喜寿庵歳時記 アシナガバチ戦記
2025 AUG 22 20:20:30 pm by 西 牟呂雄
新盆という習慣は母親が亡くなった時にも経験しているが、オヤジの相続をしてからは初めて。盆提灯を飾りお供え物を準備していると後から後から人が来た。菩提寺のお坊様、聞いたこともない遠縁、滅多に合わない知人、親しく付き合った方、それぞれ個人の思いを偲んでいた。僕が死んでもこうはならないだろうと思えば感慨深いものがあった。
個人を偲ぶのはお勤めだと喜寿庵で過ごしたが、庭木の剪定、個人の私物の廃棄、漏れていた水道の修理、粗大ごみ搬出、少しも休日感のない盛夏だった。ちなみに浄土真宗は迎え火送り火は正式にはやらないが、勢いで火は焚いた。
芝生を刈って一息ついて窓を見やると、これは何だ。アシナガバチが窓に群がっていた。営巣しようと集まったのではないか。
以前このあたりに巣を作ってしまい、アース・ジェットで駆除しようとして刺されたことがあったっけ。そして怪虫ケムラーが大発生したときの戦いの記憶が蘇ってきた。
ケムラーはノソノソしているがハチは飛ぶ。昼間は活動的だが日が落ちると鈍ると聞いたので日没を待って戦闘準備に入った。今回は米軍放出ヘルメットの上から蚊避けネットを被り作業ツナギの襟元をキチッと塞いで雨合羽を着るという重装備で挑む。この格好で外の照明を落としてコソコソと物陰から営巣点を狙うのはまるで泥棒に見えただろうが(誰も見ていないが)本人は正規軍のつもりである。
ところが照明を落としているので良く見えない。仕方なく危険を承知で室内の電気を付けてウッスラ見えたところを狙った(向こうからも見えた事だろう)。
両手で二丁拳銃のように構えたアース・ジェットの集中攻撃を掛けた。すると薄明りに向かっての放射なので火炎放射器のように朦々と立ち込めて様子がわからなくなった。が、ここで一休みというわけにはいかない。敵はどこから来るか分からないから油断すると危ない。約3分、結構長い。見えないのだがパラパラとハチの落ちる音がした(気がする)。
翌日、戦場を見て回ると多少のハチが落ちていて、驚くべき事にまだ生きてもがいているのもいたので成仏させてやった。落ちているのは数匹で大半は夜陰に紛れて逃げたらしい。これはまた来るな。
と見上げると、軒下に去年のものなのか一昨年なのか二つも巣が残っていた。
いくら暑くても太陽は低くなり夏は過ぎ行く。庭に目をやると、猛暑の間中鳴き疲れたであろうアブラゼミが死んで落ちている。次の世代はまた何年も土の中だな。
ん?セミの死骸が動く?まだ死んでないのかと驚いたが、すぐそばに青く光るものがチョロチョロしていた。よく見るとトカゲではないか。緑と青の美しい光沢がしばらくジッとした後、チョンチョンとセミの死骸を突っついていた。トカゲは肉食だったのか。しかしあの大きさを食べるのは大変だろうに。
光った!今度は何だ、ノソノソと動く。
これは・・・、玉虫ではないか。
ずいぶん鈍い動きなので捕まえた。法隆寺の玉虫厨子はこの虫の光る羽で装飾されていたというくらいだから(見たことはないが)縁起のいい虫なのだろう。
あれ、トカゲはもうどこかに行ってしまった。撮れなかった。
渓谷のせせらぎ、ミンミンゼミの鳴き、あまりの暑さによる野菜の不作、生い茂る雑草、ワァっ!夕立だ。
この猛暑もいずれ終わりまた一つ年をとる。
夕立が止むと濃い川霧があがった。
玉虫は今僕の事務机の上で標本になっている。
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Categories:和の心 喜寿庵





