Soner Menbers Club No43

カテゴリー: ライヴ・イマジン

再演の手応え

2020 DEC 31 11:11:17 am by 吉田 康子

12/27(日)豊洲でのライヴ・イマジン46公演が終わりました。これはフランクのピアノ五重奏曲の再演の本番でもありました。結論から言えば「やはり再演の手応えは大きかった!」です。前回より全員が各段にレベルアップしたことを実感しました。

当初私は「なにもこの難しい曲を再演しなくても・・」という後ろ向きの気持ちが強く、弦楽器の皆さんより大きく遅れをとっていました。再演を提案した田崎先生もそのあたりを察していて、イケイケ気分の弦楽器の皆さんより先ず私に再演の意思確認をしてきました。私は「この曲をもっと弾きたい」というより「このメンバーでの演奏をもう少し続けたい」という気持ちで折り合いをつけたように思います。要するに「渋々OKした」という感じであり、結論を先送りにしたのかもしれません。フランクのピアノ五重奏曲の再演

そうは言っても弾けないところはやっぱり弾けない。チャイコフスキーのピアノトリオのように音が沢山重なった厚みのある和音、しかも指が届かない10度以上の連続、微妙に変わっていく和声やおびただしい数の臨時記号、目まぐるしく変わるテンポやダイナミクスなどなど、挙げ出したらキリがないです。日本では演奏される機会が少ないようですが、名だたる大ピアニスト達の録音が沢山あり、ドラマチックな曲想も相まって腕自慢にはうってつけだったのかも?とさえ思えました。そして久しぶりに弾いてみた時に「よくぞ譜読みした」と過去の自分に感心する有様でした。「もっと上手なピアニストだったら他の皆さんが楽しめるのに」と考える自分が、逃げ腰であり言い訳でしかないように思えてとても悔しい気持ちもありました。

じゃあどうする?と事態の打開を自問自答した時、私が変わるしかないのはわかりきっていました。これは本来ピアノがリードすべき曲です。リモートでのレッスンのみになってしまった師匠には頼れません。自分で聴いて考えて練習するしかありません。
今回はダネル弦楽四重奏団と共演しているパーヴァリ・ユンパネン(Paavali Jumppanen、1974年7月17日生まれ フィンランド出身 ピアニスト)のCDを規範にしました。演奏を真似するのではなくて、どこが違うのだろう?と楽譜を見ながら何度も聴いて参考にしました。各パートがクッキリと聞こえてくるダネルカルテットとスッキリとした知性を感じさせるユンパネン演奏は、その後に他の演奏を聴いても垢抜けない感じがしてしまう程のクールな魅力がありました。テンポや曲想の変わり目でピアノが前向きに働きかけ弦が応える、「こうしたい」という意志を持って弾けば、必ず伝わります。そして目先の部分ではなく全体を見通して音楽を創っていくことに切り変えました。そうすることで演奏の困難さにこだわるより、音楽の流れを優先するようになりました。練習の仕方も自ずとそれまでとは違うものになります。

私が変われば、すぐにメンバーに伝わります。もう既に師走に入った頃の練習でようやくギアが入って前向きに弾く私に周りも驚くと同時にとても嬉しそうでした。そして皆でどんどん音楽にのめり込んでいきました。
 ここまで来れば本番は何の不安も無くワクワクするばかり。自分のソロ部分は普段以上にたっぷりと歌って聞かせると反応するメンバーの表情が見えました。合奏部分では緊張感を持って全体を引っ張っていくと面白いように付いてきてくれます。曲のピークに向かう部分ではリハーサル以上に私が煽れば皆が必死で応える、そんな丁々発止のやりとりが迫力満点でした。心を一つにして演奏するというアンサンブルの醍醐味を体感出来たのは、やはりこのメンバーで、再演ならではの効用と思います。そして演奏者の熱意はお客さんに伝わります。本番ならではの感動をそのまま届けられたと思っています。

