Sonar Members Club No.36

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石原慎太郎の手記 どうしたことか

2020 JUL 4 2:02:32 am by 西牟呂 憲

 偶然発見された初期の膵臓癌から復帰した手記を文芸春秋に載せていて、かつて氏が軽い脳梗塞を起こして復帰したときの発言を思い出した。
「オレが死んだら日本退屈だぜ」
 この時は秘かに喝采をしたものだったので、それと同じような内容を期待した。
 癌であるという現実に対するまでの恐怖感・絶望感の描写、エッセイ集にしばしば書き連ねる行間から湧き上がって来るような死に立ち向かう、強がりにもにた筆致はさすがだ。衰えない作家としての筆使いに三嘆させられた。
 だが読後の私の率直な感想は『このテッペン野郎 せいぜい我儘に長生きしやがれ』というものである。氏は前段で癌発見についてこう書く。
「私にとっても予期せぬ出来事はまたしても私の人世を彩ってくれた」
 いかにも石原慎太郎節ではあるものの、手記そのものは決して孤独な勝者のそれではありはしない。
 幾つかの偶然という幸運に恵まれたと言うものの、氏は高名な元政治家でありかつベストセラー作家。加えてスーパースターの弟や日の当たる息子達。優れた名医との邂逅も日本にいくつもない施設への紹介というVIP待遇も氏の知名度と資産がなければ容易に受けられる治療ではあるまい。私自身昨年の秋に比較的早く発見された大腸癌の除去手術を受けている。いい気持ちはしなかったものの、返って淡々と施術を受け入れ、その勢いでふざけ散らしたブログを書き綴ってしまった。恐怖心というものが薄かったからだろうか。
 氏の手記は最後に医療体制に警鐘を慣らすところで終わっているのだが、私は逆に偶然の恩恵に浴することなく、また最高の治療を受けられずに亡くなった人々やご遺族が呼んだ際の無念さに思いを馳せた。不快感とは必ずしも言えないものの、読まなければ良かったという気にはなった。
 冒頭述べた感想は氏の変わらぬ筆遣いに対しは懐かしさにも似た感想を述べたものでもので、切り口に関していささか共感を持ち得なかったのである。こちらも年を重ねてスレてきたために、単純には読み込めなくなったのかも知れない。人生の残り時間の密度は氏の方が高いことを割り引いても、だ(もっともこちらも明日ひょんなことから一巻の終わりの可能性もあるのだが)。既に87才と自らの死に対する思いは当然私とも違うだろうが、私だって前期高齢者ではある。
 氏は一切の言い訳はしまい。むしろ氏の高らかな声が聞こえてくる。
「それならオレのものなんか読むな」
 弟の死に際しての美しい語り口とも違った本稿を読むにつれ、これ以後の氏の作品や対談は目を通さずにいることが(私にとって)賢明だろう。月刊誌に載せられる嘗ての盟友亀井静香との対談も最近は二番煎じの話が多い。総理大臣に対してしばしば君付けで語っているのもいかがなものか、ここは総理という呼称がふさわしいのではないのか。尊王の志はあまり感じられず、上皇陛下にたいしてもタメ口的進言さえある。
 氏は保守派・ナショナリストであるが、その姿勢はむしろ伝統墨守型ではなく革命家ふうなのだ。私は氏の発言に賛同すること甚だしいが、実現までのプロセスはじっくりとは練らずに衝動的であり、周りがついてこられない。しばしば反発を生む。そういう手法は若いときこそ際立つが今となっては同志の足を引っ張りかねない。前回の都知事戦において『厚化粧の大年増』発言が対立候補を大いに利したのが典型的な例だ。
 もはや氏に諫言する者もいまい、聞き入れる気は更にあるまい。
「それならオレのものなんか読むな」
 はい、分かりました。さようなら。

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あと一週間 どうすりゃいいのか都知事選

2020 JUN 28 8:08:51 am by 西牟呂 憲

 こんなに面白くない都知事選もないもんだ。最初から決まってるような話。SMCは政治談議は御法度なのだが、こうもどうしようもないともう誰でもどうでもいい、と叫びたくもなる。候補者同士の質の高いディベートなんぞ全く期待できない。
 都民のためになるのがいい都知事であっても、そこは勘弁してくれの一線があって、今回の候補者は全員それを越えている。だって・・・・。
 ポスターを見ながらつくづく嘆いた。

候補1 別にNHKから守ってもらわなくて構わない。いいとこ付きのガラクタ党員を集めて何ができる?ホリエモン新党からもう二人出ているが、本当に政党なのか。名前を売りたいだけがミエミエ過ぎて笑えない。

候補2 左派陣営の票をたのんでの立候補だろうが勝ち目無し。今更何度も出てきて迷惑なのが分からんのかね。もうお役御免と誰か教えてやれよ、左派のシーラカンス。枝〇や福〇が応援演説に来たら浮動票が減るよ。

候補3 消費税反対がどうして知事選の公約になるのか、国政マターだろう。突飛なパフォーマンスで売れたからって調子に乗るんじゃない。都知事って天皇陛下にも拝謁する機会が多いんだよ、タレントさん。

候補4 意外とマトモなんじゃないか、この人。大化けして大坂の知事と維新コンビって面白いかもしれない。大坂からの援軍が来るかどうか。ほーう、松下政経塾でしたか、じゃダメだ。

候補5 オリンピックもコロナもしゃぶりつくしてテレビに顔を出しまくって再選確実!あのですね、中国人とアラブ人は世界でもっとも賄賂が好きで、卒業証明書なんか金でどうにでもなることは有名です。某政党のぬらりひょん幹事長を手玉に取ったのは見事。よかったですね、何でも目立てて、このポピュリスト。

候補6 売名狙いの泡沫。前回出たら著作が売れたので二匹目を。いくらなんでも嫌韓・反中・反米だけで当選されてもね。そもそも右翼は政治家ではない、思想家であるべきだ。

候補7~ 元ブンヤ。〇〇実現党、まだあったの。知らない歌手。ドラマー。元自衛官。マック赤坂の後継者。スーパー・クレイジー君。大坂から来た電波系。動物愛護。自称小説家。元銀行員。 

