Sonar Members Club No.1

since September 2012

パー券の買付はいたしません

2023 DEC 21 10:10:58 am by 東 賢太郎

起業したてのころ、国会議員のパー券を一度だけ買ったことがある。受付で現金2万円を支払うと大き目の印刷した領収書をくれる。いかにも「経費で落とせますよ」という風情だった。なるほどと合点したが確定申告で落とすのを忘れた。見たことも聞いたこともないその男を支援していた男に頼まれ、まあ覗いてみるかぐらいの好奇心だった。そいつのスピーチのあまりのくだらなさにあきれ、こういうものは金輪際近づかないと決めた。

ということで昨今も国会議員に紹介されて会うぐらいのことはあるが、初対面のあいさつで必ず「パー券の買付はいたしません」と告げる。僕のビジネスで政治力やロビーイングが効くことはない。それ狙いでへこへこ寄ってくるような奴等と一緒にされるのも不愉快であるし、逆に僕は「株は買いません」と言われたら二度と会わないからそう言い切ってしまった方がお互いわかりやすい。政治家のビジネス経験というと、だいたいがかけだしのサラリーマン程度である。だから僕の商売を説明してもほぼわからず、ほとんどがそれでおしまいだ。

それでも、見込みあるなと思う人は何人かお会いした。僕は人を管理するのもされるのも嫌いだから政治家になろうと思ったことはない。管理者がいないと社会はもたないから誰かにしてもらう必要はあるので有能な管理者を応援する気持ちはある。政治家とは何か。志がある人だ。志は何であってもいいが、それが国民の琴線にふれるなら票が集まり、現金をばらまかなくても当選するだろう。政治は就職でも金儲けでもなく志に奉仕できる資質の人、国民の願いをかなえるモチベーションのある人の天職なのだ。僕にはその資質がないからお願いするのであり、敬意も払うし、税金も払うのである。

しかるに、総理になってやりたいのは人事ですという人が、中学生に「なぜ総理大臣になりたかったのですか?」ときかれ「一番権限の大きい人だから」と答えるブレのなさは見事ではある。しかし「機長になったのは一番権限が大きいからです」というパイロットが操縦する飛行機に乗りたい人はあまりいないだろう。日本国は目下そういう状態だ。入社試験の志望動機に「社長になりたいから」と答えるような自爆もので、もし社長が言ったなら株価大暴落だ。現にそういう資質の人がホールディンカンパニー制導入で多くの大企業のトップに立ってしまい、世界で日本だけ株が下がり続ける「失われた30年」を演出したのである。

岸田政権は支持率0%になっても続くと以前の稿に書いた。理由も皆さんが書いちゃって大丈夫ですかと心配してくれたほどはっきりと書いた。そうなりつつあるのはそこに書いた理由が正しい証明だ。それでも続けられる岸田氏の鈍感力は畏敬に値し、かような打たれ強さは定常的パフォーマンスを求められる公務員の大事な資質だ。僕には無理。以前、ある立派なNPO法人のトップをどうかという身に余る光栄なお話を頂いたがその場で辞退させていただいた。「すみません、競争して儲ける仕事じゃないとモチベーションが出ないんです」と理由を正直にお伝えした。狩猟民族なんですねとご理解いただいたが、民族というより猫であり、モチベーションをコントロールする能力はゼロに近い。引き受けたら100%ご迷惑をかけることが見えているからである。

パー券を買ってからいろんなことがあった。

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。

Categories:ソナーの仕事について, 政治に思うこと, 若者に教えたいこと

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