Sonar Members Club No.36

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擦り寄るべからず 日本の外交

2022 MAY 26 0:00:20 am by 西 牟呂雄

 林外務大臣が訪韓した。尹大統領の就任式に出席し岸田総理の親書を渡したという。
 新大統領は対日関係の改善に意欲があるそうで、関係改善を図ると発言している、大いに結構な話だ。岸田総理は「日韓の間には難しい問題が存在するが、このまま放置はできない。国と国との約束は守ることを基本としながら、わが国の一貫した立場に基づいて取り組みを進めていきたい」とコメントした。
 だが、引っかかる。過去の経緯を慎重に見ていくとこのコメントが間違ったシグナルを送っていないか心配になる。即ち、日本が目下の問題に関して何らかの妥協をするのでは、という期待を持たせかねない。ボールは韓国が持っているのだ。それに対する対応がない限り、岸田総理の発言中の『このまま放置』するしかない。
 一方で尹大統領の安保認識は極めて正しく、北・中国の横暴を考えれば韓国がクアッドに近づいてくれるならこんなに心強いことはない。だがそれは前大統領のような従北メチャクチャ分裂政治からミリーミリ(軍事的)の合理的選択をしたという当然の判断であり、日韓二国間にある徴用工問題や慰安婦合意とは別の話で、総理の言葉を引けば『国と国との約束は守る』当たり前の話。新大統領が冷静な理論家であるならば何らかの対策を手土産にしてこなければならない。
 前大統領は相当にヤバいことを自覚して、法律まで変えて保身に走った。こういう卑劣さをアピールすれば、あの国のことだから勝手に熱くなって収拾がつかなくなるのは時間の問題。問題はその後なのだ。
 かの国の外交がなぜ合理的判断を欠くのかは簡単で、内政の分裂闘争に対日外交が巻き込まれるからだ。内政でいくらモメても構わない。そのトバッチリはもうたくさんだから、そんなことになってエネルギーを使うくらいなら『このまま放置』で一向に構わないのである。
 隣接国とは仲良くしなければ、などと言う政治家は金でも貰ったか弱みを握られているからで、現にロシアは隣国のウクライナに攻め込んだではないか。インドとパキスタンなんか凄まじい憎み合いだし、歴史的にはフランス・ドイツ、イラン・イラク、ベトナム・カンボジアと枚挙に暇がない。首脳会談も友好関係もナシでいいから合理的な利害関係だけで上等なのが隣国というものである。
 ところで林大臣は親の代からの宏池会。あの外交弱腰の代名詞となった宮沢派で、日中友好議員連盟の会長であった。宮沢内閣は悪名高い河野談話を発表し大いに国益を損なった。そもそも岸田総理が宏池会なのだから、本来バランスをとる必要があったのだが安部元総理の影響を嫌って林氏を外務大臣に持ってきたことでアメリカを怒らせたことは知る人ぞ知る。
 他方、韓国保守派の方も保守=親日でもなんでもなく、朴槿恵・李明博元大統領もヤバくなればすぐに反日を言い出した。次も同じに決まっている。尹大統領は頭も切れそうだし、サシで話したらさぞ見識の高いインテリだろう。保守派であることは、女性家族省の廃止を公約にし若い女性の票を失う覚悟で選挙に臨んだことでも筋金入りだ。
 ロシア人の項でも記したが、韓国人にも実に味のあるいい奴はいる、在日にもいる。アメリカだって勝手なことを言うし、日本人にもいやな根性悪はいる。個人の関係を超えて国家という組織は本質的に邪悪であり、我が国だって危ういことは危うい。
 それにしても、レーダー照射やそれに付随した醜いプロパガンダ、慰安婦合意の裏切り、徴用工の悪質な捏造は度を超えていた。『盗人猛々しい』と言うような下品な言葉を使うのも、まともな外交ではない。挙句の果てに天皇陛下についてまで『戦犯の息子』呼ばわり、
 それによって最悪になった関係がこの程度ならば別にホワイト国からはずされたところで韓国自身大して困っていそうにない。安全保障問題を除けば『このまま放置』でいい。
 現に林大臣が大統領の就任式出席のため訪韓中に竹島南方の日本EEZ内で、韓国側の調査船が無許可で活動してみせた(林大臣は情けないことに抗議もしていない)。案の定と言うべきか。
 目下、新大統領には中国の猛烈なアプローチがあるに違いない。それで天秤にかけられて日本が擦り寄っても何の得もないのは明白だ。いっそこう言えばいいのだ。 
『一緒に知恵を出そう、という表現もやめろ。日本から妥協できることはもうないのだ。そちらも折れるわけに行かないだろうからこのままにしよう。日本企業の資産売却をしたら更に制裁めいたことをせざるを得ない。良好な関係は目標ではなく、結果だ。防衛関係だけ秘密裏に話し合おう』とね。トコトン思い知らせなければ。

 バイデン大統領が来日した。そのパフォーマンスから推察するに、ロシアの侵攻にホトホト手を焼いているように思えた。言い方は悪いが日本がイニシアチヴを執れるチャンスなのだ。
 バイデン大統領には『半島の南に橋頭保が無くなったら困るだろう。我々がサポートするから南に告げ口外交はやめろ、日本の機嫌を取れ、と言ってくれ』と囁く。モディ首相には『ロシアとそこそこ付き合うのはいいが、今大儲けしてるのは大陸だぞ』と吹き込む。アルバジーニー首相には『散々いやがらせをされたでしょう。ソロモン諸島は貴国の喉元ですよ。ここはひとつお任せいただければアメリカも引き込んで一泡吹かせられます』とほのめかす。
 ついでに韓国保守派にも『この陣営に入りたければ他の3国に口をきいてやってもいいよ』と示唆する。さすれば対米従属などという工作員まがいの非難を受けることなくアジアの盟主のような顔ができる。当然大陸も北もぎゃあぎゃあ言うだろうが、それはいい政策の証である。 
 その昔さるバカ総理は『相手の嫌がることはしない』などとボケをかましたことがあるが、すり寄るよりもはるかに嫌がることをした方が国益を損なわない。日本を、怒らせると面倒だが、イザという時に頼りになる国にしていきたい。

