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チェロを弾く姿勢

2023 OCT 13 20:20:44 pm by 西村 淳

「仕事」から解放される前はチェロの練習時間は相当限られたものであった。日課は朝5時に起き、1時間。それもサイレント・チェロを使って主に指の練習。住まいがマンションで朝早くからチェロを鳴らすわけにはいかない。購入時のLL45の遮音性能をLL40にグレードアップしたが気休め。これを30年以上続けたわけだが、やはりマイ楽器とは形が異なるため、弾く時の姿勢が大きく違う。しかもこのエレキ・チェロは出張時に持ち歩き出来るようにサイズを極限まで切り詰めた特注品だ。アンプを通さない音が小さすぎて音程をよくする練習には全く適していなかった。弾く姿勢がそのたびに違うと、当然抑える場所も変わってきてまともな音は出ない。まして同じところを抑えてもその角度がほんの少し違うだけで(手の形がちがうだけでも)上ずったり、低すぎたり微妙なコントロールを要求されているのだ。
チェロを始めたのは25歳、一緒にやっているメンバーは小さなころから楽器に親しんでいる連中が多く、いわゆるアマチュアのエリートたち。今思うと散々迷惑をかけていたわけだ。今でも?もちろんさ!(笑)
音程が良くなるだけで「とても上手に」聞えるのが弦楽器。師匠が音程はプライオリティNo.1ではないと言ったことを盾にしたりしていたが、音程が良くないと「とても悲惨」なことになるのも弦楽器。だがここにきてようやく音程をよくする方法が見つかった。単純なことで「正しい姿勢」で弾くこと。エンドピンの長さ、肘の角度、脇の角度、前傾、楽器と頭の距離はいつも同じでなければならない。ただ言うは易し行うは難しで「良い姿勢」とは何か?初めて小林道夫先生にピアノの指導をしていただいたとき、最初に指摘されたのがやはり「姿勢」だったことを思いだす。背筋をピンとして腰に力を入れることで腕の自由度が高まり、脱力が容易になる。ピアニストであればルービンシュタインをはじめ、超一流の人たちの演奏姿勢は美しい。アンドラーシュ・シフも基本原則として言っているではないか。「人がピアノの前にどう座るか、というところから始まっていますよ。多くの人が無理な姿勢をとっています。聴く前に分かります。そこから良い音は決して生まれません。」一方、正しい指導をされてこなかった人の姿勢は決まっていないのだ。
このことはスポーツ選手にも100%当てはまる。当世話題の大谷選手のバッターボックスの立ち姿は美しい。不調で崩れている時にはセカンドゴロ。投手としてはまだ完成されていないと思う。閑話休題。
では最も美しい姿勢のチェロ弾きは?となるとエマニュエル・フォイアマン(1902-1942)に違いない。とにかく余分な動きがなく微動だにしないのだ。ハイフェッツのできることはチェロですべてできると言い放ったのも納得ができる。
  
自分でチェロを弾く姿勢を鏡に映して見る。こりゃあ駄目だ。全くダメ。ただ試行錯誤しているうちにチューニングメーターの振幅は確実に小さくなっている。ライヴ・イマジンではリハーサル時に写真を撮ってもらっているが、一瞬を切取った写真が多くを語る。次の公演が楽しみになってきた。

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