Soner Menbers Club No43

Since May 2014

ライヴ・イマジン44のご案内

2020 JAN 15 1:01:00 am by 吉田 康子


ライヴ・イマジン44
「トリスタンに魅せられたフランス近代作曲家たち」

2020年2月8日(土)13:00開場 13:30開演
旧東京音楽学校奏楽堂

入場料 ¥1,000(税込 全席自由)
未就学児童の入場はご遠慮下さい。

■フランク 「前奏曲、フーガと変奏曲」 、
  「天使のパン」 、ピアノ五重奏曲 ヘ短調
■ショーソン&ドビュッシーの歌曲
■ドビュッシー 「牧神の午後への前奏曲」(室内楽版)

木村 俊道 、木村 有紀子(ヴァイオリン)
廣木 知之(ヴィオラ) 西村 淳(チェロ) 北村 隆男(コントラバス)
大門 一夫(フルート) 駒込 雅史(オーボエ) 佐藤 健(クラリネット) 
吉田 康子(ピアノ)  玉城 晃子(オルガン) 
岩崎 りえ(パーカッション) 髙山 美帆 (ソプラノ)

久しぶりの上野・旧奏楽堂での公演です。この建物は重要文化財で、保存活用工事のため5年間休館後の昨年秋にリニューアルオープンしました。ライヴ・イマジンでは休館前に数回ここで公演を行ったことがあります。その中でも2011年3月の東日本大震災の約2か月後に余震の中で演奏したのが特別な記憶として残っています。

今回は舞台にある日本最古級のパイプオルガンの活用を考えてオルガンの入ったフランクの作品を2曲配しました。「牧神の午後への前奏曲」室内楽版(シェーンベルク一派編曲)ではハルモニウムとして使用します。

またフランクのピアノ五重奏曲はドラマチックな出だしが魅力的で以前から気になる存在でしたが、ピアノが難しくてなかなか踏み切れずにいました。今回は私自身にとって大きな挑戦になります。

そしてフランクからドビュッシーに橋渡しをしたのが、ショーソン。自身のサロンは多くの芸術家たちが集う場でもありました。ショーソンとドビュッシーの美しい歌曲とピアノ五重奏伴奏版での歌曲「果てしなき歌」をお聴き頂き、「牧神の午後への前奏曲」へと誘います。

どの曲も地味ながら味わいの深い曲ばかり。真冬の上野の森にどうぞお越し下さい。

チケットプレゼントは、こちらからご応募下さい。
https://www.concertsquare.jp/blog/2020/202001147.html

手書きの楽しみ

2019 DEC 17 15:15:48 pm by 吉田 康子

ご無沙汰しているうちにもう師走も半ばを過ぎました。次回2月ライヴ・イマジン44公演のご案内を前回来場して下さったお客様や常連の方々などに発送する作業をしています。今度はフランスものなので、チラシにエッフェル塔のモチーフを使いました。チラシとチケットのデザインは私が行い印刷は外注ですが、原稿が手元にあるので封筒にも同じ柄を自宅で宛名書きと共にパソコンで印刷。このまま送れば簡単なのですが、単なるDMではないので自作の一筆箋を作りました。200件近くあるので大変な作業ですが、たとえ一文でも手書きを添えるとこちらの気持ちが伝わるように思います。
 
加えて私は万年筆が好きなので、お気に入りのペンが活躍できる場としての楽しみがあります。万年筆も凝り出すとキリがないですね。楽譜と同じで古いもの、ヴィンテージと言われるものが好きです。どこかにウンチクが入るものは一般的に男性の方々が好む傾向があるように思います。時計、カメラ、オーディオにも通じるものがあるのかもしれません。万年筆も現行品よりモンブランの二桁とか、パーカー51やコンウェイスチュアートとか、それなりの世界があります。

今回の一筆箋用の紙には、以前に「世界の万年筆展」で購入した万年筆専用の紙を使いました。さすがの書き味です。インクジェットでは滲んでしまうので使えません。年賀状や通常のイマジンのご案内葉書にも手書きを考えて上質紙を使います。そして万年筆は、イタリア、ヴィスコンティのハニーアーモンドという名前の付いた軸色の美しい柄のもの。インクはペリカンのエーデルシュタイン2018年限定のオリーブです。ここまで書くとオタクっぽくなりますね。ソナーメンバーの方々のなかにも隠れ万年筆オタクがいらっしゃるかも?と思います。

パソコンでベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番をBGMで流しながら、せっせと書いています。これはいずれ弾きたい曲のひとつです。今練習している曲だと聞き流せずに手が止まってしまうので。普段は弦楽四重奏曲をBGMに。もうすこし手書き文字も上手だと映えるのですが、そこは私のピアノと似たようなもの、背伸びしても無理がでてしまうので、先ずは気持ちをお伝えすることを優先にしておきます。

タコのピアノ五重奏曲

2019 SEP 4 16:16:27 pm by 吉田 康子

タコは、ショスタコーヴィチのことです。
9/14の本番の最後に弾く曲なので、あと10日を切って合奏は最終練習を残すのみとなりました。先月にはピアノの師匠にもしっかりレッスンをしてもらい、全体のアンサンブルについてもいつもの先生に長時間にわたってご指導頂きました。

盛りだくさんのレッスンを乗り切った安心感からか、指導内容が出来たような気になっていました。実際に弾いてみると、まだまだ改善点や演奏に反映できていない部分が散見されて、残り少ない時間と焦る気持ちの背中合わせの状況です。「ここまできて今更?」と言ってしまえば、それまでですが、最後の最後まで1ミリでも上を向いて背伸びしたいと自分を励ましているところです。

当初はオールタコのプログラムを聴きに来て下さるお客さんがいるのだろうか?と疑心暗鬼の気分でしたが、蓋を開けてみればビックリ!公演案内を出してからというもの、応募が途切れることなく続いています。しかも「タコばかりの珍しいプログラムが魅力」「弦楽四重奏が聴きたい」「ピアノ五重奏が楽しみ」という熱烈なタコファンの方々からのコメントばかり。想定外の根強い人気は、嬉しい誤算でもあります。それと同時に期待が伝わってきて、緊張感が高まるばかり。

以前は「このピアノ五重奏は最初のピアノソロがドラマチックでカッコいいけど、あとの楽章になるにつれてショボくなる曲」という認識で敢えて避けてきました。華々しく終わるのではなくてフッと風に乗って消えてしまうような締めくくりは、煙に巻かれたような気分で苦手意識がありました。

でも聴くと弾くとでは大違い。弾くほどにとてつもない名曲だと認識を新たにしています。古典的な組曲を思わせる5楽章で成り、プレリュードから始まり、フーガ、スケルツォ、インテルメッツォ、フィナーレと一切の無駄も隙も無い構成。変則的に変わる拍子と調性は、起伏に富んだタコの独特な世界に誘ってくれます。こんなに洗練された曲だったなんて!という素直な驚きの連続です。

全体を見て各楽章のバランスが大事。最初の楽章を壮大で重々しい感じで始めてしまうと、最後がショボくなる印象を持たれてしまう。あくまでも本の表紙のような序章として第1楽章を扱うと後に続く楽章とのバランスが取りやすい、という考え方を先生から提示されて、今迄考えもしなかった観点に「なるほど」と思いました。どうしても目先にとらわれがちで全体に目がいかないものです。たぶん以前私が持っていた先入観もこのあたりに因るものなんでしょう。

タコは、1927年の第1回ショパンコンクールにもソ連代表として出場したくらいのピアノの腕前で、優勝を逃し名誉賞しか取れなかったことに深く落胆したようですが、やはり神様からの贈り物を与えられるに相応しい器です。作曲においてもこの曲での1941年のスターリン賞受賞は大いに頷けます。こんな極上の曲に出会えて、チャレンジ出来る機会を得た幸せをヒシヒシと肌で感じています。やっぱり演奏してこそ真価を味わえるものだと思います。

本番まであと僅か、私達の熱い想いが皆さんに届きますように。

ストラヴィンスキー 「ペトルーシュカ」の編曲版

2019 JUL 3 23:23:59 pm by 吉田 康子

古い楽譜が好きです。昔のものは経年劣化していても趣があります。私より年上の楽譜もありますが、表紙の活字や装丁からも当時の空気が伝わってくるような気がします。単なるデータであれば今はiPadでも用を成すのでしょうけれど。
これも中古で買い集めた楽譜のひとつです。

