Sonar Members Club No.36

カテゴリー: 国境

九条守って国民守れず

2021 DEC 1 0:00:02 am by 西 牟呂雄

 何も戦争をやれ、などと国民の誰一人思っていない。このままでいい、平時は。しかしこうまで恥さらしではチト困る。
 8月中旬、外務省は民間機のチャーターを軸に、タリバンが首都に迫った場合の邦人退避と大使館撤収を検討し、万が一に備えて自衛隊機の備えを防衛省に打診した。
 8月15日、思いもよらないスピードでカブールが陥落。外務省は防衛省に対して自衛隊機での救出検討を保留するという連絡をしている。ここで勝負あった。
 ヤバい場所に民間機を飛ばせなさそうなら自衛隊機しかなかろうに、腰の引けた外務省はビビッて保留、とは本末転倒も甚だしい。そのくせ大使館員12人については英国に頭を下げ軍用機でUAEに避難し、退避待ちの500人を置き去りにした。
 その後5日も経った20日に外務省が重い腰を上げると、防衛省は直ちに対応し24日には3機の輸送機が飛び、タリバンに包囲されている空港に何度も着陸したものの、陥落後10日もたっていたため、乗せられた日本人はたったの一人!有事の際の無能さは繕いようもない。時の外務大臣は現茂木幹事長である。横柄な態度とエバリ散らすことで人望の無いという話だが、本当に実力のある切れ者かどうか疑わしい。
 漏れ聞いた話では、グズグズしている間にG7首脳会議の際『各国が軍を派遣しているが日本はなにもしていない』と(おそらく軍用機で大使館員を避難させてくれた英国から)言われたためバタバタ決めてやっと飛ばしたというではないか。他国に言われたらやるとでも言うのか、この外圧根性丸出しの外務省並びに政府は。恥を知れ。
 どうやら15日の保留は、自民党党内にすらこの期に及んで自衛隊機派遣に慎重な議員センセイへの根回しが必要で、事務方はその説明に忙殺されたかららしい。与党内には『平和の党』を標榜する公明党も入っているから尚更なのだが、そこを何とかするのが大臣の仕事だろうに。それが幹事長とは新総理も分かっているのか。
 
 台湾を『核心的』な領土問題としている大陸は香港を踏み潰し、いよいよ牙を剝く。尖閣問題は喫緊の課題だ。台湾には万単位の日本人が滞在・駐在しているが、万が一の時に海上保安庁・海上自衛隊・航空自衛隊は邦人救出に動けるのか。
 そしてその海上保安庁は歴代上記公明党が大臣となっている国土交通省の傘下にある。例えば1万隻もの漁船が尖閣に押し寄せた場合、海上保安庁だけで上陸を阻止できるのか。まさかいきなりのドンパチはやらないとは思うものの、すでに事前の工作を与党議員に仕掛け、サイバー攻撃などは既に行われているものと思われる。
 随分前に航空自衛隊の関係者から聞いたことがある。専守防衛の建前から、戦闘機は他国領空との往復分の燃料は積めず、一朝有事の際に現場判断で仮に戦闘が始まったとした場合には敵機を追って領空外にでると帰ることはできないとか。常に全滅覚悟で「勇猛果敢・支離滅裂」と言われているそうだ。今更特攻でもあるまいに。敵基地攻撃能力は『攻撃』に重点を置くわけではなく、むしろ盾のために必要なのだ。
 そういうことをブチ上げると複数の隣国が騒ぐだろうが、何も長距離ミサイルの配備とか上陸用部隊の編制などはする必要もない。むしろ騒いでくれるだけで抑止力になり得る。
 ゴリゴリ右翼とゾンビ左翼が九条について『追記じゃまだ足りない』『改正の必要ない』と神学論争をしている間に、静かにサイバー攻撃の腕を磨き軽量ドローン兵器の大量機動運用を整えておけば十分である。高市政調会長の主張は正しい。
 目下、政情が不安定になって来たエチオピアには万が一に備えて先遣隊がジブチまで行った。やればできるものと信じたいが・・・。

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戦争の終わり方

2017 JAN 4 20:20:17 pm by 西 牟呂雄

 先の大戦でポツダム宣言受け入れ後のソ連の行動は多くの作品に描かれ人口に膾炙している。最近では浅田二郎の作品で着目された千島列島最北端にあたる占守島(しゅむしゅとう)の戦いがある。
 この戦闘はご承知の通り8月18日のソ連軍の上陸から始まった。
 守備に当たっていた帝国陸軍第91師団の猛烈な砲撃と戦車第11聯隊の果敢な突撃で初戦を跳ね返している。
 驚くべき事に、この島には缶詰工場に夏場働いていた女子工員数百人を含め二千人もの民間人がいた。陸海軍の軍人は8千人である。
 直ぐ側のアリューシャン列島でアッツが玉砕・キスカが撤退したというのに民間人がいた。米国を警戒していたとは言えソ連の参戦をほとんど想像していなかったものと思われる。
 それにしてもここで一度は跳ね返したことは戦後処理に大きく効いた。どうやらスターリンは北海道の半分をよこせ、と言っていたのだ。
 日本占領に伴って各国に進駐を割り当てる際、東南アジアでも連合国の談合があり、朝鮮半島は38度戦の北をソ連が、南をアメリカにした。同じ事はヴェトナムでも起こり南は旧宗主国フランスによる連合国、北側を蒋介石と分割して、どちらも直ぐ後にドンパチが始まった。
 こういう戦後処理は、古くは第一次世界大戦後の中東でもサイクスーピコ協定の勝手な線引きがなされて、今日に至るまでの紛争の火種となっている。