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レイモンド君とつつじ

2022 MAY 21 9:09:06 am by 西 牟呂雄

 喜寿庵では連休中にツツジが咲く。外の生垣を眺めていたらレイモンド君がお母さんと歩いてきた。お母さんがいるのは当たり前だが、僕は初めてお目にかかった。あのいい加減翁のヒョッコリ先生じゃなくてよかった、またホラ話を聞かされるのはかなわん。

 レイモンド君は友達だから僕を見てニコニコ見上げた。『オハヨゴザマス』などと言う。言葉がハッキリしてきたなぁ。『はい、よく言えたね。お早うございます』と返した。するとお母さんが『いつもお世話になっております。父からもよろしくお伝えするよう言い付かっております』と丁寧にごあいさつ頂いた。するとこのお母さんは先生の娘さんか一度会った息子さんの奥さんだろう。
『いえいえ。先生はお元気ですか』
『お陰様で元気にしております。今は旅行に出てまして』
『ほう、どちらまで』
『それが・・・、いつも行き先を言わないで行ってしまいますのでどこにいるやら』
『あはは、フーテンの寅さんみたいですね』
 それを聞いたとたんにお母さんの表情が極端に険しくなったのを見逃さなかった。しまった、今すごくマズい冗談をいってしまったかもしれない。あの先生、本当に寅さんを地でいっているかもしれないし、それならご家族が迷惑を被っているに違いないから。あまりの気まずさに思わず出まかせを言った。
『そうか、じゃレイモンド君寂しいね。おじさんと一緒に遊ぼうか』
『アソブ』

 一瞬ウクライナで善戦しているアゾフ大隊のことを言い出したのかとギョッとしたが、遊ぶ、と言ったようだ。そして勝手知ったる喜寿庵の中にトットコ走って行こうとして、ツツジに向かって『クイワナーイ』とこっちを振り返るのだ。どうやらレイモンド語で、これはなあに、と聞いているらしい。
『これはね、ツ・ツ・ジ』
『つ・つ・じ』
『そう。よく言えたね』
『クイワ?』

 そうか、この子の識別能力では花の形が同じでも色が違うと別の物だと認識してしまうのだ。
『これもツ・ツ・ジ。オンナジツ・ツ・ジ』
『お・ん・な・じ・つ・つ・じ・』
 待てよ、これでは『オンナジツツジ』という名前でメモリーしてしまうかもしれない。
『あのね、白い色のツツジ。こっちは赤いツツジ。白と赤、わかる?』
『ヒロトカー』
 分かってるんかな。いやまずい、僕は色覚異常だから微妙に間違った言い方をする可能性もある

 そう思っていたら生垣の中に走って行こうとする。思わず抱き上げた。庭にはまだ他に30本くらいのツツジがあって、紫っぽいのやら珍しいのが咲いているところだ。するとお母さんは落ち着き払ってこういうではないか。
『あのー遊びたいみたいですけど、父からもこちらなら安心だと聞いております。よろしければ2時間ほど見ていただけますか』
『ア~ハイハイ』
『クイワ?』
『これはピンクのつつじ(でいいよな)』
『ピ・ン。ク・ノ・ツ・ツ・ジ』
 振り返った時にはもうお母さんの姿は見えなくなっていた。

 一瞬途方に暮れたが、前から温めていた計画が頭をよぎり、ツツジ地獄にはまる前にそそくざと実行に移す決意をした。レイモンド君に有無を言わせず車に乗せ、シート・ベルトで括りつけて出発、多少グズッたけど動き出したらおとなしくなり、高速で10分の所にある北富士ハイランド・リゾートにリゾートに向った。そこに遊園地がある。
 着いた時には上機嫌になっていて、走る走る。

メリーゴーランドでドヤッ

 賑やかなミュージックとともに回転するメリー・ゴ-ランドの前で止まった。
 目を輝かせている。
 僕のユメもこれだった。
 この、何でも楽しいが訳が分からない時期にこそ、乗って面白い回転木馬。
 あと数年もすれば楽しくも無くなる乗り物で一緒に遊ぶ。
 動き出すとレイモンド君の目は真剣になった。緊張しているのかな。
 ローテーションが終わってもなかなか降りたがらないので一枚撮ってあげたが、ご覧の通りのドヤ顔は自信に満ちていた。
 それから二人で観覧車に乗ったりトーマスランドで遊ぶとアッツと言う間に1時間過ぎてしまった。
 もっと居たがるレイモンド君をだまくらかして帰ったのだが、二人で来る機会などそうありはしない。少年老い易いのだ。そして推定2才のレイモンド君の記憶には残らないのだろう。
 それはおとなにとっては寂しいことだが仕方ない。その代わりツツジは毎年咲いてくれるけれど。
 しかし、職質されたら誘拐未遂にされるのかな。

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5・13 金曜日 仏滅 日本ハムファイターズ

2022 MAY 13 20:20:15 pm by 西 牟呂雄

 決戦、日本ハムファイターズ、この忌まわしい厄災は一体どちらに降りかかるのか。ジェイソンはそのおぞましい姿をあらわすのだろうか。
 直前にノー・ノーをやってのけた博多の鷹軍団が札幌ドームに舞い降りた。初夏の恒例、札幌の死闘が幕を開けるのだ。迎え撃つは強いのか弱いのかさっぱりわからないメチャクチャ打線のファイターズ。(影の)オーナーである私は秘策を胸に意識を集中した。以下は私の私による私一人の血と汗と涙である。