今は「この曲から逃げないでよかった」という大きな達成感があります。
そしてもし初回からこれくらい完成度を上げた状態であれば、もっと高みに行けるだろうという欲もあります。やはり基礎的な技術力と曲との長い付き合いが大前提でしょう。年齢的に残り時間が気にかかるようになって、新しいものに対して自分の好奇心を満たす方に重きを置くか、気に入ったものを深化させるのか、その取り組み姿勢を見直す時期なのかもしれません。でもそんな二者択一を迫られる状況であっても私は欲張りなので両方手に入れたいと考えます。その為の努力は惜しまないぞと自分に言い聞かせています。「ライヴ・イマジンの活動はライフワークだね」と言われたことがありますが、まさにその通り。私の人生そのものです。

ライヴ・イマジン46のご案内

2020 NOV 3 13:13:20 pm by 吉田 康子

Live Imagine 46
2020年12月27日(日)13:30開場 14:00開演
豊洲シビックセンターホール

木村 俊道(ヴァイオリン) 木村 有紀子(ヴァイオリン)
廣木 知之(ヴィオラ)  西村 淳(チェロ)
髙山 美帆(ソプラノ) 吉田 康子(ピアノ)

ワーグナー: 「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
R.シュトラウス: 歌曲「明日」他
フランク: ピアノ五重奏曲 ヘ短調

波乱万丈の!一年を締めくくる年末の公演です。
前回の7月公演は、世の中がようやく動き出した特別な空気がありました。
「こういう時だからこそ生演奏から伝わるものがある」という信念を支えに
本番を迎え、改めて音楽の力を確信しました。

今度は2月演奏したフランクの再演を中心に2人のリヒャルトの作品を
併せました。ゴージャスな雰囲気の曲目に合わせた図柄は、
師走に相応しいものだと思います。

前回7月は定員半分の150名限定でしたが、11月現在は100%の
300名まで入場可能になっています。
ただ12月はどうなるか予測がつかないため、
ご案内状発送は12月初旬の予定です。もうしばらくお待ちください。

ライヴ・イマジン45公演報告

2020 JUL 30 10:10:22 am by 吉田 康子

おかげ様でライヴ・イマジン45は無事開催することが出来ました。詳しくは以下をご覧ください。人数限定により少ないお客様でしたが、熱く大きな拍手は演奏者の心に響きました。
ライヴ・イマジン45公演報告

ベートーヴェンのピアノ協奏曲 第1番 について

2020 JUL 16 21:21:10 pm by 吉田 康子

7/24(金祝)ライヴ・イマジン45でベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番Op.15を弾きます。ラハナー編曲の弦楽五重奏伴奏版で、ピアノはファッツィオリです。
この曲はベートーヴェンにとって0番と呼ばれる13歳の時の未完の作(補筆版が後に出版)、第2番Op.19に次ぐ3曲目ですが、出版順で1801年に第1番となりました。作曲家・ピアニストとしてウィーンデビューの勝負をかけた堂々たる自信作です。

以前から溌剌とした曲想に惹かれて弾いてみたいと思っていましたが、難所があるためにブレーキがかかっていました。それは第1楽章再現部前です。

この楽譜から当然右手だけの高速オクターヴを弾くものと思っていました。「う~ん、どう考えても弾けない」と。一番の見せ所をトロトロ弾くわけにもいかないし・・Wikiをみるとやはり「再現部の前のピアノの独奏移行部は非常に演奏が困難であるが、演奏の際には多くの場合、右手のみのグリッサンドで演奏される。」との記述。「な~んだ、やっぱり私だけじゃない」我が意を得たり!という気分でした。

ベートーヴェンの弟子だったカール・チェルニーもその著書“Uber den richtigen Vortrag der samtlichen Beethoven’schen Klavierwerke” (カール・ツェルニー著、パウル・バドゥラ=スコダ編・注釈、古荘隆保訳、全音楽譜出版社、148頁)に、「オクターブは犠牲にして単音のグリッサンドで弾きなさい」と指示しています。オクターブが弾けない場合は上部の音列だけをグリッサンドで処理し[筆者注:あるいは普通の音階として弾き]、バスは省略しないよう注意してください。と書いてありました。

