Sonar Members Club No.36

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プロの領分

2024 MAR 13 0:00:38 am by 西 牟呂雄

 ずっと以前にSMCメンバーの西村さんのブログで『アマチュアの領分』という印象深いものがあった。極めて高度な技量を持つプレイヤーが入場料無料でカルテットを演奏するという内容に感じ入った。無論、本業をお持ちで忙しい合間を縫っての演奏だったと。
 或いは同じくSMCメンバーの中島さんは同好の方々と箱代のためのささやかなチケットで賄ったコンサートを聞いたが、演奏レベルは高く見ていて楽しかった。その後コロナもあり暫く音沙汰無いが、そろそろ活動されるのを楽しみにしている。そしてそのステージは(プロらしくないという意味で)アマチュアの矜持を保った最上位レベルのものと感じた。

 少し前になるが、それなりの金額を払って古い友人のステージを見に行った。場所は渋谷で、食事もできる、無論酒も。で、例によってガブ飲みをして結構な額についた。従って彼らはプロなのだ。
 この友人は学生(高校生)の頃からバンド関連での知り合いである。その頃テクは同じくらいで、いわゆるフォーク・ソング風の音楽をやっていた。その後、僕の方はだんだんやかましい方向にスライスしたが、彼は頑固にそのスタイルを崩さないで通し、彼はものすごく腕を上げ、お兄さんがその方面だった関係もあったのでレコーディンクのバックを務めるレベルになった。
 卒業すると彼は銀行に、僕はメーカーに進み、長いこと疎遠となる。偶然再会したのは30年後である。
 僕は同僚とそれなりにバンド活動を楽しんだが、腕は落ちっぱなしで尚且つパートもドラムに変えた。人前では滅多にやっていない。
 すると風の便りに聞こえてきた、彼がロンドン赴任後に銀行を辞めたと。噂は色々飛び交った。サーモンを日本に輸出することを始めた、音楽プロデューサーになって演奏家を連れてきた、等々。
 往時茫々、再会を祝して乾杯すると、プロとして演奏活動をしているとのこと。「勿論それだけじゃ食えないから色々やってるよ」とも。結構優秀な銀行員だったそうなので辞める時のイザコザも面白かった。
 そして今回はプロの演奏を見極める意味で、リハーサルから聞きに行くことをお願いし快諾を得た。
 メンバーはそれぞれこのバンド以外にも音楽活動をしていて、アルバムを出している人(ギター)、編曲が本職の人(ベース)、誰もが知っているプレイヤー(ピアノ、後ほどクイズを出します)、ジャズまでこなす人(パーカッション・ドラム)、日系アメリカ人(ギター)の編成で、友人はバンマスのポジションである。一曲を通して終わるとなにやらよくわからない用語が発せられて繰り返す。この辺は「アマチュアの領分」も同じだ。主にバンマスである友人が、強弱やリズムについて(結構頑固な)主張をし、他のメンバーは何かを譜面に書き込んだりしていた。
 真剣そのもののリハーサルが進行し、さるコーラスのキメのところで上記有名プレイヤーが言った。
「あんまりハモらないのがいいって話もある」
 この謎めいた言葉にメンバーは複雑な反応を示し、ミーティングが始まった。「確かにそうだけどさ」「だけどあれはライブの音なんだろ」「今のままでいいんじゃね」「セオリーからいったらこの通りなんですがね」と一部険悪なやりとりにもなった。

 30分もやりあっただろうか、バンマスである友人は半ばヤケクソで「一番の高音を半音下げよう」と言ってやり直し。いや驚いた。コーラスの厚みが全く違う。すなわち、お客さんに聞かせるための工夫が見て取れた(いや、聞き取れた、か)。ここが「プロの領分」なのかな、と感心した。
 ところで、さる高名なプレイヤーとはこの写真の真ん中で顔にボカしを入れた人。一番右が僕の友人でその人の弟だ。一体誰だかわかるかな。分かった方、お知らせください。例によって賞金は仮想通貨100万ソナー・ダラーをさしあげます。ヒント、ムーミン・パパ。

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Categories:僕の〇〇時代

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