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台湾旅情 

2014 SEP 2 19:19:50 pm by 西牟呂 憲

 これもまた昔の話だ。台湾の総統選挙を牽制するために大陸がミサイルを台湾近海に撃ち込んだことがあった。僕はその直後に台北に向かった。今から考えると不思議だが渡航禁止も注意喚起も何も無かったのだ。1996年だった。
 これは前年のミサイル発射の際に、アメリカが空母インディペンデンスを派遣して強烈なメッセージを出し、今回も直ちに第七艦隊が配備されたので、大事には至らないだろうと思われていたからだろう。ペルシャ湾からミニッツが来る、とも言われていた。更にその後広がった噂では、中国のミサイルが空砲だったことを(本当かどうか知らないが)李登輝が諜報によって”知っていた”からだと囁かれた。
 台北訪問の目的は現地の企業との提携交渉で、ほとんど合意に達しており現地の弁護士と打ち合わせをした後はサインを交わすだけだったので、気楽とは言わないがいつもよりは足取り(飛行機だから飛び取り?)は軽かった。それが乗客は物凄く少なく、座席が1列に3人くらいしかいない。皆ビビったかとせせら笑ったものだったが、今ではそうも言ってられないだろう、ウクライナの事もあるし。
 着いた日に提携相手とメシを食いに行ってただ事ではないと思い知らされた。普段はネオンギラギラの台北の街が暗い。英語の上手い洗練された台湾人が、乾杯の時にグラスを挙げて言った言葉。
「こんな時に約束通りに来た日本人の勇気に感謝する。」
「!」
最早『そんなつもりでは・・・』等と言えなくなってしまい、僕自身は絶対に役に立たないくせに、
「心配ない。第七艦隊(アメリカン・セヴンス・フリート)とウィ・ジャパニーズ・アー・ナウ・イン・タイワン。」
と口走った。これが効いたとも思えないが、大変スムースに合意に達することは出来た。
 台湾は人口2千万しかいないのに国是として大陸に対峙しているから国民皆兵で、彼らは全員兵役をこなしている。そして本当にドンパチが始まると予備役招集されると言うのだ。何と先方の責任者はかの金門島の砲兵で時報代わりに空砲をブッ放していたそうな。
 帰りの便は、来る時とは逆に台北から帰国するアメリカ人やアジア人・日本人で空港はゴッタ返し、帰国便も満員だった。

 その後も何度も行き、南国らしいトロピカルな雰囲気と人懐こい人達にすっかり台湾贔屓になり、台湾内は一人でも電車・バスで十分移動できるようになる。新竹(チンチュウ)という街は台湾のシリコン・バレー等と言われ、米国と直結したファウンドリーと言われる受託産業が独自に発達していた。そして次々に新しい会社ができたり売却されたり、と活発だった。
 台湾式経営という訳ではないが、バランス・シートを安定させてキャッシュを確保する堅い経営と旺盛な独立心が特徴的で、人口2000万人に当時70万人の社長がいると言われていた。韓国と違うのは、分厚い中小企業が中核を支えているところだろうか。このスタイルはアジア通貨危機の時に圧倒的に強みを発して、NT(台湾ドル、しかし圓と表示されている)はむしろ円にリンクして暴落しなかった。
 一般に親日的と言われているが、産業構造も日本と競争するより上手く棲み分けているように感じられた。即ち材料は日本から、加工・組立は台湾で、といった具合だ。

 台北や高雄の屋台風外食もおいしいが、『素食』という看板の食堂のようなものがある。入るといろんなおかずが大皿にいくつも盛ってあり、一人一人好きなものを少しづつ取っていく。ビュッフェ形式のようだが会計のところには量があり、それに乗せた時の重さで料金を決めるシステムで、これがうまい。繁華街に『四川料理』『潮州料理』『北京料理』『広東料理』といった立派なレストランも充実しているけれど、僕は一人の時は素食を好んだ。もっとも中には材料を見せている棚にカエルがぶらさがっていることもあったが・・・・。
 台北の林森北路(リン・シン・ペェ・ルー)という一角は日本人が多くカタカナのネオンだらけだったので、僕はあまり近寄らなかった。
 
 台湾オリジナル言語はミンナン語と言ってどうやら福建系のチャイニーズらしいが、国民党が来てマンダリン(北京語)が入った。一党独裁時代はミンナン語は禁止され、僕と同世代くらいの人間は教室に憲兵がチェックするため入ってくる経験をしている。この戒厳令時代の歴史的葛藤は今でもある程度続いているものの、ここでは政治的評論は避けたい。現在は民主化もされて選挙は行われる一方、大陸との関係は緊張感が続く。
 それとは別に山地のオリジナル言語、漢語とは別で南方系の言葉もある。しかし文字がないために記録が残らないようだ。他に客家語その他。台湾人パートナーがレストランの隣の客が喋っている(中国語っぽい)言葉が分からない、と言うのでビックリしたことを覚えている。
 従って彼等の他国語に対する感性は敏感で、ビジネスマンは英語が上手いし、アメリカへの留学者も多いと聞く。ただ、留学生は徴兵免除になるから、と当時は噂された。
 
 総じて中国の台頭により国際的に孤立しがちな彼等は、ビジネスの上ではいじらしい程誠実だった。

 つづく

台湾旅情 Ⅱ

台湾旅情 Ⅲ


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