも。細かい指示に強い拘りが感じられます。
ピアノパートは40連符とか複雑な分割の3連符、大きな跳躍のあるアルペジオなどなど、本人の技量が大前提のようで、私に優しくないです・・
東 賢太郎
5/27/2023 | 12:26 PM Permalink
初めてきいてバルトーク作と当てられる人はまずいないでしょう。Adagioには後の萌芽の雰囲気がありますがこれも後期ロマン派で、ご指摘の通りですね。ストラヴィンスキーの変身ぶりはカメレオンと揶揄されますが最初期作品に火の鳥の音が聞こえ、スタート時点からすでに彼自身でした。
吉田 康子
5/29/2023 | 11:22 AM Permalink
ピアノ五重奏曲と同時期の作品である「交響詩 コシュート」にも似たような旋律が出てきます。
まだ洗練さや独自性は少ないものの「23歳の若書きの作」として軽く見るのは違うと思います。
ストラヴィンスキーやモーツァルト然り、何歳であっても才能ある人の作品には相応の片鱗が伺えるものですね。