早速You tube の動画で確認。バレンボイムが弾き振りしながら楽勝でオクターヴをキメていました。ブレンデルはグリッサンドで、ルビンシュタインは両手のスケールで。結局のところ弾き手の任意でしょうか。「それならいける!」とGOサインをもらって背中を押された気持ちになりました。「これを逃したら、もう弾けるチャンスは無い」といつもの一期一会ポリシーでチャレンジを決めました。

そして「私のお気に入り」は第3楽章の中間部にありました。ラグタイムのようなゴキゲンな2ビートが出てきます。初めて聴いた時には「え?」と思うような新鮮な驚きでした。「この時代に?」とビックリ。しかも手を変え品を変えてご丁寧に3回も出て来るのは余程気に入ったのでしょうか?有名な肖像画にある苦虫を噛み潰したような気難しい表情からこんな愉快な一面は想像もつきませんでした。以前弾いたショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番の終楽章にも速いテンポで似たようなリズムが出てきますが、なんせ時代が違うのに何という先見の明でしょう!9度がやっと届く私の手では左手10度の低音の跳躍はとても難しいですが、これを外さずにしっかり弾きたいところです。弦楽器の皆さんもノリノリでスイングしている楽しい部分です。

自筆譜より第3楽章中間部分(本当に書いてる!と思いました。)


オイレンブルクのスコアより第3楽章中間部分

また最近になって気づいたのは、3楽章の冒頭、ピアノソロでひとくさりある緊張の部分です。ゆっくりから少しずつテンポを上げて練習していると、どこかで聞き覚えのあるような・・何だったっけ・・?そう!トルコ行進曲でした。ラッパや太鼓でブンチャカ賑やかに打ち鳴らすあの雰囲気です。この曲の場合は中途半端な6小節まとまりですが、弾いてみるほどに似ている気がしてきました。

検索すると、トルコ行進曲Op.113は戯曲「アテネの廃墟」の付随音楽として、この協奏曲の11年後の1812年に作曲されています。トルコ風の趣味はオスマン帝国の1683年第2次ウィーン包囲の軍楽隊の影響だとか。色々な世界が広がります。

終わりの部分には主題がズレて出てくるスリリングなところも。

他にも第2楽章の始めの間奏に一瞬暗い和声が出てきてハッとします。変イ長調で書かれた穏やかな流れるような旋律にピリッとしたエッセンス。はじめは「音を間違えた?」と思ったくらいでした。

再現部前にはペダルを踏み変えずに混沌とした響きをきかせる部分があり新しい効果を試しているのが伺われます。これは他の楽章にも散見されます。ピアニストのパウル・バドゥラ=スコダ氏のレクチャー記録にもペダルについての例に付随し取り上げられていました。パウル・バドゥラ=スコダ氏のレクチャー記録

1楽章冒頭から独奏ピアノ登場前の105小節にも及ぶオケの長い前奏もショパンの1番やモーツァルトの25番の協奏曲を連想させました。レッドカーペットを敷いてもらって、いよいよ登場という感じが何とも言えない高揚感があります。

知れば知るほどにあちこちに仕掛けが用意されていて興味は尽きません。「意気軒高たる」という言葉が自然と浮かぶような意欲的なこの曲の魅力を是非ともお伝えしたいという思いを新たにしています。

「ライヴ・イマジン45」やります!

2020 JUL 2 18:18:31 pm by 吉田 康子


2020年7月24日(金祝)13:00開場 14:00開演
豊洲シビックセンターホール

モーツァルト  レクイエム ニ短調(弦楽四重奏版)抜粋
ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 Op.15 (弦楽五重奏伴奏版)
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第12番 変ホ長調 Op.127

内田 明美子、山田 洋子(ヴァイオリン)内田 吉彦(ヴィオラ)
西村 淳(チェロ)北村 隆男(コントラバス) 吉田 康子(ピアノ)

この日は、本来であれば東京オリンピックの開会式の筈でした。オリンピックに全く興味が無い私は1年前の抽選で当選したのを単に「ラッキー」だとしか思っていませんでした。後になってビックリ!どうりで倍率が低かった訳だと納得。しかも会場は選手村の近くの豊洲。交通規制がかかるかも、なんて心配を先送りにしているうちにオリンピック自体が延期という想定外の事態に。