 ハタと気が付いたことがある。 国境を考える で記述した旧ドイツ領、カリーニングラード(旧名ケーニヒスベルグ)について、今までドイツは一度も返還を口にしていない。
 そうこうしている内にバルト三国が独立したのだが、誰も何も言わなかったのでロシアの飛び地となってしまった。治安も悪いエリアに成り果てていたのだが、プーチンの離婚した奥さんがここの出身地だったので多少の金が付いたそうだ。
 あの哲学者や数学者を輩出した大学はここにあったのだが最早ドイツ人は郷愁も感じないのだろうか。もっともその前にドイツは分断された歴史が長かった為、それどころではなかったのか。

 日本は完膚なきまでに負けて、多くの犠牲を出した結果占領された。僕は府中のスタジアムが米軍基地の住居時代だった頃の記憶がある。昭和の20年代は東京ですら基地があったのだ(今も横田にエア・ベースはあるが)。
 進駐軍の統治・改革は巧妙に隠された事は広く知られる。当時の文書検閲に多くの日本人が関わっていたのだが、ただの一人も『自分はこうやって手紙を開封して検閲していた』と白状した人はいない。江藤淳の研究でその一端が明らかになっているがそれは凄まじいものだった。教科書は墨で塗られ僕の母方の祖父はパージされた。大方の日本人はこんな苦しい戦争が終わってホッとしたり、始まって以来の敗戦に脱力したりした。
 概して一般の国民は占領政策に従順だった。
 それに対し過激な日本人の対応は三つに分かれる。
 一つは敗戦を奇禍として、アメリカの作法に則って近代国家として出直すことに邁進するグループ。極端になるとアメリカのお先棒を担いでのし上がってしまおうと親米右翼にまで行ってしまう輩も多かった。中には積極的にCIAの協力者もいたと言われている。
 二つ目も、右翼と言えば右翼なのだが、何が何でも気に入らないとばかりの反米右翼でこちらも一定の割合でいた。世に自主独立派という訳で街宣車に乗ることもある。このグループは下手をするとヤバい筋に近づきやすい。
 三つ目は大雑把に左派とくくるのは難しいが、一部言論人に多い反米反日グループ。戦争に対する反省は確かにその通りなのだが、ともすればアジア反日勢力に繋がる傾向がある。
 それらは睨み合いつつ『その看板はもう下ろせない』状態に至って一部職業化して今日に至っている。
 そもそも日本を占領し改革したというアメリカも、緒戦の苛烈さに二度と戦争をさせないという意味で組合結成・農地解放・夫人参政・財閥解体さらに憲法改正をさせたが、戦前日本は三権分立で選挙もやる民主国家ではあったのだ。

 ここで、私なりの結論めいたことを言うのは多少勇気がいる。占領は不愉快ではあったが、多くの日本人の努力で結果としてそう悪くはなかった。戦死者・被害者多くの人々を悼みつつ、無論いまだに憲法問題等を引きずってはいるものの、である。
 占領時GHQの詰問機関の一員として来日し労働基準法の策定に係ったヘレン・ミアーズという女性がいる。この人は日本の研究者で日本史や開戦にいたる満州・朝鮮・中国の国際関係を俯瞰し、開国して欧米の植民地経営(モダニズム)にぶつかった悲劇を証明した。その著書はマッカーサーに邦訳を禁じられた。(『アメリカの鏡・日本』角川ソフィア文庫)
 この人に限らず多くの占領改革者は『理想主義的』で(無論ひどいのも多かっただろうが)未だアメリカ自身が解決できていないことも改革しようと試みた跡が伺える。従って現在日米が抱える諸問題はかえって同時進行的に展開され、時には日本で顕在化した問題がアメリカに飛び火することさえありうるだろう。
 際どい想像だが、仮に戦争を回避したとしても海外領土(北方四島は海外領土としない)、すなわち満州・朝鮮・台湾・南方をコスト的にも文化的にも維持管理できたはずはない。今日のような国境となってことだろう。

 現在世界中が内向きになっている。
 一国単独での安全保障が望めないほど多極化してしまった今、磐石な平和を確保するために、安倍総理はプーチン大統領との関係を保ちつつトランプ次期大統領とも信頼関係を構築して、本年早いうちに三極のキーマンとなるだろう。そのブリッジ役を安倍総理に期待したい。

戦争の終わり方 Ⅱ


 

世界のグチャグチャを考えてみた (今月のテーマ インテリジェンス)

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諜報機関SMC (今月のテーマ インテリジェンス)

2016 DEC 13 23:23:53 pm by 西 牟呂雄

 インテリジェンスを単に情報と訳してはだめだ。これは既に多くの識者が指摘しているので私ごときが今更解説する必要はない。
 優れて秘密戦・政治的プロパガンダになり得るのである。
  そこでこの度、長年隠していた我が戦略の一環の一部を開示することにした。憂国の思い矢も楯もたまらず読者の覚醒を促すためである。
 私の組織したSMC(シークレット・マックス・カンパニー)は、国内・海外問わず各種情報を集めてデータ・ベース化して保管している。それは他の諜報機関と同様だが、我々の真骨頂は後方攪乱なのだ。
 あまり手の内をバラすわけにはいかないが、進んでスパイになるふりをして敵にウソばかり流し続け判断を誤らせるカウンター・インテリジェンスが得意なのだ。
 確かにこのブログも虚飾に満ちているが、プロの仕事はこんなものじゃない。
 
 最近でもアメリカ大統領選挙で、ロシアからクリントン陣営へのサイバー攻撃がなされ、一部メールの内容が暴露されてトランプに有利に働いたことが報告されている。逆に直前までヒラリー有利のウソを垂れ流していたのはSMC北米駐在員を中心にした我々の手の者たちだった。
 同じような動きをしていたロシア系の工作員がいた。彼らと我々の諜報員は秘密ネットワークを創り上げ、具体的には民主党の運動員になりすまし『ヒラリー有利』のニセ情報を垂れ流した。
 ここで強調しておきたいが、我々と手を組んだロシア系機関のネットワークとの間に金銭的なやりとりはない。こちらの虎の子の情報を出し先方もそれに値する機密を知らせて目的が同じだったので協力するに至った。

