Sonar Members Club No.36

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残暑に背を向けて

2018 AUG 19 15:15:31 pm by 西室 建

 喜寿庵の夏は八月になると夕方にはカナカナ蝉が鳴く。暑いことは暑くても赤トンボまで飛ぶ。
 お盆を過ぎても今年の異常な暑さはひどい、日中に蚊が飛んでいない(日陰では刺された)。だが秋の気配はわかる。日の出、日の入りは変わった。
 夜半に、ビール片手に庭に出て星空を見ている。無論スプレー&蚊取り線香で完全武装。

花火 ポツン

 川の流れが聞こえているが、人工の音ではないのでうるさくはない。たまに遠くに車の走る騒音、踏切の音。
 何の気なしにコンビニで売っていた花火セットを買ったことを思い出してガサガサと持ってきた。

漆黒の 闇に 華やぐ 色添えて
     一人灯した 花火はさびし

 手慰み、と言った感じでいくつか火を点けてみた。
 だが、見ているのが自分だけということは、恐ろしく孤独な寂寥感が沸きたって全然面白くない。特に線香花火はいけない。
 こういうのはせめて三人以上でないと楽しくも美しくもないらしい。両手に持ってやってみたがダメだった。
 芝生にゴザをしいて寝転がると(直に寝ると夜露で濡れる)Tシャツだけでは寒い。
 何とも無駄なような気がしてもう母屋に入ろうとしたら、カサッと音がする。いささかドキッとして暗がりに見入ると白い生き物、猫ではないか。
 以前時々姿を見せた黒ブチがいて、勝手に「シナシナ」と呼んでいたのが姿が見えなくなった。こいつはその縄張りを継承したのだろうか。
 シナシナがいなくなった後も複数のノラが夜に目撃されたがそいつ等とも違う。しかもまだ子供のようだ。どうやら警戒心もまだ発達していないようで、遠巻きに寄って来た。

こわい

 これは写メでも撮ろうか、エサでもやろうか。スルメを取ってきたら置いてあった缶ビールに見入っている。そーっと寄って行って「ほら」と投げてやると食べた。ところが以前の「シナシナ」は芝生の上に時々糞をしていき、その跡が円形脱毛症のように痛んでしまって苦労したからあんまりなつかれても困るのでほどほどに。あっ、もういなくなってしまった・・・。何か街灯も不気味に。 

 熱い日差しで目が覚めると顔も洗う前に庭に出る。モグラは芝生を掘り起こしてないな。
 先日やけに家屋に近い藤棚にヤマバトが留まっていていて、しきりに小枝を咥えている。近寄ってもなかなか飛び立たないので二階から覗く。なんとつがいがセッセと巣を作ろうとしていた。力を合わせてやっているのは微笑ましい。
 一般的には家の近くの営巣は「トリイレル」と言って縁起がいいとされるが、フンと羽で掃除が大変になってしまう。『おーい、そこは困るよ』などと声を掛けても全然動じない。よほど真剣なのだろうか。こっちもだんだん『シッ』とか『コラ』とか大声になるんだが無視された。しょうがないから竹竿で威嚇するとやっと飛んでいく。一生懸命作りかけていた巣を払うと、まだ大したものではない。どこかもっと家から遠い木の上の方が居心地がいいよ。そこでたくさん雛を育てなさい。それにしてもカワイかった。

ファームが草原に・・

 夏野菜はもうシーズン・オフといったところか、茄子も胡瓜ももう成らない。収穫は例年に比べると伐採して日当たりが良くなった割には低調の大赤字だった。
 そしてその日当たりのせいかもしれないが、いくら草取りをサボッたとしてもこれはないだろう。離れて見るとネイチャー・ファームが埋没してしまった。去年まではこんなにならなかったぞ。おまけに耕運機が故障して周りの土を掘り返すこともできゃしない。

 草繁り 我が営みの 細ければ
    ただ幾一筋の  汗したたるや

 これは最近知ったのだが「八月十五日」さんという名字の人がいるそうだ。読めますか。「なかあき」さん、もしくは「あきなか」さんと読むらしい。
 旧暦で言えばもう太陽暦で言う秋分の日に近いから「あきなか」のじっかんがあり、風流な名前だがお目にかかったことは無い。

 季節が変わってしまう。一人でいると、この残暑に背を向けて走り去って行きたい衝動に駆られるが、行く当ては無いのだ。
 

鮮烈 馬庭念流 Ⅲ

2018 AUG 14 20:20:15 pm by 西室 建

 Y県のY湖畔の合宿所にやってきた。年度が変わっていないので先輩はいないし新入生はまだだから新三年生と新二年生だけの春合宿である。
 新主将のクロカワは最初から殺気立っていた。バラベに負けたんだから無理も無いが、朝練のランニングや素振りからして常軌を逸したノルマを言い出して師範に止められた。
 そして掛り稽古ではクロカワとシバタとタカヤマが3人がかりでバラベに襲い掛かった。ところが例の田吾作スタイルのバラベは打ち込みを受けまくり全てしのいだ。そしてたまに打ち返すのは首筋とか内股といったあたり、そして鍔迫り合いに執着する。通常の剣道の試合では反則になりかねない悪い太刀筋なのは相変わらずだ。
 僕も近くでやっていたからズッと見た訳ではないが、稽古が終わって面を外した時はむしろクロカワ達の方が息が上がっている。
 練習が終わって飯を食べたりする時や自由時間になると、クロカワ達は固まっていて僕はなぜか全く空気を読めないバラベと一緒にいることになってしまう。すっかり反主流派扱いされて実に居心地がよろしくない。
 ところが翌日になるとこの前の決闘でバラベにコテンパンにやられたレギュラーのイシイとノムラがこちらの方に加わってきた。新二年生の中にもこちらの陣営にスリ寄ってくる者が出てきてなんだか部が真っ二つに割れたようになってしまった。主将クロカワは表情が強張ってきて、ますます(特に)僕に対して刺々しくなってくる。
 三日目になると体力をすり減らして腕も足も感覚が鈍ってきて全員ヨロヨロ状態、食欲も落ちて皆の機嫌は悪~くなっていった。そして・・・・。
 四日目の晩の自由時間にクロカワがバラベと僕を呼び出した。師範の個室に来い、と申し入れてきたのだ。一体何が起こるのか、僕達の陣営は後からゾロゾロとついてくると、主流派の方も固まってやってきて師範の部屋の前で鉢合わせした。
『よし、行こう』
 とクロカワが促すので三人で中に入った。中にはハナフサ師範(大学法学部教授)がいた。
『オッ、来たな。まあ座れ』
 僕たちは神妙に正座した。
『クロカワ。部内の雰囲気はよくないな』
『ザスッ。バラベの反則まがいの太刀筋が問題になって部が割れています』
『エッ、反則なの。どこが』
『フム。バラベ、君は確かフランスでお父さんと型の稽古ばかりしていたそうだな』
『ザスッ』
『実戦剣術の馬庭念流だ。君が首筋を撃ったり内股を祓うのは動脈を狙っていることになる。真剣だったら出血多量で即死するわけだ』
 当のバラベも含めて一同ギョッとした。
『バラベ。気づかずに流派を継承しているのはしょうがないとして、馬庭念流正統は他流試合は厳禁しているのを知らないだろう』
『ザスッ知りませんでした』
『君は確かに強い。だが他の部員が見たことも無い型に驚いていることもある。そしてここはE高校剣道部で馬庭念流の道場じゃない。バラベは型を直すところから始めなければここにはいられないよ』
『・・・・ザ・・ス』
 合宿残りの二日間、師範はバラベに付きっ切りの別メニューで足捌きから教え直した。なぜかバラベは嬉々として稽古に励んでいて、チョット前の高校部活動としてはどうかと思われる派閥対立のようなものはなくなった。まるで漫画のような終わりかたで合宿は平和に打ち上げられたのだった。

