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惹句師になりたい (今月のテーマ 今年は何を)

2016 JAN 14 0:00:36 am by 西 牟呂雄

 惹句師(じゃっくし)という職業があった、いや今もある。簡単に言えばコピーライターなのだが、対象が映画に限られる。映画のポスターなどに乗せる刺激的な宣伝文句、以前は予告編なんかにデカイ字で飛んでくる短文、テレビの映画宣伝なんかで耳にすることば、ああいうやつを書く人のことを言う。検索すると有名な惹句もいくつか見つかった。ああいうのを今年はやってみたい。このごろぼんやりしていたりすると、昔見た映画の惹句を考えたりしている。

『愛と青春の旅立ち』
ー 地獄の訓練 ほとばしる激情 そして一つの愛が実った -

『トップ・ガン』
ー レーダーにプリッツが映れば、それはボギー(所属不明機)だ -

 これらの作品は何回も何回も見ているので造り易かった。特に海軍モノは好きなので思い入れもある。
 実際の惹句師になると、撮影現場に一緒に泊り込み、長ければ一年近くつきあった上で更に考え抜いてやっと一文をひねり出すと言う。一度や二度の観賞で薄っぺらい印象だけを綴ってはだめらしい。

『仁義無き戦い』
 これには既に「殺(と)れい! 殺(と)ったれい! 拳銃が焼きつくまで撃て!」という有名なものがあるが、
ー 殺(と)るときゃ広島じゃ 朝から血の雨が降るんで -

『傷だらけの天使』(映画じゃないけど好きなんで)
ー 街の寄生虫は逞しく生き抜く -

『相棒 シーズン14』(これもテレビですが)
ー 切れ者 対 化け物 -
 惹句は考えたが、実際の現行シリーズはこの凄みがない。もう見るのを止めてます。

『スタンド・バイ・ミー』
ー 少年は誰でも泣き出したくなるほど孤独だ -

 そういえば洋画にそれらしい邦題を付けるのもかつてはいいのがあった。『愛と青春の旅立ち』の原題は『An Officer and a Gentleman』だが、これを『士官と紳士』とつけたら味気ない。古いところでは『望郷』なんか『Pépé le Moko』でそのまま主人公の名前だった。『スター・ウォーズ』を『銀河大戦争』だったら・・、うまくいかないか。フム、難しいな。

 古い映画ばかりで物足りなくなって、僕自身が制作・監督する映画を考えた。以前書いた 本能寺以後 をベースに明智光秀を根須甚八が、黒田長政を阿部寛が、そしてシーンは安土城七層の天守で舘ひろしの織田信長が惹句をうそぶく。

ー 天下なんぞ欲しくばくれてやる ワシには天上が真上に見えておるわ ー

髑髏本尊 降臨

髑髏本尊 降臨

 こういうのはどうか。平成亜空間戦争 Ⅱ で平将門を渡辺謙、大塔の宮は坂東玉三郎。石川五右衛門に泉谷しげる。そして美輪明宏演ずる後醍醐天皇が火炎を吐きながら、あの独特の声でこう言い放つ。

ー ヤマトの怨霊ことごとく見るが良い 朕がまことの姿はこの髑髏本尊なるぞ ー

 読者のどなたか。どうすれば惹句師になれるかご存知ですか。

婆娑羅考 (今月のテーマ 列伝)

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Categories:言葉

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