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喜寿庵の秋 Ⅲ 

2014 DEC 2 19:19:43 pm by 西 牟呂雄

 寒いんですなこれが、川風が上がるから余計寒い。まだまだ落ち葉が凄くて、一度掃いても翌日は同じくらい散っている。大半を畑に捨てて後は焚き火にした。
 この焚火だが、この春先に逝った母の読んだ文庫本が本当に山のようにあり生前から喜寿庵の物置に積み上げられていた。もはやブック・オフでも引き取らない(バーコードもない)ゴミの山になって困っていたのだが、焚き火にくべてだいぶ燃やしてみた。パチパチ燃えながら煙が宙に溶けていくのは、寒いせいもあってなかなか侘しいものだった。
 ところが、だ。落ち葉は燃やせば一握りの灰になって終わりだが、文庫本というのは恐ろしく大量の灰になってしまうことを初めて知った。調子に乗ってドンドンやったもんだから処理に困り、そのうち風で飛んでしまうだろうと庭の片隅に捨てていたら一向に消えず、塊になってしまってあわてた。しょうがないので半分は畑に撒き、半分は庭のモグラ道に埋めた。モグラめ、今度来たらさぞ”掘り心地”が悪いだろう、ザマミロ。ここは渓谷の上に立っていて土壌が抜けやすいから、そのうち土になって家を支えてくれるだろうか。『バアさん頼むぜ。』と声を掛けながら踏み固めた。
 それにしてもあれだけの量を”読んだ”のには感心させられるが、なぜその教養が息子の教育に生かされなかったのかは謎だ。僕がこのような人間(具体的には敢て書かないが)になってしまったのは少なからず親の責任というものがあるだろうに。
 等と悪態をついているが、先日実家をかたずけていた妹からオーディオを捨てようとしたらレコードが載っていたままだったと報告があった。恐らく10年近く前、母が最期に聞いたモノではないだろうか。モーツアルト交響曲40番『ジュピター』で何回も何回も聞いたのだろう。好きだったことがを思い出される。そういう人でした・・・。ワグナーもヴェートーベンもなぁ。

最後まで散り残った鮮やかな紅葉

最後まで散り残った鮮やかな紅葉

  ところで喜寿庵に飛び地があることが分かった。長いことほったらかしになっていて祖母が亡くなった時に忽然とその存在が明らかになり大騒ぎになったらしい。その後誰も欲しがらずに(恐らく税金を払いたくなかった)押し付け合った挙句に伯父が相続したことになっていたが、その後誰も見たこともなかったそうだ。無論僕なんかの知るところではない。ところがその伯父が急に『もういらん。』と言い出した。どういういきさつの地面かはもう誰もわからず、山側にかかる半分の部分には人の家が立っていて残りは畑になっているとのことだった。いらんと言われてもどうにもなるもんじゃなく、町に寄付してしまえという事に一旦はなった。ところが、まがりなりにも農地ということなので、農業継続以外の転売には農業委員会の承認やらが必要だ、と。更にどうにも古い古い話なので町の方としては他所との境界線に杭を打てとのお達しだ。その費用〇十万円!金掛けて農業委員会の承認を得なくちゃ寄付ができないとは何事だ。頭に来て似たような土地問題に苦しむ境遇の従兄弟に話してみたら過疎地の耕作放棄地は引き取り手が無く、山林に至ってはハッキリと行政から断られたそうである。

 疲弊する地方と言っても駅前の商店街ばかりじゃない。そもそも空き家になってしまうウチも多い。『ふるさと』とか『ふれあい』といった呪文のような言葉を並べてみてもダメだ。金をかけて1500mくらいボーリングすれば温泉も出るだろうがそんな物一時しのぎに過ぎない。食料自給率のことを声高に言うムキもいるにはいるが、零細農家を保護したところで絶対にそんな自給率なんか上がらない。買った方が安いに決まっているからだ。このご時勢に食料輸入商談を拒否されるなんて考えにくい、危険なモノが混じっているのは別として。選挙の最中にまさか大っぴらに言う訳にもいかないだろうが、地方の土地なんか絶対に値上がりしない。古くは『新しき村』運動やヒッピーはどこへ行ったんだ。こうなったらワシが手の掛からないジャガイモでも大量に栽培してポテト・キングにでもなってやろうか・・・・。タダで配りますよ。エッ、いらない?そうですか。

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喜寿庵の秋 Ⅱ 地方創生

今はもう秋 港で思ったこと

Categories:和の心 喜寿庵

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