南蛮倭国盛衰記 シャム湾海戦から鎖国へ
2026 FEB 15 0:00:16 am by 西 牟呂雄
1630年、和暦では寛永七年、メナム川河口にある南蛮倭国の長老会トップであったヤーマ・ナーマサが死去した。壮大な葬儀にはタイのアユタヤ王朝・ベトナムのフエ王国・バタビアのオランダ東インド会社総督といった近隣の国家から弔問の特使が参列した。式典は神道式で神官の短い祝詞が日本語であげられた。
南蛮倭国は人口約1万人、誠に奇妙な都市国家である。成人男子は全て武士で構成され、ごく少数の両替商と大工がおり、両替商は日本からの銀の交易を手掛け、大工は船大工だった。要するに傭兵集団が独立した海洋国家で、かつては倭寇と呼ばれた日本人達なのである。それでも長老会という議決機関を頂き大将を選任しそれなりの国家の体裁を整えてはいた。
世界史に類似例を求めると、ヴェネツイアやマルタ共和国が近い。ただ、この集団の場合は領土的野心も通商概念もほとんどない不思議な国家だった。
これ以外にも同じような日本人軍事国家がヴェトナム北部の河内倭国(河内は現地語でハノイ。はのいわこく)とフィリピンの切支丹呂宋倭国(きりしたんるそんやまとこく)の二つがあった。
このうち前者は公用語である漢文(当時のヴェトナム王朝は漢文を公文書とした)との親和性が高く、また僧兵崩れが多かったせいで兵士全員は僧衣を纏った仏教国の体裁だ。
一方後者は大阪夏の陣で敗れた浪人達を吸収して成立したキリスト教国で、成立当初の中心人物がキリシタン大名の高山右近だったからである。そして当時の現地を支配していたのはカソリックのスペインだったので、キリシタンであることは都合のよい隠れ蓑となったのだった。
三国は巨大ガレオン式帆船である大安宅船を数隻所有し周辺の制海権を握っていた。そういえば聞こえはいいが、普段日常的にやっていることは海賊である。
時は大航海時代。やや遅れて東洋に進出したオランダ東インド会社は、ジャワ島を拠点に先行したポルトガル・スペインを追うように勢力拡張を図っていた。当初は香辛料の交易のみだったが、バタビア(ジャカルタ)に要塞を築き現地勢力を懐柔するなどして次第に植民地経営を強化していた。
タイ・およびマラッカの諸国はこれを警戒し、南蛮倭国に海上防御を要請。ヤーマ・ナーマサの後に長老会の評議により大将に選出されたニシーム・ローザエモンはこれを受け、シャム湾を往来するオランダの帆船を片っ端から襲いだした。要するに本性をむき出しにして暴れまわったのだ。
これに怒ったオランダは大砲を積載した艦隊に正規兵千人と現地兵千人を乗せてシャム湾を威嚇封鎖した、一触即発の艦隊行動だった。
ニシーム大将は長老会を招集して言った。
「ジャガタラの紅毛人ども、ついに我らがシャムを脅かさんとす、我等はアユタヤのプラサートトン様の要請によりこれを撃滅せん」
おおっぴらに思う存分暴れられるのだ、戦士達は奮い立つ。既にヴェトナムの河内国とフィリピンの呂宋国の日系二国に応援を要請してある。二国といってもやっていることもその生業も同じで、総称としては南蛮倭国と言って差し支えないだろう。
河内(ハノイ)の最高指導者の僧侶である建僧都室西(たけるそうずしっさい)、通称室西僧正(しっさいそうじょう)は謎めいた人物で滅多に人前に姿を現さない。年に数回大きな会葬に出てきては良く通る声で一喝していた。
呂宋では現在アントニオ・オエステと名乗る日本人がリーダーとなっていた。アントニオは日本語を話すが、自分はキリストの生まれ変わり、などと言う胡散臭いことを言い募る怪しげなことこの上ない人物なのだが、用兵は巧で個別海戦には滅法強かった。
シャム湾に大型帆船のオランダ艦隊が姿を現した。潰すべきは南蛮倭国の本拠地で現在のバンコクだ。浅瀬の湾口を包囲するような布陣から自慢の大砲を撃ち始めた。陸上をかき乱した後上陸する作戦である。
ローザエモンは不敵に笑った。
「紅毛人ども、わざわざ波頭を超えて鮫のエサになりに来おって。望み通り切り刻んでやれ」
その頃艦隊後方から大安宅船の艦隊が北上してくるのが見えた。戦闘前に沖合で待機していた南蛮倭国の船である。
するとこのまま割って入られ陸との挟み撃ちにされるのを避けるため、オランダ艦隊はいったん上陸を諦め回避行動を取った。そして現在のカンボジア方面を目指しパッタヤー半島を回ったところに停泊した。何故か追って来るはずの南蛮倭国の艦隊は半島の反対側あたりで追撃をやめていたのだった。
真っ赤な夕日が落ち闇に覆われると、その漆黒の夜半に大安宅船から手漕ぎ小型舟が十数隻ほどヒタヒタと半島を回って行く。得意の夜襲である。
ヨーロッパでの戦闘は通常ヌーンデイ・タイムに行われるものだったのだが南蛮倭国は知ったこっちゃない。大安宅船による追撃は申し訳程度で、日没後を待っていたのだ。
音もなく寄せると直上に向けて火矢を放ち、手鉤縄を船側に絡ませては次々と乗りこみ全員無言のまま抜刀する。撃ち込まれた火矢に気づいたオランダ兵の当直が大声をだそうとするのを一瞬で切り捨てた。帆にも放火する。