ペトルーシュカはいずれも作曲者自身による「4手編曲版」と「ペトルーシュカからの3章」という名前のついている独奏版の二つがあります。もともとは、ディアギレフ率いるロシアバレエ団のために、1910~1911年にオーケストラ用に作曲されました。老魔術師に命を与えられた人形のペトルーシュカ(ピョートルの愛称)、ムーア人、バレリーナの物語です。画家であり演出家であったアレクサンドル・ベノワの台本に沿って構想が進められました。ベノワの大きな貢献があったため「4手編曲版」にはべノワの名前が扉に記されていて、四つの場面の説明が曲ごとにはいっています。「ペトルーシュカ」の初演は1911年ですから「春の祭典」の2年前のこと。1912年にBerlin; Moscou; Leipzig; New York &c., Édition Russe de Musique から出版され、現在はブージー・アンド・ホークスから出ています。
  
2014年のライヴ・イマジン28で「春の祭典」4手版を演奏した時のアンコールとして、この「4手編曲版」から「ロシア舞曲」を取り上げました。一般的に4手版は1台のピアノを2人で弾きますが、この曲の場合は2人の音域が近く重複する音もあるので、詳しい打ち合わせが必要でした。場合によっては2台ピアノで弾くのもアリかもしれません。実際に2台でも試しましたが、今度はお互いの距離が離れてしまう為に呼吸を合わせるのが難しく、結局1台での演奏になりました。速いテンポで歯切れよく和音を弾き、2人で合わせるのは難しかったです。また独奏版にあるカッコいいグリッサンドがこの版には無かったので、勝手に入れて弾きました。

一方「ペトルーシュカからの3章」は1921年ピアニストのアルトゥール・ルービンシュタインに献呈されたもの。曲の並びも「4手版」と違います。「3章」のほうが今では有名になって時々コンサートにも取り上げられますが、ご覧の通り大変な技巧を要するため、とても高いハードルです。2人で弾いても大変なものを独りで弾くなんて・・私には、とても手の届かないところにある曲です。
 
ちなみにストラヴィンスキーの友人だったルービンシュタインは、以前献呈されたソナタが気に入らなかったようです。この曲はイゴールにとって「これなら、どうだ?」というリベンジの意味合いもあったとか。それでも自己流に変えて弾いてしまったルービンシュタイン独自の版が存在しますが、これは未出版。傍から見れば何とも贅沢な話ですが、それでも2人は仲良しだった様子がルービンシュタインの自伝からも伺えました。

機種変しました。

2019 JUN 25 22:22:28 pm by 吉田 康子

昨日スマホの機種を新しいものに替えました。
2015年12月に購入して以来、約3年半愛用してきたiPhone6Sは私にとって初めてのスマホ。それまでのガラケー待ち受けの白黒アニメーションのペンギン柄がとても気に入っていたので、なかなかスマホに踏み切れませんでした。ある時「思い立ったが吉日」とばかりに。翌日にはiPhone6Sでも一番人気のローズゴールドを手に入れてきました。

それまでとは勝手が違うタッチパネル式に戸惑いながらも、メール等の文字入力にも少しずつ慣れ、色々なアプリをダウンロードして日々の生活に手放せないものになりました。使い勝手がよくて、その後次々と新製品が出ても目移りすることなく過ごしてきました。いまだにiPhone6Sは使い続けている人が多い人気機種だと検索して知り、「そうだそうだ」と頷く思いでした。

3ヶ月前にSIMカードがいきなり接触不良になり焦りました。あちこちショップに電話し、ネット検索をして何とか解消。こうなると先々に不安が出てきました。その後ストレージにも空きが少なくなり、電池の寿命にも陰りが・・「そろそろ潮時かな」と思いつつ、それでもデータ移行の煩雑さを考えると二の足を踏んでいました。ガラケー時代にはショップの人にお任せだった作業を自分で出来るか?という自信が無く先送りに。

現行品のiPhone Xほどの機能は不要なので、もし替えるなら今の形に近いもの、ということでiPhone8に狙いを定めていました。ところが近所に問い合わせると、ことごとく在庫無しという返事。どこにでもあるだろう、とタカをくくっていたので、正直言って焦りました。こうなると「今しかない」という気分が盛り上がり、在庫に多少余裕のあった都内量販店に出向いての購入に踏み切りました。

