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田崎先生のボウイング

ボウイングとは弦楽器の弓の上げ下げのこと。ダウンボウとは右手の弓元から弓先に向かって動かし、アップボウとはその逆。弓元から始めるのは腕の力を弓に乗せることが容易なため、原則、小節の1拍目はダウンボウから始める。弓先に行くにしたがって腕の力が乗りにくくなるため段々と音が細って小さくなってしまう。これをそうならないように、均一の音で弾くように楽器を始めた時には指導されるが、実際、力加減を調節するのは大変難しい。ボウイングが音を、音楽を作っているのであるから、この技術の重要性は言うまでもないが、脱力できない、がちがちの腕でやっていると、肩は凝るし痛いし、ひどい時にはマッサージのお世話になるのが日常に。
それほど重要なボウイングであるが、譜面には全くと言っていいほどボウイングの上げ下げを指示したものはない。1拍目をダウンといってもそうするにはその前の小節でアップにしていなとダウンは弾きにくくなる。当然である。ところが3拍子になると順を追ってボウイングをすると2小節目の頭はダウンにならなくなるので、ダウン、アップ、アップとする。ところがそうもいかない場合のほうが結構多い。2小節フレーズであれば2小節目はアップで始めるほうが音楽的になることもあるし、いわゆるアーティキュレーションと言われるスラーで繋いである音符はひと弓で弾くように指示されている。これにフレージングというより長いスラーも絡んできてそのややこしさに絶対としての解はないどころか、ボウイングは音楽表現そのものと言っていいのである。従ってボウイングは練習の最初に決めて、譜面に書き込んでおく必要が生まれるが、ではこれを誰がやるのか!?オーケストラの場合は指揮者という絶対的な権力者が君臨しているが、逆に全責任を負わなければならない。とすると弦楽器に精通した指揮者であれば当然のことながらボウイングも決めるはず。今回の公演では田崎瑞博さんという稀有の音楽家に指揮を執っていただいている。直接間接様々な形で指導を受けているメンバーも多く、一発オケとはいえそのコンセンサスはしっかりしている。当然のことながら田崎先生、弦楽器パートのボウイングを3曲分をたった1日でやってのけたのである。一見すると最初は中身はえ~っという物も多く(無知の恥)、何というこだわりだろう、などと思っていたが練習が進むにつれ、そのボウイングと表現しようとしているものとが完全に寄り添ったものであることを実感するようになってくる。ああなるほど・・しかもプロであればすくなくともアップもダウンも同じように弾けるだろうし、それでなければならないはずであるが、アマチュアのウデだとこう書いたほうが間違いが少ない、とそのあたりまで見通してのものと受け止めた。これがプロ中のプロの仕事。恐れ入りました。そのテイストはカラヤンのレガートを利かせたモーツァルトに似ていると言えば語弊があるだろうか。

ジュピター第一楽章のチェロパートである。もちろんここだけではなく随所にこういったボウイングが指定されている。アマチュアのコンサートであってもきっと「表現された」音楽を聴きとることが出来るはずである。ご期待ください。

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