Sonar Members Club No.36

Since July 2013

ブラーマン一家の来日

2023 MAY 21 9:09:13 am by 西 牟呂雄

 盟友がご家族とともに来日した。一行はご夫婦と息子さんにお嬢さん、息子さんは大学で経済学を専攻しており、娘さんは高校生。夏休みでもなかろうに1週間の滞在である。
 因みにインドは目下大変な好況だ。何しろインドはロシアへの非難決議にも賛同せず制裁は関係ないし、米中対立も我関せず。返って行き場を失ったロシアの石油がザバザバ入ってくる。
 御主人は何回も来日しているが、ご家族は初めて。ちょうど2年に一度の神田祭と重なったので小雨だったが勝手知ったる明神様にご案内したら、これが大変喜ばれた。御神輿はインド人好みのキンキラだし、一斉に掛け声を出しているのも楽しかったらしい。『あれはなんと言っているのか』と聞くので『リズムをキープする掛け声で、ソイヤと言っている』と教えてやると、一緒に『ソイヤ。ソイヤ』と言いながらはしゃいでいた。
 ここは僕の本籍地なのですっかり調子に乗って、トラディショナルなフェスティバルだから(将門様から勘定して)ざっと千年前からやっている、と自慢した。すると、これがアメリカ人なら『ウワーオ!』となるところだが、さすがに悠久の歴史を生きているインド人は、なんだその程度か、という反応にズッコケた。そうだよなぁ・・・。

 メシを食べるのにまた一苦労。彼らはベジタリアンで、その中でも最も厳しいヴィーガンなのだ。肉も魚も卵も牛乳もダメだという。豆腐懐石料理のフル・コースに落ち着いた。終いには動物性の油を使ったフライパンもイヤなんだが、などと言いだしたがそんなのシラネー。地元の吉祥寺にも仲良しのネパール人がやっているインド料理屋があるが、そんな話は聞いたこともない。
 インドの多様性について話が弾んだ。宗教・言語のマトリックスで分けるといくつになるのかわからない。御一家は家庭内ではタミル語、仕事で英語、必要に応じてヒンディー語を日常的に使い分けていて、バイリンガルどころではない。
 正確ではないかもしれないが、平等という概念が薄い。彼らは最高位のカースト(上の中くらいの)バラモンだが、下位カーストを見下すという感じではなく、差別というより区別している様子が見て取れた。ただ、一般的に言って女性の地位は低いらしい。社会の経済的格差はもの凄すぎて問題にもならず、グローバル・サウスのリーダー、と持ち上げてみても、特に誇らしいとも思っていない様子。まぁこの人たちは初めから金持ちなんで、経済成長とか国民の豊かさといった尺度が意味をなさないのではないかな。カーストが歴史に溶け込んでしまい、苦しんでいる人も大勢いるだろうが、要するによくわからないので、無理に理解することはしない方が無難である。僕は絶対にインド人にはなれない。
 一行は相撲見物やら箱根行き、京都滞在ののち広島に行く計画。息子さんとお嬢さんはあした渋谷・原宿・歌舞伎町と回るとか。

 プレゼント交換にも苦労した。相手は金のローレックスをキラキラさせているのだから、せめて光物にしようと手作りビーズのアクセサリーにした。すると先方はラッキー・アイテムだという象の置物。これ蝋でできているというのだが、ヌルヌルしないけど・・・。

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チャットGPTは楽し

2023 MAY 18 0:00:19 am by 西 牟呂雄

 各種議論が盛んなチャットGPTは実に楽しい。これで置き換えられる仕事を想像するとワクワクしてくる。単純労働に近い作業、それがいかに知的に見えても実際には大したことない分析であるような仕事はこのAIでやらせれば十分。
 例えば野党の稚拙なイチャモンに対する答弁に手間暇かけるのは全くの無駄だからAIでいい。
 司法関係もスピードアップが期待できる。膨大な判例と法律を網羅するといった作業に持ってこいだろう。
 すなわち膨大な過去データのチェックや分析はすべてAIがやってくれるようになる。当然そういう仕事に忙殺されていた人はいらなくなり、コストは下がり、さて問題は失業にまで至るのかどうか。便利に活用すれば問題なかろう。
 今後ますます面白くなってくるのだろうが、現時点ではAIも発展途上のため、例えば全く実績のない仮定の質問には答えられない。
『彼らがどちらがより強いかを比較することは困難であり、単純に「強い/弱い」という比較は適切ではありません。両者は、それぞれ独自のスタイルを持ち、異なる時代に活躍しました』
 これは筆者が『G・馬場とA・猪木が戦ったらどちらが強いか』と質問した時の返事である。どうってことない。
 『国債を買い取ることができなくなるため、政府の借金発行に制限がかかる可能性があります。これは、政府の財政運営に悪影響を与える可能性があります。市場での信頼性が低下するため、インフレーションのリスクが高まる可能性があります。市場からの信頼を失うと、国債や円の価値が低下するため、物価が上昇する可能性があります。国内外の投資家からの信頼が失われる可能性があります。これにより、日本経済の信認が低下するため、経済成長に悪影響を与える可能性があります』
 これは『日銀が債務超過になるとどうなりますか』への返事である。これをよく読めば、直ちにパニックになるわけではない、とも読み解ける。
 皆さんも遊んでみてはどうでしょう。
 試しに私の本名を打ち込んでみたところ、ミュージシャンとして活躍中といった寸評が出てしまい、同姓同名のプロがいるのかとあわてて検索したが、そんな人はいなかった。