振り返ってみれば前回の「ライヴ・イマジン44」も2/8でしたから、コロナ禍前のギリギリでした。その後の急転直下ともいうべき状況の悪化は現実の事とは思えないほどです。タイミングも運のうち、かもしれません。

緊急事態宣言中は練習場が閉鎖され、楽器を持って出かけられない重苦しい空気でした。「開催出来るのだろうか?」それさえ不確かな中、最終決断は6月末と決めました。とにかく「やる方向で準備をしよう」と個人練習を重ね解除を待ちわびていました。今回は特にイケイケの前向きメンバーであったことも良い方向に作用しました。またリモートワークに移行した人は通勤時間が無い分だけ練習時間を確保出来たという思わぬご利益も。

そんな折の5/2にヤフーニュースに掲載された作家 平野啓一郎さんの文章に背中を押して貰ったような気分になりました。
作家・平野啓一郎が見通す「新型コロナの2020年代」
音楽や演劇など、芸術・文化への深刻な影響も懸念されています。
「芸術とは何のためにあるのか?」「大して役に立たない」と言う人もいますが、いまほど、多くの人々が熱烈に「コンサートに行きたい」と言っている瞬間もないでしょう。芸術・文化が社会に不可欠だと骨身に染みている。守らなければいけないし、そのための補償を、政府は責任を持ってするべきです。
僕は、コロナ明けに行く生のコンサートは、どんな音楽でも泣く自信があります。1曲目から最後まで泣き続けているかもしれない。演奏家も泣いていると思う。いま想像しただけで涙ぐんでしまう。

これは、早いもの勝ち、やったもの勝ちでしょう。やはり新鮮に感じて頂けるうちに皆さんに聴いて欲しいと思いました。2011年東日本大震災の1ヶ月後のライヴ・イマジン14を彷彿とさせるような今ならではの特別な付加価値を感じます。

今回は、演奏以外にも緊急事態宣言明けという特別な時期ならではの対応に迫られました。ようやくステップ3に移行したところなので、会場の定員300名の半分150名しか入場出来ません。いつもなら出来るだけ多くのお客さんにいらして頂きたいのですが、今度は事情が違います。150名を絶対に超えられないだけに、いかに人数を調整するかが大きな課題でした。

先ずは出演者の知人を最小に抑えて前回公演に来場してアンケートに住所氏名を書いて下さった方を最優先に。その後ブログと演奏会情報掲示板「コンサートスクエア」に公演案内を掲載。

やはり待っていた方々がいました。掲載して2日で次々と応募があり、あっという間に予定数に達して締め切りにせざるを得ません。既にご案内を出したお客さんの中には都合で来られない人もいるでしょう。その分だけ是非聴きたいという方をと思いましたが、予想が出来ないだけに苦渋の決断を迫られました。応募締め切りと書いている最中にも滑り込みでの申し込みがあり、待ったなしの状況でした。

応募された方々からは「難しい時勢にあって、コンサートを実施される志、素晴らしいと思います。音楽ファンとして素直にうれしいし、心強く思います。」「ずーっと中止で、火が消え失せたような毎日でした。再開本当に嬉しいです。楽しみにしています。」「久しぶりに生の音楽を聴くことができれば、こんなに嬉しいことはありません」こんなコメントを添えて頂き、大いに励まされました。

ホールスタッフとの打ち合わせも早めに済ませました。感染拡大防止策として何を要求されるんだろう?と戦々恐々として身構えて行きましたが、拍子抜けするほどの緩めの雰囲気。江東区文化コミュニティ財団の施設利用に関する要請はステップ2から更新されていないままでした。仰々しい文章に、検温、マスク着用、手指の消毒、換気、ソーシャルディスタンスなどに加えて、来場者の記帳も義務付けられていたために開演時間を早めましたが、ステップ3になったので記帳不要とのこと。「消毒液も在庫が無いので」を言い訳に「必要ならそちらで用意して」と言い出す有様。何とも責任回避で利用者に丸投げ状態に「こんなんで大丈夫か?」と逆に心配になってしまう程でした。今の公の機関の実情を象徴するような気がしています。