『伊藤、頼んだぞ。相手はサイボーグ千賀なんだから3点も取れないからなぁ。ビッグボスは清宮スタメンに使うなんてわかってない。今川使えよ。よし、いい立ち上がりだ』
『千賀、コノヤロ今日は早いな。アッすげーフォーク投げやがった』
『高濱、テメー初スタメンで何て気のないスィングだ。鎌ヶ谷にいけー』
『アッ宇佐美が出た。ワぁ、松本。3割8分も打ってて2回も三振するなよ、まったく』
『なんだよ中島。あれぐらいアウトにしろよ、次は柳田だぞ。ワッ走られた。宇佐美め、ボヤッとしやがって。ぎゃあ四球まで出しやがった。グラシアルー、ライナーだった、ふう』
『オッ石井が出た。これでノー・ノーはなくなった。清宮にバントさせろー、どうせ千賀を打てっこない。打たすなっつーのに、えっボーク!よーしよし、千賀も神様じゃないぞ。ア~やっぱり三振じゃないかこのバーカ。野村もダメか。ヤッター万波、よくやった。先取点だ』
『バカ!甲斐相手に盗塁なんてバカじゃないのか。やっぱりビッグ・ボスは頭が悪い!』
『ヨシッ甲斐から三振でかたきをとった。伊藤もイイネー』
『もう10Kだぜ。千賀ってやっぱスゲーな』
『千賀がこぼしたけど、甲斐はやっぱり上手いな、クソ。へー、1000投球回か』
『槇原、サード・ライナーよく取った。ギャー、柳田!おっと万波の正面』
『伊藤スロー・カーブいいね』
『オイオイ、4連続三振だあ、千賀のフォークを振るなと言っただろうが、バカ共が』
『ありゃ、甲斐なんかに打たれた。なんだよ全く』
『やめろー、お調子者の杉谷なんか出すんじゃない。ホレ見ろ』
『めずらしいな千賀の四球』
『さあ、伊藤完封だ。中島ナーイス。キャーッチ!助かった。ウワー、柳田が二塁打!冗談じゃないぞ、一発じゃなくてよかったけど。グラシアル三振ー。あと一人、あと一人、あーとーひーとーりー!かったー!』

 読者諸兄諸姉、13日の金曜日仏滅はホークス千賀に祟ったのです。毎試合こうしてファンは戦います。ものすごく疲れます。笑わないでください!

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大統領の演説 どうでもいい五つの疑問

2022 MAY 10 0:00:15 am by 西 牟呂雄

 大統領は『戦争』も『勝利』も宣言できなかった。イリューシン80を飛ばすこともできなかった。西側に対する非難、自説の正当性を言い立てた。キーウでは核の入手が準備された、と根も葉もないことも言った。これが大国の大統領の演説か。北のあの国の我らのアイドルアナウンサー、李バアサン並みではないか。
 
 戦争は邪悪であり、ロシアは即刻撤退せよ。
 だが、避難するウクライナの方々はまるで旅行に行くようにこぎれいな服装なのが気になってしょうがない。我が国の忌まわしい沖縄決戦や東京大空襲の映像を見ると、焼け出されてボロボロになった痛ましい被災者が映っている。それに比べて、国境を越えて逃げる避難民に服装は普段すぎる。
 アゾフスタルで2カ月も籠城した市民の方、何とか脱出できたのは喜ばしいが、脱出できた人々もそんなに惨めな服装ではない。あの製鉄所の地下にはコイン・ランドリーやシャワー・ルームもあったのかな。
 いや、別に悪いことだとは言ってませんよ、ヤラセ映像とも疑っていません、不思議なだけです。

 戦争は邪悪であり、ロシアは即刻撤退せよ。
 義勇軍としてウクライナ入りした日本人がいるとかいないとか。他国からも参加した人も大勢いるはずだが、この人たちは今どこでどういうふうに戦っているのだろうか。犠牲者は出ていないのだろうか。
 ところで、義勇軍はボランティアと訳されるように給料は出ない。これに対して給料を貰えばマーセナリ、すなわち傭兵となる。目下のウクライナに傭兵を雇う余力はないかもしれないが、例えばロシアとの対峙を明確にしたイーロン・マスク氏あたりが秘密裏に資金を提供して民間軍事会社に戦闘を委託するようなことはあり得る。現にロシアはワグネルの部隊を有償で使っているが、実態はシリア人などの外人部隊で8千人が投入された。
 以前にウクライナ軍を指導していた米軍やNATOの精鋭は出国したのか気になる。どちらも大っぴらに支援しているのだからもしかして。

 戦争は邪悪であり、ロシアは即刻撤退せよ。
 実際の放送を見ていないのだが、ネットによれば『NATOはウクライナだけにやらせてないで何故ロシアと妥協しないのか』『市民が犠牲になるだけだから降伏したほうがいい』『成人男子に出国の自由を奪うのは許せない』等の発言で炎上したとか。
 こいつ何様だ。遠く離れた東洋の島国で勝手なことをほざくんじゃない。ロシアに対して一体どんな妥協をしろというのか。まさかウクライナを差し出せとでも言うのか。全面戦争に持って行きたいのか。
 ウクライナ軍は自分の独立を守るために自分の意思で戦っているのに降伏しろとは大きなお世話だ。
 一時は保守系政治家として安部・菅元総理とも近く石原慎太郎をもたらし込んだものの、一朝有事には人のせいにしてでも逃げ出すという、戦後民主教育の悪弊を地で行くようなタレント弁護士の馬脚を現した。看板の政策は何度民意にはかっても拒否されると、サッサと足を洗ってテレビで稼ぎまくるだけの男でしかないのがバレた以上、もう姿を消して大坂に引っ込んでおとなしくしてろ。
 それにしてもテレビ局はこんなカス野郎を何で使い続けるのか。このバカに賛同する視聴者はいるのか。

