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現代ロシア社会 前編

2015 NOV 7 0:00:40 am by 西牟呂 憲

 筆者の関係している北富士総合大学国際問題研究所では、国・地域の社会分析からインテリジェンスまで様々なことを研究している。
 そのフィールドワークの対象の一つがロシアである。目下のところクリミア編入、ウクライナの戦闘、北方領土強行訪問、シリア反体制派への空爆 と国際的に眉をひそめさせる振る舞いが散見される。
 一方では資源開発を念頭に、プーチン大統領は極東を重視する姿勢をしばしば強調する。
 又、個人的には安部総理と極めてケミストリー(肌合い)が合っており、首脳会談は常に良い関係を確認している。この点は何故か森元総理の存在が利いているようで、個人同士ではG7のどこよりも良好に見える。筆者も多くのロシア人の友人がいるが、話が長くなりがちなことと頑固なところはあるが気のいい朴訥な人ばかりだ。
 但し、国家レヴェルの意思というのは『いい奴』の集合体と言う訳にはいかない。
 ところで領土問題についての筆者の立ち位置としては、まず2島返還してもらい後に国境確定と平和条約を結ぶというスタンスであるが、プーチン大統領の在任中に安部総理と是非まとめてもらいたい。

 それにしても、相手の考えている事が読めなければ交渉もしようがない。ロシア人は何を考えているのか、どうしたいのか。以下のレジメは北富士総合大学において筆者が秋季特別講義として大学院生を相手に執り行った講義の内容である。政治的な先入観を極力避け、日本からの目線に偏らないように分かりやすく学生に説明したが、レヴェルを落としたつもりはない。講義の後半は討論を企画したが学生の意見が洗脳されているのかと思うほど画一的で、結果として筆者=ロシア・学生=日本の構図での議論となった。単なる理屈の言い合いでは学生に押されるはずもないが、中には刺激になる場面もあったので多少の訂正を含めて記録したい衝動にかられた。以下レジメをクリックしながらなぞって頂きたい。

現代ロシア社会

レジメ5ページまで

グローバル時代とは何か
・ソ連という社会主義国が崩壊した理由はいくつもあげられるが、経済的な比較劣位にありながら広大な国家を維持することが不可能になり統制ができなくなった事が大きい。直前のチェルノブイリ原発事故・アフガニスタン侵攻の失敗・東欧民主化の流れが引き金となった。
・その後大混乱に陥って各種紛争・国有資産のブン取り合い等を経て、大統領制のロシアとなった。
・目下の足元はクリミア・ウクライナ問題と石油価格の急落で一気に減速した。
ウクライナがNATO入りするとロシアと国境を接するという非常事態が猛烈に危機感を煽った。キエフにおける革命騒ぎは治安の問題として見ても放置できるレヴェルにない。

現状モデル
・エネルギー大国・資源大国であり、特に天然ガスはパイプラインを通じてヨーロッパに供給する。このパイプがウクライナを通っているので、ドイツも穏やかではない。
・しかも輸出関税はロシアの税収の20%を占める財源となっている。
・現在の若い企業家達はソ連時代を経験していない。しかしながらオルガリヒのように巨大になると行動様式は旧態然としてはいる。
・旧ソ連の国々でもベラルーシ・カザフスタン等は親ロシア色が強い。クリミアは元々親ロシア。
・バルト三国は反ロシア。ウクライナは西と東では宗教も少し違う。
・日本からはヨーロッパエリアに自動車が進出。極東はプーチン大統領が力を入れるものの資源開発は進まず。日本の進出を喉から手が出るほど欲しがっている。
・経済制裁は金融・石油掘削の最先端技術がボディ・ブロゥになっているものの、ロシアはしぶとい。まだインフレ傾向は小さい。
・北方領土はプーチン大統領以外に解決できる人間はいない。側近が何を言っても関係ない。
・NATOとは軍事同盟であり、ロシアとの間には絶対に緩衝地帯が必要。それでなくてもロシアはテロの対象になりうる。中東が不安定な今は尚更そうで、シリアでのロシア軍の空爆はその文脈でみるべきである。

一般のロシア人の考え
・契約までは散々ゴネるがサインまでこぎつけると約束は守る。時には身を切ってやることもあり、狡猾さは感じられない。国家レヴェルはいざ知らず、個人的には義理人情を大事にするところがある。
・個人レヴェルの政治感覚は長いものには巻かれろ的。政治家というのは税金を取る悪い奴だと思っている。良く言われるロシアン・ジョークで、投票行動は 悪い奴<もっと悪い奴<物凄く悪い奴 を排除するための行為だ、等と。
・100km200kmの距離は「隣の町」といった感覚で、到底日本人の感覚の及ぶところではない。人なんか住んでいない所の道路は直線。
・アメリカは「何にでも首を突っ込んでくるでしゃばりな国」。ヨーロッパは「仲間ではある」がドイツに関しては複雑な感情、ハッキリ言って好きじゃない。中国は潜在的な脅威と感じているが、話しているとモンゴル人と区別がついていないようだ。ロシア語で中国人のことをキタイスキーと呼ぶが、フン族・モンゴル族・ジョルシン族(満州族)・漢族全部を指す場合が多い。極東の人口圧力は肌で感じている。
 蛇足ながらウェストファリア条約以後、単独で一方的に国家間の条約を破棄した件数はダントツでドイツ(但し当時は300もの各地方の領邦国家だったので件数が多いこともある)次いでロシアである。

つづく

 講義出前受け付けています。サイト管理者にご連絡下さい。

現代ロシア社会 後編


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ロシア東方シフトは本物か

Categories:国境

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