 問題があるとすれば、これを使うとある部分全員が同じ答えを持つことだろうか。いっぺんに同じ方向を向く社会というものがどういう事なのか、筆者にはまだ想像できない。
 そういえば、4年前に面白おかしくブログを書いていた。

2030年 AIを制御する日本 


 全員が同じデータを共有すると、株の売買は全員が売り・全員が買いのポジションを取るため売買が成立しない。のんびりできる場所に行こうとしても同じデータで指示されるから鄙びた観光地が混雑する。ほかにもあるだろう。
 特に教育の現場では効率が良くなるのだろうか。自分で考えないバカが増えるかもしれず、そのメリット・デメリットはこれから様々に議論されるだろう。
 しかし私は思うのだ。世の中はこういうツールがあろうがなかろうがバカに満ち溢れており、ツールのせいで考える力が落ちるような輩は初めからモノなんか考えない。秀才はチラリと参考にしてオリジナルな方向に勝手に進んでいくし、天才はこんなもの見もしないだろう。ほっといて差し支えないのではないか。
 と、ここまで書いてきて学生が全員こういうツールに頼り切って課題レポートを出して来たら教える方はどうするのか心配になった。その時は、あらかじめ出す側もこのツールを使った回答を手にし、同じ表現・文脈を検索するソフトを使いAIツールを使ったと判定されたレポートは落とすようになる。すると今度は学生側がAI回答に手を加え、逆の論旨から迫って同じ結論にたどり着くように矛盾点を上げ検索ソフトにかからないように工夫する。そうなると出題側は・・・。
 アホらしくなった。そんな努力をするぐらいなら普通に勉強した方がラクだろう。

 先日、さるレポートを目にしたところ、目下進化中のAIがどこまで人間に近づいているのかは誰もわからないそうだ。あんまり長生きしたくないような気がした。

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辣腕アトム 対 哲人28号

辣腕アトム VS 哲人28号 (人工知能対決)

岩灯火 十選

2023 MAY 10 21:21:34 pm by 西 牟呂雄

 市井の俳人、岩灯火の句集が手に入った。三百あまりの秀作を、ヨットのデッキや農作業の合間に一句一句嘗めるように楽しんだ。
 岩灯火氏は、長年基幹産業に従事し数々の事業を展開した人で、その足跡は全国に及び、また個人的にも多くの旅をした方である。作品にはその任地や旅先を思わせる句がちりばめられていた。

 さて、俳句という芸術はその表現の短さから、作者或いは評者にとってそれぞれ独自の視点から解釈できる。即ち、作者の思いとは別の味わい方をされることも大いにあり、そこがまた面白い訳だ。
 アンドレ・マルローは『日本人は永遠を一瞬に閉じ込めることができる唯一の民族だ』と言った。
 解釈は人によるだろうが、巡る季節の一瞬を切り取る。或いは思い詰めて思索の果てに何かに目を留め、なんだこんなことだったのか、とフト気づく。子規は病魔との苦しい戦いの中で自然を写生し、生きる糧とした。そういうものではなかろうか。俳句は思想ではない。
 筆者は岩灯火氏を存じ上げている。冷静沈着でありながら時に果敢に決断を下した。氏の日常が今日においてもそうしたものであることは疑いのない所で、いくつもの秀作を吟じた時に何に思いを巡らせていたのか想像するのも味わい深い。その視点から、十句を選んでみた。
 しかし全編から選び出すという作業は困難を極めた。かなりの集中力を要しかつ時間もかかる。一つ選んでは、待てよ、と読み返すのは相当なエネルギーを使う。
 ほんの思い付きで始めてみたが、二度とできない、しかしながら至福の時間ではあった。

声尽きし ところが墓所や 秋の蝉
  お盆の墓参であろう。御尊父 或るいはご先祖の墓参りに汗をかきながら坂を登る。見えてきた時に、故人の姿が蘇り『どうも、お久しぶりです』と感慨にとらわれると、先程までやかましかった蝉の声が一瞬遠くなった。

窓越しの 冬日をつかむ 赤子かな
  お孫さんをあやしていると、つくづく自分の子供の頃を思い出す。そしてこの子のこれからに思いを馳せざるをえない。すると冬の低い日光に移される柔らかい影を一生懸命に掴もうとしている姿が目に入る。何を考えているのか、自分にはこの頃の記憶はない。やれやれ・・・。