 戦争は邪悪であり、ロシアは即刻撤退せよ。
 核さえ持っていれば国際法違反だろうが国連決議だろうが、破ったところで痛くもかゆくもないのがハッキリした以上、例えば民間の財団や自治体が勝手に核爆弾を造って、あるいは闇市場から調達して日本や世界に独立を宣言したらどうなるのか。そういう潜水艦が独立する漫画があったが、僕だったら秘かに国後と竹島に運び込んで『我々は満州帝国の末裔である。万里の長城の外側を我等に返せ。さもなくばここで核を爆発させるぞ。なお日本国・ロシア・大韓民国とは関係がない』と宣言するがねえ。どうぞ、と言われたらそれまでだけど。
 いや、冗談ですよ、冗談。

 戦争は邪悪であり、ロシアは即刻撤退せよ。
 未だにモスクワに留まっている日本人と連絡を取っている。彼はCNNやBBCといった報道を見られる立場にあるが、ロシア寄りの発言が多い。ただし、電話どころかメール・スカイプ・ズームに至るまで盗聴されている可能性があり、めったなことは喋れないとも言われている。その彼が言うには、プーチン大統領の居場所を誰も知らないのだそうだ。秘密のシェルターがモスクワ郊外に複数あり、どこにいるのかは明らかにされず、どういうルートでクレムリンその他の公の場所に来るかもわからない。まるでゴーストのように突然姿を現すとか。
 そういう話を知ると、僕は想像力を掻き立てられる。あのミョーにむくんだプーチンは本物なのか。本人はとっくに死んでいて影武者が演じているのではないのか。マクロン大統領は『まるで別人だ』と言った。
 そしてその影武者はオルガリヒとかネオ・コンやらに操られて戦争が始まったのではないか。操っているのは誰だ。戦争でロシアの体力を奪い、一帯一路の政策での見込み植民地化して搾り取ろうとする習近平の陰謀か。中露まとめて経済制裁し世界秩序の外に封じ込めようとするネオコンの戦略か。はたまたロシアの戦力を西側に張り付けさせて、その間隙を突いて南樺太と千島列島の占領を目論む日本の秘密機関なのか。噂ではSMC(サウス・マリウポリ・コミットメント)なる秘密結社が暗躍しているらしい。

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海に賭けた人

2022 MAY 8 7:07:54 am by 西 牟呂雄

 出航してアレッとなることがある。天気予報や陸で晒されていた時と当たる風が違う。
 この日も湾から出た途端、いつもの連休とは明らかに違い南風(はえのかぜ)の強風に驚いた。千葉方面に東京湾を横切ろうと考えていたが、さてどうしたものか。日差しは曇りで相模湾には既に多くのヨットが出ていた。
結局スキッパーの判断で、風を掴んで江の島方面に行ってみようということにした。わが愛艇はこういう場合に多数決はしない。スキッパーは慎重なのが分かっていて、それには異を唱えないのが不文律である。
 風は強いのだが追い風に乗っていると風速はあまり感じない。ましてや海面は波頭が飛ぶようなこともなく、むしろ静かなのだ。ジブを思いきり出してみると、それだけで十分な帆走ができた。
 今日のクルーは結局3人。スキッパーは酒を飲まないし、もう一人は若い初心者なので、僕はその子に舵を取らせてさっそく一人出航の乾杯をした。
 滑るようにいい風を拾うと7.5~8ノットの走りで江の島に着いた。
 ここのハーバーはオリンピックの会場となって設備が一新され昔の面影はなくなった、無論いい意味でだ。
 若い頃から江の島には来ていたが、陸から行ったことはない。ましてや観光なぞしたこともない。この年になってあんまりだと頂上まで登ってみることにした。

美しい僚船

 ところが船を降りた途端に知り合いにバッタリ会ったので、ワインを開けて話し込んでしまった。
『どっか行くの』
『ウン。真鶴までかな。そっちは』
『ここで泊ってあした帰るんだ』
『あした?ゆっくりしてなよ。あしたオレ帰って来るから』
『あした午後から雨だぜ』
『雨ぐらいどうってことないだろ。ヨット屋は濡れるのが商売だろが』
 こんな他愛もない調子ですぐに一本飲んでしまった。さてご飯でも。行きつけの(といっても何年ぶりかな)食堂に行くと、いつものオヤジさんがいない、見たこともない人が厨房にいるではないか。聞いてみると体を悪くして引退してしまったそうだ。で、刺身定食を頼んだがはっきり言ってオヤジさんの時よりまずい!特にマグロの刺身はダメだった。
 さて、夕暮れになったので江の島観光に。

竜宮城のような神社

 江の島は弁天様で名高いが、実は弁天信仰は神仏習合で仁和寺の末寺であった江戸時代まで、明治の神仏分離の際に宗像三女神を祀る奥津宮(おくつみや)、中津宮(なかつみや)、辺津宮(へつみや)の神社となった。廃仏毀釈の折には三重塔をはじめ多くの仏像が失われたが、やさしいお顔立ちの弁天様は残った。こういうことをするので明治の薩長政府は嫌いだ。
 石段を見上げてエ~っと思ったら『エスカー』なるものの切符を売っていたので早速買ったが、ただのエスカレーターのことだった。頂上のあたりで日が暮れた。