最近ようやくiTunes、iCloudやLINE、キャリアのお預かりサービスやバックアップなどを使い慣れてきたところでした。万が一にもデータを無くしてしまわないように、パソコンや外付けHDDなどあちこちにデータ保存をしました。その際の各件数が違うのは何故?と電話相談したり、最悪の場合には手作業で復帰できるようにとスクショまで撮って備えました。

準備万端だったせいか、店頭での手続きは30分ほど。拍子抜けするほど簡単。でもそれだけでは、電話もメールも出来ない「ただの箱」。一刻も早く家に戻って、保存したデータを新しいスマホに移行しなくてはと帰路を急ぎました。帰りの電車内を見渡すと、居眠りをしているかスマホを手にしている人が大半。メールやラインだけでなくニュースや天気、路線など情報の殆どをスマホに依存している日常を痛感。改めて時の流れを感じました。

帰宅後は、ショップで貰った冊子を見ながらの作業。キャリアメールの設定、自宅Wi-Fi設定、データ復元など、何をするにもアドレスとパスワードを請求されます。事前にスクショで保存していたのが本当に役に立ちました。自分でパスワードを設定したことさえ忘れているものも。紆余曲折の末に無事に復元出来て以前のままの待ち受け画面になった時にはホッとして大きな溜息がでました。

そして最後に画面で「設定を完了」をタッチして一連の作業をシメたかったのに、「ICloudにサインイン中」という表示が消えない状態に。あと一歩です。
今日ショップに立ち寄って相談、店の人がササッと魔法のように瞬時にして解決してくれたのには感激でした。

こうしてようやく機種変は無事完了し、快適になりました。メモリーは以前の4倍に、そしてハイスペックとなって大満足です。画面に貼るシートも滑りの良いものにして、ケースも新調しました。
 

それにしても、この煩雑な作業を皆がやっているのだろうか?と思いました。
代行してくれるサービスがあるなら、お金を出してもお願いしたいというのが本音です。今更ながらに検索してみると、やはり専門業者があるようです。

皆さんならいくらだったら外注しますか?

旧奏楽堂のオルガン

2019 MAY 2 0:00:10 am by 吉田 康子

先日、上野公園内にある旧奏楽堂(東京音楽学校奏楽堂)に行ってきました。お目当ては、藝大生によるオルガンコンサート。
実は来年2月に予定しているライヴ・イマジンの44回目の公演をここで開催する予定で、その下見という訳です。

この旧奏楽堂は2006年の第3回目公演から会場として何回か使っていましたが、当時オルガンは故障中ということで使用出来ませんでした。「ある音を出すと止まらなくなってしまう」そうです。

オルガンというと大きなホールの舞台背面に設置されているパイプオルガンか教会に置かれているものを想像しますが、ここのは小ぶりなもの。年代物の木製フレームが歴史を感じさせます。そういえば今迄この音を聴いた事が無かった、ということに気づきました。いずれハルモニウムを使用する編成の時に取り入れてみたいと思い立ちました。

好天に恵まれたGW前半ということもあって客席は8割がた埋まっていて、藝大の院生という小柄な女性が出てきて弾き始めました。その音は会場を圧倒するような大音量ではなくて、柔らかく鄙びた音色で、包み込むような感じ。まるで昔の手回しオルガンを想像させるような響きでした.

今回のリハーサルでも以前の故障は直っていないらしく、最上段の鍵盤は使わずに演奏するとのこと。建物自体は耐震補強と称して数年間閉館していたのに、オルガン自体は修繕していないのかもしれません。

またパイプオルガンによくあるように、客席背を向けて演奏者が中央に座って弾くものだと思っていましたが、ここの場合は横向きになっていて手元が見えないのが残念。もし動かせるものであれば、演奏の時くらい移動するか、せめて向きを変えて貰えたら、鍵盤やストップ、ペダル部分が見えて視覚的にも興味深いのにと思いました。

演奏に際しては譜めくりとストップの操作の補助をする人が後ろに座っていて、曲の途中でお手伝いしているのも、不思議な感じでした。私は学生時代に3段鍵盤で2オクターブペダルのエレクトーンを弾いていた事があって、たぶん演奏に際する操作については近いかもしれません。でもそれは電子楽器だけあって前もって音色の変更やリズムなどの組み合わせを記憶させたメモリを使っていたので、このオルガンの操作はとてもアナログな雰囲気。