騒ぎが大きくなり甲板に兵士が上がって来て白兵戦になった。倭国兵は全員夜目が利く上に日本刀はこういった乱戦では無類の殺傷能力を持っている。縦横無尽に暴れまわると各々衣服を脱ぎ捨て褌に大刀をぶち込んで次々と海面に飛び込んだ。
見ればオランダ船は数隻に火の手が上がりパニックに陥っていた。
結局、消火できなかった3隻を放棄し、他のオランダ軍は艦隊行動をとることなくバタビアに引き上げていった。南蛮倭国の完勝である。
これよりオランダ東インド会社は倭国と友好条約を結ぶ。オランダ船の安全航行を保証するために金をふんだくるという一方的な条約で、同時に南蛮、河内、呂宋の日系3国家に適用された。とりあえずオランダは南シナ海を北上する航路を確保し台湾・日本のルートを抑えることとなった。
激震が走る。寛永十年(1633年)、江戸幕府はポルトガルとの断交とキリスト教禁教のために鎖国令を出した。海外からは自由に帰国することが叶わなくなったのだ。さすがに動揺が走った。今のうちに何とか故郷に帰りたいと言いだす者、故郷のメシが食いたいと言う者、こんな暑いところはもういやだと泣き出す者までいた。
しかし今更日本に帰ってもすることないから構わない、と開き直る者の方が多かった。なんとなればこの荒くれ者たちはほぼ全員が土地も家族も持っていなかったのである。
ローザエモンは長老会を招集した。
「海禁令が出て何やら騒がしいが、お江戸の将軍様も今や三代目じゃ。余程キリシタンとポルト(ポルトガルをこう呼びならわしていた。オランダはホランド)がお嫌いと見える。ホランドの奴らめ丸儲けじゃの」
「我らは今後いかようになりましょうや」
「まあ、しばらくは様子見よ。帰ったところで誰が迎えてくれる。ホランドは長崎で交易が認められる。ということは裏で舌なめずりしている大名がウヨウヨしているに相違ない」
「ローザエモン様、それはいづこの国や」
「まあ待て。関が原で裏目に出たやつらに決まっておろう。交易の旨味を知り尽くしているところよ。ワシは河内(ハノイ)の室西僧正と呂宋のアントニオに話しに行く」
「よろしくお頼み申し上げまする」
僧形の一行が密かに薩摩の坊津に上陸した。一人だけ頭を丸めているが、他の者は僧形ではあるが全員背中まで伸ばした髪を結ぶこともなく風になびかせている異形だった。
浜で待ち構えていた薩摩藩の役人達に向かいこう告げた。
「河内(はのい)の建僧都室西(たけるそうずしっさい)である。薩摩の太守、島津家久公にお目通り願いたい」
「こころえて候。まずは長旅の疲れ癒されたく」
「あいわかった」
扱いは大名並みの待遇だった。だが、薩摩側の心づくしの接待にも室西以外のものは終始無言。また室西の受け答えも型通りに終始し、宴席は盛り上がらない。だがこの連中、酒は一人一升以上飲んだ。
翌日、薩摩側は駕籠を用意していたが室西はこれを丁寧に断り徒歩で鹿児島に向かった。仕方なく駕籠には土産物を載せて移動したのはご愛敬であるが、南国由来の色鮮やかな珊瑚、めずらしい象牙の装飾品などとかなりの重量で、駕籠かきは苦労していた。
表立っての訪問ではないためか、鹿児島に到着した後しばらくは城下に留め置かれ数日を過ごした。鶴丸城は関ケ原後の築城だが、全く防御を想定していない不思議な構造で、天守のような建築物はない。誠に薩摩らしいといえば薩摩振りの武骨な城である。
数日後、島津家久との会見が成った。面を上げよ、の声とともに端座した室西の眼光に家久はいささか違和感を感じた。やや赤みがかっている。
「お目通りかない恐悦至極に拝し奉りまする。ご機嫌麗しゅう」
「苦しゅうない。此度の来薩、誠に喜ばしい。南方の暮らし向きつつがなきや」
「常夏にて、至極」
「して、件の話に相違はござらぬな」
海禁政策により幕府直轄領である長崎の出島でのみオランダが交易できる新体制になったのだが、倭国勢も島津家もオランダに一人儲けさせるつもりなどサラサラなかった。南蛮倭国は自慢のガレオン船も新たに進水させ自ら密貿易に乗り出し、相手として狙いを定めたのは薩摩と東北の伊達藩だった。オランダ船から荷物を強制的に抜いては売り捌き、代わりに物資・銀を調達、更には人材をスカウトする目論見である。
薩摩側も琉球を勢力下に置くことで密貿易の味は知っていたし、伊達藩も遠く支倉をローマに派遣したりと海外展開をすすめていたので、両藩とも渡りに船だったのだ。
その頃の東南アジアでは、フィリピンを支配していたスペインは国王フェリペ二世の死去による混乱の中にあり、徐々に勢いを増した英国がインドから虎視眈々と中国大陸を狙うという状況で、海上の勢力が変わりつつあった。ところが日系の三倭国の評判があまりに悪く、日本人とは下手にちょっかいを出して暴れられると面倒な奴ら、との認識が広まったお陰で矛先は日本に向かなかったのであった。
話は終わり、御酒くだされ、の宴席となった。家久は上機嫌で一献下げ渡すと言った。
「室西殿、我が薩摩は勇武をもって聞こえた国柄。河内(はのい)の武芸者も腕が立つであろう。軽く手合わせはどうじゃ」
「我らの得物は鉄砲にて」
「ふはは、供の者たちの金剛杖は仕込みであろう」
「これは。座興でござりましょうや」
「そうよ。座興も座興。狂乃介、これへ」