 我々の編み出した手法の一端を紹介しておく。ネガティヴ・ネガティヴ・キャンペーンというものだ。
 実際の秘密戦において、膠着状態は実は悪いものではない。スポンサーはたまらんだろうが、互いの打つ手が効いているかどうかじっくりと確認できるいい機会なのだ。問題はその状態を耐えられる胆力と兵站が続くかどうかの見極めだ。
 安保関連法案が通るか通らないかの瀬戸際に某保守勢力からの要望で
➀反対陣営に人を送り込み国会前で大騒ぎを繰り返し ➁ネットに大量の書き込みをして、あたかも反対の世論が盛り上がっていると思い込ませ、返って健全な保守層をウンザリさせて野党の支持を下げたのはSMCの仕事だった。

 プロであるSMCはオファー金額によってはある種の工作に携わるが、基本は情報の等価交換である。特にSMCの場合、全員が愛国者の集団であるからむやみやたらと引き受けることはしない。金に転ばない傭兵部隊と言ったところだろうか。
 折角の機会であるので現在の工作を一部明らかにしよう。
 北方領土交渉について、目下のところ2島の引渡だけで後は金をむしり取られるだけ、という強烈なネガティヴ・キャンペーンが張られている。そしてそれに対して『もうそれで充分ではないか』と『以ての外の外交敗北だ』の両論が盛んに飛び交っている。これは実は某筋からの依頼と私の愛国的判断から我々が仕掛けている工作だ、とだけ言っておこう。

 ところで、日頃のつきあいでCIAに代表される同業者との情報の共有は常に危険と大変な苦労をしている。なぜなら機密情報は相互対等の原則なので、こちらの出す情報に比例して先方からも同等の内容を得る事ができる。CIAとMI6の関係を見れば一目瞭然。
 その点、残念ながら我々SMCの情報は甚だ見劣りすると言わざるを得ない。ヒューミントのリクルートについても芳しくない。もっと言えば尾行技術・盗聴技術も心許ないこと夥しい。

 念のためであるが当該ブログを掲載しているソナー・メンバーズ・クラブとここでいうSMC(シークレット・マックス・カンパニー)は何の関係も無く、会員メンバーの誰一人として係っている者はいない。

新春架空座談会 (今月のテーマ インテリジェンス)

大統領がスパイだったら・・(今月のテーマ インテリジェンス)

世界のグチャグチャを考えてみた (今月のテーマ インテリジェンス)


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世界のグチャグチャを考えてみた (今月のテーマ インテリジェンス)

2016 NOV 30 22:22:37 pm by 西 牟呂雄

 支持率4%になった朴大統領の退陣を求め、大群衆がデモをしている。
 妙なことを思いついて恐縮だが、妙に統制が取れ過ぎていないかね。
 野党の指導があるのだろうか、トイレはどうなっているのか、あのプラカードは印刷されているように見えるが誰か金を出して作っているのか、キャンドルは誰が準備してどうやって渡しているのか。真面目な韓国人には申し訳ないが、整然とデモをやり小競り合いも最小限度なのは違和感があるな。
 崔容疑者というのがドイツに逃げ出す時に破棄するようにしたパソコンが、どういう訳か捨てられずに人手に渡ってバレた経緯が活字になっているが、これアヤシイ。
 ついに『任期の短縮も含めて・・・』 そりゃ怪しげな宗教家に国政を相談するのは悪いに決まってる。
 しかし十分に民主化されているのか、あの光景は。これで弾劾がさけられるだろうか。辞任にすんなり至るのか。
 すぐに国会内でドロドロの主導権争いが起きるだろうし、混乱は避けられない。デモだって誰が指導してるのか知らないが、アノ国のことだから死ぬまでやるかな。手続きでいえば国会で弾劾が決議されてもすぐに憲法裁判所が動けるものじゃないし、受理しない可能性もあるらしい。大統領でなくなればいずれにせよ拘束される、あるいは昔であれば暗殺か。
 で、ここでインテリジェンス解説。これを一番喜んでいるのは北。あのデモの指導部にまさか親北勢力の煽動が入ってるんじゃないのか。そしてこういった問題が長期化すればする程、対峙国には有利に働く。その勢力は大統領のレームダック状態を続けさせる。まさかその間隙を縫って砲撃なんか・・・。
 仮に大統領が退陣してもどうせ次の誰かが人気取りで反日をやるんだろうからどうでもいいのだが、防衛問題は違う。韓国保守派は心を引き締めて欲しい。

 官製反日デモが上海の領事館のガラスを投石で割る映像を見た。あれはひどいものでズラリと並んだ武装警官(日本の機動隊。創設に当たって危機管理のエキスパート佐々淳之氏がアドバイスしたことは有名)がただ見守る中、初めはおっかなびっくりだったデモ隊がまず一個石を投げてみた。公安は何もしない、後は一瀉千里だった。
 その頃上海で店をやっていた人と仲良しだったが、上海ではデモの前日に公安から『明日ここを反日のデモ隊が通るから、日本を思わせる看板は引っ込められるなら出さない方がいい』と言われたそうだ。
 最近はその筋からお達しがあったかどうか知らないが反日デモの気配も無くなった。しかし格差拡大とベラボーな人口の流民は不満を高まらせているに違いない。反腐敗運動なんかで収まるはずもない。
 中国にポピュリズムはあるのか、と言えば『大衆迎合』と言うより『扇動』。
 で、ここでインテリジェンス解説。ヤバいのは香港。あの『アンブレラ・レヴォリューション』だってタダで出来たはずがない。今回、反大陸の意志を鮮明にして資格剥奪になった議員二人はその流れを組んでいて、どこかの誰かがそそのかしているとすれば・・。それは大陸内部の反習近平派だろう。
 
