Sonar Members Club No.36

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空にとどけ (今月のテーマ 空)

2017 MAR 19 21:21:38 pm by 西 牟呂雄

厳冬の 凍らんとする 風に乗り
   駆け上っていけ  山の満月

 キーンと冷え切った夜空にも満月は上がる。
 何にせよ季節は巡っていく。寒い季節に未練はないが、楽しみはあった。
➀セーターやコートが着られる。マフラーで遊べる ➁スノボに行ける ➂オッサンでもブーツが履ける ➃床暖があったかいので床で転がれる  ➄ろくに運動をしないからほとんど汗をかかない ➅それもあって温泉に入る楽しみのコスト・パフォーマンスが高い ➆落葉した木々の枝の先まで痛々しく見える ➇大量の落ち葉をファームに埋めて肥料にできる(かなぁ) ➈冬至以降少しづつ日没が遅くなるのが嬉しい(日の出は二月初めまで遅くなるが日没は冬至の前が4時半で最も早い) ➉焼酎・ウィスキーのお湯割りがおいしい

 しかし空のどんよりした冬の日というのは本当に気が滅入る。ヨーロッパ北部の人の夏休みに対する感覚は当然我々とは違うものになるだろう。ニューヨークも冬は不景気な天気が続く。日本でも新潟のあたりの方々だって今年のように雪に振くり込められては気の毒だ。ただ冷たい雨よりはましか、灯はきれいだし。

このまんま わたしを放って 行ってくれ
   夜更けの白い  雪原の中

 昔スキーに行った時にゲレンデから宿までが遠く、何人かで連れ立って帰るのにヘトヘトになってしまいおまけに日が暮れた。汗まみれになって気力を失った。その時に、あまりの街灯に照らされた道の美しさに息を飲んだ。
 途端にガリガリに凍った道で倒れて顔を切った。鼻の横からポタポタ血が出ていて「おい。どうした」と声をかけてくれた友人がビックラして「ヤバいぞ。早く来い」と言いながらぼくの前をスケーティングで滑って行った。本人は『先導してやった』と後に恩着せがましく主張したが、見捨てようとしたことは明らかだった。その男こそ我が友、SMCメンバーだった故中村順一君その人で高校生か大学生入りたての頃だった。
 もっともコッチもセッセと滑るのに疲れ果てて、ほっといてくれ、といった気分
である。我等の奇妙な友情は実に第三者の理解を得にくいと思う次第。

 梅が咲いてもまだまだ寒く、アパレル業界ではこの時期を『梅春時』といって売れない時期となっている。コートも脱げないし薄着も出来ないからと言われている。そして多少売れるのは”緑””黄緑”だと。
 3ヶ月前が赤・黄の紅葉でその後はドロンとしたモノトーンの季節を過ごし(クリスマス・お正月の華やぎはあるものの)人の目がグリーンに飢えてくるのかもしれない。
 そして太陽の位置が少しづつ高くなってくるのである。

 梅も散った。お日様よ中天に上れ。寒い季節ももう終わりだ。 

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Categories:春夏秋冬不思議譚 四季編

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