一座の末席に端坐していた屈強そうな若者が呼ばれた。室西はその若者を見据えると傍らの小柄な僧侶を即した。二人は庭先にて名乗りを上げた。
「示現流、立花狂乃介」
ごつく太い樫の木刀を持っている。
「大悟坊峻海」
右手で金剛杖を地に突き立てた。
両者は後ずさりした。狂乃介は「チェース」と猿叫の気合を発して切先を天高くつきだすトンボの構えに入るや「きゃー!」と突進した。俊海は自然体。次の刹那、大地を割らんばかりに振り下ろされた木刀が地面にめり込んだ。俊海の体は毬のように転がり狂乃介の背後にスッと立ち上がる。体制を立て直した狂乃介の眼前に金剛杖が突き付けられていた。
「そこまで!」
声を発したのは室西であった。
「さすがはお留流。われらの杖では受けること敵わず。太刀筋をかわすしかできませなんだ。更に戦えば大悟坊は真っ二つ必定、呵々」
「薬丸示顕流、飛田隼人!」
コケにされたかといきり立つ次の若者が名乗りを上げる。だが今度は家久が言った。
「下がれ、隼人!盛んなるかな薩摩武士。こいは戦場ではなか。座興でごわ」
薩摩弁が飛び出したので一同静まった。
以後、坊津は密貿易の港としてオランダ船や明船、更には朝鮮の交易も含めて大いに賑わうのであった。
然しながら流石に大っぴらにやりすぎて、享保八年幕府による手入れが強行され、薩摩藩は大いに面目を失った。俗に言う『唐物崩れ』である。
だが、元々アウトローの寄せ集めの倭国側は痛くもかゆくもないとばかりに、枕崎にその拠点を移し幕末まで密貿易に励み続けるのである。
余談ながら伊達藩に密貿易を持ち掛けたのは呂宋のアントニオ・オエステ率いる船団で、伊達藩士である支倉常長が洗礼を受けたことを知っていたからであった(禁教令によって失意のうちに仙台で没した)。更に伊達政宗の長女で一度は徳川家康の六男・松平忠輝と婚姻した五郎八(いろは)姫がキリシタンであったので、その知己を得られたのである。
現在の石巻港においてしばらくは盛んに密貿易をしたのだが、五郎八姫の没後に幕府の詮索を恐れた伊達藩によりこのルートは廃れた。
更に余談であるが、密貿易船で南蛮倭国に渡ったのは物資や銀だけではない。酌婦・遊女の類も大勢やって来た。 のちの世に言われる「身売り」のような暗い話ではない。この苦しい生活を捨てて新天地に羽ばたくような気概の、多少危ない女達が海を越えてやってきた。一方で南蛮倭国の方も、ただでさえ内部でも無用の小競り合いが絶えない荒くれ者共を慰撫するためにもそれを必要としたが、統制が取れなくならないよう人数は厳しく制限した。
かくて日本人の純血は続いたのである。
つづく
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がんばれ!スマイル・ジャパン奮戦記(ミラノ・コルテイナ)
2026 FEB 7 22:22:53 pm by 西 牟呂雄
目まぐるしく入れ替わる攻守、激しいコンタクト。4年に一度の楽しみである氷上のフィーメル・レオパード、女子アイス・ホッケーのオリンピックが始まった。ソチでは一つも勝てなかったが、回を追うたびに強くなってきた美しき可憐な選手たちの健闘を祈ります。
特に注目しているのはスウェーデンのチームで活動しているハロラン麗選手。かわいらしいこけし人形のような顔立ちのゴール・キーパー。経歴は良く知りませんが、中学からアメリカで育ち170cmの長身が期待できます。
僕はどういう訳かゴール・キーパーのユニフォーム姿が好きで、あのヘルメット姿と重装備のコスチュームをみるとやたらとワクワクします。一度キーパー目線の動画を見ましたが、パックがうなりを上げて飛んでくるのは恐いですよ。
ゴール・シーンはもつれるとゴチャゴチャになって良く見えないのですが、あの塊の中での攻防は迫力満点、ガンダムみたい。
女子アイス・ホッケーは競技人口が少ないので半数の12人が北京を経験しています。ベテランとのバランスがいい。
その中には姉妹プレイヤーが何組かいます。今回注目は新たに代表入りした双子の野呂姉妹。なかなかワイルドな表情が魅力です。二人ともFWなので息の合ったオフェンスが期待できますね。
そして床(とこ)姉妹として活躍していた亜矢可(DF)秦留可(FW)コンビ。お姉さんは結婚されて人里さんになっています。葵(DF)紅音(FW)の志賀姉妹も健在。この四人とハロラン選手はスウェーデンでプレーしています。日本の女性もMLBほど有名ではないものの、世界で活躍していて頼もしい。
さて、6日の初戦はフランス、去年から3連勝中だ。
第一ピリオド、やや押し気味に攻撃するものの敵も守りは固い。何しろフランスの選手はデカいのだ。190cmなんてのもいる。フォワードは動きがいいのだが、パスがイマイチ通らないなぁ。
第二ピリオド、勢いがついて次々にシュートを打つが跳ね返される。うーん。
だが残り2分のところで浮田がゴールを決めた!だが後が悪い、油断としか言いようのないディフェンスの戻りの悪さを突かれて同点にされた。
最終ピリオド、気合を入れろ。直後にパワー・プレイがあったがダメだった。
怒涛の攻撃が続く、床秦留可選手がいい。アッ、伊藤がゴーール!