 異変は新学期初日に発覚した。三年進級時のクラス替えでわかったのだがバラベは落ちていて再度二年生をやることになっているではないか。
 クロカワが僕のところに来た。
『オイ、バラベは落ちたらしいな』
『うん。ま~オレの見る限り相当な数の赤点みたいだったけどまさか落ちるとは思わなかった』
『それがさ、こんなもの持ってきたんだ。直接会えなかったけど机の上に置いてあった』
 見れば退部届ではないか。
『何だよこれ。せっかく型も直されて部の方もいい雰囲気になりかけたところなのに』
『オレもそう思ってた矢先だ。びっくりしたよ』
『とにかく会いに行こうぜ』
『うん。落ちると元のクラスだからな』
 この前までいたクラスに行くとちょうど奴が教室を出るところで鉢合わせたがアッと同時に声を上げた。奴はフェンシングの面を持って歩いていた。
『おい、どうしたんだ』
 奴はやや恥ずかしそうに言った。
『いや面目ない。リドブル・・・って落ちちゃった。試験の問題だって半分はわかんないからね』
『それは、まぁ、がんばれよ、って退部するのか』
『だって下級生だったのと一緒にされるのやだもん』
『もったいないだろう。合宿がんばったじゃないか。それでその面は何のまねだ』
『あっこれ。フェンシングのマスクだよ』
『そんなもん持ってまさかフェンシングをやるのか』
『うん。隣の席のイシカワ君に誘われてさ。フェンシング部は今四人しかいなくて二年生はイシカワ君だけなんだって』
『だってお前フランスにいたときもブシドゥしかやってないだろ。できんのかよ』
『それがイシカワ君は僕たちの決闘を見てたらしいよ。それでね、僕の足の捌きと後ろへの跳び方がフェンシングに向いてるそうだよ。掛け声もルールもフランス語なんだよ』
『あのガニ股の構えがか』
『だけどあんなにやりたがってた「みんなでブシドゥ」はどうなったんだ』
『それが「フェンシングにもキシドウがある」って言うんだよ。似たようなもんなんだって。でも「キシドウ」ってどう書くのか知ってる?』
『・・・・』
『・・・・まっがんばれよ。それより少し漢字勉強しろ。また落ちたら退学になるぞ』

 クロカワはあんなに嫌っていたのにやけに寂しそうだった。
 だが学年も部活も違ってしまってすっかりバラベとも話さなくなった。しかし風の便りに、秋のインターハイの県大会で決勝まで行ったらしい。やはり奴はその手の達人だったのだろうか。
 そして僕たちはそのままE学園の大学に進学するのだが、どうやら奴はまた落第して姿を消してしまい音信も途絶えてしまった。日本にはいないかもしれない。
 僕とクロカワは大学部でも体育会剣道部に入り、道場ではこっそりと時々あの変な構えで『イ~~~ヤ~~~!』とやっている。そしてクロカワはいつも懐かしそうに言うのだ。
『風みたいな奴だったな』

鮮烈 馬庭念流 Ⅰ

鮮烈 馬庭念流 Ⅰ

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鮮烈 馬庭念流 Ⅱ

2018 AUG 12 16:16:05 pm by 西室 建

「ついにサンクになったよ!」
 年が明けてすぐだ。昼休みに食堂でうどんを食べていたところにバラベがやってきて突然言った。3人の同じクラスの仲間を連れていた。 
「何の話だ。サンク?」 
「フランス語の五だよ。ブシドゥドウコウカイに入ってくれるメンバーが集った」
「ナニッ、マジか」
 一緒にいるのは何でそんな話に乗って来るのかと疑わしいのばかりだ。抜群の秀才だが偏屈で有名なミギタ、オタクで運動神経ゼロのヤマダ、不良というか落ちこぼれというかケンカばかりしているという噂のシマダ。何だってこんなややこしい奴らを・・・、それに4人じゃないか。
「教務課にドウコウカイの申請ももうしてきた。防具は授業で使うやつを使用する許可もくれた」
「待てよ、一人足りないだろう」
「お前を入れて5人いるじゃないか」
「バカ、オレは剣道部の現役だぞ」
「おいイデイ、幸い剣道場が使用できるのが月に一度、第三週の土曜の5時からだけらしいんだぜ。ヒマだろ」
 シマダがニヤニヤしながら言い放つ。こんな不良チンピラがどうした心境の変化だ。なんだかんだいって練習に付き合わされることになった。

 そして一回目の練習日なるものが来てしまった。土曜だから午前中で授業が終わる。ミギタは図書室で勉強しヤマダとシマダはお茶を飲みに校外に出て僕はスマホで時間を潰して、剣道場で先に着替えた。するとそこにラグビーのヘッドギアのようなものを幾つも抱えたバラベとオッサンがやって来た。奴は体操着でオッサンはゴルフ・ウェアのようなカジュアルでやけに目付きが鋭い。同時に他の三人も体操着で現れた。
「やあ。これ僕のパパ」
「ボンジュール。皆さんようこそ。ブシドゥをやりたいと息子から聞いたんで初めの型だけは教えに来たよ」
 それからバラベ親子が向き合う様に残りの僕達も向き合って型の稽古が始まった。使うのはなんと木刀だ。例によって剣道とは程遠いヘッピリ腰ガニ股の田吾作スタイルで剣先を右側に。ところがそこからオッサンの方が歌舞伎の発声のような甲高い『イ~ヤァ~(だんだん上がる)』という気合で振り下ろす。えらくゆっくりだが、それをバラベがガッと受け止めて『イイイイイイェェェェイッ』と押し返してもみ合い、離れる。これだけ。仕方なく僕たちもやったところ、驚いた。結構疲れる。

イ~ヤ~!

