矢も楯もたまらず
2020 AUG 16 8:08:51 am by 西 牟呂雄

矢で攻めても盾で防いでも勢いを止めることができない、それでどうにもならない気分を表題のようにあらわすのだが、まさにそれだ。梅雨は明けた。いい感じの南風(はえのかぜ)。
いつもであれば伊豆の島か保田・伊東、あるいは熱海・下田の花火大会を見にナイト・セーリングで行く所をこのコロナのおかげで花火大会は中止、島からは露骨に『来るな』のお達しが出ている。島は確かにクラスターでも発生したら大変だし、花火もねぇ。
クルージングは三密でもなんでもないが、問題は着いてからガブ飲みして雑魚寝になるとさすがにヤバい。
それでも夏になったら海は見たいし風も浴びたい。油壺から相模湾に出た時の伊豆大島や富士山が見たい、ましてあの長い梅雨が明けたんだから尚のこと。
で、たまらなくなって一人車を飛ばした。
但し、今回はクルージングには参加しない旨を連絡していた。毎日400人も感染者が発表されている東京からの参加は、メンバーが怯えるかもしれないと配慮したからだ。問題は泥酔した僕が大声で歌ったり踊ったりする可能性が排除できない。おまけに他のメンバーは神奈川だ。やっぱりハーバーの桟橋にまで行くのは遠慮するか。
と思っていたら高速を降りて半島に向かう一本道は渋滞しているではないか。近場ならいいかと一斉に繰り出したのか、このあたりは帰省でもGo Toでもなかろうに(夏休み期間ではあるが)。見れば品川・多摩・埼玉のナンバーがウジャウジャ。仕方がない、半島の先の島にでも渡ってみるかとノロノロ進む。やっと大橋を越えるころには午後の日が傾きかけた頃だった。ところでこの大橋は以前は通行料を取っていたが今年の4月から元が取れてタダになった。
遊覧船発着所で車を降りたらもうクラーッとするほどの熱さ。そして強い風が吹いていたが、体温のような風で全くさわやかさがない。ほうほうの体で車に飛び乗り鄙びたビーチに行ってみた。
なんだこれは。
「コロナ対策のため市内全域で海水浴場は閉鎖します」
こんなところは三密にもならないが・・・。
色んなことを考えた。
この熱さでは甲板に寝転がることもできない、車だからビーチでビールも飲めない(そもそも売っていない)、沖には強風による白波が立っている、見渡してもヨットは全然出ていない、船に触るぐらいはしたいなぁ、そういえばこの前のバーベキューのお金払ってなかった、コロナの奴め早く消えて亡くなれ、オレは1人でこんなところで何やってんだ、せめて反対側の湾の入口まで行こうか、相変わらず車は多いから帰りも渋滞だな・・・・。
矢も楯もたまらなくなって車を回した。
夕日スポットで相模湾を眺める。相変わらずヨットは一艘も見当たらない。夕焼けには早いが沈み始めた光に向かって思わずつぶやく。
「おーい、僕はここだよ」
この日、淋しくはないが孤独だった。
案の定渋滞にはまって3時間もかかって帰ったが、この車列は皆僕と同じで海を見るだけに来たのだろうか。
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