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擦り寄るべからず 日本の外交

2022 MAY 26 0:00:20 am by 西 牟呂雄

 林外務大臣が訪韓した。尹大統領の就任式に出席し岸田総理の親書を渡したという。
 新大統領は対日関係の改善に意欲があるそうで、関係改善を図ると発言している、大いに結構な話だ。岸田総理は「日韓の間には難しい問題が存在するが、このまま放置はできない。国と国との約束は守ることを基本としながら、わが国の一貫した立場に基づいて取り組みを進めていきたい」とコメントした。
 だが、引っかかる。過去の経緯を慎重に見ていくとこのコメントが間違ったシグナルを送っていないか心配になる。即ち、日本が目下の問題に関して何らかの妥協をするのでは、という期待を持たせかねない。ボールは韓国が持っているのだ。それに対する対応がない限り、岸田総理の発言中の『このまま放置』するしかない。
 一方で尹大統領の安保認識は極めて正しく、北・中国の横暴を考えれば韓国がクアッドに近づいてくれるならこんなに心強いことはない。だがそれは前大統領のような従北メチャクチャ分裂政治からミリーミリ(軍事的)の合理的選択をしたという当然の判断であり、日韓二国間にある徴用工問題や慰安婦合意とは別の話で、総理の言葉を引けば『国と国との約束は守る』当たり前の話。新大統領が冷静な理論家であるならば何らかの対策を手土産にしてこなければならない。
 前大統領は相当にヤバいことを自覚して、法律まで変えて保身に走った。こういう卑劣さをアピールすれば、あの国のことだから勝手に熱くなって収拾がつかなくなるのは時間の問題。問題はその後なのだ。
 かの国の外交がなぜ合理的判断を欠くのかは簡単で、内政の分裂闘争に対日外交が巻き込まれるからだ。内政でいくらモメても構わない。そのトバッチリはもうたくさんだから、そんなことになってエネルギーを使うくらいなら『このまま放置』で一向に構わないのである。
 隣接国とは仲良くしなければ、などと言う政治家は金でも貰ったか弱みを握られているからで、現にロシアは隣国のウクライナに攻め込んだではないか。インドとパキスタンなんか凄まじい憎み合いだし、歴史的にはフランス・ドイツ、イラン・イラク、ベトナム・カンボジアと枚挙に暇がない。首脳会談も友好関係もナシでいいから合理的な利害関係だけで上等なのが隣国というものである。
 ところで林大臣は親の代からの宏池会。あの外交弱腰の代名詞となった宮沢派で、日中友好議員連盟の会長であった。宮沢内閣は悪名高い河野談話を発表し大いに国益を損なった。そもそも岸田総理が宏池会なのだから、本来バランスをとる必要があったのだが安部元総理の影響を嫌って林氏を外務大臣に持ってきたことでアメリカを怒らせたことは知る人ぞ知る。
 他方、韓国保守派の方も保守=親日でもなんでもなく、朴槿恵・李明博元大統領もヤバくなればすぐに反日を言い出した。次も同じに決まっている。尹大統領は頭も切れそうだし、サシで話したらさぞ見識の高いインテリだろう。保守派であることは、女性家族省の廃止を公約にし若い女性の票を失う覚悟で選挙に臨んだことでも筋金入りだ。
 ロシア人の項でも記したが、韓国人にも実に味のあるいい奴はいる、在日にもいる。アメリカだって勝手なことを言うし、日本人にもいやな根性悪はいる。個人の関係を超えて国家という組織は本質的に邪悪であり、我が国だって危ういことは危うい。
 それにしても、レーダー照射やそれに付随した醜いプロパガンダ、慰安婦合意の裏切り、徴用工の悪質な捏造は度を超えていた。『盗人猛々しい』と言うような下品な言葉を使うのも、まともな外交ではない。挙句の果てに天皇陛下についてまで『戦犯の息子』呼ばわり、
 それによって最悪になった関係がこの程度ならば別にホワイト国からはずされたところで韓国自身大して困っていそうにない。安全保障問題を除けば『このまま放置』でいい。
 現に林大臣が大統領の就任式出席のため訪韓中に竹島南方の日本EEZ内で、韓国側の調査船が無許可で活動してみせた(林大臣は情けないことに抗議もしていない)。案の定と言うべきか。
 目下、新大統領には中国の猛烈なアプローチがあるに違いない。それで天秤にかけられて日本が擦り寄っても何の得もないのは明白だ。いっそこう言えばいいのだ。 
『一緒に知恵を出そう、という表現もやめろ。日本から妥協できることはもうないのだ。そちらも折れるわけに行かないだろうからこのままにしよう。日本企業の資産売却をしたら更に制裁めいたことをせざるを得ない。良好な関係は目標ではなく、結果だ。防衛関係だけ秘密裏に話し合おう』とね。トコトン思い知らせなければ。

 バイデン大統領が来日した。そのパフォーマンスから推察するに、ロシアの侵攻にホトホト手を焼いているように思えた。言い方は悪いが日本がイニシアチヴを執れるチャンスなのだ。
 バイデン大統領には『半島の南に橋頭保が無くなったら困るだろう。我々がサポートするから南に告げ口外交はやめろ、日本の機嫌を取れ、と言ってくれ』と囁く。モディ首相には『ロシアとそこそこ付き合うのはいいが、今大儲けしてるのは大陸だぞ』と吹き込む。アルバジーニー首相には『散々いやがらせをされたでしょう。ソロモン諸島は貴国の喉元ですよ。ここはひとつお任せいただければアメリカも引き込んで一泡吹かせられます』とほのめかす。
 ついでに韓国保守派にも『この陣営に入りたければ他の3国に口をきいてやってもいいよ』と示唆する。さすれば対米従属などという工作員まがいの非難を受けることなくアジアの盟主のような顔ができる。当然大陸も北もぎゃあぎゃあ言うだろうが、それはいい政策の証である。 
 その昔さるバカ総理は『相手の嫌がることはしない』などとボケをかましたことがあるが、すり寄るよりもはるかに嫌がることをした方が国益を損なわない。日本を、怒らせると面倒だが、イザという時に頼りになる国にしていきたい。

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