 2回目の稽古にはバラベの奴はすっかり師範気取りになってハリキった。『もっと強くなる為』と称して受けをやる方におぶさってギシギシ言うほど体重を預けてくる。こいつはキツかった。不思議な事に他の奴等も余程ヒマなのか休まずに来ていた。しかしこのラグビーのヘッドギアのような面は確かに視界が開けて使い勝手がいいし、竹刀剣道のように打ち合いでなく木刀での型稽古だから、間違って当たったとしても怪我にならないように工夫されている。
 と、そこに何故か剣道部の僕の同期が二人ドタドタと入ってきた。何事だ。クロカワとシバタだが、何だか殺気立ってるが。すると来年は主将と言われている二年最強のクロカワがいきなり怒鳴り出した。
「イデイ!お前何やってんだ」
「武士道同好会に付き合ってんだが」
「冗談じゃないぞ。お前だって来年はレギュラーかもしれないのにそんな遊びに付き合ってる場合か」
「練習休んでないからいいだろ、別に」
「こいつだな。お前のクラスのフランス帰りは」
「はい。バラベですが」
「イデイ。こいつがやってるのが何だか分かってんのか。高崎で昔流行った馬庭念流(まにわねんりゅう)とかいう百姓剣法だって師範が言ってたぞ。裏切るつもりか」
「ちょっと待て。裏切るってオレが嘘でもついたのか」
「E高剣道部の伝統と誇りをどこに捨てて来た」
「別に捨てちゃいねえ。そっちこそいきなり何だ」
 僕がムッとして啖呵を切ると、ここでケンカ屋のシマダが身を乗り出して来た。
「それでどう落とし前を付けろってんだ。ん?」
 しまった。取り返しがつかなくなるぞ。クロカワは剣道も強いが気も強い。
「落とし前?ここは剣道部が仕切ってんだ。そっちでなんとかしろ」
「じゃあブシドゥらしく決闘しようよ」
 バッバラベ!ばか!なにをトンチンカンなことを。
「けっとう だとー」
「僕達は5人だから5対5で決着をつけよう」
「オイ、やめろ」
「面白い。やってやろうじゃないか。いつだ」
 ・・・・シマダが言っちゃった。
 結局次の週に5×5で試合をすることに・・・・。意外だったのはバラベ本人が『マニワネンリュウって何のことだい』と真顔で聞いたことだ。

 いいかげん星取戦にするか勝ち抜き戦にするか(なにしろこっちはシロート)しまいには『木刀を使わせろ』だの審判をだれにするかと散々モメ、5対5の先鋒・次鋒・ 中堅・副将・大将で勝ち抜き形式となった。星取り形式では全く歯が立たないことが明らかだからだ。
 つい決闘の日が来た。もう下期もあと一週間という二月の終わりだった。
 当日は内密に立ち会うということで同好会の練習日だったが、何故か僕達の決闘騒ぎを聞きつけた同じ道場を使う他の部の連中には噂が漏れたらしく、10人くらいの野次馬まで集ってしまった。
 こちらは絶対に勝てない下手のミギタとヤマダを副将・大将にして僕とバラベでイチかバチかの勝負をかけるしかない。ところがシマダがどうしても初めに出ると言い張って先鋒になり次峰がバラベ、中堅が僕の作戦を立てた。僕で食い止められなければ終わる。バラベが厳かに言うではないか。
「いいかい。僕らがやってるブシドゥは絶対にこっちからは仕掛けないのが基本だ。そして向こうが動いたらガチーッと受けて遮二無二押し返す。これを繰り返していれば負けない、いいね」
「ザスッ」
 なぜかみんなその気になって返事が揃って笑えた。
 無論剣道部の方も声出しをやっていた。
 そして試合が始まると、何と驚いたことにクロカワが先鋒ではないか。こちらの作戦を見抜いたのか、一人で5人抜くつもりなのは明らかだ。せめて僕が先鋒に回るべきだった。
 始まった。するとシマダは初っ端に例の歌舞伎調の『イ~ヤ~~!』と発した。クロカワは別に驚きもせず間合いを計っている。あいつは剣先をクイックイッとやる癖があってタイミングを計って小手を狙う。
 ところが我らのナントカ流の構えは手首の位置が低く、小手が打ちにくいようでなかなか攻撃できない。ふーむ、実戦的なんだな。クロカワは堪らず上段に変えた。そして動かないシマダの竹刀を一度叩いたと思うと『メーン!』と飛び込んだ。
 シマダは素早く反応してガシッと受けると『イ~ヤ~~!』と突進した。クロカワは慌てたようで竹刀を戻さずそのまま押され、体当たりを受け止めた格好で揉み合った。道場の隅まで押しやられたのだが踏み止まった刹那、シマダの抜群の運動神経が反応して『エ~イっ』の気合とともに抜き胴が入ったのだ。
『胴一本』
 審判役でわざわざ立ち会ってくれた三年生、オカダさんの旗が上がった。剣道部側の動揺が手に取るように伝わってきた。クロカワは呆気にとられたようで、面を外すとボーッとしている。
 次峰シバタ。やはりビックリしたようで突っ込んでこないでしきりに剣先を絡ませては後ずさりを繰り返す。シマダはミョーに堂々としてきて、田吾作の構えがもっと低くなった。シバタは実にやりにくそうに右へ右へと廻りだす。とっ突如シマダが例の掛け声と共に突進、シバタを場外に押し出した。完全にビビッている。もう一度押し合いになるとカンが働いたかまるでチャンバラみたいに打ちまくって『イ~ヤ~~!』と面を取ってしまった!剣道部はザワつき出した。
 中堅タカヤマ。シマダは調子に乗って最初から気合を発しながらマヌケにもジリジリと攻めに出て、あんなに寄ったら危ないぞ、と思った途端、あっさり面を取られた。
 さて、師匠格のつもりのバラベが前へ進む。シマダよりも低いまるで地を這うような感じで動かない。そこでタカヤマがさっきの要領で打ち込んで来た瞬間に、バッと後ろに飛んで見せた。練習でもやっていない動きで驚いた。そして間をおかずにトンッと飛燕の動きで簡単に小手を撃った。無論『イ~ヤ~~!』の抑揚とともにだ。つっ強い。
 残りの剣道部イシイとノムラのときは低い構えから背筋を伸ばしての上段と練習のときには見せたことのない変幻自在の動きで、時に脛や肘まで打って翻弄しなにもさせずに面を決めた。
 僕の出番はなくなって剣道部に勝ったのだ。

