レイモンド君の七五三
2024 DEC 15 2:02:49 am by 西 牟呂雄
11月末、喜寿庵から街中を散歩していた、あれ、正装したレイモンド君じゃないか。英国にいたんじゃないの。お母さんと一緒だった。
『レイモンド君こんにちは』
『コーンニーチーワー』
『どうもいつぞやはこの子がお世話になりまして』
『いやいや、僕とは仲良しですから。今日はどうしたんですか。イギリスだったんじゃないんですか』
『それが結局納骨とか百か日で私とレイモンドは年内は日本にいることにしたんです』
『あ、ご主人だけ単身で渡英されたんですか』
『はい。私達も普段は東京にいますけどこの子の七五三に来たんです』
『レイモンド君、もうすぐ五つか。もうお兄ちゃんだね。お父さんいなくてさびしくないの』
『サビシクナイ』
ふーん。しっかりしてきたなぁ、背も少し伸びてる。
それにしてもコレ、やりすぎじゃなかろうか。レイモンド君はもう疲れていた。
『これからお宮参りに行きますので』
『そうですか。おめでとうございます』
『ココデアソブ』
『何言ってんの。早く来なさい』
『フンギャー』
『ああ、お参りをしたら遊びにおいで』
言っちまった・・・。
喜寿庵の秋は夕暮れが早い。4時になればもう陰って冷える。落ち葉を掃いていた。
ご飯を炊いて最期の人参をゆでて海苔の佃煮と搾菜、等と晩飯のメニューを考えていた。
『バケバケバー』
ワッ、驚いた、レイモンド君だ。もう着替えていた。
『一人で来たの』
『オカーサンニオクッテモラッタノ』
以前カタコト喋っていたコクニイっぽい英語はすっかりかげを潜めて純日本語になってしまったようだ。
『お宮参りしたの』
『オマイリシテシャシントッタ』
『ふーん。おじさんは今落ち葉を掃いているんだよ。レイモンド君も手伝ってくれる?』
『オチバ』
『地面に落ちた枯葉のことだよ』
柄の折れた竹箒を渡してやるとしばらくは僕の真似をして掃いていたが、すぐに飽きて畑の方に走って行ってしまった。
集めた落ち葉をネイチャー・ファームに撒きに行くと、途中にレイモンド君がうずくまっていた。
『どうしたの』
声をかけると、返事の代わりに
『イロノツイタオチバキレイダヨ』
と言って楓の落ちた地面を見つめている。
『それは寒くなって色がつく種類のカエデという木の葉っぱだね。一緒に掃いてあげる』
『ダメダヨー。オトウサンニミセル』
へぇ、お父さんがいないのがやっぱり寂しいのかね。見ると真剣な表情だ。健気に耐えているがどうしても表情に出るのかな。ましてや、もっともかわいがったであろうオージーチャマ(大お爺さん、ヒイおじいさんのヒョッコリ先生)を失くしたからね。
と、思ったら畑に撒いた枯葉の山を見つけたら走ってきてグシャグシャにし始めた。子供なんてこんなものだ。危うく、目下栽培中のスーパー・ニンニ君を踏みつけそうになる。
冷えてきたので家に上がって二人でテレビを見ていた。
するとインターホンが。
『あのう、レイモンドおじゃましてますか』
『今ここでテレビみてますよ』
『申し訳ありません。すぐ連れて帰ります』
『まだいいですよ。おとなしくしてますから』
『全く、一人で勝手にでかけちゃってもう』
えっ?勝手に? お母さんが迎えに来たよ、と言うと、きゃあ、と叫びながら玄関に走っていく。僕も一緒に行き、お母さんの顔を見ると只ならぬ気配だ。
お母さんは丁寧にお礼を述べると一瞬、鬼の形相で手を引っ張って行った。ハハァね。勝手に来ちゃったのね。
今頃はガンガン怒られているであろうレイモンド君の1日は忙しかった。
まずは健康で健やかな成長を願うため、大袈裟な衣装を着せられてお参りに。だが、こういったセレモニーはもちろん子供のために金と手間をかけるのだが、一方では親の自己満足のためでもある。あの衣装を着てもレイモンド君は別に楽しくもなかったかもしれない。僕の子供の頃の記憶でも、セレモニーそのものは特に楽しかったという印象は残っていない。
一方で、子供の純粋さを過度に信じることもできない。あれで結構苦労しながら大人の反応を確かめたり駆け引きをしている。4歳の頃の記憶はすでに朧気だが、一人でものすごく困った時には大人に媚をうっていた。子供には子供なりの都合があるのだ。
話は急に変わるが、僕の小学生時代なんかは今から考えると特殊だったのかもしれないが、教室で、校庭で、日々陰謀が張り巡らされ、裏切り寝返りが横行していた。SMCのメンバーの故中村順一君とは、当時から合従連合を繰り広げていた油断のならない同志だった。子供は無垢である、という言説には違和感を感じざるを得ない。
ところが見たところのレイモンド君は、おそらく自分の頭の中でストーリーを組み立ててやりたいことをやりキャーキャーはしゃぎ、困ったり怒ったりすれば泣く。
『オカーサンニオクッテモラッタノ』も『ダメダヨー。オトウサンニミセル』もその場のストーリーで、嘘でも何でもない。英国暮らしが多少の影響を与えたのか、或いはあの子は軽い自閉症なのかもしれない。苦労はするだろう。
おじさんはレイモンド君の成人を見ることはできないが、幸せに暮らせるように祈っているからね。