 手なずけていたヒラリーが負けてしまって、その中国が一瞬怯んだのが見て取れた。
 トランプは実は戦略家で、ポピュリズムを逆手に取って投票者を気持ち良くさせておいて微妙に舵取りを変える。日本の米軍駐留費用負担などは選挙戦の途中から言わなくなったが、中国に対する関税引き上げは最後まで訴え続けた。
 ご存知の通りクリントン家と中国はズブズブの関係。米中接近は無論日本にとっても気になる所だが、共和党となると話は違ってくる。習近平は慌てた事だろう。
 それが日本にとってどうかはさておき、中国が苦り切っているのを尻目にほくそ笑んでいるのはプーチンである。
 制裁を受けているから中国と蜜月を演出せざるを得ないが、一帯一路でユーラシアの中央をヒタ押しにして来るのが面白いはずが無い。
 で、ここでインテリジェンス解説。そこへ持って来て損得で即座に判断するようなトランプの出現はいいカードになる。早晩制裁は解除されるてプーチンの高笑いが聞こえる。
 もう一つ。ヒラリーが私的アドレスを使って公務の内容をメールしたというが、その内容が韓国とちがって全く出てこない。よっぽどマズい内容なのか。怪しげな宗教家にした相談よりも凄いとはヒョッとして国家機密なのか。

 良く思い返して欲しい。ビジネス・ライクで頭の切れるオバマ大統領と個人的にウマが合った指導者は世界中に一人もいない。EUにもプーチンも安倍総理も習近平もだ。だからメルケルの盗聴までやらかした。
 ナショナリズム・ダークサイド・アンチグローバリズム、こういったものがグチャグチャになってしまった挙句、従来型(と言うよりはポスト冷戦の)体制では統治できない時代に突入したのだろう。
 その結果が英国の離脱でありトランプ大統領の誕生であり、プーチンの強硬姿勢もエルドアン大統領のプッツンも・・・。
 だからと言って多少の軋轢により大国がみな一斉に鎖国なぞできるはずもなく、ましてや領土侵害でもおっ始めて世界大戦という訳にもいくまい。
 振り返ればやり過ぎの感のあったウクライナのNATO入り、ひいてはISの誕生などが歴史の分岐点になって積み重なって来たのだ。それは地球を跨ぐように極東・東アジアにまで影響してしまう。それでなくても隣国同士はギスギスするのが当たり前だ。
 するとトランプ現象は「終わりの始まり」とも考えられる。佐藤優氏の警告する「新帝国の時代」がどのように終息するのか。これをテコに上手く舵取りできないものか。

 イランや北の非核化やIS叩きを切り口に・・・。

 以上は全て僕の思い付きと妄想です。気に留めないでください。

戦争の終わり方

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ロシア東方シフトは本物か

2016 APR 23 0:00:29 am by 西 牟呂雄

 北富士総合大学国際関係研究所特別講義
 
 現在のロシアのスコルコボ科学技術大学(スコルテック)の学長はアメリカ人科学者のエドワード・クロウリー氏だ。スコルテックは2011年にモスクワ郊外にある新しい教育機関であり、MITの教育プログラムを取り入れた大学院大学である。使用言語は英語。
 そのクロウリー学長はロシアの東方シフトに尽力している。
 中国にも足繁く訪問しているが、日本にも数回に渡って訪れ大学と協議した。その目のつけどころが興味深い。主に北海道の大学や東北大学との意見交換をしているのだ。
 ここにロシアの東方シフトの芽が隠されていないだろうか。

 ロシアの東方シフトについては遺憾な事だがクリミア・ウクライナ問題がその動きを加速させた事は否めない。
 日本はG7構成国の立場があるため、まずプーチン大統領が接近したのは中国だった。多くの経済協力プランが調印された。ロシアとしては”孤立していない”ことを演出する必要もあったのであろう。しかし中身はエネルギー関連が中心で、中には既に50年ほど前にも名前が上がっていた鉱山開発なども含まれていた。

 地図を良く見て欲しい。中国は日本海に面してはいない。樺太の近さは言うまでも無く、実効支配されている問題の島は肉眼でよく見える。 
 ロシア語で中国のことを『キタイ』と言うが、契丹からきている。契丹=モンゴル系で、ロシアのスラブ人は潜在的に『キタイ』に対する恐怖感がすりこまれているらしい。アッチラ大王やチンギス・ハーンに散々蹂躙されたせいだという説がある。
 更に国境を挟んでの人口は中国黒龍江省に対して全シベリアで半分、国境あたりは百分の一くらいかと思われる。これに対峙するプレッシャーは相当あるだろう。国境は一応川だが、厳冬期にはガリガリに凍結してしまい往来自在だ。
 前述のクロウリー学長は無論偏ることなく、韓国や台湾の大学との提携も視野に入れている。しかし戦略的に双方のメリットをマックスにするにはやはり日本ではないか。
 先日はチョットしたきっかけでベラルーシ大使館に行った。かつてのソ連の地図に『白ロシア共和国』と表記されていたエリアである。現在もユーラシア関税同盟としてロシアとは密接な関係にある。挨拶代わりに
「日本と最も遠いと思われますが、日本に最も近い外国の一つであるロシアをはさんで隣の隣りの国ですよ。」
とにこやかに言われて成る程と思った。
 現在中国が西方回廊計画を打ち上げるので、ロシアもインフラには力を入れだした。
 これには補助線があって、憂慮すべき事態だが温暖化によって北極海ルートの海路が開拓されてしまうとアジアとヨーロッパの輸送コストが劇的に安くなり、極東エリアを飛び越えてしまいかねないからだ。