演奏された曲も馴染みの無い作曲家の曲ばかりで、知らない世界を垣間見た気がしました。レトロな建物のホールにある日本最古のオルガンを見て聴いて、なんだかタイムスリップしたような気分に。この味わいのある楽器をイマジンのプログラムにどう取り込むか?また楽しみが増えました。

6番の本番終わりました。

2019 APR 15 21:21:29 pm by 吉田 康子

4月13日(土)にライヴ・イマジン42が終わりました。詳しくはこちらをご覧ください。http://liveimaginemusic.blog91.fc2.com/

先の記事の通り、この日はモーツァルトピアノ協奏曲第6番変ロ長調K328の本番でした。
モーツァルトの音楽に酔い、舞って歌って存分に楽しみました!

この曲は本番1か月前にレッスンを受けました。ここまで仕上がって来ないと師匠のアドバイスを活かせないという自分の判断は正しかったことを確信出来ました。基本的な点での指導でなくプラスアルファが欲しかったので、大きな収穫がありました。師匠はいつもスコアから初見でオケパートを弾いて下さるのですが、それだけで我を忘れて耳が持って行かれそうになることも度々。

独奏の冒頭部分から音の出し方や余韻の残し方、和声の変わり目やフレーズなど沢山の事を教えて頂きました。私と同じように楽譜を見ているのに、何故これだけ沢山のものを引き出せるのだろう?とあまりの大きな違いにタメイキが。

その後のメンバーとの合奏練習は全て録音して聴き直しました。自分の演奏を聴くのは、現実を目の当たりにするので辛いものがありますが、そのままお客さんにも聞こえる事を考えれば、少しでも早く修正しないと、という気持ちが勝りました。

それと同時にもう一度参考にしていたCDも聴き直しました。何がどう違うのか、どうやったら1ミリでも近づけるか、実際に弾いて聴きながら練習を重ねました。内田光子の左手は何故よどみ無くレガートに聞こえるのだろう?シフの溌剌とした右手のタッチはどうやったら?と。他の演奏も聴きましたが、細部に至るまで神経の行き届いた演奏には遠いものばかり。この2人のトップクラスの実力をまざまざと見せつけられた感じでした。

1楽章のカデンツァで内田光子のように美しいアルペジオを入れたいと思っていました。こういう変奏は密かに仕舞っておいて本番だけにやるものだ、という師匠の言葉に頷きながらも、本番だけ弾けるのだろうか?という心配も。

本番前のリハーサルの出来は最悪でした。私によくありがちですが、その場の空気に馴染めない、楽器の勝手が判らない、という点が相まって普段間違えないようなところも引っかかってボロボロ。自分の情けない有様に驚くほどでした。

ピアノの場合はその日にそこにある楽器で演奏しなければならないので、「時間の許す限り弾いて自分の楽器にして下さい」と以前に調律師の方に言われた事を思い出し、他の曲のリハーサルが終わった時間を見計らって舞台でずっと弾いていました。

ファッツィオリは相変わらずの美しい透明感のある音色で応えてくれましたが、以前に比べて輝きが褪せて、音の伸びが少なくなったように感じました。やはりこのホールの管理の悪さが露呈したようです。徐々に楽器の劣化につながっているように思えて、何ともやりきれない気持ちになりました。

そうは言っても楽器のせいには出来ないし、言い訳になりません。腐っても鯛、スタインウェイがベンツならファッツィオリは、潜在能力を秘めたフェラーリです。

開場時間直前まで弾き続けて、ようやく自分の手の内に取り戻した実感を得られました。あとは本番に臨むだけです。

協奏曲の冒頭部分から自分のソロが始まるまで、オケの演奏を聴いているのは何事にも代えがたい高揚感があり幸せです。アレグロ・アぺルトの表示の通り溌剌とした輝くような明るさに酔いそうでした。弾きながらもトリルが遅いとか、レガートが足りないとか自分の実力の足りなさに情けない思いをしながらも、持っていないものは出せないし今ある力を精一杯・・という思いで弾き切りました。