12月になって遅い遅い紅葉が夕日に映えている。
遅れてきた秋をこのもみじが必死に取り戻しているな。
十分にな寒くなってもらわないと日本から四季が無くなってしまうぞ。
僕はもう古稀になった。
果たしてスノボはできるだろうか。
紅葉や桜はできるだけ見事であってほしい。
白い山茶花もだけど。
もうすぐ冬至になれば1年で最も美しい日没が見られる。
僕は今、絢爛豪華な秋を独占している。
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工作・陰謀はなかったか だって変だろ
2024 DEC 8 18:18:12 pm by 西 牟呂雄
単に大統領のプッツンだったのだろうか。どうにも腑に落ちない。
なかなか頭の切れそうな大統領だと思っていたが、気になる報道が聞こえてくる。
何かある。
北の国は憲法を改正して韓国を「敵対国」と明記した上で、韓国につながる道路を爆破。今までとは明確に作法を変えてきた。例えば先般のドローン騒ぎに関しても、仮に民間有志の仕業だとしても敵対行為と見なすわけだ。大げさに言えば戦闘状態にあるということ。
現に北はロシアに派兵し、実際に戦争に突入した。
考えて見ればロシアが侵攻してからは3年弱だが、東部ウクライナのドンパチは始まってから10年に及ぶ。トランプが辣腕を発揮したとしても、よほどの妥協(すなわちウクライナの領土放棄)がなければまだまだ続く。すると北は足抜けどころではない。派兵は止められっこない。
そんな環境では日米韓が親密なのは気が気でない、くさびを打ち込みたい。
元から拉致も含めて工作に血道を上げてきた独裁国家でスパイなんかいくらでも潜入させているだろう(日本にもウジャウジャいる)。
中央選挙管理庁舎に軍が入りサーバーを撮影している映像が流された。何のためにそんなところに軍が入ったのか。元々前回選挙で大負けしたため政権運営があやしくなった。
民衆が十万人以上の規模で大統領を糾弾するデモは保守派といわれる大統領の時だ。クネクネ大統領しかり。
一方投入された部隊の迫力のなさ加減も変だ。ヘリが飛んだだけで戦車のような重火器はなし、戒厳令だというのに一人の逮捕者もいない。軍の特殊部隊の50人が国会に突入したものの封鎖すらできない。あのユルさは初めからやる気がなかったのか申し合わせがあったのか。消火器噴射で阻止される特殊部隊なんてあるのかよ。どうやら命令が無視されたらしい。
フランスは内閣不信任案可決。ドイツの連立崩壊。イギリスのスナーク首相退陣。アメリカのまたトラ。日本の与野党逆転。そして韓国大混乱。安定しているのは独裁国家ばかりという現実はどう解釈すればいいのだ。格差だ分断だといったレベルではG7総崩れの説明ができない。
以下は私が考える大統領をプッツンさせたフェイク・ニュース工作ベスト5である。
➀ 大統領を暗殺する計画があり、ゴルゴ13が韓国に入った。
➁ 大統領夫人のスキャンダルの証拠が野党党首に伝わる寸前だった。
➂ トランプ次期大統領が個人的に親しい北の指導者に篭絡されたので米軍が引き上げる。同時に北が38度線を越える。
➃ 石破総理が気がふれて竹島を封鎖し、陸自の部隊が上陸する。
⓹ 大陸が台湾に侵攻を開始し。そのついでに済州島も奪いに来る。
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『ホワイト闇バイト』 というのはどうかな
2024 NOV 30 22:22:34 pm by 西 牟呂雄
『トクリュウ』なる犯罪が後を絶たない。かなりの秘匿性と情報力を備え、尚且つ組織力を持った犯罪で、捕まるのは下っ端ばかり。なかなかホンボシに行きつかないのが実態だ。バックにいるのは裏社会で安全に過ごしていることは容易に想像がつく。ルフィーのように海外かもしれない。
そこで思いついたのだが、潜入捜査ではないが公安調査庁の下部組織の人間に闇バイトに応募させ、犯行実施直前に『ここを襲え、という指令が来ました』と垂れ込んでかたっぱしから逮捕するという、専守防衛はできないのだろうか。
警察の捜査が合法であることにこだわっていては防げないレベル、即ち『体感治安』がこうも下がってしまっては、我々市民が武装でもすることになったらマズいだろう。
日本では基本的に裁判所の許可が必要だ。盗聴・通信傍受・隠しカメラ・潜入捜査などは裁判所の令状がいる。そういうものだろう。何も違法捜査なんか奨励しない。
また、従来より以下のリスクは指摘されており、あまり一般的ではない。即ち捜査官の安全、潜入の際の犯罪加担、心理的負担、証拠固めの難しさ、といった観点からコスパが悪いとされている。
警察は暴力団や麻薬密売組織、詐欺グループに対する潜入捜査が行われた事はあるらしいが、例えば破防法の監視対象組織に行うようなノウハウは別物ではないのか、オウムとか・・・。
それでですな、トクリュウからの無作為の攻撃に晒される側としては、通報制度による摘発よりせめてもう一歩踏み込んでもらいたい。