後3分、フランスがGKを上げてきたところでカウンターが入った。2点差になった。
ところがそこでペナルティーがあって一人ボックス入りになる。途端に返されて冷や汗だよ。フーッ、何とかしのいで勝ちを拾った。
次はドイツ。デカいんだまたこれが。わぁ、44秒でいきなり得点されたぞ。
おまけにドイツの選手の早いこと早いこと。こっちはフォワードのゴール前の集まりが悪い。
そしてペナルティー2回、押された格好でもう2点を許してしまった。日本もシュートは打っているのだが入らない。
第二ピリオド。日本はGKを増原から川口に代えた。
ドイツのデカ女のコンタクトは、女子では反則のボディ・チェックじゃないかと思えるほど激しい。怒涛の攻撃が続き、また失点につながった。
ところが残り5分あたりで突如スマイルの動きが良くなって相手のペナルティが出た。そしてパワー・プレイになるとたて続けに2点を返す。いいぞいいぞ。志賀紅音選手の動きが実にいい。5-3。
最終ピリオドに意地を見せろ。
オォ!互角に渡り合っているじゃないか、押せ!押せ!押せ!うーんんん。追いつけない、負けた。
返すがえすも立ち上がりの失点がまずかった。
まだまだ来週にイタリア戦・スウェーデン戦があるぞ。気合を入れていけ、がんばれ!スマイル・ジャパン。
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空白 2時間
2026 FEB 1 9:09:01 am by 西 牟呂雄
港の新年会に行った。昼から餅つき大会をやったりレース結果の表彰をしたりして散々飲んだ。
それから夜中までの僕の恥ずかしい行状は今更新鮮味もないので省く。
翌朝は朝からいい風が吹いたので沖に出て、流しながら計器やシートのチェックを少々。手際よくクレーンで上げて解散。
クルーの車に乗り合いで最寄りの駅へ、そして電車で五駅あたり過ぎて忘れ物に気が付いた。スマホ!こういうことはしょっちゅうあるのだが、毎回やたらと焦る。どこで忘れたのか、今でもあるのか、もしかしたら車の中か。
次の駅で降りて反対側の電車に飛び乗る。そして終点の駅からバスに。一路ハーバーに戻る、ここまで約1時間のロス。
更に帰りのバスの時間を見ると、なんと休日ダイヤでこれから1時間以上ない!
トボトボと船まで行くと、かのスマホはキャビンの中で僕をあざ笑うように鎮座していた、コノヤロウ。まぁ、良く待っていてくれたと褒めてやったがね。
で、することも何もなくボケーッとするしかない。しかしハーバーは一応パブリック・スペースなのでただ寝転んでいるわけにもいかない、他の船は忙しくしているし。邪魔になるから船にあった焼酎パックを飲みながらバス停に向かった、まだ1時間くらいある。
ん?見上げると π の形をした雲が浮いている。
ずいぶん高い雲らしく、少しづつ形を変えているようなので急いで写してみたら、もうこんなふうに崩れてしまった。
そうか、雲も忙しいんだ。
そして気が付いたが、今この見える範囲で動きがあるのは僕とあの雲だけ。風も止んだ。車もない。
おまけに淋しくもない。
待てよ、『さびしい』って何だ。
何かに夢中になって一息つくことか?さっきまで忘れ物が気になってあわてていた。
ほっとしてすることがない今、さびしくはない。
誰も話しかけてこなくて、話す相手もいない今、さびしくはない。
ここにいることを誰にも知らせず、だれも聞いてこない今、さびしくはない。
入り江の畔に降りてみた。
誠につつましやかな渚をのぞき込む。手のひらにザワザワした感覚が残る。
僕はひとりだけれどこの下の無数の生き物は忙しかろう。
歩けばザクッザクッと砂が鳴る。
孤独死する一人暮らしの老人は、息絶える前にさびしかったのか。
そうではあるまい、直前まで必死に生きたはずだ。
祭りの喧騒の中で、たった一人で歩く方がさびしかろう。
岬の先まで来てしまった。ここにも誰もいない。
浪がサワサワしているだけ。
係留された船のマストの間にうっすらと雪を頂いた富士山が一人。
気高い富士がさびしいはずはない。
誇り高き孤独はさびしいはずはない。
僕は時間から解放され、この風景に埋もれていた、2時間も。
あっ、そろそろバスの時間かな。ザクザク歩いて行くとバス停に数人の人が。
この2時間の、ポッカリと空いた空白の風と色と富士。
僕は諦めない、僕は恨まない、僕は裏切らない。
この2時間はここに置いていく。
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真冬の花火
2026 JAN 22 0:00:20 am by 西 牟呂雄
芝生に薄っすらと白い雪、冷え込む外気、流れる川。
キーンと張りつめた暗闇の中で、震えながら花火を灯した。
夏の日の喧騒の中に置いて行かれた花火を見つけたからだ。
この寒いのにどうかと思ったが、止めることがはできなかった。
丁寧に地面にろうそくを立て火を点ける。風が強く炎はユラユラゆれてしばしば消えた。また点ける。
そして花火を翳すのだが、山火事が起きるほど空気は乾燥しているのにすぐには弾けてくれない。
アッ、点いた!
