【昔のテレビ】今でも言える一節
2015 JUL 8 20:20:04 pm by 西 牟呂雄
「獅子が烏帽子をかぶる時、烏の頭の兎は三十、鼠は六十、岩戸の奥をさぐるべし」
ご記憶の方はおられるか。江戸川乱歩原作の少年探偵団シリーズ大金塊で、金塊の在り処を伝える謎の暗号である。原作は読んでいないが、例の『ぼっぼっぼくらは少年探偵団。勇気凛々瑠璃の色』の歌で知られるテレビ・ドラマ化された時に流れたこの謎解きは物凄く魅力的だった。
ドラマ自体は当時の製作技術が稚拙そのもので、例えば透明人間を演出する際にベニヤ板を吊っているワイヤが見えてしまうような代物。大体この頃のこの手のストーリー展開にしろ演出にしろ今では鑑賞に耐えないが、僕たちは『少年ジェット』『月光仮面』『七色仮面』『紅孔雀』に熱中した。
で、冒頭の暗号だが。原作を読んだ奴がこれ見よがしにスラスラ喋ってみせたので、僕も負けずに暗記した。今では考えられない情熱と集中力である、小学校低学年の時の話だ。しかしそれが記憶力を鍛えたということにもならなかったし、何かの役にも立ったことも無い。
「タイム・トンネルは、アリゾナ砂漠の地下数千メートルにある、人間を現在から過去へ、過去から未来へと送り込める装置である。若き科学者ダグとトニーは、この開発途上のタイム・トンネルに送り込まれたまま永遠に時をさまよう放浪者となってしまった」
時代が少し下って流れたタイム・トンネルの冒頭のナレーションだ。記憶に頼って書いているので違うところもあるかも知れない。あの衝撃的な音楽とともに強烈な印象で僕達は熱狂した。当然先を争うように暗誦した。
その少し後だった、今度は毎回違うので覚えるも何もない。
トム・クルーズが映画にもしたミッション・インポッシブル、テレビは『スパイ大作戦』だった。
しょうがないからテキトーな指令を自分達で作る。
「おはよう、フェルプス君。 写真の男はさる組織のボスである。最近彼の周辺から東側(今はない冷戦語)に多くの防衛機密が流れていることが分かった。彼は同時にその情報漏えいをネタにわが国の大物政治家を恐喝さえしている。そのようなことが明るみに出ては国際信用にも関わる問題である。そこで君の使命だが彼の組織を壊滅させそのルートそのものに終止符を打つことにある。例によって君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、この録音は自動的に消滅する。成功を祈る。」
こんな具合で『この男』のところに固有名詞を『東側』に職員室だのを入れるとそれなりのストーリーができあがる。罪も無い子の足を引っ張るのに多用した。
思えばこのあたりまで上質の海外ドラマがゴールデンタイムに放映されていたことがわかる。『ベン・ケイシー』『外科医ギャノン』『宇宙家族ロビンソン』『0011ナポレオン・ソロ』そして『スター・トレック』あたり。今ではC・Sでたくさんやっている。
時代は下ってこういうのはどうか。
「夜更けの音楽ファン、こんばんわ。夜明け前の音楽ファン、お早うございます。ボク、GoGoGo Goes On の イ・ト・イ ゴロー。」
独特のイントネーションと実はホンモノっぽくない英語でしゃべりまくったDJ、糸井五郎さん。
こういった単発モノは、他に民社党の春日委員長や丹波哲郎なんかのモノマネ・バージョンとして(一部で)流行した。
ここから先は大いに恥ずかしいが、ちょっと聞いて欲しい。
「あのよー!去年の日比谷の時も前の日雨が多くてエライ心配したけど、武道館雨漏りしないんで、よろしくゥ! スリー・フォー!」
これはキャロル解散のあとエーチャンが初の単独武道館ライヴの冒頭のMCなのだ。バックにチューニングしているようなガシャガシャした音が流れているうちに突然始まる。『あのヨー』は『ヨー』のところのキーを更に上げるのがコツとされた。
こういったMCでやはり良く使ったのはダウンタウン・ブギウギのライヴで、宇崎竜童も昔は結構なヤンキー語を駆使していたっけ。
そしてショーケン語・アキラ語を生んだ『傷だらけの天使』あたり。『ヤマトの諸君。久しぶりだね。又会えてうれしいよ。』のデスラー総統。僕の現役の最後はかの『スネーク・マン・ショー』くらいだろう。これは様々なバージョンが流行りとても書ききれない。
と言うのも、さすがに大人になってから意味もない一節や台詞を暗誦したりモノマネすることがバカバカしくなり、ついでに言えばそういったモンに素直に感動する気力も記憶力も衰えてきたというところかね。
それがですな。先日放送されたNHKの『坂の上の雲』のあまりの出来栄えの良さに感動して、その台詞を覚えた。『オイ達みんな死んだら、あん山取れっかのう(大迫尚敏 第七師団長 on 203高地)』とか『以下は命令である(児玉少将 in 旅順)』。するとですな、さる腐れ縁がそれを録画していて僕の倍の台詞を暗誦してみせたのだ。僕は録画していない、この勝負負けてしまうじゃないか。
この男、実は冒頭の暗号をスラスラ且つエラソーに暗唱して見せた奴だ。
アホらしかったですね
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Categories:遠い光景
中村 順一
7/9/2015 | Permalink
西室兄、「大金塊」の暗号は完全に正解、タイムトンネルは「科学センターに備えられ」というフレーズが抜けている。大金塊は確かに大名作であり、少年探偵団シリーズの第4作だった。いまでも我が家に原本が存在する。熱狂しながら読んだ名作だった。
西室 建
7/9/2015 | Permalink
ほう!兄は原本を持っていたのか!