 翌日は曇天。風は昨日とは違う東風で、アビームにセールを出して一杯にはらませた。予報ではこの後北風に変わって雨模様である。東風だから相模湾内はうねりは立たない。きのうと同じく楽なセーリングである。
 時節柄、知床の観光船の痛ましい事故の話になったが、荒れた海での操船技術の問題以前に、海の地形の認識のが足りなかったのではないか、という結論になった。岩場の近くの海底はそれこそギザギザで、油壷の周辺でも回航してきた学習院大学のヨットが荒天に遭難、麻生太郎の弟さんが亡くなった事故があった。
 ついこの前も大事には至らなかったものの海上保安庁が出動する事態があった。観光船であれば、陸の近くを『見せ』るために近づくため、それこそコースの海を知り尽くしていなければ。それが30度も傾斜したということは一瞬に浸水したはずだから、余程の亀裂が入るほどの突っ込み方をしたのだろう。30度ならばスキー場の感覚でいえば、垂直に近い視線のはずで這いつくばることもできなかっただろう。
 風が北に変わった。セールを広げると船足が早くなるとともに大きくヒールした。

雨のハーバー

 入港すると霧雨が降って来た。
 雨のハーバーはとても寒い。
 その雨の中、一人の老人が歩いて来る。鮫さんだ!鮫さんは港の中のボート・ハウスに住んでいたが、そのハウスはずいぶん前に無くなって、鮫さんも姿を消していた。数年前に一度バッタリ会ったのだが、太平洋をヨットで横断して暫くアメリカにいたらしい。その後、グアムに行ったとか三重県で目撃されたとか噂されていた。
『寒いね』
『お久しぶりです。どうしてたんですか』
『オレ?ずっとここにいるよ』
『えっ、全然会わなかったじゃないですか』
『そうかい。ワシャしょっちゅう君を見かけてるがね』
『そうなんですか。今はどの船に乗ってるんですか』
『声がかかればどの船にでも乗るさ。海でしか生きられないからね』
 答えになっていない。だが鮫さんに聞いた人生を思い出すとわからんでもない。この人は海に賭け、海に生きた人、本当ならばだが。
 待てよ、もし本当なら100才くらいじゃないのか・・・。アレッ、いない!まさか。

 詳しく知りたい方はどうぞ。

海の上の人生 ホントかよ

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定点観測の妙味

2022 MAY 1 9:09:20 am by 西 牟呂雄

 


 喜寿庵のネイチャー・ファームの畔に植えてある枝垂桜が4月の初めには蕾をつけた。
 3月一杯はほとんどこちらに籠っていたのだが、新年度になってさすがにテレ・ワークも飽きて山から下りようとした時に撮ってみた。
 やけに赤いというか、咲いた時の色に比べて毒のあるような強烈さを感じた。
 ところが途端にコロナが増えてしまい、ノコノコまたやってきてみると満開だった。
 蕾の時とは似ても似つかない、淡く気高い花を咲かせていた。

満開

 
 ソメイヨシノが連なって咲くのも見事だが、この桜はポツンと立っている。
 僕はこの桜が好きで、まるでペットを可愛がるような気持ちで眺めている。
 するとおかしなことに、犬や猫にそうするようにこの枝垂れにも名前を付けてやりたくなり、それも例えば『フォーリング・チェリー』とか『マリリン』とかいった軽薄な横文字ではなく、漢字一文字にすると何がいいかとあれこれ思い悩み、『玲』という文字を選んだ。玉の鳴る音をあらわし、玉のように美しいことを形容する文字である。
 そう名付けて眺めていると、涼やかな微風にたなびく姿はかすかに鈴の音がきこえるように揺れ、尚且つ輝くように奇麗なのだ。
 思うにこの見事な色合いになるために、冬の厳しい寒さの中を耐えて何とかあの煮詰めたような蕾を付けてこその満開なのだ。そういえば蕾の色はフト血の色を連想させなくもない。
 こういう変化を眺め続けるのも定点観測の醍醐味である。

ズラリ

 ネイチャー・ファームには、同じくこの半年寒風に晒され20cmもの積雪の中を(ほったらかしにされつつも)生き延びたスーパー・ニンニ君達が健気にも育っている。ニンニ君は同じところでの連作は、こまめに追肥してやらなければならないから僕のようなシロートには無理なので、ネイチャー・ファームの中を転々としているが、これも長い目で見れば定点観測だ。

 で、突然ここで自分という人間を定点観測てみたらということを思いついた。
 例えば長いことここに立っている桜の『玲』が、頻繁にやって来る僕のことをどう見ているのか。
 いかにも明るい都会の坊ちゃん、ジーッと蟻の行列を半日見ている少年、背中まで髪を伸ばしたバンド屋、遅まきながらのリーゼント・ボーイ、夕日が落ちるまでたたずむ詩人、負けてばかりいるギャンブラー、独り言をしゃべり続けるアル中、契約に思いを巡らせるビジネスマン、まったく腕の上がらないゴルファー、国籍不明のヨット・マン、じょうろで野菜に水やりする素人ジェントリー・ファーマー、古希にならんとするスノー・ボーダー、・・・止めた。

水仙と桃

 振り返ると水仙が花を開き桃の花が咲いた。この桃は源平と言って白とピングの花が一緒に咲くのだが今年は白ばかり。
 定点観測をしていると、自然も姿を変えていくのか。ましてや生身の人間においておや。

