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コーヒーの抽出から

コーヒーの淹れ方はいろいろな方法が考案されているが、最近はペーパー・フィルターが手軽でもっぱらこれでやっている。この方法は20世紀に入り、ドイツのメリタさんが考案した方法で、その淹れ方は合理的、かつ経済的なもので豆を極細に挽いて湯との接触面積をできるだけ大きくすることで、豆そのものの量を減らすことができると聞いた。手軽さはもちろん、ペーパーの質もいわゆる「紙臭い」と言われた時代から脱してクオリティの面でも十分レベルは高い。
その昔、パルプを作る会社にいたことがあるが、コーヒー・フィルターはパルプから作られているので、そのあたりのことを考えてみた。
木材の組成は繊維とそれをくっつけているリグニンから成るが、このリグニンを除去した繊維がパルプで、絡み具合を密にしてデンプンで固めて薄く引き伸ばしたものが紙である。
パルプを作るには木材チップをアルカリ性の薬液に浸し高温高圧で5時間ほど煮る。
そうするとリグニンが溶け出して繊維のみ残る算段だ。これをコーヒーに例えるなら、細かく挽いた豆に湯が浸透するまで20-30秒くらい待って、そのあとはお湯を注いでコーヒーを抽出する。あらら、これはパルプを作るのと同じことだわと妙に納得した。
有機物である木材から一定品質のパルプを作ることはプロにとっても容易ではなく、今日でもこの分野の永遠の課題となっている。まったく同じことがコーヒーの抽出にも言えるわけで、最高に美味しいコーヒーを抽出するために豆の種類、量、湯の温度、抽出時間、焙煎具合、挽き具合、サイズ、ペーパー品質などのパラメータを経験と理論から適当に決めるが、これらのパラメータがまた相互に関連を持つので複雑だ。30年以上やっていても未だ可(飲める)のレベルにしか到達していないのは我ながら情けない。
だが一方、パルプにしろコーヒーにしろなかなか奥が深いようでいて物事の考え方が結局一つのやり方に収斂していく様は人智とその限界を垣間見るようだ。

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