 余談であるがベラルーシ大使館は大崎の高級住宅街の民家にある。ドアをノックして気軽に入れる個人邸宅(借り上げか買い上げかは分からないが)で、ロシア関係の重々しい感じとは全く違う。国を挙げてIT産業育成に力を入れており「シリコン・バレーで解決できないことはインドに頼め。インドでも解決できないことはベラルーシに頼め」と言われる程になった(本当かどうか知らないがそう自慢していた)。

 実際にロシアで仕事をする場合、意思決定は日本の方が遅い。
 ロシア企業はオルガリヒが経営する巨大コングロマリットは別としても、ソ連崩壊後にスピン・アウト或いは起業した連中は強烈にトップ・ダウンで物事を決めてしまう。従って事業については短期的に成果を挙げたがる傾向がある。償却による拡大再生産といった絵より、キャッシュフローのみを追いたがる。要するに日本型の経営計画を知らない、と言ったほうが実態に近いだろう。
 更に国際情勢の目まぐるしい変化、主に中東をめぐってのプーチン大統領の立ち位置の変化がロシアとの共同プロジェクトを遅らせてもいる。安部ープーチン会談に期待したいところだ。筆者のインテリジェンスにはプーチン大統領は一時冷めていた領土問題解決への意欲が復活し、日本訪問を望んでいると伝わっている。
 更に、上記スコルテックを運営するスコルコボ財団はウラジオストック沖のルースキー島に連絡事務所を開設する。ルースキー島は2012年にAPECの首脳会議が行われたところで、その設備に極東連邦大学が誘致された。
 筆者の長年の構想である『環日本海経済圏』のロシア側の中心地である。これに呼応して新潟空路、秋田・境港航路を充実させると東方の地方活性にも有効だ。

 難しい所だが、日ロ関係は双方に強い政治家がいて暫く権力基盤が継続する時でないと進展しないだろう。
 ゴルバチョフは来日し当時の海部総理と会談した際資料を一瞥し『ここに書いてあることは全て知っている事だ。付け加える事はないか。』と凄んで海部総理の外交力を見極めたとされる。
 エリツィンー橋本の時はいいところまで行っていたにも拘らず、共に国内の政権維持が不安定かつ健康問題もあって日の目を見なかった。
 してみると安部ープーチン体制が維持できそうな現在はタイミングとして最良の時期ではないか。
 来るべき会談においてロシア東方シフトへの協力姿勢を鮮明にし、領土問題解決・平和条約締結の弾みをつけて欲しい。
 ロシア外務大臣ラブロフ氏の「プーチン大統領と森元総理大臣が2001年にイルクーツクで会談した際に、四島の帰属を含むすべての問題について対話を続けることで合意した。ロシアは、これを拒否するわけではない」という発言は重要なシグナルを発したものと思われる。

 安部総理の来月の訪ロも決まったようだ。

日露ビジネス・ダイアローグより  

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現代ロシア社会 前編

現代ロシア社会 後編

現代ロシア社会 後編

2015 NOV 10 1:01:48 am by 西 牟呂雄

現代ロシア社会

レジメ6ページから

・大陸国家であるロシアが国境を接しているのは16カ国+1地域(東トルキスタン)。軍事都市でもあったカリーニングラードはバルト3国の一番西側リトアニアの南、ポーランドの北にある飛び地。当然国境問題を多く抱えている。
・しかし極東・北方4島在住者は別として内陸部の対日感情は驚くほど良い。日本との領土問題の経緯などを知る人は皆無に近い。
・アニメが多く放送されていて、セリフは全て吹き替えだが主題歌はそのまま流れるので簡単な単語(カワイイとかドラエモン)を知っている若いロシア人は多い。日本語の教育環境はそれほど整っていないにもかかわらず。
・2008年に中国とのウスリー川の中州を面積等分方式で国境画定し、2010年にはノルウェーとの大陸棚の国境を同じく等分方式で解決している。北方領土についてもプーチン大統領が「ヒキワケ」を口にしたことから俄に面積等分方式が現実味を帯びた。しかし、択捉・国後両島にはロシア極東軍の軍事施設が建設されており、この扱いは譲らないと思われる。