あらかじめGPS付きの使い捨てケータイと偽物の運転免許証を持たせ闇バイトに応募させる。ミョーにやる気は見せず、犯行指示を受ける。その犯行場所をタレ込ませ、先回りして張り込んでおく。犯行現場に着いて張り込みが確認出来たら『オーイこいつらだよ』と助けを呼んで裏切る。実行犯は初対面ばかりだからメンは割れないし捕まってしまうから指示役には誰が裏切ったかバレない。
こういう『ホワイト闇バイト』を百人くらい用意しておいて、かたっぱしから応募していけばひどいときは殺人にまで至る犯罪は防げ、被害も無くならんかな。この『ホワイト闇バイト』の報酬は捜査費用のコスパぎりぎりに抑えられるから募集なんかしないで警察・公安調査庁のコネのつく奴を5万円くらいで雇えば、オレだったらやるね。
そうだ!詐欺電話についてだったらもっと簡単だ。AIに勝手に答えさせるソフトをスマホにも固定電話にも仕込んどいて、詐欺と分かった途端に警察に会話内容が転送されるようにする。傍受したら次の指示にしたがい、個別に取りに来る場合は張り込み、ATMで振り込むについては振込先確認後シャットダウンさせる。これなんか『銀行ですがあなたのカードが』とか『市役所ですが還付金が』といったキー・ワードで判断できるだろう。ついでに逆探知もできれば完璧。
或いは、AIが詐欺と判断したら自動的に『ちょっとお待ちください。主人に(あるいは家内に)代わります』という音声が流れて、所轄の生活安全課に転送する。するとそこには転送されてきた電話専門の受け手となる老人がいて、ボケたフリをしながら振込口座を聞き出す、或いはニセの銀行員・市役所職員・息子の代理人がカードや現ナマを取りに来るようおびき出す。
どなたかこういうアルゴリズムのソーズを書いて特許を取りませんか。アイデア料は特許料の7%で結構ですから。それでボケ役の老人はやはり『ホワイト闇バイト』で1件5万円。無論オレは応募する。口は軽いが。
ここまで書いてきてハッとさせられた。維新前には忍の者とか隠密とかそれなりにノウハウはあった。戦前も特高警察とか中野学校のような諜報・防諜はやっていた。だが一億総懺悔の後、スパイは卑しいものと歪められ貶められてその伝統は失われたのだ。確かに共産党に潜入したスパイMとか野坂参三のような後ろ暗いイメージは拭えない。
だが本来のスパイとはもっと高貴な愛国心とか信念に忠誠を誓う貴族的なものでなければならない。諜報をインテリジェンスと言うではないか。そういった組織が無ければ私がやらざるを得ない。SMC、スパイ・マネジメント・センターで。
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新種恐竜 クマイドン発見
2024 NOV 24 11:11:34 am by 西 牟呂雄
たびたびブログで紹介した喜寿庵の飛び地で冬支度というか,背丈ほども伸びた雑草やススキを刈り込んだ。この2ケ月半、少しづつ刈ってやっとやり終えた。
こういうところはマメに刈っておかないと笹が出て、そうなると刈り辛くなっていわゆる耕作不適地になってしまう。使い物にならないくせに税金はかかる。といっても千平米もあるが農地であるため年に6千円だけど。
刈り進んで行くと、山裾のあたりで一か所草が生えていない所があって、どうしたことかと覗き込んで腰を抜かした。はじめは人骨かと思った。こんな所に誰かが死体を放置していた?まさか。
実は後背地の中腹に、朽ち果てた古いお墓がいくつかある。薄気味悪いので近寄ったことはないが、あの古さは土葬だろうから人骨もあっただろう。
ところが恐る恐るもう一度みると、かなり広範囲に散らばっている。2~3mに渡ってどの部位かはわからないが骨というか化石というか、そして髑髏のようなものはない。つまり人間ではない巨大生物のもののようである。
と、ここでいつもの悪い癖であるが、頭の中が喜んでしまい、ひょっとしたらこれは新種の恐竜の全身骨格が地滑りで出土したのではないか、とまで飛躍した。もし新種の発見だったら命名権はぼくになるとすれば何と名付けようか。名前にちなんで『ニシザウルス』はどうかな。待てよ、発見場所の方がいいか、ここの字は熊井戸というから『クマイドン』。オォ、いいではないか。
そうだ、骨のサンプルを鑑定してみらわなけりゃならんな。だが、草も生えないところだ。なんだかこのクマイドンの妖気が漂っているようで、どうにも手が出ない。採取は次の機会にしよう。
意気揚々と道具をかたづけ帰ろうとしたら、仲良しのオッチャンが歩いている。この世紀の大発見を言いふらさずにはいられなかった。
『あ~あ、広いから容易じゃないねェ』
『おっちゃん、聞いてくれ。何かの骨が散らばってるよ』
『あ~、骨が折れるよね』
オッチャンは耳が遠い。
『そうじゃなくて、ホンモノのホネが散らばってるの』
『え~、骨がどーしたって?』
『人間よりも大きな何かの骨なんだよ』
『あ~、そりゃ馬の骨ズラ』
『!』
『昔は飼ってた馬が死んだらそこいらに埋めたダヨ。そこに馬頭観音あるだろ』
『あれのこと』
『ほんとはあのあたりに埋めたんだけど面倒になってこっちに埋めたんだろうね』
人の土地に勝手に馬を埋めるな!
