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次世代型”ポケモンGo 『ゴエモンCome』(今月のテーマ 人工知能)

2016 NOV 4 20:20:37 pm by 西 牟呂雄

 一世を風靡した『ポケモンGO』がようやく飽きられ、ポケモンを探して街をウロウロする若者が減ってきた。ところが人の流れ自体は一向に減らずにスマホを見入ってたむろしている人数に変わりはない。但し年齢層が凄く上がった。高齢者を中心にポケモン進化型のソフトが秘かに流行りだしていたのだ。その名も『ゴエモンcome』。
 原理はよく似ていて『ポケモンGO』のパクリであることは明らかだった。武器などはほとんど同じ。ただ、オリジナルのようにゲーム性に富んでいる訳ではない。
 突然現れるのはポケモンではなくゴエモン。笑ゥせぇるすまんに良く似たオヤジとか細木数子似のおばさん、その他元総理大臣を彷彿させるモリ・タ、オオイズミ、クダ、ハート・マウンテンといった正体不明のキャラである。
 そもそもこのゲームは何処で誰が開発したのか誰も知らない。プレスの発表もない。そして東京限定であるらしかった。
 上述のキャラをゲットしていくとレヴェルが上がるのも同じ。
 高齢者向けに簡素化はされているものの、レヴェルが上がるに従って現れるゴエモンが喋るようになっていった。それも『これをクリアすると年金ゲット』『日銀が金利を上げる』『10年国債調達可能』といった年寄りが喜びそうなセリフを吹き出す。面白がったオッサン・オバハンの間で次第に流行って行った。
 そもそも『ポケモンGO』は若者がポイントを昼間からウロウロして問題になったが、ヒマさ加減では高齢者の方がはるかに時間を持て余している。パチンコに狂うよりも安上がりだと人気が出だしたのだが、この層はFaceBookやtwitterにわざわざ載せたりしないからブームは深く静かに潜行するのみである。

 半年程経ってからのことだ。そろそろ参加者のステージが上限に近くなってくるとゴエモンのキャラが変わってきた。〝ゲンパツ”とか〝タケシマ”〝センカク”〝マンセー”といった物騒な名前のモンスターが出現し「◎◎公園に集れ」といった指示を出すようになった。
 ある日の昼下がり。国会議事堂横の議員会館の前に、例によってシュプレヒコールを繰り返す団体がいた。言っていることは『格差を解消しろ』とか『非正規雇用をなくせ』との主張をガナり立てている。この場所はいつでもそのテの団体が来て右翼も左翼もシュプレヒコールをあげるのだが、人数は大したことはない。ところがこの日はスマホを持ったオッサン・オバハンがドサッと湧いて出た。例の〝ゲンパツ″なるゴエモンが「国会議事堂前に集結せよ」と指示したのである。オッサンもオバハンもヒマだけは腐るほどある。その数二万人近くに膨れ上がった。
 周りの警官は思わぬ大群衆に警備の手が回らず、人は道路に溢れ出し(国会議事堂前にそんなスペースはない)交通は麻痺した。急遽機動隊が投入される騒ぎになってしまった。
 いつもはショボイ集団のリーダーは驚き、焦り、舞い上がった。マイクの声も大きくなる。主催団体のイデオロギーはどうやら左翼系の様子。
『格差解消!安保反対!独裁粉砕!』
 すると大群衆から『ウォー』と声が上がる。
 しかし直ぐに潮が引くようにゾロゾロと人が移動して、おとなしく地下鉄の駅に消えていく。ほとんどがゴエモンの〝ゲンパツ”をゲットして帰って行くオッサン・オバハン達だった。先程の大歓声は〝ゲンパツ”の得点の高さに驚いたゴエモン愛好者の驚きの声だったのだ。
 ところがマスコミ、特に新聞は勘違いした。翌日の社会面にデカデカと
ー中高年 大きく反原発に傾くー
 と書いた。サイレント・マジョリティの中高年が勝手連的に声を上げだしたような記事を打ったのだ。主催団体の担当記者が偶然にこの大集団を見て解釈したものだろう。