漆黒の闇に溶けていく白煙。見つめていれば眩い色彩。一本目の炎で次を、また次を、また次を。
車が通る。この寒いのに何をやってるんだ、とばかりにスピードを落とす。歩く人は火事が心配なのか迷惑そう。不思議そうに見るのは僕の出で立のせいか、スキー・ウェアだからね。
花火は無くなった。目にはあの火花が残っていて、その目で空を見上げても残像が明るすぎて星など見えない。
しばらくして星がチカチカ見えるようになる頃は、あの色合いは既に朧気である。
ことばとしての『はなび』という音は更に歪んでいて、ついさっきワタシが見たものとは部妙に違う。
そしてそれを『花火』という文字にしてしまえば、もはやその面影さえ失っている。
そういう『ことば』とか『文字』では表せないサムシングは、冬の闇の中には満ち満ちている。普段は気付きもしないのだが、季節に不似合いな花火の光と煙を浴びると姿を現してくる。
この世は欺瞞・悪意・劣情に溢れかえり、昼間は大地を覆いつくしている。人はそれぞれ大いに語り、見聞きし、しばしわかったようなつもりになっている。
しかし、冬の夕刻を過ぎたあたりからそれら邪悪の気は姿を消し、人と大地はようやく落ち着きを取り戻す。
自分はと言えば、この冷気の中で風にあたればしばしば震えている。
するとわたしの頭の中が肉体から飛び出してしまい、それもお臍のあたりからスルリと抜け出してしまい、体で言えば目の高さあたりで浮いたまま360度を見渡して、次に天空を見上げてうっとりとしている。
その内に私(ワタシという意識)がどんどん広がった。そしてとうとう空の星を映すほどの大きな鏡になって、次の瞬間には私が空から自分のいた所を映している意識に陥り、とうとう地球全体を包む鏡の球体になってしまった。
ひときわ黄金色に輝いてるメタリックな人影、あれがわたしの抜け殻に違いない。
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リッキーのうた Ⅱ
2026 JAN 14 0:00:03 am by 西 牟呂雄
生まれてから ずっと何かに絡みつかれている
おまえに会いに来た
おまえは死の淵からやって来た
自分の運命が過酷だとも知らずに
いや その意識が芽生える間もなく
必死に生きている
そんなおまえに会いに来た
リッキーよ
澄んだ瞳のお前は何を見ているのだ
小さな掌は動くのか
暑いのか寒いのか
このモーツアルトを聞いてくれ
私の歌を聞いてくれ
おまえは生きのびることで
その生きる価値を人に与えている
いるだけでさえも 我らにそのことを教えている
不自由もあとからあとから来るだろう
そのうち自分の運命を知るだろう
それは教えられるものではなく
いつかつかみ取るものだ
われらは常におまえを愛し 誇りにしている
光の息子よ 太陽の子よ
人は通り過ぎ 触れることなく消える
たたずむおまえの息遣いに
だれも気が付かないだろうが
漆黒の闇にも真っ赤な色が浮かび上がるように
リッキーよ 生きろ
そうして 我らを生かしてくれ
そう 知らなかっただけで
お前に生かされていたのだ
リッキーよ
リッキーよ
リッキーよ
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一歩も引けなくなった
2026 JAN 7 0:00:36 am by 西 牟呂雄
見ようによっては鮮やかすぎる手際の良さ。一体どのくらい前から準備していたのだろう。
ムチャは無論ムチャなのだが、呆気にとられたとしか言いようがない。
作戦の秘匿、訓練の精度、作戦遂行脳力、現場判断、見たところ怪我を負わせることなく一国の大統領を拉致するとはさすがに驚いた。
情報も無く今後も予測不能。だが良く分かったのはトランプは戦争を仕掛けたつもりなどサラサラない。恐らく頭の中はその言葉通りテロリストにも繋がるマフィアを逮捕した、くらいのつもりだろう。その視線の先にあるのは中国だ。そういえばロシアも特殊軍事作戦だと言ったなぁ。
反米を旗印にしてジャブジャブ石油を中国に売っている悪の親玉をかっさらい、高らかに「オレの足元で調子に乗るな」という恫喝だ。言語道断もクソもない。アメリカの衰えもドルの威信低下も知ったこっちゃない、だから手が付けられない。中国に尻尾を振っている奴は勝手にしろ、だがオレの庭先を荒らすんじゃない、これだ。考えてみればトランプだけじゃなくてアメリカは今までもこういう事をやった。ベトナムからイラクだパナマだアフガンだ、これからもやる。で、結果は。
ベネズエラの内情は良く知らないが、反政府勢力が帰国して統治しても恐らくロクなことにはならないに決まっているからとても論評できない。だからアメリカもドロ沼に落ちないとも限らない。コストに見合うのか?
ドンロー主義ですか。恐らくEUへのシグナルにもなったはずだ。ウクライナのことはオレはもう知らん、お前らでロシアと話をつけろ、オレはプーチンとディールする。
ドンロー主義に忠実なら日本なんか絶対に守ってくれない。台湾関連の発言でグチャグチャ言ってくる大陸は安保理でどの口が言うのか文句を言って見せたが、裏では笑いが止まらないか、韓国も取り込むつもりだし。アブナイ!台湾封鎖演習もやってもいたからなぁ。
こうなったら日本はもう後には引けない。発言撤回なんかとんでもない。アメリカを名指ししない。右も左も『言うべきことは言え』くらいのことは非難はするんだろうが言ってどうなる、憲法改正すらできないんだから。仮に言うとすれば『もう守ってもらえないようですから核武装していいですか』くらいじゃないかね。2~3年耐え抜いて経済がガタガタになったり戦争を続けたりしているユーラシアが弱り大統領が変わるのを待つ。
高市総理には気の毒だが訪米して『大っぴらには言えないけれどあなたの気持ちは良くわかる』くらいはささやいて、何が何でも毅然と振舞って貰いたい。そう言えば岸田元総理は『アメリカを一人にはしない』とやって受けてたじゃないか。ガンバレ!高市総理。
こんな時に足を引っ張るような国会議員・電波芸者評論家はいらない。勇ましいことを言う奴はもっといらない。