ロシアの言い分とは何か
・ゴルバチョフ時代とは重い軍事費の負担に耐え切れず『帝国』を放棄せざるを得ない苦汁の選択の連続だった。当時は共産党一党独裁であったのでその勢力は強く、一方台頭する民族主義にも悩まされた。当時はサッチャー英首相・レーガン米大統領と役者が揃っており、ゴルバチョフはそれらに対してそれなりに対応したことで国際的には評価が高かった。
 若い人は知らないだろうが東西に分裂していたドイツが統一することにGoサインを出したのも彼である。筆者はこの時にNATOとの住み分けを決めた秘密条約が在ったのではないかと見立てている。
 ところが一連の改革に反発した守旧派によるクーデターに遭いクリミアの別荘に軟禁されてしまう。
・この時この守旧派に対抗したのが選挙によってロシア(あくまでソ連の構成国としてのロシア)大統領となって復活していたエリツィンである。戦車の上に乗って拳を振り上げる映像が有名だが、実態は軍の大半と治安機関が支持しなかったのでクーデターは潰れる。そしてソヴィエト連邦も崩壊することになった。
 そのままロシア初代大統領となったエリツィンは、市場主義経済導入を急激に勧めたが結果は無残なものだった。前年比2510%ものハイパーインフレとなりGDPは前年比マイナス14.5%。そして国営資産の不透明なブン取り合いが起こり1998年にロシアそのものがデフォルトする。この時期国民は大変な困窮生活を強いられた。
 個人的には日本の橋本総理とはウマが合ったようで、領土問題もそれなりに進展するかと思われたがエリツィンの力が落ちていく過程でオジャンに。
・翌1999年の12月31日というドン詰まりにテレビで辞任演説をし、後継者を首相だったプーチンに指名。プーチンは選挙の洗礼を受けず大統領になった。それ以来憲法の定める3期連続に当たるの2008~2012を除いた期間ずっと最高権力者であり続けている。前記のインフレから石油製品の根下がりで当初は大変な苦労をした。現在も尚、経済的に厳しい状況であるのは報道にあるとおり。
 「灰色の枢機卿」「ツァーリ」「ラス・プーチン」等と呼ばれ、チェチェン対応・テロ対応(或いは敵対するジャーナリストの相次ぐ不振死、ロンドンでのポロニュウム暗殺もある)で見せた強い大統領のイメージ通り「栄光のロシア」の復活を望んでいる。
 それが露骨に出たのがクリミア併合・ウクライナ東部侵攻である。ウクイナは歴代大統領の腐敗が酷く(あの美人過ぎる大統領も含め)大国にもかかわらず難治の国だった。プーチンも天然ガスの供給ストップ等の強権をしばしば発動したが、反ロシアのキエフの革命騒ぎによりEUにより近づきそうな動きになってついに切れた。
 ロシアとしては、NATO勢力がロシアと国境を接する事は耐え難い。筆者の見立ての”NATOとロシアは国境を接しない”といった密約をEUが破ったと感じたのではないか。
 無論力による国境の変更など現代において許される事ではなく、国際的な制裁を受けてしかるべきである。
 一方のキエフの革命政権側も、現ポロシェンコ大統領は選挙の洗礼を受けた正当性はあるが、暴動の主体となった武装勢力にはあまりスジのよろしからぬ一団もいた。西ウクライナは東部三州とは多少宗教の違いもあり、実は先の大戦の時点で枢軸国に協力者もいた地域で反ロシア気質が濃厚にある。最初の発砲はこの一団と言われている。
 但し、東部側も義勇兵の体裁を取っているものの実態はロシア軍であり、ブークによるマレーシア機の撃墜の疑い等、多くの問題を抱えている。

大国の目指すもの
・国家というものは重くのしかかってくるイメージで捉えられがちであるが、統制力を失った途端にそれに代わって出て来るのは制御し難い暴力的陣取り合戦になる。歴史的にも末期清国から中華民国、アフガニスタン、ISの跋扈するシリア・イラクを見れば明らかである。或いは分断された国家を見てもよい。評価は別にして、我が国の戦国時代もそうだった。
 広大な領土を維持する、しかも経済や議会機能が安定しないロシアで、プーチンが強権的になるのはある意味当然なのだ。

 しかしながら国家の無限の領土拡張など有り得ない。筆者は大国たる矜持は域内防衛と安定と考えている。
 その文脈で考えればウクライナ問題の落としどころは自ずと見えて来るはずだ。既に血は流されている。
(注 本稿執筆時点でロシア航空機の事故が起こり、プーチン大統領のシリア政策は対ISを軸に大きく変わりそうなことを記しておく)
 IS対策が試金石となるだろう。即ち対テロ、あるいは国境を越えたバンデミック等にどう対応していくか。
 
・大国同士の全面戦争などは地球規模ではありえない。しかし中東情勢や勃興する民族主義を見れば当面地上戦が無くなることも在り得ない。しかるに大国レヴェルが調停に当たることになるのだが、そういった場合万が一の偶発が起こり得る。その際どうやって寸止めにできるか、いくつものシナリオを準備しておくべきと考える。
 これは目下の南シナ海で米中が対峙していること、そして自衛隊がレーダー照射を中国軍から受けた現実を踏まえ重要な点である。
・そして利害が一致しないとしても、なるべく直接ぶつからないように糊代・遊びの部分を構築する。例えばTPP等は経済的枠組みではあるが雛形としては将来的に進化する可能性はある。実際戦乱に明け暮れたヨーロッパの中での戦争はEUがある現時点では考えられない(ドイツの一人勝ちではあるが)。ロシアCISにもユーラシア関税同盟が一部には動き出している。

 そして最後に、ロシアを題材に色々と材料を提供したが、学生諸君には『それではこの国と付き合うのに日本としてはどうあるべきか』を自分の頭で考えて頂きたい。一国平和主義などは既に成り立たなくなっているのだから。

 北富士総合大学において
 尚、数字を提示した表・グラフについては量が膨大なため割愛した。

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現代ロシア社会 前編


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ロシア東方シフトは本物か

現代ロシア社会 前編

2015 NOV 7 0:00:40 am by 西 牟呂雄

 筆者の関係している北富士総合大学国際問題研究所では、国・地域の社会分析からインテリジェンスまで様々なことを研究している。
 そのフィールドワークの対象の一つがロシアである。目下のところクリミア編入、ウクライナの戦闘、北方領土強行訪問、シリア反体制派への空爆 と国際的に眉をひそめさせる振る舞いが散見される。
 一方では資源開発を念頭に、プーチン大統領は極東を重視する姿勢をしばしば強調する。
 又、個人的には安部総理と極めてケミストリー(肌合い)が合っており、首脳会談は常に良い関係を確認している。この点は何故か森元総理の存在が利いているようで、個人同士ではG7のどこよりも良好に見える。筆者も多くのロシア人の友人がいるが、話が長くなりがちなことと頑固なところはあるが気のいい朴訥な人ばかりだ。
 但し、国家レヴェルの意思というのは『いい奴』の集合体と言う訳にはいかない。
 ところで領土問題についての筆者の立ち位置としては、まず2島返還してもらい後に国境確定と平和条約を結ぶというスタンスであるが、プーチン大統領の在任中に安部総理と是非まとめてもらいたい。

