Sonar Members Club No.36

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我が友 中村順一君を悼む 

2016 NOV 12 1:01:49 am by 西 牟呂雄

 ゴルフを最後にやったのは五年程前、僕と同じ様な幼馴染のS氏と三人で廻った。
 彼はゴルフが好きで、凝り性だったから練習も熱心だったのではないか。非常に真摯に取り組んでいたのでその時は握らなかったと記憶する。即ち彼はパーを取り損なうと大げさに悔しがりS氏や僕はワン・パットが入ってボギーになると大喜びするといった具合にそもそも腕が違い過ぎた。賑やかにプレーしたものだった。
 スタートして午前中は暫く淡々と(ギャーギャー言いながらの意味)進んだ。ところが上がりの2ホールで突如彼がミスった。寄せをダフったり3パットをしてしまった。文句タラタラである。
 因みにそのゴルフ場は彼のコースでそれなりの所だったから、僕達の罵り合いにキャディーさんが呆れ返ってしまい『こいつらは幼馴染で行儀が悪くてすいません』等と言い訳していた。
 車じゃなかったので昼飯時はガバガバ飲んでヤッコラサという感じでバック・ナインに臨んだ。
 すると13番で僕にしては上出来の2オン1パットのバーディーを出した。『バーディ~、バーディ~』とはしゃぐ僕を二人は苦々しく見ている。
 そして次のホールで僕の後に気合入りまくりの表情で打った彼の渾身のショットはグーンと一直線に右の林の中に消えて行った。
『クソー!』
 と吠えた後、憤怒の形相凄まじくキャディーさんと林に向かう彼。
 ここは小学校以来の(我々の間の)暗黙のルールに則って彼の止めを刺すように、僕もS氏も口々に嫌がらせを言った。
『ありゃ行ったってありっこない』『探すのに時間がかかるだろうから先に行ってるぞ。ごゆっくり』
 そのルールとは『水に落ちた犬は叩け』である。
 僕等が2打目を打ってグリーン近くにいると、何打で出したのか知らないがフェアウエイに彼が出て来た。残りは180ヤード位あっただろうか。こっちは足を引っ張るつもりで『オーイ、早く打て』などと声をかけると、彼はそれを聞いてアイアンをウッドに変えた。そしてスィング一閃、目の覚めるようなナイス・ショットを繰り出した。ボールは高く上がった後我々の間を跳ねてオンしたのだ。いやビックリした。
 そして厄災はすぐに僕等に跳ね返った。僕が寄せようとしてシャンクしS氏に当たった上にバンカーに落ちた。『水に落ちた犬は叩け』S氏は途端に寝返り今度は二人で僕のバンカー・ショットの足を引っ張ろうとするのだ。勿論一発で出・・・なかった。
 S氏はその鮮やかな裏切りぶりに、故人をして『あれは一種の天才だ』と言わせしめた逸材である。まぁ小学生のやることなので今から考えれば微笑ましいと言えなくもないが、某小学校では教室で校庭で放課後で様々な合従連合がなされており、故人も僕もS氏も来る日も来る日もどう行動するかに思案をめぐらせていた。
 そして追い詰められたりした時の奥の手として『寝返り』が横行していたのだった。
 不思議な事にその『寝返り』を喰らった時点では当然怒るのだが、暫くすると一種の知的戦略の一環として『さすがだな』等と賞賛された。無論筆者もその手はよく使った。

 プレイが終わったらいつもの仲良しになって、ゴルフ場の最寄駅でガバガバ飲んで帰った。着いた時に店はまだ開いていなかったが、オバサンに粘り倒して交渉し、我々にビールの喜びをもたらしてくれたのは故人である。

 ついこの間の光景だったのだが。

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