それにしても何てことしてくれたんだ。
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令和八年 滋養神社お告げ
2026 JAN 1 0:00:16 am by 西 牟呂雄
本年もめでたく明けたること慶びかしこみかしこみ申すなり
これなるは滋養様よりくだされしありがたきお告げナリ
こころして聞くべし
ひとつ 高市内閣絶好調
定数是正に手を焼くものの、高市体制は盤石。早い時期に再び日米首脳会談をやることになる。
そしてあまりの中国のヤバさに韓国がやたらと親日をアピールして気持ち悪い。
中国は無視して台湾・フィリピン・ベトナム・タイ・マレーシア・インド・オーストラリアのつながりが強化され『黄金のカーヴ』の盟主の座につく。
亡き安部元総理の亡霊が蘇ったようだ。
ふたつ ミラノオリンピックで日本勢大活躍
開会式の日本選手団入場の際、日の丸を持った大谷翔平が登場して世界を驚かす。その勢いで特に女子選手の活躍が目立つ。氷に強い。スピード・スケート、フィギア、カーリング、更にはメダルこそ取れなかったがアイスホッケーのスマイル・ジャパンが快進撃をして人気者になる。
旗手だった大谷はそのままWBCで大活躍し、軽く決勝まで行くがムムッ。
みっつ 中国大混乱
年末からネチネチと日本への挑発を続けていたが、実態は国内向けのメッセージに過ぎないことはバレバレ。実際にレーダ照射問題は各国防衛関係者の間ではクロ判定で、大国がいじましい、と世界の笑い者。
経済のメチャクチャは覆い隠せなくなっていた。若年失業は50%。地方政府は破産レベル。習近平の健康状態も思わしくない。
粛清されまくった人民解放軍に不満分子が発生し不穏な動きが広がる。どうやらその後ろには台湾に本拠を置くかつての秘密結社である紅般(ほんぱん)の流れを組む反社会勢力が香港から大陸にまでネット・ワークを広げ共産党を揺さぶっているらしい。実はサイバー攻撃までしているという噂がある。
よっつ AIバブル崩壊
データ・センター建設の異常なラッシュにより華々しいAI企業もその借金は莫大。さらに開発競争に競り負けた一角が株価の暴落を受けて破綻する。FRBが慌てて利下げを行い、円安に修正される。
昨年以来利上げをしていた日本も株価は落ちて4万円台になるが、そもそもユニコーンの規模が小さいため物価が下がり景気は落ちない。賃上げは順調
国債の額も税収増でチャラになりプライマリー・バランスは好転する。
いつつ 夏の暑さは常軌を逸する
東京で40度を超える日が続き緊急事態宣言が出る。扇風機を使うと熱い風を浴びてやけどを起こす始末に。おまけに雨も多く鹿児島・高知・静岡・千葉に熱帯雨林が出現し生態系が変わる。密林となったエリアには人は住めなくなる。
するとペットとして買われていたニシキ・ヘビが繁殖してしまい、クマよりも恐ろしい被害が続出する。
ところが、冬になると異常な寒波がやってきて上記エリアにも積雪して全滅する、メデタシメデタシ。
むっつ ウクライナ暫定和平成立
トランプ大統領は中間選挙のために何が何でも戦争を終結させるためにゼレンスキー大統領を脅し上げる。
「いいかげんにしないとウクライナをロシアとポーランドとキエフ大公国に3分割するぞ。そうなったらお前の取り分はキエフとその周りだけになってもいいのか」
ゼレンスキーは慌てて英・独・仏に泣きつくが「その提案を飲めばキエフ大公国だけはNATOにいれてやる」とけんもほろろ。落胆したゼレンスキーはイスラエルに亡命する。
ななつ 衆議院解散
絶妙の舵取りと高い支持率、中国がツベコベ言うたびに支持率はあがる。そしてここがキモだが、定数削減で制度改革をされたら消滅の危機に陥る公明・国民・れいわ・社民・共産といったところも絶対に当選できない比例の連中が『どうしても現行制度で選挙がしたい』となってしまう。
余裕綽々の高市総理は残りの任期1年を切るタイミングでニッコリ笑って解散する。もちろん自民の大勝で衆議院の過半数を押さえた。
尚、参議院対策で維新や参政・国民・公明までを手玉に取る。
やっつ 日本ハムファイターズ日本一
2年連続でC・Sでホークスに敗れたため、新庄監督は頭にきてホークス戦の全敗を宣言する。そしてPAYPAYドームでの試合には二軍を投入した。すると本当に勝てなくなり、札幌のファンが怒り出す(オレも)。仕方がないのでエスコン・フィールドでは真面目にやるのだが、負け癖がついてついにホークス戦12連敗を喫する。
この時点で不思議なことにリーグ2位だったが、その後は互角に戦って優勝する。
C・Sは血みどろの死闘となって辛くも退ける。
日本シリーズではセ・リーグの覇者カープを相手にストレートで勝ち日本一になる。
ここのつ M1グランプリに異色の漫才コンビ
M1グランプリに輝いたのは『ザ・コンプライアンス』の二人。コンプラ違反なのかスキャンダルなのか良く知らんが、芸能界から追放された二人が漫才コンビで復活。SMAPの中居正広とTOKIOの国分太一である。
鉄板のツカミネタは『あなたフジテレビの女子アナを呼び込んだでしょう』「キモこそ日テレでセクハラしたじゃないか」『それがどうしてコンプラ違反なんだ。セクハラなんかテレビ局じゃ日常茶飯事だったじゃないか』「そうだそうだ。厳密に言ったら全員有罪のはずだ。ジャニーズばっかり狙い撃ちにしてジャニハラだよ」
とお 皇統安泰
遂に愛子様が首を縦に振った。旧皇族の血を引く男系男子との婚約相整い、政府は皇室典範の改正に着手した。
すなわち愛子様を皇位継承権1位におなりいただき秋篠宮親王殿下に2位を、悠仁親王殿下を3位とする準備である。
尚、このネタはこの十年連続して外れているが・・・。
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AI 天国の成れの果て Ⅱ
2025 DEC 24 0:00:45 am by 西 牟呂雄