長閑さに 進まぬ読書 ときしずか
  氏は著書もある文章家であり、主に純文学を好む大変な読書家でもある。
  長編小説を読んでいるうちに物語が緩慢なために多少飽きる。作品とは無関係なことを考え出して関心はそっちに向かう。
  風がページをめくる。

日に焼けた 簾朽ちゆく 和菓子店
  散歩の途中に偶然見かけた流行らない和菓子屋。以前は気にも留めなかったが最近通るたびに目につく。変わらない風景は郷愁をさそうが、こうも落ちこぼれていると、かえって地上げに合うのじゃないか、御主人のヤル気がないのか、跡取り息子がサボってしょうもないのか。
 そもそも客がいるのも見ていないし、それどころか店の人も見たことがない。
 まぁ、大きなお世話なんだろうけれど。

沈む日に 紅葉の生気 よみがえる
  紅葉は広葉樹の冬籠り前の最期の輝き。だが周囲はもう寒い。
  この葉ももうすぐ1枚残らず落ちて寒さに備えるのか。さて、自分は何を備えるかな。
  するとそこに雲の切れ間からまぶしい夕日が差してきた。振り返るとやや赤みの施された紅葉の何と輝かしいことか。時間はまだあるのだ。

薬尽きて 旅も終わりや 温め酒
  おそらくは海外旅行ではないか。常備薬を日数分準備して旅立つ。名所・旧跡を訪ねながら様々な感慨に耽り、句集の中にはいくつかの作品がある。
  その旅も終わりに近づいたことを表現したのだろう。同時に旅が予定通り終わることを感じさせる。そして次の旅に備えるのである。

一丁の 湯豆腐で足る 夕餉あり
  家人が外出したため一人で夕飯を食べる。氏に料理の能力はない。だが、その場合にも楽しみ方は心得ており、豆腐一丁を手に入れてネギを刻み生姜を添え火にかけて待つ。
  傍らにはどうしても酒がなければ。とっておきの冷酒を含んで、さてそろそろか。
  湯豆腐の芯が適度に熱いのは、さて上げてから30秒後か1分後か、真剣に考えながら箸をつける。

春の雪 『へ』の字『へ』の字を 屋根に積む
  温暖化とはいえ、春の雪はそう珍しくもない。少し積もるが解けるのも早い。
  今日は晴れたので用事を済ませに家を出ると、はや屋根から滴る水音が聞こえる。見上げてみれば近在の家屋の瓦屋根に積もった雪は朝日に照らされて解け始めている。ポタッポタッ。

汝と我の 思い出も煮る 寄鍋屋 
  氏は大変に広範な人脈を持っていて、その誰もが驚くほどの人物なことに驚かされる。知己の末席に私が連なっているのは秘かな自慢ですらある。
  その中のどなたかと鍋を囲んだのであろう。
  さて、日本経済の行く末を憂うるウラ話か、政権中枢のコボレ話か。はたまた互いの秘かな悩みを打ち明け合ったのか。

人気なき 道の自販機 桜散る
  人混みを嫌って桜の終わりを楽しもうと車を出した。『たえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし』とばかりに車を飛ばす。のどが渇いてお茶を買いに自販機の前に停まった。
  なんだ、わざわざ人混みの中に行かなくても、人っ子一人いない道端にも同じように見事な桜が舞い散っているじゃないか。

番外
淡き骨 拾えば軽し 差す冬日

 十句を選んだが、ほかにも捨てがたい名作がある。
 すべてを所望の読者がいれば、作者の了解を得てお届けするにやぶさかでない。

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ハーバー ヨット 酒

2023 MAY 6 7:07:50 am by 西 牟呂雄

出航を待つ我が艇

 連休前半は船に乗っていた。ところが低気圧の早い通過に会って天気は目まぐるしく変わり、おまけに風は台風並みだ。
 初日に東京湾が見えた時点で白波がバンバン立っていたのでイヤな予感がしたが、いつもは穏やかな湾内にもうねりが入っていた。通常こういう波は天気が回復しても残るため、船を出してもやたらと波を被るので、まぁ、楽しくはない。艤装の点検をして早寝。
 すると翌日は土砂降りになった。とは言えヨット屋は濡れるのが商売だから怯んではいられない。怯んではいられないが、そこはその~、朝からビールを飲んだ。

雨に煙るハーバー

 実は僕は雨が大好きで(他のクルーは嫌いだが)キャビンで雨音を聞きながらウトウトしたり焼酎もチビチビ。
 浮き桟橋から覗くと小魚が群れてグルグル回っている。どういう運動法則で動いているのか、突然向きを変えたり反対周りになったりしながらゆっくりと移動している。どうも先頭を進む1尾が全体を統率する訳ではなく、群れの真ん中あたりにいた奴がクッと向きを変えると全体がついて行くようで、1時間ジッと見ていたが全く法則が思いつかなくて数式化を考えるのは止めた。
 雨が上がって来た。燕がヒラヒラと舞う。そうか、もう巣作りの季節なんだな。
 日が時々差し込むが全般的に曇り。もう酔ったかな・・・。