 それにしても、相手の考えている事が読めなければ交渉もしようがない。ロシア人は何を考えているのか、どうしたいのか。以下のレジメは北富士総合大学において筆者が秋季特別講義として大学院生を相手に執り行った講義の内容である。政治的な先入観を極力避け、日本からの目線に偏らないように分かりやすく学生に説明したが、レヴェルを落としたつもりはない。講義の後半は討論を企画したが学生の意見が洗脳されているのかと思うほど画一的で、結果として筆者=ロシア・学生=日本の構図での議論となった。単なる理屈の言い合いでは学生に押されるはずもないが、中には刺激になる場面もあったので多少の訂正を含めて記録したい衝動にかられた。以下レジメをクリックしながらなぞって頂きたい。

現代ロシア社会

レジメ5ページまで

グローバル時代とは何か
・ソ連という社会主義国が崩壊した理由はいくつもあげられるが、経済的な比較劣位にありながら広大な国家を維持することが不可能になり統制ができなくなった事が大きい。直前のチェルノブイリ原発事故・アフガニスタン侵攻の失敗・東欧民主化の流れが引き金となった。
・その後大混乱に陥って各種紛争・国有資産のブン取り合い等を経て、大統領制のロシアとなった。
・目下の足元はクリミア・ウクライナ問題と石油価格の急落で一気に減速した。
ウクライナがNATO入りするとロシアと国境を接するという非常事態が猛烈に危機感を煽った。キエフにおける革命騒ぎは治安の問題として見ても放置できるレヴェルにない。

現状モデル
・エネルギー大国・資源大国であり、特に天然ガスはパイプラインを通じてヨーロッパに供給する。このパイプがウクライナを通っているので、ドイツも穏やかではない。
・しかも輸出関税はロシアの税収の20%を占める財源となっている。
・現在の若い企業家達はソ連時代を経験していない。しかしながらオルガリヒのように巨大になると行動様式は旧態然としてはいる。
・旧ソ連の国々でもベラルーシ・カザフスタン等は親ロシア色が強い。クリミアは元々親ロシア。
・バルト三国は反ロシア。ウクライナは西と東では宗教も少し違う。
・日本からはヨーロッパエリアに自動車が進出。極東はプーチン大統領が力を入れるものの資源開発は進まず。日本の進出を喉から手が出るほど欲しがっている。
・経済制裁は金融・石油掘削の最先端技術がボディ・ブロゥになっているものの、ロシアはしぶとい。まだインフレ傾向は小さい。
・北方領土はプーチン大統領以外に解決できる人間はいない。側近が何を言っても関係ない。
・NATOとは軍事同盟であり、ロシアとの間には絶対に緩衝地帯が必要。それでなくてもロシアはテロの対象になりうる。中東が不安定な今は尚更そうで、シリアでのロシア軍の空爆はその文脈でみるべきである。

一般のロシア人の考え
・契約までは散々ゴネるがサインまでこぎつけると約束は守る。時には身を切ってやることもあり、狡猾さは感じられない。国家レヴェルはいざ知らず、個人的には義理人情を大事にするところがある。
・個人レヴェルの政治感覚は長いものには巻かれろ的。政治家というのは税金を取る悪い奴だと思っている。良く言われるロシアン・ジョークで、投票行動は 悪い奴<もっと悪い奴<物凄く悪い奴 を排除するための行為だ、等と。
・100km200kmの距離は「隣の町」といった感覚で、到底日本人の感覚の及ぶところではない。人なんか住んでいない所の道路は直線。
・アメリカは「何にでも首を突っ込んでくるでしゃばりな国」。ヨーロッパは「仲間ではある」がドイツに関しては複雑な感情、ハッキリ言って好きじゃない。中国は潜在的な脅威と感じているが、話しているとモンゴル人と区別がついていないようだ。ロシア語で中国人のことをキタイスキーと呼ぶが、フン族・モンゴル族・ジョルシン族(満州族)・漢族全部を指す場合が多い。極東の人口圧力は肌で感じている。
 蛇足ながらウェストファリア条約以後、単独で一方的に国家間の条約を破棄した件数はダントツでドイツ(但し当時は300もの各地方の領邦国家だったので件数が多いこともある)次いでロシアである。

つづく

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現代ロシア社会 後編


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ロシア東方シフトは本物か

国境を考える Ⅶ 

2015 APR 22 19:19:20 pm by 西 牟呂雄

 今日ではあまり声高に十字軍とは言いづらい。キリスト教VSイスラム教の構図があまりにも頂けないからだ。その十字軍時代にルーツを持つ聖ヨハネ騎士団がある。塩野七生氏がローマ物でも取り上げたマルタ騎士団のことである。

マルタ騎士団の国旗

 パレスチナからスタートしてロードス島を領有。オスマン帝国にそこを追い出されるとマルタ島に移る。どうやらここで普段はイスラム船に対する海賊行為をしていたようだ。
 僕は一度マルタ島を訪ねているが、バレッタの町はいかにも要塞風だった。
 そしてナポレオンによってマルタも失うが、驚いたことに今日でも存続しているのだ。ローマに事務所を持っており、そこは大使館扱いの治外法権(イタリア等カトリック国は国家として承認)であるとか。国連にもオブザーバー加盟済み。現在約一万人の国民がいて、コインも切手も発行している。
 尚、実体は国旗のデザインの赤字に白十字といった逆バージョンの救急車を走らせるNGOの医療法人らしい。なんだか公開の秘密結社というか、陰謀のないフリーメイソンというか。いっそマルタ騎士団の国籍でも取って見ようか。

Domaro_en_McLeod_Ganj[1]