 えらいことになった。このことはまさか負けまいと審判を引き受けてくれた3年のオカダさんからキャプテンのシイノさんの耳に入ったようで大問題となった。練習日に集合がかかり緊急ミーティングが開かれた。
 1年から3年までの25人が全員集合しハナフサ師範までがドッカリと腰を据えて目をつぶって腕組みををしていた。えらいことになってしまった。シイノさんが激しく言った。
「クロカワ。伝統あるE高校の節度を汚すような他流試合まがいのことを勝手にやってしかも負けたとはどういうことだ。おまけにオレや師範に断りも無くオカダが審判までやっているとは何事か」
 まずいな、本当に怒ってる。これは・・。
「イデイ!どんな気分だ。所属する剣道部の名誉を踏みにじる勝ちを得た気分は!言ってみろ」
 突然こっちに振られた。これはボソボソ言い訳しないほうがいいかな・・。
「シイノ。そう怒るな」
 ハナフサ師範が低い声で言った。
「E高校剣道部が対抗試合ならともかく、他流試合まがいをしでかしたことは言語道断。しかもオカダ、相手二人に五人とも抜かれるとは剣道部始まって以来の恥辱だ。どの程度の負けか」
 オカダさんは自分が悪いわけでもないのにすっかりしょげ返ってボソボソ言った。
「相手は守りを固めて動かないのです。そこでこちらが仕掛けるとガッと受けられそのまま押され負けしました」
「諸君。剣道とは何か。武士の魂を鍛える真剣勝負だろう。私の見たところあのバラベという生徒は上州馬庭面流の正真正銘の達人だ。ここは負けて学ぶしかあるまい。クロカワ。膝を屈してでも入部してもらえ。そしてト・コ・ト・ン学べ」
「ザッス」
 大変だ。これは部員の間では相撲部屋でいう『かわいがってやれ』或いは某大学アメフト部の『潰せ』の意味なのだ。このままでは僕も相当にやられるに違いない。
 それにしてもあのバラベが達人だったとは違和感がある。ただのアホにしか見えないのだが。そして剣道部への入部を認める旨を伝えるのは僕の役目になった。
 翌日さっそくブシドゥ同好会を招集した。
「大変なことになった。ハナフサ師範が僕達の入部を認めた」
「セ・ボン!みんな、剣道部員になれるぞ」
 喜んでいるのはバラベだけ。当り前だ。他の3人はもともと部活動なんかやる気はないのに物珍しさでつきあっていただけだ。
 後期が終わり先輩たちはもう卒業する。といっても大半が大学部に内部進学するだけで大学でも剣道をやるのは2~3人が常だ。僕達は三年に進級するが、問題はその前に春合宿があるのだ。
 