自分の演奏に「満足」というのはきっといつまでも無いのでしょうけれど、今の時点での「納得」を得られた本番でした。

(写真の上でクリックして下さい。大きな写真がご覧いただけます)

モーツァルト ピアノ協奏曲第6番 変ロ長調 K238

2019 APR 5 11:11:23 am by 吉田 康子

4/13のライヴ・イマジン42でモーツァルトピアノ協奏曲第6番 変ロ長調 K238を弾きます。

6番と言われて直ぐに「ああ、あれね」とすぐに旋律が思い浮かぶ方は少ないでしょう。実は私自身もこの曲を1年ほど前に知りました。たまたまコチシュの演奏するCDを聴いて「この曲は何だろう?」と。明るく溌剌としていて、どことなく9番のジュノームの小さい妹のような可愛らしい雰囲気が印象的でした。

あれこれ調べてみると、1776年20歳ザルツブルクでの作品、もう既に30の交響曲、13の弦楽四重奏曲他、沢山の名曲を世に送り出しています。自身の手腕を披露する目的で作曲されたようで、翌年からのマンハイム・パリへの就活旅行にも携えていったとか。いわばプレゼン用の作品かもしれませんね。モーツァルトのピアノ協奏曲の中では5番が初めてのオリジナル作品。金管や打楽器の入った賑々しい感じで気合のほどが伺われますが、続くこの6番は女性的な伸びやかさ、柔らかさがあります。

ラハナー編曲の弦楽四重奏での室内楽版なら出来るかも?と思い立ちました。更にオリジナルのオーケストラ版の編成をみるとオーボエ2、ホルン2、弦5部。公演曲目のシューベルト八重奏曲の演奏メンバーにはホルン奏者もコントラバス奏者も参加しています。あらら、足りないのはオーボエだけでは?と思い、早速にオーボエ奏者に出演をお願いをした次第です。何が違うかと言えば、弦楽器のみの編曲版は元々あるべき管楽器の分も弦楽器が代わりに弾くということ。管楽器が加わることで本来の色彩豊かな音色になる、とは言ってもオーケストラではないので、各パート1人ずつの美味しいとこ取りでいくことにしました。

参考音源として色々な演奏を聴きましたが、中でもお気に入りはアンドラーシュ・シフの演奏。自身の強い意志が伝わるようで演出過多とも受け取れますが、やはりこの積極性に惹かれます。そして内田光子の演奏も見事なもので、特に左手の伴奏部分は溜息が出るような隙の無い素晴らしいものでした。

各楽章の終わりにあるカデンツァはモーツァルトオリジナルのもの。でも3楽章の2箇所にあるアインガング〈主題への導入部分〉は、演奏者それぞれが工夫を凝らしていました。よし、それなら私も!と自作を弾く事にしました。それぞれ僅か数小節のものですが、折角の機会ですから。

本番のピアノは、あのファッツィオリ。ガラス背景の豊洲のホールの響きに助けられて透明感のある独特なピアノの音色は、きっと演奏を底上げしてくれる…かな?と期待しつつ練習に励みます。

ライヴ・イマジン42

2019 MAR 28 12:12:04 pm by 吉田 康子


ライヴ・イマジン42 
2019年4月13日(土)13:30開場 14:00開演
江東区豊洲シビックセンターホール
入場無料(要整理券)未就学児童の入場はご遠慮下さい

モーツァルト 弦楽四重奏曲 ト長調 K156
モーツァルト ピアノ協奏曲 変ロ長調 第6番 K238
シューベルト 八重奏曲 へ長調 D803

ヴァイオリン 玉城 晃子、山田 洋子  ヴィオラ 吉水 宏太郎 
チェロ 西村 淳   コントラバス 櫻澤 有紀子
オーボエ 野原 国弘   クラリネット 佐藤 拓 
ファゴット 奥山 薫  ホルン 中原 敏雄  ピアノ 吉田 康子

春風に似合う伸びやかで明るい曲を揃えました。
どうぞお楽しみください。

入場整理券をご希望の方は、下記の問合せ先アドレスに
お名前 ご住所 電話番号 年齢 職業 コメントを添えて
「ソナーメンバーズブログを見て整理券希望」とご記入下さい。
折り返し上記の葉書(入場整理券)をお送りします。
お問い合わせ  liveimagine@yahoo.co.jp

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