 棄権はしたくないから再び言う。どうすりゃいいんだこのオレは!いっそ山荘に住民票を移そうか。

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ニュー・アブノーマルな日々

2020 JUN 25 10:10:55 am by 西牟呂 憲

 しばらく振りの都は少しづつ活気を取り戻そうと佇んでいるようだった。報道は盛り場がどうしたこうしたという映像を流しているが、お店は死活問題だろう。そして景気はそれどころじゃないことはみんな知ってる。こんな時は何をやっても早急な回復なんか絶対にない。当面消滅した消費は戻らない。
 政府ができるのは個人に行き渡るように金をバラまいて暫くジッとしていてもらうしか無い。そうやってサバイヴしてもらうのが精一杯で、そういう意味では補正予算を組んだ内容は割りによくできていると思った。
 考えても見てほしい。世界中でメチャクチャになった。
 本当に明日をも知れない人たちを助けてやれ、並みの連中は暮らしぶりをシフトダウンして我慢を重ね、我慢の果てに何とかなった日に飲みまくれ。
 それで僕が何をするかといえば、まあ仕事をするべく社会復帰したが今一つ手ごたえはない。
 緊急事態宣言中は罹らないことが世のため人のためと考えたのだが、このニュー・ノーマルの環境下では総退却後の反転攻勢が見えてこない。そもそも敵は見えない。

 我々保守派はもっぱら他国を批判したがるが、足元の国難に対して有効なスローガンを打ち出せていない。何か発言しようとすると『欲しがりません 勝つまでは』風になってしまい、これでは今日の世論を引き付けられない。3.11の時にあれだけの行動が取れたクレバーな国民だからそういった言葉は必要ない。しかしテキトーな英語じゃねぇ、ウィズ・コロナ?
 するとやはり足元を見据えて、底力を蓄えるべく雌伏。時を待ち気概を養う。そして・・・。
 山から上京してみたものの手探りが続く。通勤の地下鉄はそこそこ込み合ってきたが大したことにはなっていない。マスク装着率100%。喫煙所が混んでいて三密というより集・近・閉(しゅうきんぺい)。結局週の半分はまた山に戻ってしまった。

 僕は常に何かの生産活動に少しは触れていたいという意識が強い。そこでささやかなネイチャー・ファームの面倒をみている。テレ・ワークの傍らチョットだけ手を加えられるのが実に効率がいい。こういうのは半農半テレと言うのだろうか。

ピッコロ君

 ところで先般ヒョッコリ先生のペットだと判明したピッコロ君とマリリンちゃんが異常に農作業に興味を示している。

喜寿庵で植樹


 本当は国籍不明の子供だった気がするがまぁいいや。どうやって入って来るのか分からないのだが、今日も僕が土寄せをしたり水をやっているところに現れた。

マリリンちゃん

 『やあ、ピッコロ君おはよう』
と声をかけると嬉しそうに寄ってくる。一目で分かるアイリッシュセッターだ。そしてその後からマリリンちゃんが物凄いスピードで駆けて来た。そもそも放し飼いは禁止されているのだが、ヒョコリ先生が散歩の途中で面倒になって『ここで遊んで来なさい』と放つのだろうか。しばらく手伝っているのか遊んでいるのか、いつの間にか帰って行く。ピッコロ君は猟犬だから見ているだけだが、マリリンちゃんは僕が土寄せをしているとその横で猛烈な勢いで土を掘ってしまう。そしてそこに鼻先を突っ込んで匂いを嗅いではまた掘り進む。

スーパーにんに君

 写真から検索すると、この子はサルーキーという犬種のようだ。そして、最古の血筋だのエジプト王家のペットだのと大層なことが書いてあり、やんごとない犬なのか。しかし砂漠の犬だけあって掘るのは速くて上手い。
 僕が今年の目玉であるスーパーにんに君を収穫している横で、見よう見まねで野性化したジャガイモを掘ってしまい、できそこないが採れた。
 にんに君が立派に見えるが、一緒に写っているのは親指大のミニ・ポテトである。
 ともあれ今年の初収穫だ。

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今年こそ 日本ハムファイターズ

2020 JUN 19 21:21:07 pm by 西牟呂 憲

 かの大谷を擁して悲願のリーグ優勝、その勢いで広島を下した日本一は2016年だった。引退する武田選手が「オレのために優勝しろ」と激を飛ばし、チーム一丸となっての輝きは遠い昔の話となってしまった。
 それからというもの5位・3位・5位。僕の血と汗と涙をドブに捨てた3年間が過ぎた。5位とは言い方を変えると、最期まで最下位を争ったという不名誉のことである。
 球団はケチで、中田はチャンスに打てず、ピッチャーは他所に取られ、ドラ1はサッパリ、そして栗山監督は全く僕の言うことを聞かない。この五重苦にのたうち回った日々だった。
 今年はどうか。2月頃はC・Sのキャンプ中継を熱心にチェックしたが、その後のコロナ騒ぎで直近の様子は分からない。
 しかし勝負のポイントは以下の4点に絞られる。
 まず先発だが、去年怪我で欠いた上沢のローテーション入りは当然計算できるとして、問題は金子の使い方だ。もう36才と超のつくベテランはあの小憎らしいほどのストレートが復活するのか。僕の見立てでは今年が最期であろうから奮起して体を練ってくるだろう。しかし悪い癖の早い回で点を取られるのが直らなければ躊躇なく中継ぎ、即ちショート・スタータの加藤の後に回す。
 次にこちらもそろそろヤバい4番を勤める中田。チャンスが廻ってきて球場の盛り上がりが最高潮になる、中田も気合が乗ってきてあの悪い目付きが邪悪な光りを放ちながらバッター・ボックスへ、初球外角低めのクソ・ボールを渾身の空振り!もう飽きるほど見させられたシーンだ。大体この一球目で勝負あり。後はいいようにあしらわれて凡打するパターンである。ホークスにはこの手で散々やられたのに本人は気付かないところが致命傷。FAでもだれも声をかけなかった。練習試合でスタンドに放り込んだりしてみせたが、どうせ見せかけだろう。
 そして清宮と菊池のドラ1コンビのレギュラー入り。今年だめなら二人ともトレードだ。どちらもそろそろ体も出来てきただろうから、最初から先発・スタメンでゴリゴリ使い込む。つぶれたらその時はその時。キミ達を甘やかしているほど余裕はないのだよ。しかし清宮のだらしなさは問題だ。去年チームは五位なんだぞ五位!
 最期に、牟観客試合で始まりいつまで続くか分からないシーズンの采配だ。
 昔の東京ドーム時代を良く知っているが、ほとんど牟観客試合みたいなスカスカぶりだったからどうってことないのだが、札幌に行ってからダル・新庄・大谷といったスーパースターのお陰で大入りの中でばかりやっている。あの昔を知っている者なぞスタッフにもいない。だからこそ無観客を逆手に取る秘策はある。ズバリ、ヤジり倒すのだ。ヤジに仁義もクソもない。
 僕はフライヤーズ時代、ガラガラだった後楽園外野スタンドの凄まじいヤジを覚えている。目の前で守備についたかの張本に対するものだった。すると張本は張本でグルリと振り返ってまばらな客席でヤジったあたりをにらみつける、子供心にも怖いと感じさせる迫力だった。今はそんなヤジなどかき消されてしまう、そこだ。小声でやればノムさんの「ささやき戦術」だが、観客がいないのだからベンチからガンガンやればいい。そしてそれに最適なガラの悪さを身にまとっているのはナ・カ・ダただ1人!代打要員でもここで仕事をしてくれれば年棒を維持できるように査定してやる。