 つづく

鮮烈 馬庭念流 Ⅰ

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鮮烈 馬庭念流 Ⅰ

2018 AUG 10 20:20:19 pm by 西室 建

 2学期が始まった。それはそれは熱かった夏休みをノンベンダラリと何もせずに過ごし(剣道部の合宿には行ったが)やれやれと登校してきたクラスの連中は同じバカ面をしていた。
 担任の山田先生が一人の生徒を連れて教室に来た。
「おはよう。みんな夏休みはよく遊びよく学んだだろうな。今学期から一人転校生がわが組でお迎えすることになった。紹介する、バラベ・ユズル君だ」
「バラベです。皆さんより一つ年上なんですが、宜しく御願いします」
「バラベ君は暫く外国にいたんで日本の高校のことは良くわかってないから、みんなで分からん事は教えてやってくれ。それで席なんだが、いい機会だから全体の席替えをする。先生もあんまりアイデアがないから一学期の時と同じに要望があれば聞く。後はくじ引きだ」
 山田先生の方針はクラス全体の座席表を回して好きな所に自分の名前を書き込む。競合する場合は二人ならばじゃんけんで、3人以上はアミダくじで決める、という民主的なのか公平なのかよく分からない方法だった。
 一見簡単なようだが、誰それと隣になりたいとかアイツの隣はいやだという奴が出てくるとモメて、更にじゃんけんで負けたりアミダが外れた奴がどこを選ぶか、が始まると結構な手間だった。大体良くできる真面目な連中が黒板が見やすいとか言って前の方に固まり、バカ共は後ろに溜まる。E高校は名前の通りE大の付属男子校で、試験偏差値はそれなりなのだがエスカレーター式に余程の落ちこぼれでもなければE大に行ける。理系の看板学部を目指す連中がやたらと勉強するのは浪人することができないからだが、だらけきった奴等は遊び放題に遊んでいた。
「じゃあ表を回すから各自記入してあしたの朝決めよう。今日のところはバラベ君には一番後ろの廊下側で授業を受けてもらう。一時間目まで解散」
 この隣に机が入っていたのはその為か。ってオレの隣じゃないか。変な奴だったらいやだな。まっあしたまでならいいか。
 そのバラベというのが隣に座って1時間目は物理だ。やけに色の白い奴だ。
 やはり異分子が混じるとクラスは緊張するのか。こいつはできるのかバカなのか、面白いやつかつまらないのか、明るいのか暗いのか、皆の関心は寄せられているようだ。
 ところが気が付いたがこのバラベという奴はノートを持ってない。変なメモ紙にゴソゴソ黒板を写したり教科書に直接書き込んでいるみたいだ。
 二時間目の世界史もそうだった。
 三時間目の英語でもそう。そしてボソボソと英語を喋っている。
 たまりかねて休み時間に聞いた。
「バラベ君、ノート書かないのかい」
「うん、ありがとう。持ってないし字が上手く書けないんだよ」
 奴は恥ずかしそうにメモ紙を隠したが、何だか印刷されたものの裏を使っているようで詳しく聞くのをはばかられた。真っ直ぐに目が合うと細面の顔立ちをしている。
 昼休みになったので僕はお弁当を広げた。半数は校内の大食堂で食べ、半分くらいがクラスに残る。奴はというとリュックの中からガサガサと取り出したのは何と牛乳パックとクロアサンだ。五分くらいで食べ終わってスマホをいじりだした。
「おいおい、学校でスマホは禁止だぞ。持ち物検査で見つかっても一週間取り上げられるんだよ」
「エッ、そうなんですか。知らなかった」
「どこに住んでんの」
「〇◎です」
「へぇ、反対側だね。帰国子女って言ってたけどどこから来たの」
「ブフゴニュフォンセです」
「それって何州なの」
「エッ??」
「ニューヨークの方?それか西海岸?」
「ああ、エッジュニじゃないよ」
「えたじゅに?」
「フランス語で合衆国の事。フランスにいたんです。だから英語はできないんだ」
「フランス!パリにでもいたの?」
「ノン。すごい田舎です。日本語ではブルゴーニュってワインの産地ですよ」
「へー、そこでなにやってたの」
「父さんがワイン造りをずっとやってました。でも独立できなくて日本に帰って来たんです。僕はもっと早く帰りたかったけど」
 そういうことか。フランス語は3年生で必修になるがそれまでは役に立たない。
 午後の授業が終わって放課後になった。未だによそよそしいクラスの雰囲気の中、バラベは帰り支度をして僕に話しかけてきた。
「一緒に帰ろうよ」
「そいつはダメだ。きょうは剣道部の練習」
「イデイ君剣道部なの。僕も入りたい」
「うーん、どうかなー。ウチは大学の先輩たちが巾をきかせてるから結構キツいよ。やったことあんの?」
「父さんとずっと稽古してたんだ、あっちにいたときに。道具も持ってるんだ」
「ふぅーん。フランスで剣道をねえ。珍しがられたろうなあ」
「まあね。でも近所の奴等が2~3人面白がって一緒にやってた。『ブシドー』って言って」
「わかった。じゃあ練習見に来いよ。主将達にも会わせてやるから」
 体育館の横の部室に行くと皆が着替えていた。中学部と大学も一緒だから全体では軽く百人を超える所帯なので、高等部は一応月水金の練習だが今日は20人くらいだった。
うまい具合にシイノ主将とハナフサ師範(大学教授)がいたので引っ張っていった。
「ザッス(部内の伝統的とされる挨拶)。入部希望者を連れて来ました。同じクラスのバラベっす」
「あっあのー、バラベと申します」
「本気か。二年の二学期だぞ。合宿も経験しないでついてこれるのか」
「ザッス。転校生っす」
「ブシドーはやっていました」
「はぁッ、ブシドウってなんだ」
「すっすいません。帰国したばかりでちょっと日本語が・・稽古はしておりましたであります」
「ふーん。何段だ?」
「ナンダン、っですか。わかりませんです」
「わからんって。まあいいや。ちょっと見学してろ。オイッ素振り始めるぞ」
「ザスッ(全員)」
 あいつ大丈夫か、と心配しながら列になって蹲踞した。するとバラベも隅っこでチョコンと座っている。正座はできるんだな。
「黙想!・・・・。活目!素振り始め!」「ザスッ(全員)」
 エイッエイッエイッエイッエイッエイッ!!!
「切り返ーし」「ザスッ(全員)」
 エイッ(パン)エイッ(パン)エイッ(パン)エイッ(パン)エイッ(パン)エイッ(パン) 
「打ち込み稽古!」「ザスッ(全員)」
「イデイ、ちょっとこい」「ザスッ」
「せっかく見学に来たんだし経験者ということだからジャージに面・小手付けて地稽古で打ち合ってみたらどうだ」
「ザスッ。おーいバラベ君」
 居心地悪そうに座っているバラベに声を掛けた。
「じゃあ体操服になって来いよ。地稽古でもやってみよう」
「あのさ、ボクトゥは使わないの」
「何?ボクトゥって」
「木の刀」
「はあ??そんなもんでやったら骨折するぞ。ほら防具付けて竹刀持って」
「シナイってこれ。ふーん」
 コイツ・・・。何をやっていたんだ。
 何とかかんとか格好をつけさせて蹲踞も教え向かい合った。
 どうも話がかみ合わなくて困ったが竹刀剣道ではなくて型の稽古だけをやっていたらしい。こりゃ打ち合って入部を諦めさせることになるのかと思った。
 構えた途端に仰天した、何だこいつ。基本がなってない。
 剣道で最も戒められるガニ股のような腰の引けた低い構えで、柄を握るポイントを左の脇の方に落とし切っ先は右に流れている。子供のチャンバラごっこのようだ、まさかフランスで父親とやった遊びを剣道だと思い込んでるんじゃないだろうな。
 あまりの異様な光景に掛り稽古に移っていたみんなも手を止めてこっちを見始めた。
 しかもバラベは全く動かない。しょうがないから小手でも狙ってやるか、とフェイント気味に切っ先を少し上げて見た。それでもうずくまる様にジッとしていた。
「・・・・コテ~ーー!」
 と打ち込むと、驚いたことにガバッという感じで後ろに跳んだ。オイオイ、かすりもしない。面でも入れてやるか、上段に変えて間合いをつめた。ところがそれでも同じ構えのままだ。
「オメ~~ン!!」
 ワッ、振り下ろすと今度は後ろに飛ぶどころかやや向かってくるようにバシーッと受けられ、そしてそのまままるで下から押し上げるようにググッと迫ってくる。鍔競り合いの格好でジリジリとプレッシャーをかけられた。おいおいおいおい、切っ先が僕の左の面に当たっちまうだろ。
 たまらず右側に交わそうとした瞬間、裂帛の気合で左の腕を撃たれた。
「イ~~~ヤ~~~!」
 いててて、何なんだこれは。とても一本にならないところを打ち込みやがった。声もやけに抑揚のついたまるで歌舞伎のような変な発声だ。
「それまで!!」
 ん?ハナフサ師範が止めたのだ。師範は法学部の教授だが大学体育会剣道部の監督でもある。
「ザッス」
「君、ちょっと」
 バラベを呼ぶので一緒についていった。
「君、その型どこで覚えたんだ」
「父さんと稽古してました」
「どこでやってたんだい」
「フランスです」
「ほう!二人でやってたのか」
「まあ、そうです。近所のフランス人の子供もいましたが」
「お父さんの出身は」
「群馬県の高崎です」
「わかった。あのねえ、君の覚えたその型は競技剣道ではない」
「そうなんですか!」
「いつからやってたんだ」
「それはフランスに行った頃からですので10年前くらいです」
「それではもう直らないだろう。但し今の君はとても強いよ。だが学生剣道とはルールが違うんだ。残念ながら剣道部に入っても上達はしない。そのまま君の型を続けた方がいいと思う」
「そ・・・うですか」
 それから僕達は練習を続けた後に解散した。バラベは正座したまま最後まで付き合って僕と一緒に帰った。 
「どうする。あれは体よく断られたみたいだぞ」
「うん。ルジャポンに来たらブシドゥをやるのが夢だったんだけど覚えた型はダメみたい」
 何だよ。えらく悲しそうじゃないか。オレこういうの弱いな。

翌日の席替えでは席を選んで、残りのどうでもいい奴等は巨大なアミダくじであっさりと決まった。バラベはどういう理由かは知らないが最前列の左端に、僕は後ろから二番目の右端になった。
 離れてしまったので様子は窺えなかったしそれから暫くは挨拶くらいしか話さなくなった。しかしあいつは全く成績が振るわないのは直ぐにわかった。先生に指名されても答えがトンチンカンすぎる。
 フランス語がどの程度なのかは知らないが、英語の読み方は全くダメで他の教科も知れたものだろう。
 ある日の昼休みにバラベの奴が『イデイ~』と寄って来た。
「剣道部なんだけどサ、あれはやっぱり断られたのかな」
「そうだろうな」
「残念だなァ、別に邪魔するつもりでもないんだけど」
「一人でそのブシドゥ型をやればいいじゃないか。それだって十分『武士道』だと思うけどね」
「一人じゃつまんないよ。ズッと父さんとやってたからみんなと一緒にやりたかったんだ。それでさ、イデイ、僕と一緒にやってくんないか。教えたげるよ」
「えーっ、オレが教わる?そりゃ無理だよ。今だって週3回の稽古出るのがやっとなんだぜ。第一場所がない。剣道場は中学部や大学部が毎日使うんだから。剣道場を使うなら同好会の申請でもしなけりゃ許可が降りないんだぜ」
「ドウコウカイってナンだい」
「正規の学校を代表するのは体育会所属の『部』だけど、そこまでガチじゃない愛好者が組織して学校に承認を受けるシステムで、5人以上のメンバーと活動実体がなければ認可されない」
「難しいんだね」