7月に入り、感染者が日々増加しています。都知事選までは政治的にこのままで行くでしょうが、その後が気がかりです。無事に本番を行いたいという祈るような気持で日々練習を重ねています。

フランク:ピアノ五重奏曲の再演

2020 MAR 18 12:12:49 pm by 吉田 康子

2/8本番から1ヶ月が過ぎました。この間に世の中はコロナ旋風が吹き荒れて想定外の事態になっています。今から振り返ってみれば本当にいいタイミングで本番が出来たと実感しています。

私は本番後から3週間以上不調でした。コロナでなく、肺炎、インフル、花粉症、喘息でもないのに微熱と咳が続き、なかなか全快に至らず苛立ちや焦燥感が募りました。3つの病院をハシゴしましたが、結局かかりつけ医の見立て通り気管支炎でした。今までになく長かったです。

本番の打ち上げの時にアンサンブルでご指導頂いた田崎先生から「フランクのピアノ五重奏曲再演」の提案がありました。

別に今までも弾き散らかしたつもりは無く、それぞれの本番の時点で精一杯の努力をした結果として納得して区切りをつけてきました。これから自分の先を考えた場合に残り時間が少なくなっているように感じていて、バケットリストを意識する年齢になった自覚もあります。「振り返っている暇など無い」という心境でしょうか。それでも名曲大曲を連発している状況は傍から見れば自己満足に映ったのかもしれません。

「もうひとつ上を目指すなら、今本番をやった段階から再度スタートしてはどうか」ということでした。先ずは再演を考えた時点で意識として違うものになっているとのこと。初めての試みですが「そこまで言われちゃ受けて立つしかない」とメンバー全員が即決で再演決定でした。

そうは言っても具体的にはいつ?どこで?について5人で顔を合わせて考える場を設定したものの、私の不調で延期。そうこうしているうちにコロナで自粛やテレワークの空気に。緊急事態宣言の発令も予想される中「それでも話をしなくちゃ始まらない」と先週末にようやく5人が揃いました。

会場は神楽坂の「ラビチュード」https://www.at-ml.jp/68166/というカジュアルな雰囲気のフレンチレストラン。メンバーの一人の行きつけのお店でしたが、偶然にも2005年ライヴ・イマジンを近くで行い、この店で食事をしたことがありました。今は2代目の鈴木シェフのもと「鴨のコンフィー」をイチオシに前菜からデザートまで美味しい料理を気軽に味わえるお店として人気があります。しかもこのあたりは私が小3から中3までを過ごした懐かしい街でもあります。

この日だけ雪という悪天候にも関わらずようやくメンバーとの再会を果たすことが出来ました。本番から約一ヶ月ですが、状況が大きく変わったせいもあって半年くらい時間が経ったような気がしていました。それぞれの仕事を取り巻く状況が一変しただけでなくオケの練習や本番が次々と中止になったことなどお互いの近況報告をするうちにワインも食事もすすみます。そのうちにお客さんが続々と来店して満席になりました。店内は先の見えない閉塞感のある日々から一時的に解放されたような温かい穏やかな雰囲気に。最近は閑古鳥が鳴いていたのでSOSを出したら、常連さんが沢山来店してくれたと食後にシェフから事情を聞きました。

私達も早速に本題に移ります。会場の候補を考えていたり、検討項目を書類にしてあったり、候補曲の楽譜配布もあったりで皆それぞれに事前準備をしてありました。そうなれば話はどんどん進みます。再演は今年の年末12月27日(日)ライヴ・イマジン公演用に確保しておいた豊洲シビックセンターホールに決まりました。「年内に決着を付けたい」という意識もあります。今はフランク以外の曲目を検討中です。実際にプログラムが決まって練習に入ればシビアですから、色々と考えているうちが楽しいものです。音楽を共有できる気のおけない仲間と久しぶりに日常を取り戻したような感じがしました。美味しい食事やお酒と共に沢山笑い、前向きな話が出来て本当に楽しいひとときでした。帰りは真冬並みの寒さでしたが、暖まった気持ちで元気に解散。今はお互いに候補曲をあれこれ出し合っているところです。これからどんな展開になるか、乞うご期待!