 以上の秘策を栗山監督に(テレパシーで)伝えて初戦に臨んだ。
CSで見る無観客のメットライフ・ドームは明るく輝いているようだった。
 我がファイターズはイケメン・エース有原.コントロールは正確無比。静かな立ち上がりだ。そして何故か中田は初打席で二塁打。これは・・・。
 しかし無観客というのも返ってミットのバーンという音やバットのカンッという音が聞こえて、鳴り物が無くても臨場感がある。むしろ好きな時に勝手にチャンス・マーチ(関東限定版)で盛り上がれるのがいいくらいだ。球場ではどうってことのない外野フライでもワーッと沸くもんだからピンチの時は疲れる。
 その後有原は4回に制球が乱れ、山川のボテゴロや死球で3点取られていやな展開に。その間中身までは分からないが西武ベンチからの声が良く聞こえた。
 チャンスは8回にでてきたギャレットという中継ぎ。スピードはあるがノーコンなので西川が四球を選んで盗塁もした。それが続かない。大田・近藤とも実に淡泊でこのチームの悪い癖がでてしまった。
 ここで珍しく栗山監督は僕のアドバイスを聞き、金子を出すと、見事に3人を仕留めた。
 で、この試合の収穫はこれだけ。あのねぇ、0点じゃ絶対に勝てません、これは先が思いやられる。今年も長く苦しいシーズンが始まった訳だ。頭に来た僕はチャンネルをGAORAに変え、同じく無観客の全日本プロレスで留飲を下げた。

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ZERO1にプロレス根性を見た

2020 JUN 12 0:00:30 am by 西牟呂 憲

 3月1日の後楽園ホールの試合をCSで流していたので見た。巷でそろそろコロナがヤバくなった頃の試合だ。これ以降プロレスは興行不能になったので、今頃になってもまだ見ることができたのだ。
 久しぶりのZERO1(以下Z-1)である。実は全日本で結成されていたブードゥー・マーダーズのファンで、TARU(本名:多留)という選手にずっと注目していた。

TARU  エグッ

 ブードゥー・マーダーズのメンバーの変遷とZ-1移籍の経緯は複雑なので割愛するが、Z-1ももう直ぐ20年という歴史を積み重ね、なかなか頑張っている。客もそこそこの入りだった。
 そしてTARUがクリス・ヴァイス・横山・RAICHOを従えてリングに上がってきた。対するは日高・菅原・久保田兄弟の8人タッグだ。
 大将格のTARUがリングに姿を現しド派手なコスチュームの前を広げると、オォ!なにやら牛乳瓶のような形状のものを裏に仕込んでいるではないか、それもたくさん。
 試合が始まると、これはもうザ・プロレスでラフありテクニックありトペ・スイシーダの大技ありの迫力で誠に結構。そしてリング外での攻防の最中にブードゥーの攻撃がレフリーを巻き込んでしまい、しばらくレフリー不在のメチャクチャな展開となった(まっレフリーがいても同じなのだが)。
 そこへGMの三又又三(みつまた・またぞう)がサブ・レフリーとして急遽リングに駆け上がって来た。さあ、ここからだ。ついにTARUが持ち込んでいた謎のビンを振り回すと何と白煙が立ち込める。中身は正体不明の(多分ただの粉)パウダーだった。
 すると何ということだ!レフリー三叉までが一緒になってパウダー攻撃を仕掛け、もうもうと煙るリングでTARUが日高にデスバレー・ボムを決め勝負がついた。

 試合後、三叉は御覧のコスチュームで現れ、自分のイカサマ・レフリー振りを棚に上げて堂々とブードゥー入りを宣言する始末。
 ここで多くのインテリ諸兄諸姉は繭をひそめるだろう。全くの八百長だ、と。
 だが我々のようなスレた観賞者は思う。天晴れなアナーキーさだ。ただの潰し合いはプロレスとは言わない。バーリトゥードやアルティメットがどうしてもエンターテイメントに成りきれないのはそのアナーキーさを演出できないから。
 ここで改めて言いたい。
 プロレスとは異能者が肉体の限界を見せる芸である!
 そうであるならそれなりの芸風と作法があり、それが選手の個性を際立たせる。我々が求めるのはそこで繰り出されるアナーキーさの味だったのである。
 プロレス万歳

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贋作ジェット・ストリーム 乾いた歌声しか癒してくれない

2020 JUN 3 9:09:26 am by 西牟呂 憲

ーミスター・ロンリーが流れて来るー 
 
 滑走路の誘導灯が小さくなって
 テイク・オフしました
 周りは漆黒の闇に月明かり
 星座が視界に入ります

 スティーヴン・セガールが主演した
 『撃鉄(原題 GekiTetsu)』の
 エンドロールの際に流れる『Save Me』
 実は歌っているのもスティーブン本人なのです
 合気道の達人でギターも上手い
 引退するそうです
 彼の歌声をお楽しみください