差し込む夕日

 

 フト気が付くと夕方で、何故か誰もいない。みんなはどこかの船に飲みに行ったか外に食事に行ったらしい。海は相変わらずの鈍い鉛色のような荒れ方だが、時間がここだけ止まったような静けさのままだ。
 ハーバーでは見知った顔は皆が挨拶をするし、クルーとはバカな話で盛り上がる。だが航海に出ない時は手慰みにロープを手に取ったりし、結局誰もが孤独なのだ。即ち、目標を失った人間ほど始末に悪いものはない。
 前期高齢者の僕は秘かな目標を持ってはいるが、人に明かすことはない。
 次に目が覚めたのは夜中。クルーは全員酔い潰れて転がっていた。
 一人で外に出て浮き桟橋から星のない空を見上げると、さざ波の揺れを背中に感じながら転がってみた。海と空の間に一カ所だけ真空でカラッポな何かがあって、それが僕だ。その僕は、自由であり、漂っていて、不確かな、無用の長物である。背中の下の海中には昼間見た夥しい命が蠢いて、それらの発するエネルギーはカラッポの僕を通過して暗い曇天の空に放射されていく。一人が寂しくはなかったが、上述のささやかな目標、誠にささやかな前期高齢者らしいものだが、それに思いを巡らせ、ひょっとしてその思いとともに今、フラフラと海に落ちたなら一体誰が気が付くだろう、と思ったら怖くなって寝た。

ウワッ

 翌日、この1年以上水置きしていた船が、メンテナンスのためにクレーンで上架されていく。見ると船底にビッシリと海藻やらフジツボが付いている。これを掻き落としてやらないとスピードは出なくなったり舵の効きが悪くなる。この船は人間で言えばちょうど前期高齢者くらいになるはずだ。水置きの場合走り続けなければアッと言う間に(1年程度で)こうなってしまう。
 ムムッ、僕もボヤボヤしてる訳にもいかない。ささやかな目標のためにも。
 今日は出航する。気付けにウィスキイをストレートであおった。

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さらばビッグ・ボス 日本ハムファイターズよ!

2023 APR 30 21:21:18 pm by 西 牟呂雄

 4月15日 対西武。エース上沢が6回までに悪送球と四球で崩れて6失点。メネスが代わりに出てくると更に3点献上。二人で試合をブチ壊して0-10の大負け。
 4月21日 対楽天。9回裏、抑えの田中はバントに悪送球をさらして満塁にし、西川・山崎に打たれ一死も取れないうちに逆転サヨナラ負け。こういうのをバカという。
 4月23日 対楽天。11回裏、抑えの玉井は打率1割台の辰巳にサヨナラを打たれて負け。死ね、この玉井!
 4月26日 対ロッテ。6点リードの中継ぎで出てきた堀。中川・森・杉本に3連続H・Rを浴びて降板。お前は鎌ヶ谷に行ってバッティング・ピッチャーでもやってろ!
 他にもあからさまな暴投を止められないキャッチャー伏見、たまに打つだけの万波・野村、誰もいないファーストに投げる、といったミスのオン・パレードという体たらく、ピッチャーの代え時と投入する投手の調子も見極めていない、もはやプロとは言えないレベルまで落ちた。大阪桐蔭とやっても下手すると負けるだろう。
 この時点で最下位なのは当たり前。最低のチーム状態で唯一明るい材料は、疫病神の清宮が戦線離脱したことぐらい。B・B(バカ・ボス)は成すすべもない。
 落合が言った。『新庄監督が何を考えているのか見えてこない』それはそうだろう。何も考えていないのだから。
 (影の)オーナーである僕はシーズン途中での監督交代もやむを得ないと決心し、稲葉GMに後を任せるべくフォースを送ることにした。
 まずいことにこの最悪のタイミングで宿敵ホークスがエスコン・フィールドに初見参だ。ホークスも5連敗をはさんでいるものの、ピッチャーの厚みが違い過ぎる。今月でもうシーズンが終わってしまうのではないか・・・。
 するといい試合運びで来た最終回、案の定B・B(バカ・ボス)は池田を出して見事に柳田のH・Rを呼び込む。四球を出した時に代えろよ!次くらい準備しろ!、
 二戦目には苦手中の苦手、顔も見たくない東浜なので諦めていたところ、B・Bがまた1番野村というバカ・オーダーを組んだので一瞬気が遠くなったが、何と2点先取した。すると前回メッタ打ちされた上沢が見違えるような投球で三振を取り出した。やればできるじゃないか。
 第三戦。中継ぎで使い物にならないメネズ!見る気がしない。おまけにキャッチャーは超下手の清水である。
 それが、ですぞ。メネズが点を取られないのだ。ホークスは何をやってるんだ!その後も堀・玉井・ロドリゲスの必敗リレーにも打線は沈黙し、最終回には去年私が引導を渡した最低ストッパーの杉浦が投入された。
 これではだめだと宿敵ホークスを応援する歪んだ心境が分かるだろうか。私の心が折れて、ファイターズが下手に勝つとバカ・ボスが続投するかもしれないという恐怖感がそうさせるのだろう。僕はこの時点で錯倒した心境に陥り、必死に『杉浦!打たれろ!』と祈ったのだ。
 勝ちに不思議の勝ち有り。祈りも空しく杉浦が抑えてしまいファイターズが連勝してしまった。わかったぞ。この連勝はあの疫病神、清宮が抹消されているからに違いない。
 もはやファンとしての矜持は吹っ飛び、喜ばしいのか不愉快なのかの区別がつかなくなり、正常な思考回路を失った。
 ファイターズよ、オレの理性を返せ!!