ただのウマの骨なら遠慮はいらん。ウラの山裾に投げてしまえ!と、思ったが、白骨化したとすればこの辺の土壌と湿度から言って数十年はかかる。ひょっとするとここの地縛霊として馬頭魔王にでもなっていたらコワい。
話は変わるが、いきなり冬になりそうなので秋口に蒔いた大根や人参を掘り出さねばならない。
毎年、どういうわけか突然変異のような奇怪な姿で収穫されるのだが、今年はどうか。
せっせと掘り出してみると、こりゃなんじゃ!
大根は、むかし大根足とかいう太目の女性にたいする蔑称があったがまさにそういった風情の短足。
人参に至ってはとても食材になりそうもないヒョロヒョロ。洗って齧ってみたら甘かった。また挑戦しようっと。
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大名行列と僕
2024 NOV 18 17:17:51 pm by 西 牟呂雄
喜寿庵のあるところの中心部は、江戸初期は藩が置かれていたために藩主の屋形が構えられていた。その後は天領で韮山代官の管轄となり、陣屋と改められそれなりの行政府として機能していた。その場所は今は小学校と裁判所である。
藩主が改易になった際、参勤交代の必要が無くなったために道具一式を地元に残していったため、秋祭りの際に大名行列を真似たのが始まりと伝わる『時代まつり』を伝承している。
また、これも以前に書きましたが将軍家献上の宇治茶を夏の間保存するお茶蔵があったため、お茶壷道中も再現した。
ところが、今年は台風や雨に祟られて本来別々にやっていたイベントが一緒になって行われるこに。
某日、イベントを見に街に出てみた、ヨッコラショッと。残念なことに小雨模様である。地元の学校や商店、団体のブースが並び即売会も行われて近隣の人が大勢来ている。ステージも設営されて子供達のダンスなんかもやっていた。
僕はこういう手作り感が大好きで、自然にニコニコしてしまうほどだ。あっちを見たりこっちを見たり、小学生向けの工作教室の前に立ってジッと見入ったり。だが、そのうち別の感情がこみ上げてくるのも分かっている。それは後述するとして、ドン・ドドンと太鼓の音が聞こえてきた。まずはお茶壷道中の一行だ。
時間を置いて今度は反対側から大名行列だ。若殿様のお国入りである。『したにー、したに』と体を左右に揺らしながら先払いが角を曲がって来た。毛槍が続く。この毛槍組は先払いとは別の『ヨイヤマッカセー』と掛け声をかける。そして時々鮮やかに毛槍を放り投げて別の持ち手と代わる。続いて小さい子供たちの弓組、鉄砲組が来る。お嬢さんが剥製を持った鷹匠まで。いいぞいいぞ!