つづく

鮮烈 馬庭念流 Ⅱ

 

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これからの・・・ことなど

2018 AUG 5 23:23:08 pm by 西室 建

 日露戦争の有名な203高地の戦闘で、過酷な戦いに晒された兵士の辛さはどんなものだったろうか想いを馳せてみる。
 或いは兵站不足という外道なインパール作戦で飢えに苦しみながら敵襲におびえる切羽詰った状況はいかなるものか。逃げるに逃げられないのだ。
 もっとひどいのは十死零生の特攻。かの戦艦大和も水上特攻で作戦を全うする前に沈んだ。失われた命に対峙する言葉を僕は持たない。

 一方で、ある従軍経験者の書いたものに、当然命を繋ぐ本能は強い(と想像するが)ものの、あまりの苦しさに一発の弾丸がこの苦しみから解放してくれるとさえ思った、という記述があったが出典は忘れた。
 また、大和の僅かな生還者のインタヴューで『生きる死ぬると言ってバタついている様子が、それが大和の乗組員の気持ちだなんて、とんでもない話です。そういうところから書いて書いてもらわないとウソッパチになりますよ』というのを吉田俊雄氏が著書に記している。
 これらの苛烈な経験の上の言葉は重い。我々が発する『命がけ』という凡庸な科白よりもはるかに厳しいプロ意識とでも言うのだろうか。無論全員がとも言い難いかもしれない。

 この『プロ意識』の部分に光を当てることで、吾々の凡庸なる日常に息を吹き込むことはできないだろうか。
 というのも(普段何もしていない私ではあるが)先の見えない展開につくづく『どうにかならんのか』と絶望的な気持ちになったことはある。
 まず子供の頃から来る日も来る日も学校に行くのがイヤだった、あの気持ちから始まる。中学高校ではいつの間にか先生の説明が全くわからなくなり、大学では毎週ゼミの発表に追いかけられて自分を見失った。
 勤めてからはこれまた大変な事の連続で、やっていることの成否だけでは済まないのは皆様と同じ。イヤな思いをしたこともあったしさせたことも同じくらい以上にあったはずだ。
 このような感覚はどうやら『プロ意識』の欠如によるものではないかと今更ながら気が付いた。成人してからの時間の何分の一かを泥酔と二日酔いで無駄にしたことを考えれば尚の事である。早く気が付けばよかったのだが。

 閑話休題、そこで残された時間にどう立ち向かうかを深く考えてみた。
 無論私は戦場にいるわけではない。早い話が晩年にさしかかっていて今更の感は強いが、とにかく今暫くは生きては行くわけだ。
 これからの話なので何に邁進するかと言えば、いかにして『断捨離』のプロになるか、くらいであろう。なぜかといえば、これは結構命がけの仕事ではないかと思えてきたのだ。
 既に書いている事でもあるが、こちらからこれ以上知り合いを増やすことはない。大金をはたいてモノを買うこともない。親族の不幸や友人を失う経験は増えていくだろう。
 ところが最近、ある物件を処分することになって大量のモノを整理することになった。ゴミにしてしまうのももったいないので、あるフリー・マーケットに持って行こうとしたのだが結論から言えば主催団体に断られた。そこは慈善団体系の全国ネットワークのあるところだが、着払いの宅急便で物凄い量が押し寄せて捌ききれずお金をかけて処分しているとのことだった。
 本。全集とか百科事典といったブック・カヴァーに入った古本は写メで撮って古本屋に贈ったらこれも値段が付かないとの返事。
 食器。それなりのモノには違いないが一度に何種類ものお皿で食べることもできまい。
 洋服。オジサンの着る物に流行はないものの、これなどサイズ等もあって寄付しても絶対に喜ばれないだろう。
 家具。重いの何のって運び出すことすらできない。箪笥・机・しまいにはピアノ。
 更に迷うのは誰なのか名前も分からない古い写真。
 100年前の走り書き、先祖の卒業証書、成績表。
 価値も分からない切手の束、震災復興債、こんなものは値段がつくかもしれないが、一体誰に相談すればいいのか。
 つらつら思うにこれから後の私の年代は膠着状態に陥るのではないだろうか。そしてこの膠着状態はそう悪いものではないかもしれない。むしろ撤退しない、年相応にヤケにならないように暮らす。そうしてペースを守っていれば今度は今までにない静かなときめきが沸き上がって来るような気がする。

 ここで冒頭の話に戻るのである。 
 戦場の指揮官の言葉。
『膠着状態にあっては苦しいが、敵も又苦しんでいるはずである。冷静に守り抜きながら相手のスキが出るのを見定めるのが肝要である。時に負けないことが大勝利とも言うべき効果をあらわす』
 我々は終盤戦を戦うプロなのだ。
 とにかく今まで生きてきた。
 戦時にあって戦闘で命を落とした戦死者、平時にあって志半ばで病や不慮の事故で亡くなられた方々、突然の災害によって亡くなられた方々の冥福をひたすら祈りたい。

 ところでこの戦いの敵とは何だ。考えて教えてほしい。 

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銀座点描

2018 JUL 31 21:21:45 pm by 西室 建

 あまりの中国人買い物客の多さに昼間の銀座に出ることはなかったのですが(夜は別です)、ちょっとした買い物のために久しぶりに銀ブラ(死語ですね)しました。
 この暑いのに皆さんお元気ですね、的な人混みに目眩がします。飛び交う中国語がうるさくなくはないのですが、大昔のマンハッタン五番街の日本語だと割り切ってやりすごします。
 オジサンの買い物は最初からターゲットが決まってますから、アーデモないコーデモないと悩まないのですぐ済んでしまいました。オジサンはせっかちなのです。せっかちなくせにネットで買えばいいものを暑い中セッセと買い物に来る、頑固なのかも。
 問題はどうやって一服するかなんですが、銀座という街は意外と奥が深いので秘かに吸える秘密の所が実はあります。こっそりとフーッ。昨今のスモーカーは(いじめられすぎて)煙に敏感なので、漂っているのを見つけると蟻が蜜にたかるようにすぐに寄ってきて集団になりがちなので、そーっとそーっと。

ライオン!