ライヴ・イマジン44のご案内

2020 JAN 15 1:01:00 am by 吉田 康子


ライヴ・イマジン44
「トリスタンに魅せられたフランス近代作曲家たち」

2020年2月8日(土)13:00開場 13:30開演
旧東京音楽学校奏楽堂

入場料 ¥1,000(税込 全席自由)
未就学児童の入場はご遠慮下さい。

■フランク 「前奏曲、フーガと変奏曲」 、
  「天使のパン」 、ピアノ五重奏曲 ヘ短調
■ショーソン&ドビュッシーの歌曲
■ドビュッシー 「牧神の午後への前奏曲」(室内楽版)

木村 俊道 、木村 有紀子(ヴァイオリン)
廣木 知之(ヴィオラ) 西村 淳(チェロ) 北村 隆男(コントラバス)
大門 一夫(フルート) 駒込 雅史(オーボエ) 佐藤 健(クラリネット) 
吉田 康子(ピアノ)  玉城 晃子(オルガン) 
岩崎 りえ(パーカッション) 髙山 美帆 (ソプラノ)

久しぶりの上野・旧奏楽堂での公演です。この建物は重要文化財で、保存活用工事のため5年間休館後の昨年秋にリニューアルオープンしました。ライヴ・イマジンでは休館前に数回ここで公演を行ったことがあります。その中でも2011年3月の東日本大震災の約2か月後に余震の中で演奏したのが特別な記憶として残っています。

今回は舞台にある日本最古級のパイプオルガンの活用を考えてオルガンの入ったフランクの作品を2曲配しました。「牧神の午後への前奏曲」室内楽版(シェーンベルク一派編曲)ではハルモニウムとして使用します。

またフランクのピアノ五重奏曲はドラマチックな出だしが魅力的で以前から気になる存在でしたが、ピアノが難しくてなかなか踏み切れずにいました。今回は私自身にとって大きな挑戦になります。

そしてフランクからドビュッシーに橋渡しをしたのが、ショーソン。自身のサロンは多くの芸術家たちが集う場でもありました。ショーソンとドビュッシーの美しい歌曲とピアノ五重奏伴奏版での歌曲「果てしなき歌」をお聴き頂き、「牧神の午後への前奏曲」へと誘います。

どの曲も地味ながら味わいの深い曲ばかり。真冬の上野の森にどうぞお越し下さい。

チケットプレゼントは、こちらからご応募下さい。
https://www.concertsquare.jp/blog/2020/202001147.html

タコのピアノ五重奏曲

2019 SEP 4 16:16:27 pm by 吉田 康子

タコは、ショスタコーヴィチのことです。
9/14の本番の最後に弾く曲なので、あと10日を切って合奏は最終練習を残すのみとなりました。先月にはピアノの師匠にもしっかりレッスンをしてもらい、全体のアンサンブルについてもいつもの先生に長時間にわたってご指導頂きました。

盛りだくさんのレッスンを乗り切った安心感からか、指導内容が出来たような気になっていました。実際に弾いてみると、まだまだ改善点や演奏に反映できていない部分が散見されて、残り少ない時間と焦る気持ちの背中合わせの状況です。「ここまできて今更?」と言ってしまえば、それまでですが、最後の最後まで1ミリでも上を向いて背伸びしたいと自分を励ましているところです。

当初はオールタコのプログラムを聴きに来て下さるお客さんがいるのだろうか?と疑心暗鬼の気分でしたが、蓋を開けてみればビックリ!公演案内を出してからというもの、応募が途切れることなく続いています。しかも「タコばかりの珍しいプログラムが魅力」「弦楽四重奏が聴きたい」「ピアノ五重奏が楽しみ」という熱烈なタコファンの方々からのコメントばかり。想定外の根強い人気は、嬉しい誤算でもあります。それと同時に期待が伝わってきて、緊張感が高まるばかり。

以前は「このピアノ五重奏は最初のピアノソロがドラマチックでカッコいいけど、あとの楽章になるにつれてショボくなる曲」という認識で敢えて避けてきました。華々しく終わるのではなくてフッと風に乗って消えてしまうような締めくくりは、煙に巻かれたような気分で苦手意識がありました。

