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歩く火薬庫 来島又兵衛のラリアット

2018 NOV 10 0:00:22 am by 西 牟呂雄

 八月十八日の政変で長州と七卿は都を追い払われる。憤懣やるかたない長州勢は例によって藩内の意見が沸騰し、四分五烈の状態に陥った。下関で四カ国艦隊に破れてこのかた四面楚歌。幕府も会津も薩摩も気に入らない、どうしてくれる、と。
 奇才高杉晋作は奇兵隊を組織した。
 すると”歩く火薬庫”来島又兵衛も遊撃隊を組織してこれを率いた。この藩の指揮命令系統は常にそうだが、下がワーワー騒ぎ出して良く分からなくなり、藩主毛利敬親の「そうせい」の一言が出るまでまとまらない。
 来島は激高し藩主の卒兵上京を主張するが、あの過激派である高杉でさえ抑えにかかるという事態に。意見具申が入れられないとなると、今度はいささかお門違いであるが薩摩藩島津久光の暗殺を企てる始末だった。
 いくらなんでも、と一度投獄されるのだがこのあたりが長州藩の変なところで直ぐに釈放してしまう。
 この時点で長州以外の世論は公武合体、諸侯の参預会議は機能していた。
 ところが誠にマズいタイミングで池田屋事件が起こり、吉田稔麿以下長州系の尊皇攘夷派が新撰組に惨殺される。
 こうなると来島も藩論も収まらない。2000の藩兵を上洛させる。
 すると、後の鳥羽伏見では無残な腰砕けになった一橋慶喜が、なぜかこの時は猛烈に踏ん張った。
 一方、来島のまわりにも冷静な久坂玄瑞らがいたことはいたが、”歩く火薬庫”と化した来島は「この期に及んで何をしている。卑怯者は戦いを見物していろ」と自ら組織した遊撃隊600人を率いて蛤御門に突撃し戦死する。
 それにしても御所に向かって発砲し切り込むとはどういう勝算があっての戦いなのか、理解に苦しむ。そういう事を企てておいて、時代が下って長州が官軍になるとはどこか自己矛盾を抱えていないのか。
 そしてこの戦闘で俗に”鉄砲焼け”と言われる大火事になるのだが、なぜか京都における長州の評判が落ちなかったのは不思議だ。

ラリアット決まる

 これは大河ドラマ「西郷どん」での迫力ある戦闘シーンである。禁門の変における来島だが風折烏帽子甲冑姿の出で立ちがピッタリのこの巨漢、誰あろうプロレス界の歩く火薬庫、長州力である。
 長州力、本名吉田光男、山口県は徳山出身で長州出身だからとつけられたリング・ネームだ。
 かつては武藤敬司や大仁田、真壁といったところが出たことがある大河ドラマだが同じプロデューサーなのだろうか、巧みな配役だ。
 演出の人もプロレス・ファンらしく「長州さん。ラリアットをやってください」といわれてこのシーンになったとか。
 それが、ですな。僕としたことがこの回と前後を見ておらず、最近知った、痛恨の極みなのだ。有難い事に動画に残されていたので迫真の演技を堪能できた。

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Categories:プロレス, 伝奇ショートショート

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