さあ、若殿様が馬に乗っての登場、馬がデカい!後から聞いた話だがこの馬、もとはばんえい競馬で走っていたそうです。使い物にならなくなって今はこう言った催しに出てくるそうだけど、サラブレッドのような細くて長い脚ではなく、極太の短足。パカポコではなくゴトゴトと歩く。
若殿様は正に『馬上豊かな美少年』がぴったりの武者振りで思わず見とれた。
長い行列は総勢120人。お姫様はあの姿のまま全工程を歩きだから結構きついだろうに。
そして見入っているうちに前述の別の感情が湧き上がって来た。見ているのは楽しい。歩いて付いていくのだが、僕は一人なのだ。
祭りの喧騒はやはり演者のものだし、見物する側も家族だったり仲間と見ているが僕は一人。大勢の中で沸き立つように孤独感が押し寄せて来る。この感じ、なぜか昔から僕につきまとっていて、以前に単身赴任していた小倉の祇園太鼓の時にもフッと襲い掛かって来た。
寂しい訳じゃない。あの時は『天の声』のせいにしたが、今はおぼろげながら言語化できるような気になった。自由と孤独の狭間にいる不安なのだ。祭りの狂騒に入りたいが演者にはなれない。その代わり一気に立去ることも自由なのである。
僕は人込みをかき分けて先に行ってしまった行列を走るように抜いて行った。
すると、あの若殿様が馬を降りて休憩していた。いやなかなかの凛々しいたたずまいに感心してパチリ。
ん?どこかで見たような。
あっ、この方昨年の信玄公祭りの際に山本勘助役をやっていた女優さんじゃないか。話してみるとやはりそうで、冨永愛さんの信玄と一緒にパレードしていた。映画やテレビにも出ていた白須慶子さんだった。ふーん。どうりでキマっている訳だ。
そして、我に還ると先ほどの『不安』を抱えたまま喜寿庵に走って帰った。ふーっ。
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慟哭のリア 俳優座
2024 NOV 10 0:00:58 am by 西 牟呂雄
言わずと知れたシェークスピアの名作『リア王』の舞台を見てきました。
それが一捻りした脚本で、舞台を明治の筑豊炭鉱に置き換えて、女主人と3人の息子の物語に仕立てました。この手は以前にもあって、黒澤明が戦国時代の話に焼き直した映画がありましたが、さて筑豊を舞台にするとどうなるのか興味の湧くところです。
筆者は北九州に赴任したことがあり、住んだことはありませんが筑豊と呼ばれる田川・飯塚といった旧産炭地にはよく出かけていました。一言で言って激ヤバのエリアであることを肌で感じたものです(人はいいのですがね)。そんな雰囲気を脚本に込められるものかどうか、楽しみに観劇しました。
リア王の筋立ては周知のストーリーで、それを台本・演出の東憲司さんがいかなる味付けをするか。無論悲劇なのだが、例えばどこに『笑い』を入れるのか、どこから急展開させるのか、が見物です。
ところで、リアを演ずるのは岩崎加根子さん御年92才!劇団俳優座養成所の第1期生の舞台歴70年という大ベテラン。そういえば俳優座劇場が今年創立70年ですから、劇場と共に歩まれたことになります。劇場は老朽化に伴い来年閉鎖されますから、将にフィナーレを飾るにふさわしい。
主人公は亡き夫の後を継ぎ荒々しい環境で炭鉱を経営した女性。片脚に障害のある長男、放蕩息子で粗暴な次男、東京で被れたマルクス・ボーイの三男、というお膳立てには唸らされました。
さて幕が開くと、なるほど重厚なテーマだけあって硬派な演出、息をつかせぬ展開で、笑いも挟まずセンチメンタルな泣きも入らず、ものすごいテンポで一気呵成にフィナーレまで観客を引っ張っていきました。岩崎加根子さんは背筋も伸びて声も通る。凄い貫録で炭鉱の女主人が滲み出る熱演です。
そして脚本は元々の本筋を一度バラして組み立てなおすように展開していきます。両眼を失うグロスター伯爵は忠実な下僕である与平に、グロスター伯の私生児エドマンドは何と女主人の亭主が妾に産ませた善治として狂言回しとなり、尚且つ3人の息子を反目させる。
息子達は年の若い順に死んでいき、善治も最期は死ぬ。その死に囲まれた女主人の慟哭。この『慟哭』がクゼ者で、大声を上げて泣き喚くことはせず、岩崎さんの表情で、うーむ。お見事!
ところで、僕は前述の勤務した経緯からあのあたりの炭鉱弁はネイティヴで使えますが、役者さん達は見事にこなしました。単なる九州弁でないところがミソで、同じ福岡でもタモリや武田鉄矢が喋る博多弁とビミョーに違うのです。遠賀川をはさんで西と東ですね。でもって、東側の言葉の方が荒い、キ・タ・ナ・イのですな。おまけに落盤事故のエピソードがあるなど臨場感満載。感心してパンフレットを読むと演出の東憲司さんは福岡県出身とのこと、ははあ成程ねぇ。
読者諸兄諸姉に観劇を勧めたいところですが昨日が千穐楽、又の機会になるのは残念。善治役の渡辺聡さんという男優さん、上手いですよ。この人イチオシです。
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トランプ大統領のトリセツ
2024 NOV 6 21:21:00 pm by 西 牟呂雄
あの、ややもすると下品な罵り合いのような演説合戦の末大統領が決まった。