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齋藤次郎氏インタヴューを嗤う

2023 APR 26 12:12:35 pm by 西 牟呂雄

 文芸春秋の今月号に元大蔵事務次官である斎藤次郎氏のインタヴューが載っている。先ごろ出版された『安倍晋三回顧録』に対する反論である。この方は在任期間中から抜群のキレ者で、10年に一人の大物として有名だった。
 私は回顧録の方も買い、随所で膝を打って快哉を覚え、同時に、こりゃ役所の言い分も相当あるだろうなと思った。そこにこの反論とは、興味深く読んだ。
 文中、氏の在籍していた時代に(おそらく主計局では)盛んに議論が行われ、ただでさえ優秀な官僚が切磋琢磨していたかを述べている。これは本当で、今はどうか知らないが夜の時間を気にすることなく延々と議論し、時には一杯やってから役所に戻ることも珍しくなかった(但し午前中にキャリアが席にいることもない)。
 財務省は税金を取ることと予算を切ることが仕事だ。
すなわち、どうやって増税するか(主税局)いかにに概算要求を切って上手く納めるか(主計局)の大義とノウハウを磨き上げ鍛えられた。そうして財政規律を固く守って来たと綴っている。
 ただでさえ優秀な連中がこうしてスキルを磨くのだ。一様に『それはダメです』という事に関してはプロ中のプロ、右に出るものはなかろう。
 それは結構な話だが、なぜそうかという例に先の大戦時の戦時国債をもって来たのには恐れ入った。確かにパーになってインフレを招いたのだが、それは負けたからだろう。亡母の実家はさる筋であったため、資産のほとんどを軍事国債にしてスッテンテンになったのは事実だ。
 だがその話をこの平和な(日本ではの話)今日に引き合いに出されても現実的ではない。ましてや単年度一発で複式会計もやらないドンブリのまま。この点は長く指摘されてきたが全く議論の俎上にも上がらない。後段になって、今後の防衛費増大についても国債は以ての外であり、復興特別税・法人税・タバコ税でまかなうことを財務省の功績であるとしている。
 筆者はリフレ派で、こういう事態には個人向け国債が最適だと考えている。
 増税は、消費税もそうだが、タイミング次第で必ず経済を冷え込ませる。氏の見解には全体を通じて景気・雇用・成長といった面への言及が全くなく、その配慮すら感じられない。将に『下々のことは知ったこっちゃない』なのだ。
 さて、回顧録にある元総理の財務省に対する非難に対し、消費税アップを延期した際の財務省との攻防で谷垣当時幹事長を担ぎ出そうとしたことを『荒唐無稽な陰謀論』と断じている。氏がその動きを知らなかったはずはないのだが、バックレられるのは実働部隊が旧斎藤組(主計局長だった時の部下達)でなかったからで、このあたりはアリバイ作りとして巧妙だ。
 そう言うご自身は深く小沢一郎に接近し、その人脈をフルに活用していた。そして小沢一郎に操られた細川総理に深夜の記者会見で国民福祉税構想を発表させるという荒業を繰り出した張本人だった。
 更に、故安倍元総理は仮想敵を作り出し、それに対して極端な排除の論理で政権を運営した、と主張されるが、それは氏と二人三脚で組んでいた小沢一郎の得意とするところではなかったか。            『省益とは何を指すのか理解できない』と話を持って行くのだが、決まっているではないか。オレ達の好きに税金を取らせろ、予算を切らせろ、のことだ。そこに手を突っ込まれかけたのが気に入らないに違いない。小沢は好きにやらせてくれた・・・。
 『モリカケ』問題に至っては、リークの可能性を一笑に付し改竄を支持した佐川当時理財局長に同情すらして見せる。筆者はあの件は佐川氏が責任を取って腹を切らなかったので自殺者まで出したと解釈しているので、これも頂けない。元総理が与り知らなかったのはすでに明らかになっている。
 財政規律の話に戻る。1990年代後半までトリプルAだった国債の格付けが2014年から徐々に落ちはじめ、故安倍総理の増税延期を機に『A+』となった下りには、さすがとキレ者と感心した。氏が様々な大蔵キャンダルの挙句、部下に罪をなすりつけたと言われながら辞任したのが1994年なのだ。その後天文学的不良債権処理で失われた20年に陥り財政規律もクソもなくなるのは自分のせいではない、と言いたいらしい。故安倍総理の増税延期は2014年。前年に大蔵省の後輩である黒田氏が日銀総裁に就任し、黒田バズーカを撃ったタイミングであり、ここでも見事なアリバイが成立する。参った。小沢一郎をたぶらかして¥80/$をほったらかしたあと民間がのたうち回って国力がガタ落ちしても財政規律の方が大事だ、という論法だ。
 同じ文芸春秋の一昨年十一月号(10月発売)に現役財務次官が『財務次官モノ申す』としてコロナ対策に纏わるバラ撒きを批判した論文が載り、氏はこれを高く評価している。安倍内閣は2年前に終っていたが随所にアベノミクスを引き合いにしているところもあった。当初、元総理は現役が官邸にモノ申す前にマスコミに発表することに厳しい目を向けていたが、その後は執筆者の矢野事務次官を囲む勉強会をしたそうである。そして安部氏亡き後矢野氏は、真の調整役がいなくなりその穴は大きい、と漏らしたらしい。ちなみに矢野氏は上記佐川元理財局長と同期である。他に片山さつきセンセイ。
 時は巡り、安部-野田総理の代表質問から解散に至り、自民党政権が復活した。その前の民主党政権時に斎藤氏は日本郵政社長のポストにいた。郵政民営に反対の立場で入閣していた亀井静香の人事と言われている。
 すると、政権交代により自身の立場が危うい上に大蔵人脈のポストを奪われてはならじ、とばかりに、任期を残したまま後輩の坂篤郎に譲り、政権交代後の菅幹事長を激怒させた。急遽民間出身に挿げ替えられた。坂氏はこれも優秀な人材で知られており、ゴリ押し人事のとばっちりを喰らった格好でむしろ気の毒ですらあった。