 我が身の変遷を振り返ってみて、一つ気が付いたことがある。この半世紀を通じて興味の趣くままに暮らし、それなりに精進したつもりではあった。しかし、風体は多少変われども、例えばIQが上がったとか品格が増したなどという事はない。だが、その間の様々なチャレンジが全部無駄だったかと言えばそう簡単には言い切れない。多少の役に立ち、多大な迷惑を振りまきはしたが、そこには存在していたことは確かで、その(中身は変わらないとしても)果実を味わうのはこれからに違いない。というどうにも爽やかでないオチになってしまった。

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大統領のイラ立ち

2022 APR 22 5:05:53 am by 西 牟呂雄

 明らかに常軌を逸した表情と、氷のような不気味な目の色に居並ぶ閣僚達は声も出せなかった。
『バカボンスキー諜報省長官。ナチスト達に嫌気がさしている首都の住民が歓喜の声で我が精鋭部隊を迎えるという話はどうなった』
『ハッ、潜入工作員が自分の手柄を大げさに伝えていた模様で現在処分を検討しておりましたところ』
『そいつを死刑にしろ』
『それが・・・戦闘に巻き込まれすでに戦死した』
『それでは死刑にできずに市民として勝手に死んだのか』
『そのあたりの詳細について』
『ダー、か?ニエットか』
『・・・・ダー・・・』
『バカボンスキー、お前は収容所送りにする。刑期は1万年だ。連行しろ。次、オロカノフ北部方面参謀長。戦車が大量に破壊されて血税1兆ルーブをスクラップにしたそうだな』
『あれはフェイク・ニュースです。鉄血戦車部隊は健在です』
『ではなぜ首都を制圧したのちにオデッサに向けて進軍できていない』
『それはアメリカとNATOが密かに介入しているからです』
『オロカノフ。そういう報告がなぜ私に上がらない』
『今にも壊滅させ南に進軍が始まるからです』
『今にも、と言ったな。今なんだな』
『えー、2~3日うちには』
『私は3日後のことを今とは言わない。お前は今から北朝鮮に行け。今からだ。そこで思想改造してもらえ。次、キシダは何で調子に乗って制裁に乗っかってるんだ。バカボンスキー』
『大統領。先ほどバカボンスキー長官を大統領が収容所送りにしました』
『ナニッ、そうだった。FSBの連絡将校はいるのか』
『外で待機しているのはウソツキー中佐です』
『中佐?オレと同じか、大したことないな。すぐ呼べ』
『ウソツキー中佐、入ります』
『日本は制裁に乗らないという報告を上げたのは誰だ』
『日本に潜入している工作員です』
『ロシア人か』
『ニエット。日本人です』
『名前は』
『確かニシムロです』
『ナニ!あいつか。ジェット・ニシムロはエカテリンブルグにいた二重スパイだぞ』
『大統領はご存じですか』
『KGB時代に会っている。その後日本の総理だったシンゾーに嫌われてクビになったはずだが、そんなのを使ったのか。あいつはいい加減なローシだ。ローシのことを日本語で何というか知っているか』
『知りません。自分は中国担当であります』
『では教えてやる。うそつき、お前の名前と同じだ。ニシムロをポロニュウムで殺れ』
『現在日本にいる工作員はポロニュウムを持っておりませんが』
『お前が持ち込んで殺せ。今から行け。もうこうなったら最後の手段だ。グズコフ大将。核兵器特別体制は万全か』
『ダー』
『キエフとモスクワに一発づつ見舞え』
『・・・・モスクワは既に沈没しましたが』
『よほどのバカかこんな時につまらん冗談が言えるマヌケのどちらかだな。ここ、首都モスクワに打ち込んでアメリカの仕業に見せかけろ』
『大統領。いったいどうやって・・・』
『モスクワには北極海の原子力潜水艦から発射しろ。キエフは隠しようもないから地上からICBMでも何でもいい』
『あのっ、モスクワ市民はどうなりますか。避難命令は出さないのですか』
『そんなもの出せば自作自演がばれる。チェチェンの時と同じにやれ』
『我々はどうするのですか』
『グズコフ。モタモタするな。おお、そうだ!お前のような奴を日本語ではぐずと言うぞ。わーははははは』
『逃げろ』『逃げろー原爆が来る』『ワぁー』『大統領が狂ったぞー』

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どうにかなるのか 日本ハムファイターズ

2022 APR 14 6:06:01 am by 西 牟呂雄

 何たることか。スポーツ新聞に『ドロ沼ハム ◎連敗』の見出しが何度踊ったことか。負ける方も負けるチームだが、ブンヤのボキャ貧には呆れ果てる。こういうのは泥沼とは言わない。『焼け野原』と言う。
 東オーナーから『この戦力でまともにいったら100敗あるから奇襲しかないぞ』とコメントされムカついたが、現実のものとなりつつある。こうなったら奇襲では間に合わない。もはや撤退戦という難しい局面となった。
 世代交代などと言うが、フタを開けたらバカと下手が吹き溜まっただけだ。撤退戦の奥の手は、大日本帝国の作法にのっとれば、玉砕と特攻である。
 そんなに腹立たしいならよそのチームやセ・リ-グのヤクルトにでも乗り換えればいいかというと、年季の入ったファイターズ・ファンはそうもいかない。フライヤーズ時代から苦楽を共にし、札幌に行ってからも応援し続けていると今更後には引けないのである。
 そもそもビッグボスは就任時に高らかに『ファンは宝物』と言った。しかし妙なパフォーマンスをされても、負け続けること自体がファンを大切にしていないという事には頭がいかない。その程度の知能しかなかった。
 6日のロッテ戦のみっともないサヨナラ勝ちはなんだ、恥ずかしい!
 10日の楽天戦のサヨナラも、先取点を取りながらすぐ追いつかれ、最後イニング跨ぎの北山がなんとか持ったからドサクサ紛れに勝ったものの、もう1イニングもつれたらダメだっただろう。北山に2勝目がついた。
 そこで最後の切り札の秘策を展開し、焦土と化した札幌ドームに華と散ってこそ浮かぶ瀬もあれ。以下はオペレーション・ヤマトだ。