しかし、暗殺未遂あり、候補者交代あり、投票箱放火あり、しまいには暴動対策ありの選挙とはとても民主主義の卸元である先進国のものとも思えない。そりゃこっちの選挙も候補者を見ればエラそうなことは言えないが、さすがに暴動はなかった。我が国の百年前がこんな具合だ。
そして再びトランプ大統領があっけなく決まった。どうする、どうする。
だが、ハリスよりも良かったと筆者は思う。検事出身の彼女は非常に能力は高いが、白黒はっきりつけたがるらしく、外交に難があると睨んでいた。目下の二つの戦争や対中国で上手な妥協点は見つけられないだろう。元々バイデンが人気対策で女性のマイノリティー、しかも大変な美人であるがゆえに副大統領にしていたのが、自身のあまりのボケぶりに寄ってたかって降ろされた結果のタナボタ候補に過ぎなかった。
それでトランプである。問題はわが方の石破総理とのケミストリーだ。側近にも適切なアドバイザーがいないようだから、私が振り付けを考えた。
アノ手はオベンチャラに弱いのだ。まず初めは(初対面だから)こう切り出す。
『私は今まで総裁選に4回挑戦して負けています。5回目でやっとこうしてここにいられます。あなたは最初の挑戦で大統領となり、一度敗れはしたもののカムバックされた。一度敗れてカムバックするのは132年ぶりと聞きました。その秘訣は何だったのですか』
トランプは上機嫌になって自慢話をするだろう。
ところで、石破総理はクリスチャンで、しかも通っていた協会は長老派と呼ばれるカルヴァン主義の系列である。そしてトランプの大票田こそ、その長老派原理主義なのだ。この人々は全て神の思し召しだと解釈する。そこでキメの一言。
『私はあなたと同じ長老派の信仰です。あなたはあの忌まわしい銃撃にも負けなかった。あなたの親しかった私も尊敬する(ここは嘘。本当は犬猿の仲)安倍総理は無念にも凶弾に倒れた。あなたにはかすっただけだ。あなたは神に選ばれたと確信している』
これでイチコロ。
トランプは安全保障関連は恐ろしく不勉強だということをジョン・ボルトンが暴露している。石破総理がこの点を例の調子でネチネチ説明し始めたら最初からブチ壊しに決まっている。逆にもっと金を出せとか基地を負担しろと要望するだろう。そんなものは全てズバッと飲んでもいい(そうでもしなけりゃ防衛予算なんか上げられない)。そして最後にこう言う。
『あなたの言うことはもっともだ。すべてを叶えることはできないが、やれることはやる。ただ一つだけ聞いて欲しい』
その内容は、地位協定でも戦闘機開発でも核シェアリングでもいい。ただしアジア版NATOだの自衛隊駐在といったバカみたいな話は封印(誰か体を張って止めてくれ)。
トランプは戦争はやらない。これは本当らしい。ドンパチはやらない代わりにディールをする、脅す。記憶力は散漫だからたくさん要求したって覚えてもいないが、バカではない。毎回ひとつづつに絞るのだ。1回にひとつづつ、拉致問題・北の国・尖閣・関税とやってどれか通れば儲けもの。こっちもひとつづつ実行する。そして気付いた時には日本の思うがままになる。
でもそのころ総理は変わってたりして。ジャンジャン!
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台湾旅情(国家なるもの)
2024 NOV 5 0:00:37 am by 西 牟呂雄
故宮博物館には何度も行ったが、いつも全部見ることはしない。前回は国宝の青磁のみを見た。
一日かけても全館周ることなどできないのである。展示の前を通り過ぎりだけならできなくはないが、一つ一つの物語につきあっていてはとてもじゃないが無理である。
今回目を奪われたのはこの碧玉屏風。高さ180cmくらいのブルーサファイアに透かし彫りを施した屏風である。
それだけでも気が遠くなる程の逸品だがそれでは済まされない。これはしばらくの間、日本の皇室にあったのだ。
汪兆銘は様々な苦悩の末に蒋介石とたもとを分かち、南京政府を樹立した後に訪日した。その時にこの屏風を持参して昭和天皇に献上したのである。そして戦後に皇室が中華民国に返還したため、我々はここで見られることとなった。美しい屏風を通じて、汪兆銘・昭和天皇と歴史上の巨星の名前を通じ現代史を透かして見ることができる。勿論、その細やかな細部にも驚嘆すべき技が彫り込まれてもいる。
それにしても、頂いた物を『返す』とは戦後賠償の一環だったのだろうか。大英博物館だろうがルーブルだろうが、政体が変わったところで貰ったにせよかっぱらった(この方が多いだろう)にせよ返還したなど聞いたことがない。本来、正倉院にでも保管しておくのが筋かとも思うのだが、この『返還』の経緯は気になる。陛下御自身の判断か、あるいは日本国の良心なのか。
と、こういった具合に故事来歴まで辿っていてはとても1日では無理なのがお分かりいただけただろう。
お次は清朝後期の「雕象牙透花人物套球」。これは細かい象牙細工がつながっているのだが、キモは真ん中の球だ。よく見てほしい。外側の球の中にマトリョーシカのように球があり、その数21個。そして加工後に張り合わせたのではなく1個の球にまず穴を空けそこからL字型のノミを入れて内側から彫り込み細工した物、従って21個は全て回転する仕組みになっている。最深部の球の時は耳かきの様なノミで長い時間をかけて作ったそうだ。