 銀座通りに戻ってアッと驚きました。ライオンが歩いています。ライオンですよ、生きている。人の間をヒョコヒョコ縫うように歩いています。
 しかし、たてがみは立派なのに随分と小振りな、待てよ、赤ちゃんライオンにはたてがみはあったっけ???すれ違う人はスマホを向けます。ライオンは無視してトコトコ進みます、オジサンも後をつけました。
 すると余りの暑さなのか、地下鉄の通気の上でへたりこんでしまいました。変ですね、ライオンは40度くらいどうってことないのでは??
 で、良く見ると御覧の通り被り物をさせられたワンちゃんなのでした。
 それにしてもリードも付けないでよほど躾けられたというか訓練されたというか、いやがりもせずに大した物です。それともたてがみが暑くて熱中症なのでしょうか。

スパイダー・マン

 やがて日がゆっくりと陰りだしました。
 それでは帰ってビールでも(銀座のビア・ホールは中国人で一杯)と地下鉄の入口に行くと、ウワーッ、この暑いのにスパイダー・マンが。
 さすがに飛んだり跳ねたりはしませんが、人混みを見計らって四つん這いのような格好でパフォーマンスします。
 中の人、汗だくでしょうね。
 こちらはスマホを向けられるとそれなりにポーズを取ってくれるたのでパチリ。
 お疲れ様です。しかし、僕はプロレスを研究しているのであのテのマスクを被った事がありますが、あれは恐ろしく視界が悪くなる。スパイダーマンも飛び上がって目測を間違えないようにお願いします。

 生まれ育った下町から銀座に出るのは都電を使っていました。生活圏の東限で、銀座の向こうはそれはそれは恐ろしい別世界だとおもってましたね。
 当時は図抜けて大きな建物はデパートと三愛の三菱マーク、服部時計店。たくさんあった商店の上には人が住んでいて生活感がありました。今では時々有名店として紹介されるお店も普通の看板建築でしたっけ。
 冬の寒い日に母親に連れられて、何かの店先で光るヨーヨーを買ってもらったことを覚えています。その時は何故か地下鉄で帰りました。

別にストーカーじゃない

 
 さて、昼の銀座は買物の街ですが日が暮れるとそこはそれ、昨今の景気はどんなものでしょうかね。
 後日、銀座通りは避けて交詢社のあたりを散策すれば華やかないでたちのオネーさん達、高根の花が歩いています。
 高いお店はそこそこに、カウンター・バーなんかは手頃な価格でチョロッとは飲めます。
 最近、某官庁の高官がこの街で散々接待を受けて便宜を図ったと問題になりました。あれは払わなくていいから調子に乗ったのでしょうか。
 故山口瞳さんが書いていました。やむなくそういう場で接待されるとしても、別の機会に一人で行ってその場で自腹で払う、それがちゃんとした大人のやることだと。
 それじゃあの店に行ってきょうあたり払って帰るか・・(酔っ払って)。

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ファイターズ 勝ったり負けたり

2018 JUL 26 20:20:51 pm by 西室 建

 7月20日。上沢VSバンデンバーグ。初回にいきなり3点やられて参った。絶不調でありながら今なお実力日本一ホークスを迎え撃つと燃えるはずがこれだ。その裏に必死に返すも2回表にも得点されて1-4と青息吐息の始末だ。
 しかーし、何と渡邊が二打席連続でHRを放ち逆転するではないか。
 不思議な事に今年のホークスは粘りがない。今宮が7回にホームランを打ち1点差に詰めたがそこで止まってくれた。おかげで上沢は5失点もしたのに勝利投手という何とも言えない結果となった。
 21日はこれまた初回に中田が一発放り込んで3点を取ると勝ってしまった。
 杉浦が5回無安打無失点という離れ業で初勝利が転がり込んだ。
 ホークスが最終回の長谷川の走塁死というほぼチョンボで負けてくれたようなもので、ファイターズは強くもないのに勝ちを重ねている感あり。
22日、たまげたことに柳田・松田のHRを浴びたにもかかわらず勝つ。どうしたことか。
実はこの結果を確認して韓国に飛んだ。この日西武が負ければ首位である。現地でイソイソとネットを繋ぐと・・・負けていなかった。

 韓国から帰国した日から最下位イーグルスが相手。夜中に帰宅して録画チェックをすると、則本に対してレアードが2HR!(アマダーも有原から2本放り込んだが)中田までもガッチリ打点を稼ぐ。そして有原の代え時がいい、6回、エラー・四球の後にサッと公文にと栗山采配が冴える。7回の宮西も左までで代えた。
 途中、田中賢介が日米通算1500試合を達成した。
 ところが試合は力比べのようにせめぎ合い、ミスも出しながら延長に。10回表裏で1点づつ入れ、11回表は満塁にまでしてタコ。
 そしてその裏、伏兵山下にプロ初ホームランを浴びてサヨナラ負けを喫した。 
 打たれた玉井、あれはまぐれだ。
 中田ふざけるな!その前のチャンスを潰したのを見たぞ!

 ライオンズは今日も勝ち、ロッテとホークスは延長12回表裏で1点を奪い合う10-10の引き分けという凄い戦いをしている。
 えらいことになってきた。下手に競ると実はロッテは相性が悪く、苦手なのだ。
 
 昨日は飲み会で、ビールをガバッと飲んでいる時も気になって試合経過をチラチラとスマホで見るのだが、マルティネスがボカスカ打たれているらしい。
 帰ってみれば1-8の大負けだ。最下位チーム相手に何をやっている。ふざけてるんじゃねぇ!
 以前から指摘されているが、ホークスと死闘を演じた後に調子を落とす。そうはいってもこの負け方はいかんよ、いかん。
 更に不愉快なのは、西武はオリックスに延長10回を戦い抜いて根性のサヨナラ勝ちをしているではないか。しかもその負けを喰らったのは去年までファイターズのストッパーだった増井なのだ。関係ないとは言えイヤ~な気分である。

 ファイターズは梅雨時に連勝しクソ暑い夏場に連敗するクセがあって、早い話が暑さに弱い。
 従ってオープン・スペースのロッテ、イーグルス、ライオンズのビジター戦対策を考えなければならない、と栗山監督に口を酸っぱくして(テレパシーで)伝えたのに何にもやっていないではないか。
 しょうがないからこのブログで秘策を公開しておくことにする。
① 上記3球場でのデイ・ゲームには全選手が白塗りの化粧をして暑さ対策をするとともに敵チームの度胆を抜く
② できれば試合が中止になるように栗山監督が雨乞いをする(西武には通用しないが)
③ 三連戦のうち一試合は捨てゲームにして斉藤祐樹を投げさせる
④ 無駄な間合いを取らずに低めに球を集中させとにかくゴロを打たせて守備時間を短くする。
⑤ 早打ちせずに球数を増やし、カットしまくって攻撃時間を長くする
 とバカな話を綴っていたら代打の切り札岡大海とロッテのかつてのドラ1藤岡貴裕投手のトレードが発表された。こういう補強を待っていたのだ。
 頼みますよ栗山監督。ロッテとホークスに呑み込まれないように!
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海の魂鎮め

