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どこかおかしな話

2022 MAR 5 21:21:28 pm by 西村 淳

ロシアのウクライナ侵攻により、平和の使者たるべきロシアの音楽家たちも大変な迷惑を被っている。ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団は首席指揮者ワレリー・ゲルギエフを解任、カーネギーホールでのコンサートも降板させられた。またアンナ・ネトレプコはニューヨーク市のメトロポリタン・オペラ(MET)の公演に出演しないとニュースがあった。
この状況は第二次大戦のあと、戦犯法廷に立ったとはいえナチ党員ですらなかったフルトヴェングラーを拒否したアメリカの態度と同じだ。彼だけではなく、つるし上げられた音楽家はとても多い。ウィレム・メンゲルベルク、ヴァルター・ギーゼキング、アルフレッド・コルトー、ヴィルヘルム・バックハウス、ジャン・フランセ。権力をもつ政府に対して、「友人」だったから、反対して亡命したりしなかったからと言って地位から追放したり、烙印を押して激しい個人攻撃を行う。ロシアだけではなく我が国ですら芸能の世界に生きる人たちの立場は弱く、政府の言うことに反論することは即死を意味する。そんな中で一体彼らに何ができようか。
ゲルギエフがプーチンに近い、そこにいただけで罰を受ける。真っ当な音楽も文化も評価できないようなカウボーイに足払いを食らわせられたのだ。微妙だがチャイコフスキーの「1812年」を演奏するのはマズいんじゃないか、などとささやかれ始めているという。それともショスタコーヴィチのカルテットを音が漏れないように炬燵の中でこっそり聴かなければならない世界がすぐそこまで来ているのだろうか。

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