この静寂を破って 叫びたくなるオレ
この人混みを なぎ倒して 駆けだしたくなるオレ
だれか救ってくれないか 愛してはくれないか
ブルースしか癒してくれない

オレは オレから逃げ出したい
今のオレから 自由になりたい
オレは オレから逃げ出したい
今のオレから 自由になりたい

失う物などない 伝える言葉もない
たった一人で 大地に立つ
行くところもない 愛する事もない
ブルースしか癒してくれない 

オレは オレから逃げ出したい
今のオレから 自由になりたい
オレは オレから逃げ出したい
今のオレから 自由になりたい

オレの心に 日は射さない 
夜明けも来ない 濃い闇の中 
消えた人込み 殺風景なオフィス通り
ブルースしか癒してくれない

オレは オレから逃げ出したい
今のオレから 自由になりたい
オレは オレから逃げ出したい
今のオレから 自由になりたい

さびしくはないし 群れたくもない
挨拶はするが 長いのはいやだ
オレの話は 聞かなくていい
ブルースしか癒してくれない

オレはオレから 逃げ出したい
今のオレから 自由になりたい
オレはオレが キライなんだよ
今のオレを  捨ててしまいたい


ーインストロメンタルのミスター・ロンリーが流れるー

いかがでしたか
松田雄作さん ヨコハマ・ホンキー・トンク
没後30年が過ぎても
なお我々の脳裏に焼きついています
探偵物語の工藤俊作
そうそう、この時は
『工藤ちゃ~ん』の成田三樹夫さんもいましたねぇ
ブラック・レインの佐藤浩史
こちらは高倉健さんが刑事でした
独特の声は 
まさにジャパニーズ・ブルース

また、空の旅でお待ちしております
パーサーはジェット・ニシムロでした

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おそるおそる山から下る

2020 MAY 27 7:07:25 am by 西牟呂 憲

 この3色、楓・藤・新緑は毎年楽しみにしている喜寿庵の初夏の色合いです。母屋二階からのアングルですが、実に目にやさしい。
 楓は接ぎ木で、新芽の時からこういう色、紅葉の頃にはもう少し明るくなる種類です。芝生はまだまだアオくなく、ちょうどレーションを終えたところ。もう直ぐ色が濃くなります。すると雑草の草むしりがハンパない。
 遅咲きの枝垂桜が散った頃からこっちにいて、初夏も過ぎてしまいますなあ。東京のナンバー・プレートは肩身が狭いので出歩かないし誰にも会いません。
 毎日見ているうちに手作り菜園ネイチャー・ファームの異変に気が付きました。

 これはジャガイモの新芽ですが、別に今年蒔いた所でもなんでもないところに伸びてきました。
 去年の収穫の時に、あまりに小さくて使い物にならずに捨てたクズ芋が芽を吹いたようです。とするとこの健気なジャガイモは野生化したのでしょうか。
 そうだとすれば、毎年マトモなやつだけ採って後はほったらかしておけば、勝手に自生してくれるようになりゃせんかな。文字通りのネイチャー・ファームになって、木の実を取るようにジャガイモが収穫ができるかもしれません。
 その他、大根・ピーマン・茄子のレパートリーに加え、今年はスーパー・ガーリックにんに君が期待されます。去年は小指の先ほどのチビにんに君でしたが、勢いが違う、楽しみです。

 そろそろコロナ騒ぎも終息に向かっています。私がこの渦中でツラツラ思ったのは次の一言。
 自分の身は自分で守る
 これですね。
 ニュースを見ても、専門家の意見も、ネットの反応も、どれも信ずるに値しなかった。誰も分からなかったのです。
 トイレット・ペーパーを買いあさった、開いている他県のパチンコ屋に行った、自粛前に飲み屋・風俗に行った(中には野党議員も)、デマ・メールが飛び交ってそれを信じて拡散した、こういう人達も守らなければならない立場は大変でしょうね。以下は雑感です。

政府・及び総理 誰も何も分からない。専門家も知見が無い中での初動では。早期に学校の閉鎖を決めるとそれも批判される。一律十万円の給付に対して誰からも『ありがたい』という感想が聞かれない。西村・加藤両大臣は危機管理向きの顔じゃないのがマイナス。官邸官僚も危機には強くなかったですね。菅官房長官の切れ味もかすんでしまった。あの新法とマスクはさすがにマズかった。

小池都知事 こういう時はより過激な事を言った者勝ち、の間合いを良く心得ていますね。とにかく政府の鼻を明かしてやろう、の魂胆がミエミエで何かと『そこは国が』と発言するのも胡散臭い。ステイ・ホームと英語にしなくとも古来日本には「蟄居閉門」という美しい言葉がありますよ。国との対立軸を打ち出して煽るようにするところはポピュリストの面目躍如。ロックダウンという言葉を出して煽ったところは結局何でもなかった豊洲を思い出させて違和感がありました。都庁内部ではかなりの批判がでているらしいですね。時として目立ててうれしそうに見えるのは僕がヒネクレているからでしょうか。大阪モデルが出れば東京アラートね、マッ、再選確実おめでとうございます。

吉村大坂府知事 いい度胸をしてます。加えてバックが余程しっかりしているのでしょう。東京では見られませんが、喜寿庵では『そこまで言って委員会』が入るので、生出演しているのを見ました。どうやら松井大坂市長が支えているようです。更に、感染初期から具体的なアドバイスをしている優秀なブレーン(阪大医学部?)がいるのではないかな。中央は船頭が多すぎます。舞い上がらないでくださいね。

橋下徹 出だしの時は『みんな感染して抗体作っちゃえばいいんですよ。僕の子供たちみんな罹ってほしいぐらいだ』と言いましたね。熱が出ておとなしくなったと思ったらあのマズい法律へのイチャモンで息を吹き返しました。この人やっぱり政治家に向いてない。伸びませんね、政治家としては。既得権益だ何だと利害が渦巻いているのを涼しい顔して調整するのがプロでしょう。石原慎太郎タイプは大派閥の頭は張れないんです。面白いからもっとやっていいけど。