 しかし、繰り返しになるが筆者はリフレ派・MMT支持の立ち位置なのだが、いささかヤバい時期には来ているとは考えてはいる。金利差によって¥130/$で安定しても、一向に競争力が上がらないのはどうしたことか。既に巨額の貿易赤字が3期も続いており、エネルギー・コストは爆上がり。春闘で企業がキバったところで賃金の上昇分は吹っ飛んでしまう。最早手遅れなのか。
 妙案はないのだが、国債の暴落は本当にヤバいから、少なくともイールド・カーヴ・コントロールの形を残しながら10年かけてチビチビ金利を上げるしかないのではないか。市場の歪みは当面置いておく。
 抜本的とか言い出すと大幅に福祉を切るとか、核武装して防衛コストを下げるとか力業の政策に行かざるをえなくなり本末転倒。それでも財政規律が回復する前に災害も不慮の国際紛争にまきこまれないとも限らない。
 蛇足ながら、インタヴュー中でもっとも巧みなのはゴルフについての部分である。ゴルフを始めて面白くなったころ。信頼する上司から『公務員たるもの接待ゴルフなどするな』と言われて止めた、とある。これを現代日本語に翻訳すると、『主計官がたかりのゴルフなんかするな、と言われたので以後は渋々自腹でプレイした』となるだろう。

一般不均衡理論 Ⅱ

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市川左團次さんの訃報

2023 APR 17 22:22:36 pm by 西 牟呂雄

 粋な佇まいに歯切れのいい台詞回し、悪役の時は憎々しく善玉の時は明るく、自在にこなす名優で僕は大ファンだった。

髭の意休

 声の通りがいい。『賢賀に暮らせ』『問われて名乗るもおこがましいが』といった名調子がこの人から発せられたのを今でも覚えている。シビれましたねぇ。
 敵役が得意で『御所五郎蔵』の土右衛門や『助六』の髭の意休など、舌なめずりをするように見た。
 暁星出身なのだが、本人も言っているが在学中は典型的なチンピラだった。ケンカをしたかは分からないが酒・女はやったでしょう。モテたんでしょうね。実は三代目左團次の息子となっているが実の父親は違っていて、複雑な育ちだったのが影響したのかもしれない。

 大変なユーモリストで襲名披露公演での口上は名物だった。僕が聞いたのは雀右衛門の襲名披露だったが『その昔はサングラスをかけてバイクを乗り回しておりました』と笑いを取り『お祝い申し上げまする次第にござりまする』と締めた。ヤンヤヤンヤ。
 更に、高麗屋三代襲名披露興行の口上で『暁星学園の後輩である新・白鸚(九代目松本幸四郎)は、勉学に励み級長や副級長等を勤めその勤勉さに私はとても及びませぬ。わたくしは、高校生になりますと、踊りや長唄の稽古は脇に置きましてキャバレー・クラブに通うお稽古に専念しておりました次第でござりまする』とやったのも見た。はて、なんで役者は暁星が好きなのかな、あそこは第一外国語がフランス語だが・・・。香川照之(市川中車)もそうだ。

 大河ドラマ『風林火山』で上杉憲政を演じてドはまりだったのも懐かしい。名優が逝ってしまった。そういえばしばらく歌舞伎を見ていない。チョイと幕見にでも行くか。
 高島屋ぁ!