使っているパソコンを2台並べて同じ質問をChatGTPに打ち込んでみた。するとレスポンスがビミョーに違っている。これはパソコンに残っているデータやメールをAIが認識して質問者にチューニングした耳障りの良い答えをしつらえるからだろうか。使用者は共に私なのだが、メールアドレスは別のものを使っている。
結論に関しては似たような答えにはなっているが、アプローチは違う物だった。
また、同じことを英語と日本語で質問したところ、極端に正反対の結論にはならないが、結論は多少ずれていた。ChatGTPはしょせん国産ではないから、英語の回答の方が正確というかガッチリした結論を出すように感じた。
ただし、私の質問は、前者が『全盛期の朝青龍とアントニオ猪木がストリート・ファイトをやったらどっちが勝つか。ルール無し、ノック・アウトのみ』であり(これは日本語だけで質問した、念のため)後者は『三国同盟に日本が加わらなかったら真珠湾攻撃は避けられたか』という下らない内容である。
AIアルゴリズムを勉強したわけではないので正確にはわからない。おそらくAIそのものの汎用性は共通していても、使用目的に応じて様々な要素を排除・強調するようなチューニングをすれば使い勝手は違ってくるのだろう。
グーグル社の開発するジェミニ3とChatGTPが直接対決するような構図も面白い。片方の答えをコピーして「これに反論して逆の結果を導け」と打ち込んでみたらどうなるか。
あるいは同じソース・コードをチューニングして互いの腕を競うようなゲームを競わせる、例えば、犯罪を裁く際にAI検事とAI弁護士が競い合うようなゲーム。ちょっと解説すると、競艇では選手が乗るモーター・ボートは抽選で決め、選手はそのボートを調整してレースに臨み、我々は乗り手の腕とエンジンの癖の組み合わせに賭けている。馬と騎手が決まっている競馬とここが違うが、選手の腕を競うという意味では公平に見える。ジェミニを扱う検事役とChatGptを操る弁護士役の対決は駆けの対象になりゃせんか。
それぞれが飼いならしたAIを持つことで、例えばはじめから互いの方向の食い違う場合の結論の出し方は相当簡略化できる。AI時代の会議は、会議のための資料を時間をかけて作成する必要はなく、白黒は瞬時に決まる。待てよ、最後の判定をするAI裁判官の公平性は大丈夫か。
推測の域でしかないが、目下のチャットGPT程度は対話を繰り返すことによってそれなりに鍛えられて使い勝手は飛躍的に進化する代物で、そうこうしているうちに無くてはならないものになり、片時も手放せなくなるようになるだろう。そして益々超頭脳としての機能は上がる。
急速に進化するAIを駆使して戦争が行われていたりしたら恐ろしい、いやもうすでに一部はそうかもしれない。一部と限定したのは全てAIが判断するなら超頭脳は『核』の使用をためらうはずがない。
我が国は攻撃を受ける兆候が見られると判断されたら、敵の交戦意欲を無力化するAIでも開発しようか。高市政権はインテリジェンスの充実に熱心だから、無論ハードの戦力の向上もやりつつソフト戦略で即応すべく人材・組織を変えていく、発信力・外交力を発揮すべく世界にネット・ワークを張り巡らせるといい。
ここまで書いてきてだんだん分かって来た。政策とか戦略・経営に適用させるためにAIトレーナーのような(例えば猛獣使いのイメージ)人材が必要になり、そういう人がプロ化する。現代の熟練工のように自由自在にAIを駆使しロボットを操るようなエンジニアが必要とされ、心配するほど雇用は減らないだろう。なぜならディープ・ターニング機能が発達してもどうしても新たに生まれる需要・危機に限りはないから ”初めのインプット” を起こす単純作業は減らないから、何がしかの人手は増え続けるからだ。
私のような老人が過去の成功体験にモノを言わせてアーダコーダと垂れ流すウンチクが最も不必要な時代がすぐに来る、それはうれしい。更に言えば今日知的業務として高い料金を取るコンサルなど1回百円の自動販売機のように、話を聞いてもらってチャチャッと結論を聞かせてくれる。かかる時間は1秒以下だろう。コンプライアンス・チェック、詐欺電話遮断、はたまたトクリュウ勧誘排除、まだあるぞ、早くそうなってほしい。そのころ私はアルツハルマゲドンで桃源郷に遊ぶ心地なのだ。
そういえば、プーチン・習・金のそろい踏みというおどろおどろしい画像は生成AIじゃないのかね。すると万が一の場合も3人共何事もなかったように揃って永久に人前に姿を現し、世界を威嚇することが可能だ。
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喜寿庵歳時記 リフォームと民泊
2025 DEC 16 0:00:16 am by 西 牟呂雄
築百年、各ジェネレーションごとに屋根を変え、サッシを入れ、床暖を張り、暖房を引き、と手を加えてきた喜寿庵も、ついに私の番が回って来た。きっかけは能登の地震で古民家が全滅したことだった。恐る恐る耐震構造の診断を受けたらば、一発アウト。柱と土台はしっかりしたもののようだが、壁の耐震はやはり基準の無い頃の建築なので持ちそうにないとのこと。おまけにマズいことに崖の上に建っているものだから能登並の地震だったら一たまりもない。
診断をしてくれた方が親切だったのでリフォーム業者をお願いしたところ、それなりの古民家ということで宮大工のような神社・仏閣・古民家の専業を紹介され、はっきり言って見積もりはハネ上がった。だがその時点ではもう後に引けなかった。
すると、アーダ・コーダと蘊蓄を聞かされ新たな提案までされた挙句、手が足りないの材料が無いのとなって工期は何と半年!こうなりゃもう破れかぶれだ。
いよいよ工事が始まった。
覗きに行くと畳は上げられ床ははがされ壁も一部は抜かれていた。へぇ、この下はこんなになっていたのか、などと見ていたが、幼いころから過ごして来た家が解体されるのには感慨深いものがやはりある。
そういえば庭だって楓が枯れたりこの辺には薔薇があったな。
新たな命を吹き込むようにリフォームされれば家も喜んでくれるだろう。冬の寒い日には早く言って温めてやらなければ、と車を飛ばしたものだった。
で、親方が帰って一人になった時点で気が付いた。今晩ここには泊まれない!