〇憲〇〇党議員 この国難に審議を遅らせる党利党略に血道を上げているところは実に品格を疑わせるものでした。コロナ騒ぎで最も役に立たなかった政治家はキミ達だ。そんなことばかりしてると絶対に支持率は増えません。特に高卒発言はイカン。

番外 黒川検事長 何とも魔の悪い時に麻雀に興じたもの。

 こういう時に頼りになる「あの人が出てきたらもう大丈夫だ」となる長老がいない。例えば故佐々淳行氏のような危機管理のプロ、神様。相当な修羅場を潜り抜けてきた歴戦の強者が、『そういう時はなあ』とのっそり現れれば国民も安心します。サマワのヒゲの隊長・佐藤参議院議員あたりに将来期待したいですね。そうそうサマワで思い出したが、自衛隊にはもっと凄い番匠幸一郎という優秀なOBもいる、派遣部隊の群長でした。この人は外務省や民間の丸紅に出向したこともあるメチャクチャ優秀な方です。こういう人に危機管理官をやってほしい。
 それにしても我が国のコロナの死亡者数(亡くなられた方々に心よりのご冥福を祈ります)なんかはダントツに少ないのは何故か。今月号の文芸春秋で山中ドクターが『ファクターX』と呼んでいた何かを日本人が持っているとすれば、これを追及して二度目のノーベル賞でしょうね。案外それは神風が吹いていたせいかもしれませんよ。
 そして後手後手に回ったと言われる政府の対応が最善の策だったりして。

 などと思っていたら初夏も過ぎて梅雨の季節になってしまいます。
 冒頭のアングルから撮った三色のうち藤の花がもう散って緑が濃くなってきました。季節は巡っています。
 更にはあの野生のジャガイモに花が咲いてしまいました。
 そしてついに緊急事態宣言が解除されます。しかしホイホイ巷を飲み歩くのはまだ先でしょう。必ず第2波は来ます。海外から来るのかそれとも深く先行したウィルスが再び変異・活性化するのか、それは分かりません。
 だからもう一度『自分の身は自分で守る』と強調せざるを得ません。
 
 

 最前線で戦ってこられた全ての医療関係者の皆様の御健闘に最大の敬意を込めて、山を下ります。

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そこにいた男 Ⅱ

2020 MAY 20 21:21:57 pm by 西牟呂 憲

 某警察署の取調室に向かう刑事が話していた。
「黒川、その話は本当か」
「デカ長、本当です。私が取り調べているときに突然言い出したのです。出井主任も一緒でした」
「自分が原部穣で死んだのは女房の浮気相手だって?いくらなんでもおかしいじゃないか」
「ですから妻に会わせろ会わせろの一点張りでした。自分は椎野なんて男じゃない、とも」
「心神喪失による減刑を狙ってんだろ。オレがバケの皮を剥いでやる」
「それが原部で喋る話はミョーにつじつまが合うんですよ。椎野だったときは本当に記憶にないように見えます」
「オマエも青い。まあ見てろって。よし、入るぞ。(ドアを開けてドカドカと入る)椎野茂だな!」
『いえ、きのうもそちらの刑事さんに言いましたが僕は原部穣です、信じてください』
「なんだ、まだやってんのか。その原部さんはもう亡くなってるんだよ。原部さんなら生まれはいつでどこなんだ」
『はい、平成✖✖年▽月〇〇日、東京都千代田区で生まれました』
「わかったわかった。だったら小学校2年の時のケガの話してくれる」
『えっ、ケガ?』
「そうだよ。その話してよ」
『・・・・』
「どうした。覚えてない?じゃあこれはどうだ、高校の時にバンド組んでたよね。よくライブハウスに出てたったって聞いたけどそこのハウスの名前教えて」
『ライヴ・・・ですか・・・』
「ほら見ろ。お前は椎野茂だろ!記憶障害のフリなんかしてるんじゃない!」
『いや、本当です。僕は原部穣です!信じてください!椎野なんて名前じゃありません、ワー!』
「泣いたってダメだ!この野郎」

「まったくしぶとい野朗だぜ。一日中『僕は原部ユズルです』の一点張りだ。きょうこそ暴きたおしてやる」
「ですがどうも様子が変ですよ。あの取り乱し方」
「だからどうした。黒川、オマエも3年目だろ。あの程度のガキなんざ一捻りだ。(バーンッとドアを開けて)オウッ、椎野。きょうこそ本当の事を吐けよ!」
『おはようございます。エート刑事さん』
「ほう、原部だってのはもう諦めたのか」
『何の話ですか』
「きのう散々手を焼かせたじゃないか」
『刑事さんにお目にかかるのはきょうが初めてですが』
「バカ言え。昨日会ってるだろう」
『きのうは出井主任って方とそこにいる黒川刑事さんです』
「なにー、今度はそう来たか。よーし、オレはデカ長の柴田だ。早速始めるぞ、おい、椎野。〇月✖✖日の夜どこにいた」
『何度も出井さんにいいましたけど勤め先の◇◇旅館にいたはずです。僕は手帳も持ってないし日記をつけてもいませんから、旅館の人に確認してください』
「それは聞き込みしてるさ。だけどその日の深夜に▽▽区の高層マンション街からあんたそっくりの男がタクシーに乗ってるんだ。そしてその日のそのあたりで人が死んでる」
『原部という人なんでしょう。僕もニュースで知ってます。その時公開されたドライヴ・レコーダーに映っている男はケガのあたりが僕にそっくりです。それで聴取されているんでしょうが私じゃありませんよ』
「ところが困ったことにあんたにゃアリバイがないんだ。旅館の同僚はその日はあんたは返ってこなかったと証言している」
『えっ、そんなバカな・・・』
「どこに行ったかさえ話してくれれば疑いは全て晴れるんだがな」
『疑いって、まさか原部という方を僕ガ何かしたというのですか』
「そこは調べている最中だが、事件性はあるとにらんでる」
『でも週刊誌やワイド・ショウではその人の奥さんが浮気してたって言ってますよ』
「その相手があんたでノコノコやってきたところで原部さんとトラブルになったとすればどうかな」
『私もどこにいたか記憶が定かではありませんが、トラブルだのタクシーに乗ったことだの一切記憶にありません。私のアリバイより原部さんの死因は何なのですか』
「それはおとといお前が原部の時に、追っかけられた後にガード・レールに頭を打ったと言ったじゃないか。この黒川と出井が聞いてるぞ」
『はぁ、私が原部の時って何ですか。その方が亡くなったんでしょう』
「きのうその口で原部だとほざきやがったじゃないか!ふざけるな!テメー、オレをおちょくってんのか」
「デカ長、落ち着いてください、あばれないで」
「黒川ウルセー!」