イヨッ!高麗屋三代同時襲名

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涙の博多決戦 

2023 APR 13 12:12:45 pm by 西 牟呂雄

 リーグトップを走りだしたホークス。5連敗もして早くもドベの我がファイターズ。いつもの光景と言うなかれ。成績はそうだが、何故か直接対決はいい勝負をして意地を見せるから堪らない、ここ十年に渡って戦い続けている宿命の対決と言えよう。それはあのB・B(バカ・ボス)が毎日オーダーを変え、若手も育てず補強もせず、ただひたすら負け続けた去年でさえ(途中まで)そうだったのだ。
 中島(影の)オーナーは、得意の順位予想でファイターズを2位に予想するという褒め殺しに出たが、冷静な私は騙されないぞ、と秘かに闘志を燃やした。
 今季初の直接対戦という事で、この機会にじっくりと弱点を見据えようとテレビの前に陣取った。ただし、我がファイターズの弱点である。何しろこの数年のファイターズ・ブログを読むと、殆どが悪口である。ヤリ玉に上がったのはチャンスにからきしの中田翔、12球団一下手なキャッチャー清水、出ると打たれのストッパー全員、全くセンスを欠いている清宮、育てようにもどうにも伸びない吉田、等である。
 ついには近藤はFAを行使し、こともあろうにホークスへ。彼の気持ちはわからんでもない。私も見捨てたいくらいだった。
 そう、歪みに歪み捻じれたファン心理は、悪口を書き連ねることでしか憂さを晴らせないのである。今年も滑り出しの5連敗になすすべもなし・・・。

 さて、初戦。案の定の延長サヨナラ負け。結果は力負けだが大マヌケのミス。それも走塁ミスが目立った。6回で二塁にいた清宮は上川畑のヒットで本塁を狙えたのに戻った。だからお前はダメなんだ!7回、せっかく出塁した矢沢が1・2塁間に誘い出されてアウト。
 そして抑え。ロドリゲスがアウト一つ取れずに満塁の挙句犠牲フライ。役立たずのロドリゲスを中継ぎにして北川をストッパーにしろ!あの目障りな髭を剃らせろ!
 それにしてもサヨナラ負け程ファンをドン引きさせるものはない。バカ・ストッパーのロドリゲスは何回やられても平気なのかも知れないが、こっちは本当に堪える。

 二戦目。こっちがエースの伊藤を出せばホークスは苦手の東浜。一歩も引くつもりはないらしい。
 4回に椿事が起きる。清宮が出て、野村がフェンス直撃の大飛球を飛ばした。そして昨日の走塁を反省したのか清宮は長駆本塁へ、判定セーフ。ここまではいい。
 すると審判がリクエストという奇怪なこととなった。打球がホームランだったのではないかとリプレイ検証に。当たり前のようにこれは二塁打となった。そして往生際の悪い藤本監督がホーム上のクロス・プレイにリクエストをし、こちらは何とアウト判定、ふざけるな!あれはセーフだろうが。バカ審判は買収されていたに違いない。まっ、清宮の野球センスから言ってもしょうがないかもしれない。
 そして7回に、B・B(バカ・ボス)が伊藤の変え時を見誤って3点を失う。本当にダメな監督だ。結果は今後を予感させる連敗。負けに不思議の負けなし、けだし名言である。
 B・Bと清宮がいる限り今年も最下位まっしぐら。私の怒りのブログもネタは尽きない。

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君は今 駒形あたり 時鳥(ほととぎす)

2023 APR 8 22:22:16 pm by 西 牟呂雄

 何といじらしい。尚且つせつないというか可愛らしいというか。
 子規によって近代俳句が確立されるおよそ200年も前に発せられた句だが、瑞々しい語感は少しも古びていない。
 さぞかし高貴な方の作品かと思いきや、作者は吉原の花魁である。花魁といってもそこらの場末の酌婦・夜鷹とは訳が違う。大江戸ワンダー・ランド吉原の三浦屋に代々伝わる大名跡の二代目高尾太夫の作である。
 高尾太夫ともなれば、容姿端麗で教養高く書も良くするスーパー遊女。そこらのチンピラなど相手にもされないまさに高嶺の花と言えよう。かの二代目を寵愛したのは仙台伊達藩主、伊達家十九代綱宗公だった。
 花魁は筋のいい情夫(いろ・贔屓筋のこと)には惚れたふり。提題の句は綱宗公に送ったとされる。
 ところが、色事は奥が深い。このような美しい句を送っておいても心は違った。隅田川の楼船上にて公の勘気にふれ、吊り斬りに首を刎ねられた。すると後日、その首が日本橋川と隅田川の合流するところに骸が流れ着き。事情を知る人々は大いに同情し、社を建て「高尾大明神」を祀り手厚く葬った。