でも聴くと弾くとでは大違い。弾くほどにとてつもない名曲だと認識を新たにしています。古典的な組曲を思わせる5楽章で成り、プレリュードから始まり、フーガ、スケルツォ、インテルメッツォ、フィナーレと一切の無駄も隙も無い構成。変則的に変わる拍子と調性は、起伏に富んだタコの独特な世界に誘ってくれます。こんなに洗練された曲だったなんて!という素直な驚きの連続です。

全体を見て各楽章のバランスが大事。最初の楽章を壮大で重々しい感じで始めてしまうと、最後がショボくなる印象を持たれてしまう。あくまでも本の表紙のような序章として第1楽章を扱うと後に続く楽章とのバランスが取りやすい、という考え方を先生から提示されて、今迄考えもしなかった観点に「なるほど」と思いました。どうしても目先にとらわれがちで全体に目がいかないものです。たぶん以前私が持っていた先入観もこのあたりに因るものなんでしょう。

タコは、1927年の第1回ショパンコンクールにもソ連代表として出場したくらいのピアノの腕前で、優勝を逃し名誉賞しか取れなかったことに深く落胆したようですが、やはり神様からの贈り物を与えられるに相応しい器です。作曲においてもこの曲での1941年のスターリン賞受賞は大いに頷けます。こんな極上の曲に出会えて、チャレンジ出来る機会を得た幸せをヒシヒシと肌で感じています。やっぱり演奏してこそ真価を味わえるものだと思います。

本番まであと僅か、私達の熱い想いが皆さんに届きますように。

旧奏楽堂のオルガン

2019 MAY 2 0:00:10 am by 吉田 康子

先日、上野公園内にある旧奏楽堂(東京音楽学校奏楽堂)に行ってきました。お目当ては、藝大生によるオルガンコンサート。
実は来年2月に予定しているライヴ・イマジンの44回目の公演をここで開催する予定で、その下見という訳です。

この旧奏楽堂は2006年の第3回目公演から会場として何回か使っていましたが、当時オルガンは故障中ということで使用出来ませんでした。「ある音を出すと止まらなくなってしまう」そうです。

オルガンというと大きなホールの舞台背面に設置されているパイプオルガンか教会に置かれているものを想像しますが、ここのは小ぶりなもの。年代物の木製フレームが歴史を感じさせます。そういえば今迄この音を聴いた事が無かった、ということに気づきました。いずれハルモニウムを使用する編成の時に取り入れてみたいと思い立ちました。

好天に恵まれたGW前半ということもあって客席は8割がた埋まっていて、藝大の院生という小柄な女性が出てきて弾き始めました。その音は会場を圧倒するような大音量ではなくて、柔らかく鄙びた音色で、包み込むような感じ。まるで昔の手回しオルガンを想像させるような響きでした.

今回のリハーサルでも以前の故障は直っていないらしく、最上段の鍵盤は使わずに演奏するとのこと。建物自体は耐震補強と称して数年間閉館していたのに、オルガン自体は修繕していないのかもしれません。

またパイプオルガンによくあるように、客席背を向けて演奏者が中央に座って弾くものだと思っていましたが、ここの場合は横向きになっていて手元が見えないのが残念。もし動かせるものであれば、演奏の時くらい移動するか、せめて向きを変えて貰えたら、鍵盤やストップ、ペダル部分が見えて視覚的にも興味深いのにと思いました。

演奏に際しては譜めくりとストップの操作の補助をする人が後ろに座っていて、曲の途中でお手伝いしているのも、不思議な感じでした。私は学生時代に3段鍵盤で2オクターブペダルのエレクトーンを弾いていた事があって、たぶん演奏に際する操作については近いかもしれません。でもそれは電子楽器だけあって前もって音色の変更やリズムなどの組み合わせを記憶させたメモリを使っていたので、このオルガンの操作はとてもアナログな雰囲気。

演奏された曲も馴染みの無い作曲家の曲ばかりで、知らない世界を垣間見た気がしました。レトロな建物のホールにある日本最古のオルガンを見て聴いて、なんだかタイムスリップしたような気分に。この味わいのある楽器をイマジンのプログラムにどう取り込むか?また楽しみが増えました。

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