「昨日はデカ長キレてましたよ。きょうはやめてください。頼みますよ」
「出井も来るんだろうな。お前一人じゃ事の信憑性が確保できるかどうか分からんからな」
「主任はもう行きましたよ。ほら、あそこにおられます」
「オッ、おーい出井」
「デカ長。おはようございます」
「済まんが付き合ってくれ」
「何だか苦戦してるそうですね」
「参ったよ。見たこともない嘘つき野郎だ。さて、始めるか(ドアをバーンと開けて)。オウ!きょうのテメーは誰なんだ」
『(下を向いて)おはようございます。言ったじゃないですか、僕は原部穣ですよ』
「ホウ、そうか。死んだ男が蘇ったか」
『だからー。僕に飛び掛ってきた人は死んだかもしれませんが、その人は知らない人でした。僕の家で待ち伏せでもしてたんでしょう』
「その後タクシーに乗ったよな。自宅マンション前から。そこからどこに行ったんだ」
『乗りました。でも飲んだ時によくあるんですがどこに行ったかさっぱり覚えてません』
「そうかよ。オレは知ってるぜ。✖✖のホテルというか旅館だ」
『そんな旅館なんか行ってません。何しに僕が行くんですか』
「バカ!そこで働いてんだろうが」
『違いますよ。僕は〇〇商事の社員です』
「へー、そうかい。だったらその〇〇商事で何してるんだ」
『資材調達部の機材課設備係です』
「・・・・それは死んだ原部さんの部署だ!」
『だから僕が原部ですってば』
「だったら聞くが、その晩の後から何日出勤したんだ」
『・・・・それは・・・』
「ホレ見ろこのヤロー!」
「デカ長、落ち着いて。さっき君酔うと覚えてないって言ったな」
『はあ』
「まさかと思うがなんか薬やってないだろうな」
『くすり・・・って飲んでますよ』
「やっぱりそっちかテメーはよォ!」
「デカ長、待ってください。君何飲んでんの」
『あの、酒飲むとかえって頭が冴えて眠れないもんで』
「何を飲むんだ」
『レ〇〇〇ミンです』
「なんだそりゃー!脱法ドラッグかぁ!」
「デカ長、違いますよ。チョッ、チョット来てください」
「バカヤロウ!今半落ちしたじゃねーか!」
「黒川!デカ長を抑えろ」

「デカ長、あいつはシロですよ」
「寝ぼけるんじゃねぇ。真っ黒だ」
「あいつが飲んでるレ〇〇〇ミンは睡眠導入剤です」
「それがどうした」
「過度の飲酒とともに服用すると解離性譫妄(せんもう)といって意識障害を起こすんです」
「だからってシロにゃならんだろうが」
「デカ長、鑑識から上がって来た結果もガイシャの遺体に格闘の後はなく、恐らく自分で転んだ打ち所が悪かったのだろう、とのことです」
「だったら何で自分は原部だって嘘を言い張るんだ」
「ガイシャの、いや被害者じゃなさそうなんでホトケですね。ホトケの奥さんが出合い系か何かで知り合た男を自宅に上げて浮気をしてたのは報道だけじゃなくてこっちもウラがとれてます。その相手として現れたのが譫妄でヘロヘロになった椎野でしょう。寝物語にダンナのことを聞かされているうちに自分が原部だと思い込んだんですよ」
「そんなバカな。思い込んで普段は旅館の番頭をやってたのか」
「旅館にいる時は椎野なんです。解離性多重人格なんです」
「それじゃ何か、あいつの頭の中では死んだのは誰だってことになってるんだ」
「突然現れた第三者で奥さんの浮気相手だとでも思ってるんでしょう。もっとも椎野の時はこの件と無関係という認識でしょうが」
「冗談じゃない。オレのカンに狂いはない。あいつがホシだ」
「アイツって誰ですか。椎野はホトケに指一本触れてませんよ。原部で証言した内容は鑑識の結果と一致して蓋然性があります」
「それじゃ原部だろう」
「原部はホトケでしょう」
「うるさい!どっちでもいい!こうなったらトコトン追い詰めてやる」
「そんなことしたら逆提訴されることだってありますよ」
「じゃ何か、そのナントカ障害のガイキチを釈放して野放しにしろってのか」
「まずは精神鑑定を受けさせるんですね」
「知ったことか。よーし、ぶっ殺してやる」
「本気ですか。イヤちょっと待ってください」
「デカ長落ち着いてください。どうしたんですか拳銃なんか出して」
「抵抗するな、テメー等も弾き倒すぞー!」
「やめてください!」「拳銃しまってください!」
「やい、出井!黒川!公務執行妨害で逮捕するぞー」

「黒川、デカ長がヤバい。狂ってからじゃ遅い」
「出井主任。わかりました。僕が見張ってますから、上の方に手を回して本件から外してください」
「わかった。いやそれどころじゃないかもしれん。先にデカ長の精神鑑定だな。取り調べ中のデカ長の識別能力を超えてしまったようだ」