 ダライ・ラマ率いるチベット亡命政府も領土が無いと言えばそういうことになる。左の写真はダラムサラの光景で、ちゃんと行政機関も立ち並んでいる。憲法草案も持っている。
この地域はインド共和国より『与えられた』ことになっているが、厳密に言えばインドの治安機関によって守られているのか。
 インドといえば、財閥で有名なタタはパールシー族すなわちペルシャ系の民族で、混乱を逃れて遠くインドの東側までやってきた。従って地元のヒンドゥ・ドラビダ系の(100種類以上あるとされる)言葉は使わず、結果として固有のマザー・タングを失い完全な英語部族となる。インド経済を支えているが、その宗教はゾロアスター教で、男系にしか伝わらない。皇族みたいなもんで、一向に人口が増えないのだそうだ。一説にはやって来た際に部族の増加を気にした当時のマハラジャに、そうすることによって人口を増やさない、と約束したからと言われている。日経の私の履歴書を書いたラタン・タタ氏もタタ姓を名乗る最期の一人だ。
 こういうのは税金は払うものの、国境なき民族とでもいうのか。在外のユダヤ・チャイニーズ・ロマ・クルドといった連中も皆そうか。

 そう言えば昔『五族協和 王道楽土』なんていうのもあった。この五族とは日・満・蒙・鮮・漢だった。

 国境なき国家。それにしてもⅠSには困る。

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国境を考える Ⅵ

2015 APR 11 4:04:32 am by 西 牟呂雄

 飛び地で調べていたら、カリーニングラードやジブラルタルだけじゃなく世界中に奇怪な飛び地があることが分かった。

この入り組み方

 びっくりしたのはこのバールレ・ナッサウというオランダの街だ。隣りのベルギーから5km程国境を越えた所にある。黄色い部分がベルギーの飛び地だが、モザイクのようにギザギザ。家や店の中にも国境線があって、玄関が面している方の国籍なのだ。更に良く見るとそのベルギー領の中にまたオランダがある複雑な状態である。ベルギー領はバールレ・ヘルトフという地名になる。どうやら公爵領を残したままオランダ国になり、その後ベルギーが独立したのでこのような国境まみれになったらしい。

カフェにも国境線

 他人事ながら、税金や就学・就職などで困ることはないのだろうか。何よりも万が一戦争にでもなったらどうする。まぁ言葉は同じフラマン語で、何代も住んでそれなりに暮らしているうちに奇跡のように融合してしまったのだろう。近所同士で結婚したら国際結婚になるのか。

 択捉島に国境線が引かれる『夢』を見たことはこの国境シリーズで書いたが、無粋な線も引かずにグチャグチャ溶け合ってしまうようなことは出来ないものか。そのうちエトロフ語ができたりして。
『すっぱしね』・・ありがとう (ロシア語スパスィーヴァから)
『だすびっちゃ』・さようなら (ロシア語ダスビダーニャから)
『はらしい』・・・すばらしい (ロシア語ハラショーから)
『オモーテヌシ』・面倒見る  (日本語オモテナシから)
『アズマーシ』・・質素な   (北海道弁のアズマシイから)
なんてね。

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国境を考える Ⅴ

2015 APR 2 0:00:59 am by 西 牟呂雄

 映画『大脱走』のクライマックスでスティーヴ・マックイーンがかっぱらったバイクで逃げるシーン。追い詰められて鉄条網を飛び越えるものの、結局引っかかって傷だらけになりながら手を挙げる。これを初めて見たのは小学生だったが『国境を越えるのは難しい上に迫力があるな。』と刷り込まれた。
 もう一つ。名作サウンド・オブ・ミュージックのフィナーレで、ナチから逃れる為にトラップ大佐一家がスイスに亡命するためにアルプスを登っていくシーン。
 これ等は70年前の話で、ヨーロッパというのは長年領土の取り合いをしているから国境というとピンと来るものと思われる。
 しかしあんな鉄条網で区切られたら、野生の鹿といった大型動物はさぞ迷惑だったことだろう。いつもの縄張りに水でも飲もうと進んだら突如触れると痛いロープの壁ができてしまった。国境を認識するのは人間しかいないのだから。
 そういう意味では無くなったベルリンの壁とか38度線は(他にもあるが)いかにも人間的ではある、いや政治的か。ハードな感じ。
250px-Border_Security_of_the_50th_parallel_of_north[1]
 右の写真を見てどこだか分かる方はいるだろうか。
 実は南樺太が日本だった頃の国境警察隊員(帝国陸軍ではない)の雄姿である。
 話が満州国だの半島に飛ぶとややこしくなるのでここではちょっと外して考えると、当時の日本最北端の国境だ。樺太のことは語る人も少ないが大横綱の大鵬が生まれたところ、他にボクシングの輪島功一や作家の綱淵謙錠等、一時は40万人の日本人(アイヌ系ロシア系含む)がいた。樺太庁が廃止された後は大日本帝国の内地が接していた唯一の陸上の国境だった。現在日経の『私の履歴書』執筆中のニトリホールディング会長も樺太生まれだそうである。そして団塊の世代であるタレントの〝せんだみつお″も出生地はサハリンとなっている。
 しかしこの国境警察もチョロいと言えばチョロくて、女優の岡田嘉子が演出家杉本良吉とソ連に亡命する時には簡単に越境されている。逃避行そのものは吹雪の中大変だったろうが易々と越えられるのもどうかと思う。戦争がなければ平和共存していたのじゃなかろうか。

 グリーンランドとカナダの国境係争問題で知られるハンス島は1.3平方キロの小さな島だ。もう何年も領有権を争っているが、無人島でもあるため殺気だったことにはならないそうだ。カナダ・デンマーク両国が代わるがわる陸上部隊を上陸させている。真偽の程はわからないが、誠に平和なことに撤退する際は自国産のビールをたんまり残しておく慣わしで、互いに『我が領土にようこそ。留守の間の警備をよろしく。』と書き置くとか。
 これ中々粋なものだと思いませんか。しかしもし日本が〇島でそうしよう、と提案したらアノ国の大統領と国民は激高するだろうな。

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