2018 JUL 24 23:23:46 pm by 西室 建

古色蒼然

 

 東大の三崎臨海実験場という施設が油壷湾の入り口にある。
 明治19年と生物研究施設としては早い時期にスタートし、明治30年に現在のの地に移って来た。この歴史的な建造物は昭和11年、関東大震災で被害を受け建設された。
 敗戦後に米軍に接収されていたこともある。
 この本館が老朽化し取り壊しになる。仕方がない事だがもう何十年も慣れ親しんだランドマークが取り壊されるのはこちらが年をとった証左だな。
 また、ここは戦国時代の三浦氏の居城があった所で、三浦氏は鎌倉時代から何度か再興したが北条早雲によってこの地で滅亡。一族郎党の血で赤黒く油を流したように見えたので油壺といわれた(らしい)。そのせいか亡霊が出るという噂はかなり古くからあった。

クリックして下さい

 こちらはその対岸に当たるが、写真左のマンションでさる鬼畜が外人女性を殺害し、右側の海岸奥の洞窟にコンクリートで埋めた。
 また隣の小網代に外国人に殺された女性の遺体が上がったこともある。
 この美しい入り江で何てことをしてくれる。

 その昔、もう少し南の方で学習院大学のヨットが遭難して、麻生財務大臣のすぐ下の弟さん他5名のクルーも亡くなっている。
 こういう話は日本中の海にはいくらでもあって、だから祟るだの縁起が悪いだのとは言わない。海坊主はいるが怨霊は海にはいない、そもそも似合わない。海のスケールが亡霊を圧倒するのか。

 その大きな海でマイクロ・プラスチックのゴミ問題が今頃言われ出したが、沖合でペットボトルやコンビニ袋が漂っているのは腹立たしい。海を汚す不届きものは海に呑まれてしまえ。
 記録的熱さは海の上も同じだが、幸い今日は風が強い。
 さあ、ジブを張った。風上に一旦舵を切ってメインセールを上げるぞ。

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一瞬の逡巡

2018 JUL 19 22:22:29 pm by 西室 建

あまりにひどい天災に奪われたすべての魂に捧げる

毎日毎日ひとが死ぬ
来る日も来る日も供養する
一人一人は物語でも
一人ぼっちで死んでゆく
残った者も
一人ぼっちで生きてゆく
毎年毎年供養する
水で死ぬ火で死ぬ事故で死ぬ病気で死ぬ戦いで死ぬ
死んでゆく者は何を言ったか思ったか
残されたものは何をどう語るのか
悲しみと驚きが入り混じって
あまりに大量に押し寄せて来る時
人は慣れてしまうから

躊躇するな
恐れるな
迷うな
振り返るな
残った者が背負うのだから
置いて行かれたのは私であり君だ
もういないあなたも置いて行かれた
なんと簡単なことなのだろうか
なんと悪辣なことなのだろうか
なんと善意なことなのだろうか
なんと純粋なことなのだろうか

すべてが早すぎたし遅すぎもした
呪われて後、祝福された
皆が蔑んだ後に、誰もが哀れんだ
重く暗く息苦しい湿気の中で
躊躇するな
恐れるな
迷うな
振り返るな
すべてが分かるのだから
事実は目の前にしかないのだから

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ルシールだぜ‼️

2018 JUL 15 13:13:47 pm by 西室 建

 オールド・ファンには懐かしいスタンダードなロックン・ロール。
 リトル・リチャードが右足を鍵盤に乗せるポンピング・ピアノを弾きながら歌ってヒットしたお馴染みの曲だ。ノリがいい曲なので多くのプレイヤーにカヴァーされていて、有名な所ではビートルズ、ホリーズ、アニマルズ、からジョニー・ウィンター、クイーン、ディープ・パープルにオーティス・レディングまでもがやっている。

 日本でも盛んに演奏されたが、数十年前に六本木の今は無くなってしまったライヴ・ハウスでの演奏が印象に残っている。
  その昔、グループ・サウンズというバンド・ブームがあって、当時私は小学校から中学校で女の子がキャーキャー言っていた。
 グループサウンズ・ブームが終わって10年も過ぎた頃、そのOBとでもいう人々が秘かに集まっていたその店は、坂の下の半地下にあった。元ジャガーズというバンドのメンバーが演奏した時に偶然飲みに行ったのだった。
 先日偶然にジャガーズのルシールの動画を見付けて記憶が蘇った。
 私がライヴで見た時は動画のようなユニフォームは着ていなかったので演奏が始まった時はジャガーズとは気が付かなかった。

 なかなかノリがいいと聞いている内に久しぶりに本歌取りのアイデアが浮かぶ。
 演奏を聴きながら読んでみてください。

Lucille, you won’t do your sister’s will?
(押しーーーーー 売りなどセコい)
Oh, Lucille, you won’t do your sister’s will?
(押しーーーーー 売りなどヤメロ)
You ran off and married, but I love you still.
(乱暴はやめて 頭を使いなよ)

Lucille, please, come back where you belong.
(ゆすーーーーり タカりは古い)
Lucille, please, come back where you belong.
(ゆすーーーーり タカりはダサい)
I been good to you, baby, please, don’t leave me alone.
(アイフォン片手に 頭で盗め) 

ドラム・ラップ
I woke up this morning, Lucille was not in sight.
(オレオレ・サギなど恐くない)
I asked my friends about her but all their lips were tight.
(ハンパなハッカー 通じない)

Lucille, please, come back where you belong.
(押しーーーーー 売りなどセコい)
I been good to you, baby, please, don’t leave me alone, whoa
(アイフォン片手に 頭で盗め) 

間奏・ギター

ドラム・ラップ
I woke up this morning, Lucille was not in sight.
(架空請求 騙されない)
I asked my friends about her but all their lips were tight.
(チャチな ウイルス 開かない)

Lucille, please, come back where you belong.
(ゆすーーーーり タカりは古い)
I been good to you, baby, please, don’t leave me alone.
(アイフォン片手に 頭で盗め)  

間奏・キーボード

Lucille, baby, satisfy my heart.
(押しーーーーー 売りなどセコい)
Lucille, baby, satisfy my heart.
(ゆすーーーーり タカりは古い)
I played for it, baby, and gave you such a wonderful start.
(アイフォン片手に 頭で盗め)

Lucille, baby, satisfy my heart.
(押しーーーーー 売りなどセコい)
Lucille, baby, satisfy my heart.
(ゆすーーーーり タカりは古い)
I played for it, baby, and gave you such a wonderful start.
(アイフォン片手に 頭で盗め)

 そして今思い出した。背中まで伸ばした髪を切って、キャロルのコピー・バンドを作る為にギトギトのリーゼントになり結成したバンドの名前がルシールだった。

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