寒い国からの帰国者
2022 DEC 18 12:12:55 pm by 西 牟呂雄

先般、長年ロシアに居住していた古い友人が一時帰国した。彼は現地のさる団体の理事であり、この『特殊作戦』遂行中の環境でも踏み止まっていたのだが、久しぶりにあったところゲッソリとやつれていた。やはり相当のストレスを抱えているのだと拝察した。
曰く、ロシアのニュースばかりを聞いているとおかしくなってくる。幸い彼の場合は西側のニュースにも触れることができるので、バランスは保てているつもりだが、盗聴はされているはずなので滅多な批判を控えていると次第にロシア寄りになっていく気がする、と。以下、要点のみ。
・生活していく上での不都合は何もなく、経済制裁は効いていない。物価も安定しており特殊作戦推進中の実感は乏しい。日本食もいつでも食べられる。
・中国、インド、アフリカ諸国、南米等は制裁どころか非難決議にも加わっていない。むしろ安部ープーチンの関係をよく知るロシア人にとって、日本が制裁に加わる方が違和感があるらしい。
・元総理の暗殺はロシはアでも大きく取り上げられ、SNSなどではアメリカの陰謀説が流れもしたらしい。
・ロシアが孤立を深めている、と報道されるようだが、上記インド、中国、とは良好な関係であり欧米とはさすがに距離感はあるものの、人口比で言えば孤立ということにはならない。
・反戦デモは全力で抑え込む。体制転覆の気配は感じられない。ロシアは一党独裁ではないが、革命が起きる可能性はまずゼロ。
・仮にクーデターなどが起きてしまったら、返って『こんな甘っちょろいことでは勝てない』とするもっと強硬な人物が出てしまう方が心配される。
・心あるロシア人は本当に嘆いている。世界中に恥ずかしい、何という事をしてくれるんだ、と悲憤慷慨しているが、表立っての発言には気を使っている。
・核の恫喝はそんなに心配することはない。使った場合は孤立どころではないことはさすがに分かっている。
・戦争はやるべきものではないことを前提に言うが、この作戦のマズさ加減は初期にキーウを攻略しきれなかったことに尽きる。首都を潰して新政権を立てて終ろうと考えたのだろう。
・そもそももう8年も小競り合いをしていて膠着状態だった。その均衡を煽りに煽ったのはアメリカである。ここがロシア寄りと非難されるところだろうが、NATO入りはターニング・ポイントで、いくらなんでもやめろと言っていればこうはならなかったはずだ。
・そもそもウクライナは上から下まで腐敗した政府しか作れなかった国だった。クリミアをどうこう言うが元はと言えばタタール人がいた所を強制移住させてついでにウクライナにくっつけただけなのだ(この辺りで私が、それは今言う話じゃないと釘を刺す)。
・製鉄所に立てこもっていたのはウクライナ陸軍ではない。内務省直属の暴れ者。幹部はネオ・ナチで、地元では嫌われていた。
・徴兵逃れに出国するものがあとを絶たないのは本当だ。我々ローカルの雇用者にも『海外に転勤させるな』といった指導がある。
・日本の金融機関のスタッフは皆海外に出た。モスクワと時差のないドバイにいてテレ・ワークしている。
・ヨーロッパもコール・オプション等で看板を下ろしている。しかし、ヨーロッパ勢はこの百年でも国境が変わるような経験を何度もしているので、どうも水面下では繋がっているようである。
・戦争の先は見通せない。しかし次の火種はポーランドだ。
・現在ロシアからの出国はモスクワからイスタンブールかドバイしかない。従ってウラジオストックから出国するにもモスクワまで来なければならない。
・日本のニュースで最もショックだったのはアントニオ猪木の訃報だった。
そして彼は年が明けたらしかるべきタイミングでロシアに帰ると語った。私はグッド・ラックとしか言えなかった。
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Categories:ロシア残照

4 comments already | Leave your own comment
kogoto
12/22/2022 | Permalink
西さん、お久しぶりです。(30~40年くらいかな)Iさんからこの記事を紹介していただき拝見しました。権力欲の怪物達はいつの世にも出現しますね。彼らの寿命は有限で早く尽きることを願うだけの自分の無力さを痛感しながら過ごすしかないのが残念です。
このサイトは非常に多岐にわたる興味ある記事にあふれています。マスコミに登場するコメンテータの発言に飽き飽きしていましたので、現場に近い、スポンサーに忖度のない記事は新鮮で魅力あります。これから他の方の記事も含め拝読します。
by kogoto(CF)
西 牟呂雄
12/22/2022 | Permalink
あっ・・・。
お恥ずかしい、私のはスルーしてください。
西 牟呂雄
1/7/2023 | Permalink
この人は1月4日、日本を出国し30時間かけて再びモスクワに赴任していきました。
目下は一方的なクリスマス休戦中にてモスクワは極めて静か。
その一方的休戦は非常に評判が悪いことを伝えると『市民はあまり街にでておらず、反応はよくわからない』とのこと。
仕事始めは10日だそうです。
彼の身の安全を心から祈るばかりです。
西 牟呂雄
7/4/2023 | Permalink
かのブログ中の方から、先日の反乱騒ぎについて連絡があった。
『初めに反乱のニュースが飛び込んできたときは、また何かのプロパガンダかと思っていた。ところが24日に軍司令部を占拠した後モスクワに進軍北上したことが報道されて慌てた。24日は土曜日なので自宅にいてニュース・ネットを見ていると、何の戦闘もないままモスクワに迫って来たので、これは荷物をまとめなくてはと準備した。25日の日曜日、モスクワまで200kmとなったときは出国の手配を考えた。住んでいるところはあまり普段と変わらないようなのだが、モスクワの南には軍用車両が配置されたらしい。ロシアでは100kmは隣町という感覚なので、東京で言えば横浜まで来たという感じだ。そこで進軍が止まって引き返したニュースが流れて心底ホッとした。今週はすでに巡行運転に戻ったのだが、何かと気忙しい。ワグネルは、丸腰の人間をハンマーで殴り殺す犯罪者集団、というような風説なので外国人の自分は危ないと感じた。当面ベラルーシに行っていてほしい』
いやはやヤバい。ロシア軍と再契約する動きがあるようだが、給料が半分なので応じるのは少ないだろう、とのことだった。