スクロヴァさんのブルックナー
2023 JUL 11 22:22:31 pm by 西村 淳

ブルックナーの弦楽五重奏曲をライヴ・イマジンで取り上げるのはプログラミング的に少々厳しい。理由はいろいろあるが手掛かりを探しているうちに、Youtubeに第三楽章、Adagioの弦楽合奏編曲版の演奏があった。
Anton Bruckner – Adagio from Quintet, orchestral transcription, Skrowaczewski – YouTube
何といってもこの曲はこの楽章があるからやりたいわけで、当然のことながらちゃーんとそれがわかっている先人がいたわけだ。この楽章のみやる、ということも「あり」かもしれない。
指揮はスクロヴァチェフスキ。編曲も自身で行ったようだが、これがなんとも素晴らしい。音楽の作り方の的確さ、テンポ、バランス、ダイナミクスなどブルックナーの意図をまっすぐに伝えてくれる「超」一級品だ。東さんもフィラデルフィアでの大興奮の出会いを伝えてくれている。
でもどこかでこんな音楽を聴いたことがなかったか?少し調べてみると、この人、作曲を私が神様のように拝んでいるナディア・ブーランジェにも師事している。つまり楽曲分析によるアプローチが作曲家のものだということ。どこかで聴いた、潜在意識の中に眠っていたのはクリーヴランド管弦楽団を振ったピエール・ブーレーズのマーラーの7番だ。(DG; CD 4477562)これも大変見通しの良い演奏で苦手だった7番を引き寄せてくれた唯一のもの。勿論、ブーレーズはメシアンの流れを汲む「作曲家」だし(私にとって)やたらと演奏の難しそうな訳の分からない曲を書いているが、このパースペクティヴの良い表現方法はスクロヴァさんの音楽づくりに似る。ただ私の音楽的な感興はスクロヴァさんに寄りそうが。
普段、オーケストラは余り聴かないけれど、この勢いでNHKで放映された2016年の読響とのブルックナーの8番を見ていて感涙し、ここで欲が出た。
これだけのブルックナーを聴かせるならきっとベートーヴェンも悪かろうはずがない。
大好きな「エロイカ」や「田園」にそろそろスクロヴァさんと一緒にだったら戻ってもいい年齢かもしれない。何せこの2曲でクラシック音楽の扉を開けたのだから。そんなわけで早速
「スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ エームス・クラシックス全録音集(28CD)」(Oehms; CD OC090)
なるブルックナー、ベートーヴェン、ブラームス、シューマンなど全部入っている一大セットを発注した。
やれやれこれで暑い夏を乗り切れそうだ。
Categories:未分類

東 賢太郎
7/14/2023 | 9:11 PM Permalink
西村さん、引用して下ってありがとうございます。フィラデルフィアではオーマンディ、チェリビダッケ、バーンスタインに会ったり話をきいたりと今では夢だったのではないかと頬をつねってみるようなことばかりです。でも楽屋に会いに行った客演指揮者はスクロヴァさんだけです。よくは覚えてませんが8番がよっぽど凄かったんでしょうね。人物として尊敬もしました。あんなに謙虚で真摯な人はありません。当日のアメリカのオールド・リスナーはあんまりわかってない感じがしていまして、何か申しわけない感じもあって、こんな所よりぜひ日本ですよと申し上げたのです。
西村 淳
7/15/2023 | 10:11 PM Permalink
フィラデルフィアは初めての海外出張(海外旅行)の地です。
憧れのアメリカ、この頃は何もかもが新鮮でした。フィラデルフィア管弦楽団のコンサート、フローシャイムの靴、ロッキーが走った美術館の前、馬に乗ったおまわりさん。もう30年以上前のことですが走馬灯のように蘇ります。
スクロヴァさんはルービンシュタインのショパン・ピアノ協奏曲第1番の伴奏をしていますね。同郷の巨匠の前で意気に感じていたに違いありません。これが出会いでしたが、その後ほとんど消息をきかれなかったのは、やはりアメリカでうけるスタイルではなかったことが災いしたのかもしれません。
maeda
7/21/2023 | 10:02 AM Permalink
「ナディア・ブーランジェとの対話」やっと入手しました。
西村 淳
7/21/2023 | 5:18 PM Permalink
アナログ、最高ですね。紙は1000年以上もちます。デジタルは10年でしょう?歴史も何もない空白がこれからの時代です。