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六方詞(ろっぽうことば)

2015 DEC 14 21:21:49 pm by 西牟呂 憲

 

弁慶の飛び六方

弁慶の飛び六方

 
 歌舞伎『弁慶の飛び六方』は大きく足を上げてスキップのようにダッタダッタダッタと踏み拍手喝采を浴びる見せ場です。ところでなぜ”六方”と言うのでしょうか、真っ直ぐに花道を引くのに。
 同じようなネーミングに『六方詞(ろっぽうことば)』というのがあります。江戸初期に市中を練り歩いては因縁を付けたり暴れまわった旗本奴が好んで使った言葉で「かたじけない」を「かっちけねえ」とか言う関東訛りですね。
 これは今でも下町言葉に残っていて、私なんかも『まっすぐ』を『まっつぐ』と訛ります。『真っ直ぐ行ってくんない』が『マッツグイッチクンネェ(ネェが下がる)』と言う感じで直りません。
 当時の江戸は京阪に比べれば文化的には遥かに及ばず、人だけが武士も浪人も商人も職人もウジャウジャと溢れかえる、活気だけが横溢する街だったでしょう。そんな所にゃ必ず仇花のようなイカレポンチが横行するに決まってます。
 旗本奴の有名な時世が残っています。
 
落とすなら 地獄の釜を 突ん抜いて 阿呆羅刹に 損をさすべい 水野十郎左衛門

わんざくれ 踏んぞるべいか 今日ばかり 翌日は烏が 掻ッ咬じるべい 山中源左衛門 

 「べい!」が効いてますね。

水野十郎左衛門

水野十郎左衛門

 いずれも悪さが過ぎて斬首される時に詠んだ句ですが、いかにもヤクザもんらしい破れかぶれ振りがでています。”わんざくれ”は”どうでもいい”くらいの意味。”掻ッ咬じるべい(かっかじるべい)”とは胸のすくような語感でしょう?この山中源左衛門は四谷の真法寺で切腹したのですが、真法寺はいまでも残っていて、僕は子供の頃に隠れんぼをしたりして遊んだことがあります(墓石に登ったり卒塔婆でチャンバラもしました、ごめんなさい)。

水野十郎左衛門

幡随院長兵衛

 マズいことにこいつ等は直参旗本で家柄はいい。徒党を組んではそれぞれ「大小神祇組」(だいしょうじんぎぐみ)「鉄砲組」「笊籬組」(ざるぐみ)「鶺鴒組」(せきれいぐみ)「吉屋組」「唐犬組」(とうけんぐみ)と名乗ります。このうち唐犬組は旗本ではなく町奴の唐犬権兵衛が親玉で、水野に殺された幡随院長兵衛の系列。まるで今で言うチーマーというか族と言うか。これが全部でで六つで「六方組」と呼んだようです。歌舞伎狂言の白柄の刀、白革の袴、白馬に乗った「白柄組」(しらつかぐみ)は水野の大小神祇組がモデルと言われています。この一味には現役の大名加賀爪直澄(武蔵国高坂藩主)なんかも混じっています。この人将軍家光の下で小姓を務めたり大番頭になったり、しまいには寺社奉行にまで上り詰めました(最後にチョンボして改易、あたりまえか)。
 ”六方”という言い方はここから発祥し、傾奇者・歌舞伎者・婆娑羅者を指す意味になり、それが歌舞伎に残ったものと考えています。どなたか本当かどうか教えていただけませんか。

江戸っ子に伝わる都市伝説


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Categories:言葉

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