そこにいた男 Ⅰ 

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そこにいた男 Ⅰ 

2020 MAY 19 23:23:06 pm by 西牟呂 憲

 原部(ばらべ)穣(ゆずる)36歳、妻と二人で東京のマンション暮らしである。商社勤務のサラリーマンで、仕事はそこそこできるだが、酒が好きで酒乱のケがある。原部の運命の歯車は狂うべくしてある日狂った。
 週明けの月曜日、酒にしたたかに酔いフラフラとタクシーを降りた途端に酔い過ぎて一瞬どこにいるのか迷って道端に佇んだ。もう道を歩く人もいない。向かいのマンションが原部の自宅があることに気が付いて、渡って帰ろうとすると、突然男が飛び出してこっちに向かって来る。他に人はいない。とっさに酔った足取りで逃げようと踵を返した。
「待てコノヤロウ!」
追ってくる男が叫ぶと車道を横切って走る。そして二車線の車道を渡る寸前に原部が派手に転んでしまった。すると折って来た方の男はそれに躓くように足を取られそのままつんのめってボクッという音を立ててガード・レールに頭から突っ込んだ。
 重い打撃音とともに「ガッ」とか「グッ」とかいううめき声が聞こえた。
 原部は車道でひどく顔を擦りむいて血まみれの凄まじい形相になっておきあがる。男の方は道端で頭を分離帯の方に向けて転がっている。気が付くと服は転んだ衝撃でところどころ破けたりして乱れている。明らかに原部を狙った突進だった。
 そこにタクシーが通りがかって、佇んでいる原部をタクシー待ちと思ったのかハザードを点滅させながら寄せてきた。倒れていた男には気が付かなかったようで、原部のいる少し先に止まった。
「お客さん、乗るなら早く乗ってください」
 息の上がっていた原部は途端に酔いが回り、後先考えずにその車に乗り込んだ。
「お客さん、お客さん、つきましたよ」
と起こされてワン・メータ程度の料金を払って降りると持っている金を数えて目に入った看板に駆け込んだ。ここまでは何回もやってしまったことのある酒の上の出来事だった。

 翌日、出社しようとしてやめた。一瞬どこかと思ったが、どうやら旅館にいることは分かった。何が起こっているのかサッパリ分からず行っても仕事にならないと考えた。夕べの事ははっきりとは覚えていないが、何かやらかしたような不安が頭を掠めた。そして妻の携帯に連絡だけは入れようとライン通話しようとしたが、拒否される。電話番号も着信拒否。どうしたことか。
 とスマホでニュースを見て仰天する。
『深夜の殺人事件か マンション街の死角』
「深夜の突然の来客とトラブルになったらしい会社員 原部穣さんがマンション外で事故に会い死亡。現場から逃走した男がいた、という目撃証言もあり何らかの関係があるとみて警察は行方を追っている」
 オレが死んだ?冗談じゃない。服を着てラウンジに行き、ちょうど付いていたテレビがワイド・ショーをやっていたのでそれに見入る、そこでもニュースになっていた。キャスターが『現場から立ち去ったタクシーの行方を追っています』等と言っている。少しづつ記憶が蘇った。原部は逃げてきて顔に怪我をしているが、実際には何もしておらず、突然男が襲い掛かってきたのだ。そしてフラフラとタクシーに乗った。
 ハッと事の重大さに気が付いて銀行ATMに走った。下ろせない。こんなに早く封鎖されるとは手回しが良すぎないかと思ったが、とにかくダメである。
 原部は途方に暮れた。所持金は一万円もない。妻は連絡は取れない。何が起こっているのか。

 椎野茂は住み込みで働いている簡易旅館のテレビニュースに見入っていた。ベイ・エリアで起きた事件をワイド・ショーで特集していた。
 夜中にご主人が訪ねてきた男と争って死亡。犯人と思しき男を乗せたタクシーを追っている、という内容だ。
 掃除の早番で来たおばちゃんが声をかけた。
「おはようございます。椎野さん、夕べは夜中にケガして帰ってきて大丈夫ですか」
「おはよう。うん、もう何ともないよ」
「全然覚えてないんですって。椎野さん休みの時に時々変になって帰って来るって評判ですよ」
「ああ、オレ酒癖ワリーからね」
 実は酒癖の問題ではないのだ。酔っ払って寝付けないときにレ〇〇〇ミンという睡眠導入剤を使う癖があって、時々意識を失うことがある。
 椎野はこの簡易旅館で去年から週に3日程働いている。この近辺には修学旅行の生徒を泊める安めの旅館がいくつかあったが、少し前から訪日する外国人の宿泊客がその値段の安さから来るようになった。それに対応する人材が全くいなかったため、語学対応する人材を求めていた時に、初めはボランティアとして雇われた。
 椎野は英語だけではなく中国語や韓国語、カタコトでロシア語、イタリア語を喋って見せたので社員待遇にしてもらい日払いで手伝っていた。
 ただ、働く時は住み込みでほかの手伝いもこなすという条件だったが、問題は出勤が不規則なのだ。一週間もどこかに行っていたりして顔を見せなかったり、或いは一日おきとなったりする。それでも客受けがいいため社長も従業員も大目に見ていた。給料は日給だし、明るくみんなに好かれてもいた。
 ここで拾われるまでは失業者だったようだが、過去のことはあまり話さない。犯罪者ではないようなので誰も詮索しなかった。
 この日は若いアメリカ人が全く日本の事情を調べもせずに投宿し、これからどうやって観光するのかの相談に乗っているうちに意気投合し、一緒に飲みに行ってしまった。
 だが、椎野自身はなぜケガをしたのかは全く記憶に無かった。

 原部は、なぜかアメリカ人のカップルと居酒屋で盛り上がっていた。
 アメリカ人二人はインドから来日していて、世界一周の新婚旅行なのだそうだ。
 偶然原部がかつて赴任していたバンガロールから来たと言う事で大いに話の花が咲いた。
「あのサイババの病院は見てきたか」
「見た見た。びっくりしたよ」
 話しながら原部は少し困惑した。なぜならバンガロールの記憶はあるのだが、どこに住み、何の仕事をしていたのかさっぱり思い出せないのだ。
 モヤモヤしながらアメリカ人カップルと別れたのだが、二人は『一緒に帰らないのか』と怪訝そうにした。
 悪い癖で、眠れるために睡眠導入剤を口にしてから帰宅するのだが、自宅マンション前でハッとした。突然意識がハッキリし、オレはここで死んだことになっているのだと気が付いた。そして歩きながら自分の結婚生活の記憶が殆んどないことに唖然とした。それどころか自分の生い立ちを思い出そうとしているうちに意識が混濁してきた。

