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軍艦マーチ

2023 NOV 27 19:19:18 pm by 西村 淳

両国駅前にあった老舗のパチンコ屋が廃業した。相撲とパチンコのイメージは「のたり松太郎」だが、今どきの若い力士は暇なときはゲームでもしているのか・・昭和は終わりぬ。そのパチンコ屋の思い出となると「軍艦マーチ」だ。最近のことはわからないが昔は盛んにチーン・ジャラジャラのBGMはいやでも耳に突き刺さった。海軍出身者からはこれに批判もあったと聞くが、この曲は決して悪い曲ではない。アメリカの行進曲のようにあっけらかんとしたものではなく、「君が代」同様に多少和音の連結がおかしくても日本の叙情もちゃんと込められ心に染みる。もし「ふるさとを遠きにありて思う時」には確実に落涙しそうだ。冒頭の4小節目のズンチャ・ズンチャに心躍る・・そう、何を隠そうこの曲が好きなのだ。
「軍艦マーチ」ばかりを集めたCDがここにある。「軍艦マーチのすべて 瀬戸口剛吉生誕130年記念」(キングレコード・KICG3073)。

1903年の初録音や三島由紀夫指揮・読売日本交響楽団、最後の菊乃家(ちんどん)まで26曲も!これでもかと迫る。さすがに食傷気味だが、中にはドイツ録音が二つ。一つは独逸ポリドール軍楽隊でなかなか立派な演奏になっているが、クラシック好きにとっては1935年8月のアロイス・メリハル指揮のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のものにそそられる。フルトヴェングラーは前年12月にヒンデミット事件をきっかけにベルリン・フィルを辞任、翌年4月25日に復帰公演をしており熱狂的に迎えられている。そのオーケストラを使っての録音だ。弦楽器の入った編曲がなされ、合奏能力の高さも、拍節感が的確な表現の確かさも他とは一線を画している。
戦前、海軍と陸軍は仲が悪いことは仄聞していたが、軍楽隊でも事情は同じだったようで、(陸軍軍楽隊の生徒だった芥川也寸志・私の音楽談義)・・・何かというと海軍は眼の仇にされ、中でもどうにも我慢がならなかったのは、あの名曲“軍艦行進曲”の存在でした・・。ということで、悔しいので八紘一宇の大精神で「軍歌陸軍」やフランス人教官シャルル・ルルーの「陸軍分列行進曲」を繰り出し、近衛秀麿子爵と新交響楽団で録音だ。気持ちはわかるが、曲としては歌詞を変えればどこかの校歌と言ってもいいような代物。実際、「軍艦マーチ」のほうも宮沢賢治や石川啄木の母校、岩手県立盛岡第一高等学校の校歌に転用されている。
余談ながら、陸軍と海軍の確執をちょっと調べてみると出るわ出るわで、その一つがNHKのWEBに『なぜ陸軍が潜水艦を造ったのか「まるゆ」の真実』があった。補給船がやられてしまい、南太平洋への兵站の確保のために(陸軍が)潜水艦を造ってしまう。しかもヒミツなので海軍に頼まず、ドイツの技術を参考に。いや、海軍に頼むくらいなら我々で造ろう!鬼畜米英よりも優先度の高いものがここにあり!ところが案の定、建造したが使いものにならず、レイテ島に向かい、がんばって海上(潜ってない!)を航行していた虎の子の1艘も哀しいかな駆逐艦に見つかり海の藻屑となった。ただこの戦争、勿論陸軍だけがマヌケだったわけではないことは言うまでもない。

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