ひっそり

 先日、人込みを避けて葉桜を楽しみながら大川端を散策していて、この高尾稲荷を見つけた。
 ビルの一角に嵌め込まれるようにひっそりと佇んでいた。
 場所は確かに日本橋川と隅田川の合流する豊海橋のほとりである。
 どうやら以前は別のところだったのが、Bー29の無差別爆撃で社殿が燃えてしまいここに再建された。
 その際、焼け跡を整地する際に地面を掘ったところ頭蓋骨が出て、これは本物だとご神体として安置した。まずほかに見られないケースである。

 恐る恐る、小さな社を覗いたが、おそらく別の場所で大切にされているのだろう。よく見えなかった。

合流地点の豊海橋

 この伊達綱宗は仙台藩主として三代目なのだが、酒色に溺れてどうしようもない殿様とされている。どうやら、親族の政治介入や家臣団の対立で嫌気がさしておかしくなり、「無作法の儀が上聞に達したため、逼塞を命じる」と21才で隠居させられた。おまけに幼い息子が家督を継いだことがのちの伊達騒動の遠因となるなど、ろくでもない殿様だったらしい。
 しかしながら隠居後は風流人として和歌、書、蒔絵などを良くし、特に絵は狩野探幽に師事して優れたものを残した。
 上記高尾太夫の惨殺も読本や芝居で広まった俗説だとか。実際には旗本の島田利直に身請けされ、死去した後は埼玉県坂戸の永源寺に葬られたというのだ。
 すると、祭られている髑髏は一体誰なのか。
 まさか何でもない土座衛門の骸骨ではあるまいな、と思いながらお賽銭を投げて鈴を鳴らした。

日銀の記念碑

 さて、天気もいいしこのまま浅草橋まで行って神田川の合流を観て行こうか、と歩き出したところこんなのがあった。影がはいってしまい見づらいが旧日銀の跡地の碑である。
 かの渋沢栄一が近代資本主義の第一歩を踏み出した所かと、感慨深い。
 桜は過ぎたが、新緑の中を散策するのにお勧めのコースです。

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三島由紀夫の幻影 Ⅳ

2023 APR 1 0:00:16 am by 西 牟呂雄

 山中湖畔に三島由紀夫文学館はある。故三島由紀夫の遺品を三島家から譲り受けて、町興しの一環として1999年に開館した。直筆原稿や創作ノートが展示してあり、なかなか見ごたえがあるのだが、観光スポットとしてはイマイチらしくすいている。
 遺品の数が膨大なため展示にはテーマを設けていて、今年は『海』だそうだ。
 はて、と腑に落ちなかったが、言われてみれば海の描写は確かに多くかつ見事だ。遺作の表題はは『豊穣の海』であり、『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』ではそれぞれ海を印象深く描いている。
 しばらく読み返していなかったのですっかり忘れていたが、『潮騒』『午後の曳航』『金閣寺』といったベスト・セラーの一群でも海を書き込んでいた。目から鱗の思いで、自分の浅読みを恥じ入るばかりである。
 そしてその海はあくまで明るく輝いている印象だ。筆者は三島が泳ぎは不得手だったという仮説を見立てているので、海に身を晒すことはなかったと考えている。そこへいくと我々ヨット乗りは波と潮の恐ろしさを体感的に熟知しているので、あそこまで美しい表現はできないだろう。
 むしろ、三島の内なる暗黒部分、それは思想的あるいは性的な意味も含め、を海の情景に反射させたのではないか。外側を明るく塗りつぶして、中心のダークさを無意識に際立たせたともとれる。太陽の黒点が鮮やかなように。
 特に『天人五衰』執筆時は例の事件を決意し、すなわち死を覚悟している。頭の中はその葛藤で一杯の時期に、駿河湾を書いているのは象徴的にみえる。

 ところで、文学館の中庭には三島邸にあったものを模したアポロ像が立っている。
 これは実はいわくつきの像で、クリックして拡大して頂くとうっすらと見えるのだが、一見して割れた腹筋の所に横にクラックが入っている。初めは無かったのだが何年かしてヒビが浮き出たらしい。
 ご案内の通り三島は割腹自殺をし、同志森田必勝の介錯を受けて絶命した。
 しかるに三島が憑依したのでは、と以前から言われていたようだ。
 そして私が恐る恐る近づいて見上げたところ。

 何と首筋にもクラックが!
 三島先生!成仏してください!ナムアミダブツ・ナムアミダブツ・・・・

三島由紀夫の幻影

三島由紀夫の幻影 Ⅱ

三島由紀夫の幻影 Ⅲ

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