① ビッグボズの現役復帰
 ここまで来たら何でもあり。現役に復帰しDH1番とか代打で出てくる。派手好きだから案外1割くらいは打つんじゃないか。或いは昔、150kmの速球を投げるほど肩が強かったんだから、一人位ならピッチャーもやらせる。どうせビリに決まっているなら玉砕にふさわしい。
 どうせ監督は早期退陣だろうが、選手としてそのまま置いといてやる。
 その時の監督代行は誰かって?100敗するならオレで十分。

② 必殺厄払い
 とにかくリリーフの杉浦、キャッチャー清水、ファースト清宮。この3人が出てくると必ず負ける。もっとも16試合で4勝しかしていないので、レギュラーは全員出ると負けだが、こいつらがスタメン或いはPH、抑えで出ると、あ~今日も負け、の雰囲気が漂う。守備がダメ過ぎる清宮は1試合にエラーこそ付かなくても一度はヘマをしてランナーを生かす。走塁ミスもやらかす。デブだろうが痩せようが同じ。清水は盗塁を刺したことがない。本塁に突入されるとビビるのか、補球位置が前に出過ぎてタッチできない。杉浦のリリーフは言わずもがな。
 事実、12日の西武戦で上記3人を全く出さず、ついでにビッグボスが何もしなかった試合は3-0で勝ったが、翌日、清宮をスタメンにし杉浦を投げさせて負けた(ただし杉浦は失点なし。キャッチャーは新人の古川)。この2連戦は昨シーズンの最下位争いのカードである。

③ バントの練習だけやってろ
 万波・浅間、それに加えて上記清宮。こいつらはたまにHRを打って見せるから将来の大砲扱いされるが、長打はたまーに出るだけで三振が多い。浅間と万波は揃ってバントが下手、ド下手。バントなら練習しまくれば少しは腕が上がるはずだ。そもそもどうせ打てないんだからまぐれでランナーが出たら迷わずバントで進塁、ついでにスクイズくらいしか得点できない。
 思うにこいつらは相当頭が悪いのだ。ビッグボスがほとんど物を考えてないのだから選手が考えなきゃならんのに、バカに向かって利口になれと言ってなった者は人類史上いない。私に向かって犬になれというのと同じである。

 とにかく勝てない。上沢も伊藤も勝てない。この二人だけは試合を作るのだが二番手からが箸にも棒にも掛からん。新球場の建設なんか止めてダルビッシュと大谷に百憶づつ払って今年だけでも助けてもらったらどうだ。
 いつの間にか松本がパ・リーグの打率トップだと、ホームランがリーグトップ!ふざけるな。
 その昔、パ・リーグの全球団相手に一試合◎千円総ニギリで戦っていたが、こうなったらリーグを超えて阪神とどちらが先に百敗するかで〇万円の勝負でも挑むぞ。どこかに同じ思いで不貞腐れているトラ・ファンはいないのか。
 あきらめずにCSを目指せ!ファイターズよ

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魂が宇宙を漂う話 Ⅱ

2022 APR 10 1:01:32 am by 西 牟呂雄

『おい。おい』
『え、なんですか』
『オレだよ。しばらくだったな』
『あぁ、オマエか。いや、久しぶりだな』
『5年経ったんだよ。どうしてる』
『相変わらずだよ。ヤボな仕事したり船に乗ったり、そうそう野菜造り手掛けてるけど、忙しいんだかヒマなんだか。ちょっとオマエどこだよ。顔がよく見えない』
『バカ。オレは死んだだろ。顔はもうない』
『・・・そうだったな。もう5年か。お前からはオレが見えてるのか』
『見えるわけないだろ。視覚が無いんだぞ』
『それもそうか。待てよ、じゃなんでオレだって分かったんだ』
『こっちは真っ暗なんだよ。そこを歩いているような漂っているような感じだな。そしたら不思議なことに少し光を感じたんでそっちに行こうしてたらなぜか夢から覚めたように意識がはっきりしてあ~っあいつのことだな~という一種の覚醒があって今だな。オマエだってことはすぐ気が付いた』
『凄いな。死んでエスパーになったのか』
『いや、今オマエは寝てるんだよ。その夢の中に入ってこうして話をしてるのさ』
『夢か。どうりでハッキリしないと思った。するとオレが死んだらその真っ暗なところでオマエとまたこうして話せるのか』
『そうはいかない。だってオレは幽霊といえば幽霊なんだから夢なんか見ないし』
『なんだよ。それじゃオレも生きている奴の夢に入り込むしかないのか』
『どうもそうなっているらしい。死んでから5年経って初めてだ』
『ふーん。そんならそのうちまだ元気な息子さんや娘さんの夢でその後のことを聞きゃいいだろ。よりにもよってオレの夢じゃもったいない』
『無論オレもそう思うんだがうまくいかないもんだ』
『多分何かのワザとかコツみたいなものがあるかもしれないな。修行が必要か』
『さあな。こっちにきてからじゃ修行も何も、体もなけりゃ時間の感覚もない』
『苦痛もないんだろ』
『まあそうだ』
『だがオレの所にはうまく来れたな』
『腐れ縁だからな。別に来たくもなかった』
『待てよ。オレはまだ生きてるんだよな』
『そりゃそうだろ』
『するとオマエはオレの夢が勝手に作っている幻という事だよな』
『断じてそれはない。オレがお前の幻想などありえない。断じて認め難い』
『まあそうだろうな。オレだってやだよ、何が悲しうてお前の台詞を妄想しなきゃならんのだ』
『よし、オマエも死んで見りゃいいだろう』
『それは構わんが死んだ幽霊同士は会うことも話すこともできないんだろう』
『だからさ、二人で誰かの夢に忍び込むんだよ。そうすりゃ勝手に話せるだろ』
『ほう、それならいいかも知れんが、誰の夢に入るんだ』
『タカオでどうだ』
『おっ、そりゃいいな。あいつとは決着がついてないからな』
『ん?決着?』
『ほら、今から半世紀も前に大モメにモメたやつ』
『あー、あれか。明日のジョーは死んでたのか生きてたのか、のことか』
『そうだよ。オマエが息を引き取ってたんだ、って言い張ったあれ』
『それはあの時に論破したはずだが』
『バカ言え。一方的にオマエガ返事をしなかったのはすでに死んでいたからだ、と論争を打ち切ったんだよ』
『一方的とは何だ。タカオは答えられなかったじゃないか』
『アイツは一言、ジョーは白い灰になった、と言ったんだよ』
『それじゃオレが論破したことになる』
『ならない。白い灰が死んだことを表していない。死んでいるなら白い骨でなければならん』
『同じことである』
『いや、違う。骨は灰ではない。DNA鑑定ができる』
『バカなことを抜かすな。よし、それじゃ今からタカオの所に行くぞ』
『上等だ。早く行こうぜ』
『早く死ね』
『何だと』
『死ななきゃアイツの夢に忍び込めんだろう』
『そうか・・・。オレは生きてたんだ』

