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八丈島航海記 後編 

2015 AUG 22 23:23:01 pm by 西室 建

 

黄八丈織り

黄八丈織り

 今回の航海は台風の端境期にちょうど当たった。全く日頃の行いの賜物であろう。
 しかし天候は何があるかわからない。予備を一日取ってはいるが、万が一を考えて本日出発する。出際に民宿の前にあった民芸品のお店で素晴らしい黄八丈の織物コースターを買った。どうだろう、この鮮やかな黄色は。他にも欲しくなったネクタイがあったが、それは高くて手が出なかった。
 きのうのニュースで湘南にサメが30匹も出た、と聞いて多少怯えた。落水してサメの餌食は勘弁して欲しい。

15日午前9時50分
 視界良好の晴天にいざ出港。風はラッキーなことに南西の追い風だ。っと思って船出したところ、セールが風をはらんでいるにも関わらず船が走らない。対地速度がやはり2ノットの逆潮を食っている。暫くは仕方がない。

水平線上の御蔵島

水平線上の御蔵島

 幸い天気がいいので3時間も走ると御蔵島が見えて来た。往路では灯がうっすら見えるだけだったが島影が分かるだけでも少しは士気が上がる。目標が見えると方向を決め易くなって舵取りが簡単だからだ。
 ところが御蔵島が見えてもまだ逆潮が続く。おとといこれに十分苦しんだので帰りは押してもらえる、と話していたのにどうしたことか。
 パンにソーセージとタマネギ・ピクルスを挟んだだけの昼食を取る。
 波はさすがに外洋の大きなうねりは続く。
 御蔵島の島影に入り、波が小さくなって1回目の燃料補給。キャビンで少し休む。
 
午後6時三宅島
 次の三宅島あたりで日が暮れて来た。本日もまた夕日が海に落ちる所は見られず。一回目のワッチで8時頃から舵を握る。
 すると、三宅をかわしたあたりから潮に押されるようになった。どうやらこの2日で少し変わり、黒潮が御蔵島と三宅島の間を直進して島の南北に巻いたのではないだろうか。風は相変わらず南西の追い風だった。
 夕食は御飯を炊いてザーサイ・海苔の佃煮。
 そして暫くすると、往路では見ることができなかった神津島か新島の灯台が見えてきた。
 夜間に月も星も出ていない時に灯台のフラッシュが見えると、ホッとするやら元気が出るやら。

15日午前3時
 キャビンで横になっていたら突如慌しく人が降りてきてバラバラと甲板を叩く音がする。スコールだ。ワッチまで時間があったが、急ぎ合羽を羽織ってファーネスを装着し上がって行くと土砂降りだ。舵を取っているクルーは手が離せずにズブ濡れになっていた。いや参った。
 こうなると灯台もうっすら明るくなるくらいに視界は落ちるし島なんかとても視認できない。急遽ワッチ人数も増やして体制を立て直した。外洋レースのベテランは『もっと南でレースだったらこんな時は「ハイ、シャンプー用意」とか言って裸になるんだよね。』等と笑っていた。
 しかし台風でもないし、おそらく前線を抜けたのだろう、暫くすると雨は止み天空には星が見えてきた。満天の星に流れ星が良くみえる。流れ星は狭い都会の夜空ではなかなか見えないが360度の視界の利く海の上ではしょっちゅうなのだ。

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 いつの間にか波浮灯台、房総の灯台が瞬く。東京湾を行きかうフェリーや貨物船のライトが目につきだす。航海灯は右が緑左が赤、前後は船首の方が低くなっているので向け先の見当をつける。大型貨物船からみればこちらは米粒みたいなモンだから時々懐中電灯をセールに当てて相手にも注意喚起する。何しろ船舶航行量日本一の東京湾の入り口である。
 ワッチが終わる頃、東の空が明けてきた。どうやら随分千葉方面に寄ってしまった。
 北西に進路を取ると、観音崎・剣崎そして城ヶ島の灯台が見えてくる。遠くに江ノ島の灯台も瞬く。ようやく帰ってきた。

16日午前5時45分油壺入港
 まず、航海の安全を祝してビールでかんぱーい!お疲れ様でした。結構潮の押しが効いて帰りは20時間で着いた。
 ライフ・ジャケットやロープの潮抜き、食器洗い、甲板にブラシ、キャビンの雑巾がけ、感謝を込めてセッセとやる。その間にも冷えたビール・ビール・ビール。
 久しぶりにオーバーナイト・セーリングをやったのだが、まず(帰りのスコールは別として)天候に恵まれてよかった。全員ケガも体調不良(二日酔い除く)もなく、南の島と海を堪能した。

 ところで私はビールをやりすぎて、昼まで爆睡してしまった。

こうなったら後には引けない!次は小笠原か!
 

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Categories:ヨット

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