いかにも間抜けな話だが、工事は二階・書斎部分と居間・水回り部分の2か所を分割して行う計画だ。即ち二階部分は普通に使えることは使え布団も置いてある。カップラーメンでも食べながらキャンプ気分で泊まろうと考えていた。だが親方の帰り際の一言ですべてが瓦解した。『電気・ガス・水は止めてますから』
これ、どうすりゃいいんだ、今から東京まで帰るか。
と、あることに気が付いた。このすぐ近くに北富士総合大学の学生が運営する民泊がある。ダメもとでいってみるか。そこも空き家をリフォームして学生サークルが交流の場に活用していたはずだ。
とことこ尋ねてみると学生さんが一人で留守番をしていた。聞けば相部屋でよければ泊まれるという。平屋で共有スペースの他に畳敷きの6畳二部屋・4畳半一部屋、素泊まり〇千円の安さだ。お願いして日帰り温泉までメシとお風呂に行った。
さて、ビールと焼酎を手に戻ってみると驚いた。8人ほどが鍋を囲んでいるではないか。
半数は白人で、イタリアからの旅行者と北富士総合大学に来た留学生だそうだ。
僕は数十年前にしばらくイタリア南部にいたことがあるので少し喋ると破顔一笑、いろいろ話してくれた(そこからは英語)。二人は従弟同士で片方は学生、もう一人は休みを取って1年かけて世界中を回っている、どういう制度なのか知らないが給料は出ているらしい。シンガポールから上海に渡って富士山を見に来た、この後はオーサカだとか。試しに焼酎のロックを勧めると少し飲んで目を丸くし、もういいと笑った。
こちらの二人は遥かエストニアからの留学生で日本語専攻で留学に。確かに上手な日本語だった。今度はロシア語で話しかけたのだが全然通じない。そうか、バルト三国がソ連邦だったのはこの子たちが生まれる前なのだ。ましてやエストニアは今やNATOの一員でもあり、ロシア語なんかお呼びでない(その後英語で話した)。
話していると、こういうゲスト・ハウスはあちこちにあって旅慣れた外人はよく使うらしい。学生さんに聞けば利用者は半分以上が外国人だとか。ふうん。そしてこういった民泊のネットワークは全国にあるらしい。
皆さんお若い、老人は僕だけ。だが老人が旅をしてはいけないという事はない。僕もリュック一つでこういう所を泊まり歩けば行ったこともない日本の各地を回れる。面白そうだな。
さて、酔いも回ったので寝ようと民泊用語のドミトリーという6畳敷きの部屋に行き、つい立てで区切られた一角に布団を敷く。すると相部屋の人がムックリ起き上がった、女性?挨拶するとドイツからの観光客で一人で富士山を見に来たと言っていた。ドミトリーはそういうものらしく平気で着替えだすと腕にはタトゥー。妙な恐怖感を感じたが、まあいいや。
翌日チェック・アウトまで寝ていたら、客は僕だけになっていた。工事は半年かかるからまた泊まろう。
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『の』 および 左川ちか について
2025 DEC 9 12:12:22 pm by 西 牟呂雄
友人が編集する文芸誌で詩人かつ翻訳家のサワコ・ナカヤスの文章に恐れ入った。以下、一部を抜粋させていただく。尚、原文は英語で訳はその編集者である。
『の』について。
ーこの魔術的というほかない(そしてつけ加えるなら、きわめて美しくもある)日本語であった。そしてわたしにとってこの語は、翻訳そのものの魔法をとらえている。『の』に翻訳不可能なところは何もない。それはそれ自身、それ自体においては大した意味もない語であり、おおむね、人間、物、場所などのあいだの関係性を示すものにすぎない。それは私たちの世界を組織している、シンタックスと呼ばれる見えない糊である。私はそれを愛する、もしも無人島に持っていくものを選ばねばならないとしたら私はその『の』を持っていくであろう。ー
どうです。このあと、濃厚な考察と編集者との抱腹絶倒のやりとりが続くのだが、編集者はあることに気づく。かつて東京23区エリアの電話番号が7桁だったとき、口に出して言う際にはXXX『の』XXXXと言い慣わしていたことを。ホントだ!
そして僕も気が付いた。母方が神道だったので葬式の時には祭詞を奏上するのだが、死ぬと『命(ミコト)』になるためXXX(苗字)翁(女性は媼)『の』命(みこと)、と読みあげていた。
昔から日本ではそう呼んだのだ。源義経はミナモト『の』ヨシツネであり、藤原道長はフジワラ『の』ミチナガという具合に。これらのケースは指し示す『の』や所有を主張する『の』ではなく、人のバック・グラウンドを表していて、場合によっては省略も可能な『の』である。
すると将来AIなんかが効率的な日本語を流暢に使った日には消えてしまうかもしれない。そしてそれに洗脳されたガキが妙な『の』抜きの日本語を喋ってしまうのではないかと恐ろしくなる。それは困る。サワコ・ナカヤスさんのように無人島には持っていきたくはないが、無性に愛しくなる。
例えば『食べ「ら」れない』の「ら」のように、将来その存在すら危ぶまれる音が『の』か。
ひょっとしたら既に捨てられた『の』がその辺に落ちてないか、気になってしょうがない。
『の』を散りばめるとどうなるか。
さびしいの かたわらの女(ひと)声に出す
旅路 の 秋 の 雹 の 冷たさ
ダメだな。
ところでこの サワコ・ナカヤス という人は左川ちかという明治生まれで昭和初期に作品を発表した前衛詩人の英訳者でもあり、その翻訳によってアメリカ翻訳者協会ルシアン・ストライクアジア翻訳賞を受賞したという人。
更にその左川ちかは、ジェイムズ・ジョイスの翻訳なども手掛けた一種のモダニズム詩人で、念のため検索したところこれがまた大変にマズかった。暗く不吉なモチーフが散りばめられて返ってテンションが上がる。
どのくらいマズいかというと、読んで1週間はマトモな日本語の文章が書けなくなった程だ。戦前にこんな詩人がいたとは、つくづく詩人にならなくてよかった。是非読まないことを勧める。
とは言いつつも、恐る恐る読み込んでみるとですな。
作品をそのまま載せるのは憚られるが、この人の見ている光景が脳内変換して、金属製の言葉がペン先から飛び出してきたような詩である。
北海道から上京すると、緋色の裏地を付けた黒いビロードの上下、黒いベレー帽に黄金虫の指輪で銀座を闊歩する。ジェイムス・ジョイスが泥酔の中に紡いだ詩の翻訳でおかしくなり、ロクでもない男にしくじったのかとも思ったが違う。
やはり最初からこういう才能だったのだろう。出身地の厳しい自然に対峙した時、この人には風雪の音がレッド・ツェッペリの楽曲に聞こえていたに違いない。
どうです、読みたくなりますか。
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