 ワッ! 危なかった。だけど死ぬのもこんなものかもしれんな。

魂が宇宙を漂う話

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可愛げというもの

2022 APR 1 7:07:18 am by 西 牟呂雄

正装のレイモンド君

 喜寿庵で地元の慶事があって正装して参加したところ、あのテキトーの塊であるヒョッコリ先生(推定95才)がレイモンド君を伴って現れた。先生は紋付き袴のいで立ちでさすがに浮いていたが、傍らのレイモンド君もご覧の正装でこれはなかなか可愛らしい、人気者になっていた。レイモンド君(推定2才)は友達になった僕をしっかり覚えていてニコニコ笑ってくれた。
 レイモンド君はなんでも一生懸命やる。
 トコトコ走って会場の端っこまで行くと、そこに小さな段差があるのに突進してベチャッという感じでつぶれる。しかし体が柔らかいのと体重が軽いのでダメージはないらしい。そして仰向けになると、起き上がろうとしているのかブリッジをするように反り返る。当然起きられないのでくるりと腹ばいになって頭を床につけてもがいているうちにデングリ返しになってしまった。
 そしてその間、保護者であるはずのヒョッコリ先生は全然面倒を見ないで、勝手に知り合いと挨拶したりビールを飲んだりしている。そうなると放っておけない、どこかに行ってしまわないようにレイモンド君を追い回すのはなぜか僕になってしまった。
 すると、司会者が先生を指名してスピーチになった。久しぶりのヒョッコリ先生節だ。例によって訥々と話し出したが、やはり何を言っているのかはよくわからない。元々支離滅裂な人だったのは知っていたが、今日のは特に『世界平和にとって』とか『我が国の将来は』と怪しげなことを喋っている。待てよ。いつもとチョット違うな。
 普段はものすごい早口なのだが今日はゆっくりと丁寧だ。さらに見ていると、実に一生懸命言葉を選んでいることが伝わって来た。つまり普段の口から出まかせではなく、考えながら話している。いや驚いた、そんな芸当もできるんだ(内容については最後まで聞いたがどうってことはなかった)。汗をぬぐっている姿に、不覚にも可愛らしさを感じたものだった。

 そこでハタと気が付いたのだが、前期高齢者の僕は体力・知力の衰え著しく、今まで何でも手抜き足抜きでやってきたというのに、今ではやることなすこと一生懸命感が満載。
 体力面ではゴルフ・クラブ(途中でメチャクチャになるのは前からだが)を振っても、ヨットで舵を取ってもスノボを滑っても、ハタから見れば『あのジイさん、一生懸命だけどよくやるぜ』と笑われているに違いない。フォームがなってない。そしてその姿は見ている側からはカワイくも何ともないことは容易に想像できる、はっきり言ってみっともないだろう。
 また、例えば英語を読むのにサッと読むことができない。単語を忘れ過ぎているからだ。もちろん英語を勉強していなかったせいもあるが、前は勢いで読めて喋れた。今では電子辞書なしではとてもとても。たまに知ったかぶりがバレた時のアタフタぶりはさぞ見苦しいことだろう。
 もっと言えば、歩き方、酔っぱらい方、笑い方、怒り方等、立ち居振る舞いの全てで可愛げのカケラも無いのが、なりたてのジジイというモノではなかろうか。もう少し枯れて動きが鈍くなった頃にやっと『あのオジイチャン、何かかわいいね』となると思う。実に面倒な年になったもんだ。
 逆に、今は何をやっても可愛いレイモンド君も少年になって生意気なことを言ったり考えたりするようになった日には一人前のクソガキになってしまうことは間違いない。その両者のカーブ(仮にカワイゲ曲線と呼ぶ)が交錯する年が将来訪れる日が来るだろう。それは3年後か5年後か(10年後ではこちらの脳がアヤシイ)。
 そうだ、その均衡時期が来たらレイモンド君を連れて旅に出てみよう。どこに行って何をするか今から計画を立てておこう。老後の楽しみができたぞ。

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