 椎野は勤務先の旅館のロビーにある週刊誌を目にし、先日テレビで見た深夜の事故の記事を読んでいた。
 かの事件は意外な展開を見せ、格好のワイドショーのネタにもなっていたのだ。
 事件の直後は、亡くなった原部さんの奥さんがここのところストーカーに悩まされており、事件当日はそのストーカーがマンションの前に現れたため原部氏が追いかけて事故に会い死亡した、という報道だった。
 ところが一週間もしないうちに風向きが変わってきた。
 曰く、被害者の奥さんであるA子さんは原部氏に隠れてズーッと付き合っていた浮気相手がおり、被害者の出張の多いことをいいことに自宅マンションでの密会を重ねていたらしい、と。そしてその浮気相手がたまたま被害者がいるときに訪ねてきたためにトラブルとなり、事故に遭ってしまったのだ、と。ストーカーという情報は本人からのカバー・ストーリーとしてリークされた、つまり嘘だ、と。
 何とも気分の悪い話に不愉快になりながら、椎野はしきりに顔のケガが気になった。どこでやったか分からないが擦りむいた後が赤く瘡蓋のようで見苦しい。
 その時、つけっぱなしにしてあるテレビから速報のテロップが出た。
「警察は先日の深夜に起きた事故で現場からタクシーで去って行った不審な男について、タクシー会社から提供されたドラオヴ・レコーダーの映像を公開することにしました」
 ブレイキング・ニュースで画面が変わると『あっ!』と声を上げた。映しdされたのは明らかに自分の顔だからだ。
 同時に数名の男と制服警官が入り口から入って来た。受付に向かっていたのだが、ロビーにいる椎野に気が付いてドカドカと向かってきた。
「椎野茂だな。原部穣さん死亡の件で任意同行頂く」
 えっ、今ニュースで言っていた件か。オレの顔が出たけど何も関係ないぞ。
「わたし、椎野ですけど・・。何の話ですか」
「言い分は署でいくらでも聞いてやる。とにかくおとなしく同行しろ。逆らうと余計罪が疑われるぞ」
 高圧的な態度に呆気に取られているうちパトカーに乗せられてしまった。

つづく

そこにいた男 Ⅱ

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泥沼コロナ架空対談 トランプVS習近平

2020 MAY 13 10:10:05 am by 西牟呂 憲

トランプ(以下ト)『いいかげんにしろ。武漢ウィルスのバラ撒きの落とし前はどうつけてくれる』
習「冗談じゃない。こっちも被害者なのにいいがかりだ」
ト『武漢の研究所から漏洩したのは分かってるぞ』
習「何を証拠にそんなことを」
ト『あのなー。コウモリのウィルスを研究していた女がそこで間違ってバラまいたのはバレてんだよ』
習「それこそあなたのキライなフェイク・ニュースだ。その女性は感染もしていなければ亡命もしない。そちらから我が国に持ち込んだという噂はあるぞ」
ト『ガッデーム!それではどうしてこっちの死人の方が多いんだ?』
習「それはアメリカ人の衛生概念がないからだろう」
ト『ふざけんな。携帯解約件数1400万人だってな。隠しても無駄だ』
習「それがコロナの死人だと言うのか」
ト『ごまかしは得意なんだろう。新幹線を埋めたくらいだ』
習「そんなことはありえない。新幹線は埋めたのではない、掘り起こしていたところの映像だ。そもそも貴国は真っ先に我が国からの渡航を禁止したのに結局大流行になったのは何故だ」
ト『アメリカ国籍を持っているチャイニーズは数百万もいる。その一割はスパイで残りの半分はマフィアじゃないか。一体感染者を何人送り届けたんだ』
習「そっちこそ毎年インフルエンザで1万人も死んでるんだろう。その内のヤバいウィルスを我が国に蒔いたと言われているのを知らないのか」
ト『その1万人はほとんど自然死の範疇だ。間に合えば抗生物質で直るたぐいなんだよ。そっちの1400万人とはわけが違う』
習「人口比を考えろ。我が国はそっちの10倍いる。それでもインフルエンザの死者は我が国と比べてケタが違いに多いじゃないか」
ト『アッ、認めたな!人口比からみても、やっぱりコロナで1400万人死んだんだな』
習「バカ言え、交通事故やらの数が多いって話だ。そっちみたいに銃撃戦はないがな」
ト『銃撃戦の代わりに人民解放軍のなぶり殺しってことか。告発した医者もかわいそうに』
習「あれこそコロナの犠牲者だ」
ト『天安門の時だって何万人も撃ち殺したくせにエラソーによく言うぜ』
習「あの頃私は地方にいた」
ト『そんなこと関係ない。今度こそ世界の嫌われ者になってるぞ。北のアイツだって国境閉鎖したぐらいだ』
習「口頭親書で随分感謝されている」
ト『口頭親書なんか信じられるか。都合よく誤魔化せ、とオレが教えてやったのを知らんのか。ついでに教えてやるが日本に擦り寄っても無駄だぞ。シンゾーも国賓で呼ぶのはやめにするらしい』
習「干渉はやめろ。安倍は相変わらず是非着てくれ、と言っている」
ト『それは3月頃の話だ。今は違う。オレはしょっちゅう話してる』
習「私は上皇陛下にも会っている。日本の皇室とは関係がいい」
ト『オザワとかいうのにゴリ押しさせたんだろ。そいつはもう表舞台にはいない。シンゾーはそんなヤワじゃない。それよりコロナのせいにして貿易協定の未達はやめろよ』
習「協定でも無理な場合もある。経済復興が早いと言ってもコロナ以前にした約束はお互いに無理だろう」
ト『知ったことか。まず農産物を輸入しろ。それが無理ならまた関税を上げるだけだ』
習「たいがいにしてくれ。そっちも困る話だろう」
ト『隠蔽に怒ってるのはオレだけじゃない。イタリアもドイツもオマエと付き合うのはもうたくさんだ、となってる。WHOを金漬けにしてコントロールしたといってももう無駄になった』
習「我々には一帯一路がある」
ト『上等だ。プーチンは感染者16万人でキレたらしいな』
習「こっちにはアフリカと韓国、スリランカがある」
ト『そんなもんくれてやる。じゃあな』
習「再見」
ト『やだよ』

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