Sonar Members Club No.31

since February 2013

いまさらですが

2022 SEP 29 18:18:45 pm by 西村 淳

久しぶりにポリーニのショパン、それもエチュードを聴いた。
第6回国際ショパン・コンクールに優勝してすぐにEMIと契約、1960年9月にアビーロードの第3スタジオで録音したもの。18歳の記録だ。でもなぜかポリーニ自身の発売許可が下りず50年間もお蔵入りになっていたものだ。その後DGへの再録音は彼の名前を不動なものにしたのは周知のとおり。来日時のポリーニへの熱狂はロックスター並みだったと記憶している。


【TESTAMENT JSBT8473】

ところでこのCDの演奏はパーフェクト。
今年のプロ野球では佐々木朗希がパーフェクト・ゲームをやっている。20歳に記録。野球とショパンのエチュードを比べる愚は承知しているが、ポリーニの演奏を野球で例えるなら81球で27奪三振のパーフェクト・ゲームだ。バットにかすりもしない。起きるわけの無いことが、録り直しがあったにせよ現実に音となって目の前にある。それほど凄いものなのだ。好き嫌いの話ではない。
しかしバットにボールがかすりもしないパーフェクト・ゲームを観たいだろうか?それに感動するだろうか?完全なものへの憧れは達成されてしまうとすぐに飽きてしまう。
ポリーニは罪なものを作ったものだ。これに続くピアニストに課した試練のみならず、自分自身がこれ以上何をするべきかミケランジェリに師事を仰いでもその答えは見つけられなかった。
あまりにも衝撃的だったので、同じくポリーニのシューベルトの最晩年の変ロ長調ソナタD960も聴いてみた。実にすっきりした演奏だ。ショパンと同じアプローチだがやはり物足りない。エチュードだからこそ起きた奇跡だったのだ。

Categories:未分類

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