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狂言『萩大名』 から 歌舞伎『め組の喧嘩』

2019 OCT 11 20:20:06 pm by 西 牟呂雄

 狂言を見てきた。地元の薪能なのでブラリと。
 シテ 野村万作、アド 野村萬斎、太郎冠者 飯田豪、の萩大名。
 小物で頭の悪い大名(この場合単なる供連れの田舎侍といった風情)が国に帰るにあたって清水寺に参詣し、茶屋で萩見物をする。茶屋の亭主が萩の花にちなんだ和歌を所望するというので、心得のない大名は太郎冠者に教わるが、すこぶる覚えが悪い。
 太郎冠者は
七重八重九重(ななえ、やえ、ここのえ)とこそ思ひしに十重咲き出ずる萩の花かな
 と詠んでシテの大名に特訓を施すが、ダメなのでサインを考えます。
 扇子の骨を7本・8本・9本とカンニングさせ「萩の花かな」では一計を案じて脛を見せる(当時はスネハギと言った)。

しちほん、はっぽん

 しかしトロイ大名は扇子の骨を見せられるとうっかり『ななほん・はっぽん』と言ってしまう。『十重咲きいづる』に至っては『パラリ』。
 ドン引きした太郎冠者がフテ腐れて帰ってしまう。
 さあ困った。何とか残された大名は、下の句が出なくて慌てる。亭主は、ちゃんと締めなきゃ帰さんぞ、とせまる。
 そして、おおそうじゃ、と口に出したのは「太郎冠者の向こうずね! 」

 今気がついたが、字面で読んでもちっとも面白くない。特に歌舞伎・狂言は舞台を見なけりゃ伝わらない。やはりクラシック音楽でもガシャガシャ・ロックでも実際に見たり聞いたりしないとダメなんだな。
 先日、歌舞伎座の団菊祭で上演された『め組の喧嘩』をEテレで見た。言わずもがなだが正しくは、神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)だ。大ファンの市川左團次が相撲の四ツ車大八を演じて、め組辰五郎を菊五郎がやる豪華版だった。
 しかしテレビ中継はやたらと顔をアップにするのが、いけねぇいけねぇ。別にそれが芸を貶めるわけではないが、舞台を見慣れると表情を大写しにされるのはどうも味がない。

 ちなみに、この舞台で七代目尾上丑之助が初舞台を踏んだ。その寺嶋和史君は菊五郎と中村吉衛門の初孫だ。そして演目の絵本牛若丸では鬼次郎役の音羽屋と鬼一法眼役の播磨屋に弁慶役の菊之助の三代四人でお披露目をした、いや華がある華がある。5才の丑之助が「やあ、ちょこざいな、牛若丸の手並みを見よ」などと見栄を切るのは、やはりナマで見たかった。どうもこの子、顔は播磨屋系だけど。

 で、狂言に戻って、舞台から通る万作さんの声が若返った!去年は随分と小さかったのが今年はいい。こういうことも実際に観る醍醐味だろう。

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Categories:古典

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