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日本の仮面は楽し

2017 JAN 21 11:11:35 am by 西 牟呂雄

 「ゆけ!ゆけ!タイガー。タイガーマスク」言わずと知れたプロレス漫画の傑作、その後アニメにもなり遂に実際にリングに上がったタイガーマスクの主題歌をご記憶か。その影響は大きく孤児院にランドセルを寄付し続けた篤志家がタイガーの本名、伊達直人を名乗った事もあった。最近素顔を現し、初代タイガーの主催するリングでそのヴェールを脱いだが、僕よりも若い好青年だった。

 プロレスはともかく、仮面にはえもいわれぬ魅力がある。日本では能に代表される洗練された仮面文化があり、ひいては歌舞伎の隈取のように今で言うペインティングまで残されている。いうなればコスプレの走りのような気がして楽しい。
 おかめ・ひょっとこ等ポピュラーな物の他にも邪気を祓う意味で鬼の仮面を付けた者が退散させられる伝承芸も沢山あり、『鬼やらい』『追儺(ついな)』が知られている。これらは大陸から来た風習のようで論語にも記述がある。論語と言えば二千年前になってしまうが、日本に土着して長い年月を経ると日本的というか多少ユーモラスなものに変わって行った。

なまはげ

「お~~!ウォ~~!わり~こはいねが~」
「お~~!なぐごはいね~が~」
 秋田男鹿のなまはげである。
 独特の低い声で子供を追い立てる。

 これをやったことのある人に話を聞いたことがある。
 大体2人で組んで行くと、子供を追いまわすとすぐ家の主人が正装正座で『なまはげ様、この子等も去年は随分わりかったですが、最近はずいぶんよくなりまして、ササッこちらへ』と言って酒と肴を進めてくれる。そしてガッと一杯呑みながら『そ~が~、いいごになっだか~』と一口ご馳走になってまた
「お~~!ウォ~~!」
「お~~!」
 と言いながら次の家に向かう、一日やるとベロンベロンに酔っ払うそうだ。
 最近は少子化・高齢化でお年寄り夫婦だけの家が多いが、そういう家にも”なまはげ”は訊ねて行って『ジイサマはわりーごとしてねがー』とやっているそうだ。これは微笑ましい。第一ウジャウジャと長居しないのが年寄り向きだ。

 こういう無形異文化風習は東北の一部が有名だが、他にはないかと探すとたくさんあった。

トシドン

トシドン

 
 全部紹介できないので、なまはげのように『大晦日に来る』『子供にからむ』で絞り込むと鹿児島の島嶼部である下甑島(甑島列島)のトシドンというのがそうだ。鹿児島では人のことを”〇◎ドン”と呼ぶから”歳ドン”かなと思われる。
 やはり家々を訪ねては今年の悪さをあげつらって、こちらはご馳走になるのではなくお餅をこどもの背中に乗せてあげる。
 この仮面は紙、衣装はシュロの木の皮で毎年製作しては燃やしてしまうのだとか。伝承によればトシドンは神様で大晦日の夜に首切れ馬に乗ってやって来るという。ちょっと恐いが雰囲気は南方系の感じが漂っている。
 人口減により存続が危ぶまれているらしいが、神聖な行事のため観光化をためらっている。ナンならボランティアでやりに行きたいくらいだ。

ラダックのチャム

ラダックのチャム

 双方やっていることは似ているがルーツに関しては違うかもしれない。
 これはインド北部、中国との国境に近いラダックという所のお祭。
 宗教行事だが場所柄チベット仏教で、寺の僧侶が仮面を付けて踊るチャムである。
 印象的にはここから大陸を経て”なまはげ”系の仮面となって伝播したという想像が掻き立てられる。

ドゴン族の仮面

ドゴン族の仮面

 一方『トシドン』は南方系ではないかと当たりをつけて検索すると東南アジアにかけて至る所にあって、とうとうアフリカの西側に到達してしまった。
 マリ共和国の断崖に穴居するドゴン族の仮面舞踏である。
 いくら何でもここから伝播したとは考えられないが、トシドンとの類似が感じられてカワイイ。
 ただしこの舞踏は戦いのための踊りのようだ。

 これがヨーロッパになるとカーニバル用の仮面もあるにはあるが、一般的には『マスク』の趣で、ハッカー集団アノニマスのお面なんかは気持ち悪い。”鉄仮面”なんかも暗い印象であり、”仮面舞踏会”となると何やら淫靡な感じで好きになれない。
 どなたかもっと明るい仮面を御存知の方にご教示いただけないか。

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にっ似ている

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