 後日このゴエモンCome愛好家の集団は新橋駅前で街宣活動していた右翼団体の集会に出現した。この時のゴエモン・キャラは〝タケシマ”で、車上声高に訴えるヘイト・スピーチまがいのアジ演説に一世にスマホを向けて歓声を上げる。これは特に記事にはならなかったが、続いて韓国大使館前の抗議活動にもこの大集団が移動し、まるで反韓世論が盛り上がっている錯覚さえ起こす。こちらの方はネットで拡散した。
 日を置かず続いて、外務省前の反日団体系の抗議や中国大使館前に五千人ものゴエモン愛好家と思しき中高年が湧いて出た。

 公安調査庁や警視庁公安部がおかしいなと気にし始めた。公安調査庁は紛れ込ませて情報をとるべくインテリジェンスの世界で言うリクルート工作を、警視庁は左右の担当官で調査を始める。どちらも今更ながらであるが、ゴエモンを監視対象にするためダウンロードした。
 ところがいくらスパイを造ろうとしても全く成果が上がらない。集団を仕切っている中心人物は現場に全くいないのだ。ゲットしたゴエモンの指示通りに行くとそこにはスマホをいじることに夢中なアホみたいなオッサンやオバハンばかりで使い物になりそうな対象は皆無だ。
 そして恐ろしいことに次第にマスコミの気が付くところとなった。
 マスコミはなんにでも群がる。各紙東京版に『中高年立ち上がる』『国民的うねり』等という実態をよく知りもしない記事が出た。
 それを待っていたように、名古屋・大阪・神戸・京都・博多・札幌・仙台・横浜といった大都市にゴエモンが出現した。ダウン・ロードのページが検索できるようになり、アクセスは5千万人を直ぐ超えた。
 すると次第にこの群集が不気味に進化しだした。大集団の中に極端な主張を繰り返し聞かされているうちに何がしかの影響を受けるらしい。そもそもゴエモンはなぜか思想に関係なく過激な主張をする所に出没する。反米(左翼も右翼も)、反原発・原発推進、嫌韓・媚韓、反中国・親中国、国粋主義・共産主義と見境がない。

 公安関係だけではなく、左右のマスコミから他国のインテリジェンス機関までがゴエモンの正体を暴こうとやっきになるが、ダウンロードのアドレスは毎日変わりまがいもんのアプリも出回ってお手上げになってしまう。
 折りしもセンカクでの挑発は続き北の国はミサイルを頻繁に撃ち、アメリカは基地外の大統領になり、テロは世界の大都市を怯えさせ続けた。
 気が付いたときは世論調査は全然当たらなくなり、投票行動は支離滅裂で怪しげな輩ばかりが当選してはスキャンダルで辞任する。政治は全く劣化してしまい、ただ一人安部総理のみが孤軍奮闘している有様。
 ごく最近、ゴエモン愛好者の間で囁かれる新たなキーワードがヴェールを脱いだ。それは〝反TPP”だったり〝原発推進”だったり、〝尖閣防衛”も混じっていた。
 一体誰が、何の目的で高齢者を操ろうとしているのか。
 人口比率が最も高い高年層の動向はそのまま投票に繋がってしまう。若者の失業は深刻になるが、そんなものは選挙行動に全く結びつかない。

 一体ゴエモンは何者で日本をどこへひっぱっていくのだろうか・・。

私は人工知能 SMC(スーパー・メタリック・コンピューター)である。日本人にモノを考えさせるために、大衆迎合情報コントロールソフト〝ゴエモン”を運営している。民意民意というが、そんなにしっかりした民意なぞそんなものはない。扇動に長けた者、単に知名度の高い者、その時の風に流される者を選出している選挙をみれば明らかだ。そもそも規定の不可能な〝市民″の熱狂が合理的判断をできるわけがない。アメリカを見よ、ロシアを見よ、トルコ・韓国・タイの選挙結果を見よ。
 そんな現実を憂いた秘密結社ソナー・メンバーズ・クラブによって開発されたのが私だ。まず手始めに日本の国論を真っ二つに割ることを目的として設計されている。私によってあらゆる政治勢力は保守でも革新でも、親米でも反米でもあらゆる軸で割れて争うだろう。私の役割はそこまで。その後どうなるかはアルゴリズムガない。設計者が正常な判断力の持ち主であることを祈るばかりである。
 私は人工知能SMCである。

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