こういう物は皇帝が命じて作ったのか名人が腕によりをかけて作って売りつけたのか、およそ常人の求めの及ぶとことではない。
もう一つ。これは個人的に最も気に入った美しい壺だ。写真は光の関係で色合いが違ってしまったようだが実物はもっと黄色い。
やはり清代の作品だが、この妖しげな光沢はどうであろう。前に立って見ていると引き込まれるなどといった表現では収まらない。
ここまでくれば『贅沢』とか『浪費』というような下から目線の感情はケチくさくて湧いても来ない。
因みに黄色は皇帝の色だそうで、皇帝の外衣である龍袍(ロンパオ)は黄色の生地に龍の文様が刺繍されている。
現在の価値で言えば何千億円もするような嗜好品を作らせるということは、もう国家の意思の範疇と言える。
我が国でもバブルなどと浮かれている時にはこれぐらいの凄まじい『贅沢』な『浪費』をしたら大変な文化遺産となったことだろう。
というのも、故宮の後に話のタネに見に行った蒋介石を顕彰する中正紀念堂(記念堂ではない)に露骨な国家の意思を感じたからだ

1975年に蒋介石が死去した後、5年の歳月をかけて建設された巨大なモニュメントで、面積1万5千平米、高さは70m。蒋介石の享年に合わせた89段の階段を登ったフロアに巨大な蒋介石の銅像が大陸に向って座している。
当時の台湾はまだ貧しく(大陸はもっとだが)民主化もされていなかった時代に、故宮の文物を愛でた国家そのものとも言えるような皇帝の真似でもしたつもりか。そういえば左右の国家戯劇院と国家音楽庁を合わせて眺めてみると紫禁城を連想させる。ついでに銅像のデカさは北の国の指導者の立像の空虚さも感じさせた。これだけのものを作って国威発揚を表現しなくともよかろうに、などという感想はやはり国家の意思とは無縁の庶民のものなのか。
夕暮れが近づくと階段の下にフェンスが置かれて人だかりがして来た。儀仗隊による国旗貢納の時間だ。足を踏み出す時に一瞬動きを止める独特の足取りで左右から進んできた。
儀仗隊の交代というものをアメリカ・ロシア・バチカン・インドで見たことがあるが、それぞれに威厳のあるものであり、この台湾のそれも見劣りはしない。
一概には言えないが、国家のなりわいは悪にもなりうるが故にしばしば軋轢をおこすのであるが、紡ぎ出した文化は後世に残る。故宮の文物は遥か後にまで人々に愛されるだろうが、巨大銅像は滑稽にすら見える。いや、建造当時のこの国の状況を鑑みれば、むしろいじらしいと思えるのだ。
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台湾旅情(センチメンタル・ジャーニー)
2024 NOV 2 11:11:41 am by 西 牟呂雄
また台湾・松山空港に降り立った。風が熱い。
随分と苦労をかけた懐かしい友、しばらく会っていない親戚のおじさん、そんな人に会うような気持で大好きな台湾にやってきた。仕事といえば仕事なんだが、マッそこはヤボ用ってやつで。
ところですっかり死語となった感のある故安倍総理が提唱した『自由と繁栄のカーヴ』をご記憶か。僕はその頃、毎月のように台湾・フィリピン・マレーシア・インドネシアを飛び回り、その後中国に工場を稼働させてベトナムにも足を延ばしていた。その間にまず米軍がフィリピンの基地を閉鎖し、大陸は台湾沖に大陸からミサイルを打った(もっともそのミサイルは空砲だったのだが)。
その経験から『自由と繁栄のカーヴ』は日本の産業の海外展開の最前線だという実感があった。まぁその分国内は失われた時間が経過したのだが。
だが、その後国際関係は比べ物にならないほど変わってしまった。大陸は露骨に食指を伸ばし、ロシアは戦争を始めて日本との関係が悪化し、南北の半島は敵対した。半島は政権が変われば反日をやるだろうからほっといていいが、台湾有事はほってはおけない。すなわち安全保障上の概念においても『自由と繁栄のカーヴ』が可視化された。日本ー台湾ーフィリピンーマレーシアーインドネシアのラインである。
岸田総理は最後にいい仕事をして,護衛艦に台湾海峡を通過させた。台湾有事に日本は黙っているわけじゃないことを示し(いや、戦争するわけじゃないですよ)、元々親日の台湾をグッと引き寄せたのだ。僕が足しげく通っていた頃の台湾の印象は、一言で言えば『いじらしい』に尽きる。李登輝という巧みな指導者の元、毅然と大陸に対峙しつつ民主化のプロセスを進めていた。
先日、中国海軍がぐるりと台湾を囲むような海域で演習をしたばかりだが、街の雰囲気は落ち着いていた。と言うよりはむしろ活気を感じた。下世話な話で恐縮だが、若い女性がキレイだ。以前に比べてファッションが垢抜けたのか、お化粧が上手になったのか。みんな足が長く見えるようなプロポーションを強調するいで立ちで、暑いせいもあるだろうが露出度も大きい。実に健康的で溌溂とした印象。
ヤボ用(お客さん並びに提携先)の相手も、20年前は『日本の技術を教えてもらう』『日本から買った方が安心する』という感じが前面に出ていたが、今は『もう同じことぐらいはできる』『日本だけに頼らなくとも自分たちでできる』と(露骨に口に出しては言わないが)変わって来た印象だ。
