レイモンド君と雪遊び
2023 MAR 9 0:00:28 am by 西 牟呂雄
僕は未だに年4回はゲレンデに行く。そして最後にはボードではなくスキーを履くことにしている。せめて技量を維持しておきたいこと、年に一度くらいはスキー板にも雪を味あわせてやりやいからだ。あんまりほっておくとかわいそうになる顛末は以前書いた。
そろそろ春の足音が喜寿庵でも聞こえてきたので、ゲレンデも打ち止めかなと板を車に積んでいた。すると、図ったようにヒョッコリ先生が現れた。レイモンド君も一緒だ。
『やあやあやあ、おはよう、ホラ、ご挨拶』
『オハヨゴザマシ』
『どうも。おひさしぶりです。っていうか今年もよろしくおねがいします』
『なんだい、スキーかい。若いねー』
『チョットだけですよ。ロクに運動しませんから』
『ほう、丁度いいな。レイモンドも連れてってくれないかな』
『えっ』
『ナニ、ソリでもレンタルしてやってチョット遊んでくれればいいのさ』
以前から、レイモンド君とゲレンデに行き、それをのんびり眺めることを夢想していたのだ。何も考えずに願ったりかなったりとばかり『いいですよ。レイモンド君、一緒に行く?』と返事をしていた。
『イク』
との返事。そのままシート・ベルトに括り付けてしゅっぱーつ。
以前一緒に遊んだ北富士ハイランド・リゾートを通り過ぎ、亡くなった安倍元総理の別荘のある鳴沢に向った。そこにいつも行く人工スキー場はある。
さて、幼児用のウェアもレンタルしなきゃ、と思った時点でハッと気が付いた。レイモンド君はスノー・ブーツを履きウェアもそれなりのスキーのいでたち、何故、まあいいや。
そしてソリをレンタルして板を履きリフトに乗ろうとしてまた気が付く。ソリにはブレーキも何もない上にレイモンド君は幼児である。ソリに乗せて滑らせるのは危険だ。しょうがない、スキーを外して『あっちで遊ぼう』とゲレンデの隅っこに連れて行った。そして更に気付いた。おそらく一人では乗ることもできないだろう。
結局ソリに乗せてやり『いくよー』と声をかけるとともに走り出し、滑り降りるレイモンド君のソリをつかまえる、というパフォーマンスをすることになった。読者諸兄諸姉、その運動量を察してほしい。しかもソリには方向を定める機能も能力もない。即ち、ゲレンデのわずかな凹凸によりどこに行くのか分からない。更にはご案内の通りスキー靴というものは走る目的で作られていない。一回でもうコリゴリなのに、レイモンド君はこの通りの御満悦。キャアキャアはしゃぎながら『モット、モット!』とせかす。
二回やってギブアップ。僕は前期高齢者だ。だがレイモンド君は疲れない。こうなったら二人で一緒に滑ろう。僕が腰を下ろし両足をソリの外に投げ出し、レイモンド君を前向きに抱っこするように座らせる。僕のスキー靴でブレーキをかけながら滑り下りる。なかなかいいアイデア、のはずだった。やってみると足の使い方が難しく、体がズリ下がってしまい2~3秒で二人とも放り出されるようにつんのめってしまった。
ところが前のめりになったレイモンド君は腹ばいになりながら滑るのに味をしめて、チョコチョコっと走ってはダイブして少し滑るのに夢中になってしまい『これ、待ちなさい』と追いかけるハメに。ファミリー・ゲレンデにはロクに滑れない初心者もいて、ぶつかったりしては大変だ。
幼児とゲレンデに行くのがこんなに大変だとは思わなかった。そして僕はひそかに疑いを持ち始めた。ヒョッコリ先生は自分でゲレンデに行くのは面倒だから、僕がスキーに行こうとするのを見張っていて偶然会ったフリをし(レイモンド君にスノー・ブーツまで履かせて)ハメたのではなかろうか。よせばいいのに買ったリフトの1日券はムダになり、今年はスキーはできなかった。果たして来年滑ることができるのか、前期高齢者は悩むのであった。
早くスキーを覚えてくれないかなぁ、それまで僕はスキーができるかなぁ・・・。
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Categories:和の心 喜寿庵