事実、TSMCはファウンドリーという独自の事業モデルを進化させ日本に逆上陸した。TSMCは半導体上工程だが、下工程の組み立てラインもコスト競争力では世界一である。
街はきれいになって、昔見かけたスラムなどどこにもスラムて常宿にしていたリージェント・ホテルの前にあったスラム場所を整理していた時、忽然と鳥居が出現してびっくりした。台湾総督としてこの地で亡くなった明石元二郎陸軍大将台湾総督の墓だと知った。
単なる印象でしかないものの、勢いが伝わってくる実感があり、一人当たりGDPは日本より上かもしれない。
今回は今までほとんどしたことのない観光もやってみた。
まずはレトロ・タイペイの商店街。観光スポットらしく人でごった返している。いきなりこのエリアの守り神的な神様だか仏様があったのでお参り。
おそらくツアー・コースに入っているのだろう。団体の日本人が大勢いて、ほとんどの店で日本語が通じた。自分のためにカラスミを買う。
他にも食材は沢山あって、ニンニクやら果物が山のように並んでいる。驚いたのは『北海道産』とわざわざ表示してある昆布、これは台湾の人が買うのだろう。
熱帯魚のような魚を売っていたが、あれは不味いのじゃないかな。
また、土産物屋ではキンキラの光物とか訳の分からない雑貨を並べていて、一体誰が買うのかと思っていたら日本人観光ツアーで来た若い女性がカエルのおもちゃを買った。あんなもん旅の思い出になるのだろうか。
現地エージェントに頼んで台北近郊のシーフェン(十分)に電車で行く。
台北の混雑を抜けると、途端にのどかな田舎になる。元々平地は少ないので、都心からいきなり山梨か千葉の外房あたりに移動する感じだ。
途中の乗り換え駅では驚くべき標識を見た。
禁止事項が列挙されているが、右の一番上は何だ。
わざわざ禁止しているという事はする奴がいるのか。
まさか日本人じゃないだろうな。
それとも観光客ではなく、地元では普通のことなのか、理解に苦しむ。
さて、単線の電車をおりるとシーフェンの街である。やはり山岳地帯なので線路沿いにへばりついた様な商店街があり、そこでランタン(天燈)を飛ばして遊んだ。お土産屋さんからランタンを購入し、その4面に墨で願い事を書く。
そうして持ち上げていると店の人が下にぶら下げた燃料(良く分からなかったけど)に着火して、フワリと舞い上がる代物だ。
僕は一人なので他の日本人のお客さんに混ぜてもらった。皆さん諺とかこの地で見つけた標語のような漢文を書いたりしている。隣の人は『仲良きことは良き哉』などと格調高かったが、自分の番が来たら反射的に『金』と書いてしまった。ウッ・・・・情けない。
そして単線の線路に持って行って(道が狭くて飛ばせない)火を付けてもらうと。ランタンは少し上がったところで横風に流されて遠くの谷間の方に漂って行き見えなくなった。夜だったらさぞきれいだろう。やれやれ、やっぱりカネには縁が無いのか。
別のランタンは強風に煽られて民家の二階で燃えていたが、このあたりの人は慣れているのか騒ぎにはならなかった。
(この項続く)
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狂言 『樋の酒』
2024 OCT 26 9:09:28 am by 西 牟呂雄
『樋の酒』とかいて『ひのさけ』と読む。
留守を預かる太郎冠者(万作さん)と次郎冠者(萬斎さん)がこっそり酒をのんでしまうお話です。狂言は大衆芸能だから、酔っぱらってバカをやる物がたくさんあって身につまされるますね。棒縛(ぼうしばり)とか脱殻(ぬけから)ですね。
さて、すっかり酔っぱらって謡うは舞うはでしまいには『ハッハッハッハ』と笑い転げているところに主人が帰ってきます。もちろん怒り狂って叱りつけるも『お許されませお許されませ』と逃げ回り、舞台からきえていきます。
御年93才の万作さん、立ち上がるところ、舞うところはいまだに矍鑠とされていて見事なもの。さすがに日頃の修練の賜物でありましょう。しかしながらどうにも鍛えようもないものがあって、私が言うのもなんですがそれは『声』、すなわち喉なんですなぁ。萬斎さんがまことに通る発声なので尚更目立つ。
ところで狂言の鳴きについて今回も面白い話がありました。
『靭猿』では子役が着ぐるみで猿を演じますよ。猿は『キャー・キャー』と鳴くそうです、成程ね。
カラスとスズメが並んで留まっているのをいるのを見た主が太郎冠者に言いました。
『あの2羽の鳥は親子であろう』
すると太郎冠者は、
『違いまする。片方はカラスと申し、片方はスズメと申します』
『そんなはずはない。あのさえずりを聞いてみよ』
「コーカー・コーカー」「チチッ・チチ」
『それ、親が「子か・子か」と尋ねれば「父・父」と応じておるではないか』
他に、犬は『ビョウ・ビョウ』
猫は『ネウ・ネウ』
そこで僕も狂言語を作ってみた。
ライオン『げーう』
ゴジラ『えあーん』
ウルトラマン『どわっけ』
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