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僕の地球放浪記 Ⅰ

2014 AUG 7 12:12:46 pm by 西 牟呂雄

 題名を見て『世界自分探しの旅』というような内容と思わないで欲しい。30代の終わり頃、現役サラリーマンとしての経験だ。
 当時の僕には哲学なんか無い(今もだが)。「能率」と「スピード」しか考えていなかったので、ソウル・台北・上海・香港・マニラ程度は日帰りの勢いだった。しかし日帰りはさすがに憚られた。しょっちゅう出張する為にやはり多少の格安チケットを探したのだが、往復手配の場合現地での滞在が24時間ないと割引が効かなかったからだ。それでも、物凄いマイレージの蓄積により常にクラス・アップしており、不思議な体験もした。風吹ジュンさんがズーッと10時間以上も隣に座っていた。こういうタレントさんは無用の会話を仕掛けられるのが嫌なのだろう、サングラスをかけっぱなしていたので、降りる寸前まで気が付かなかった。やけに派手ないでたちにC・Aに「あの人はテレビに出る人ですか?」等とマヌケな事を聞いたら教えてくれたっけ。
 
 メキシコ・アメリカ二泊四日というのを何回かやった。直接メキシコ・シティーに行くのはシアトル経由で12時間、機中で二回も二日酔いになって懲りた。体調も悪かったのだろう、メキシコに着いた途端に血を吐いてギョっとしたことがある。行き先は更にそこから車で4時間、もしくはプロペラ機で45分。安かったが(3千円くらい!)車は避けた。喋れる英語が『ワン・ツー・スリー・イエス・ノウ』だけの運転手と移動するのは極めて怖い、着くかどうか予想できなかったからだ。当時直行便のあったダラスに行き、メキシコにわたる。帰りにアメリカはテキサスかサンフランシスコの客先に寄って帰るのが多かった。
 何回目かは忘れたが、メキシコ・シティーでトランジットするため、チェックイン・カウンターに行った。周りにはほとんど人はおらず、荷物を足元に置いて座席を決めていた時のことだ。それではディパーチャーへと足元を見ると、ない!煙のように消えていた。
 同じようにキョトンとしているクラークを怒鳴りつけ、空港警備を呼び警察を呼べ!と喚き散らした。しかしどうも警備の態度が鈍い。今から考えるとこの程度の事件はしょっちゅう起きているのだろう、或いは一部は窃盗グループとグルになっているのか。挙句の果てに『英語の喋れる警察官は直ぐには来れない。』等と(英語で)抜かしやがった。こっちのフライト時間は迫って僕は焦る。幸いパスポート・カード・チケットは胸のポケットに入れて無事だったが。Recompenseという単語が出てこなかったので「ペイ・バック!」とにじり寄ると、別室につれて行かれた。少し偉そうなのが出てきたので「これは国際的な信用問題だ。今まで何回もメキシコに来ているが、もう二度と来ない!そのためにメキシコが被る損失をいくらだと思う。」といったハッタリをかけまくった。するとクレーム申請書のようなペーパーを出してきて、これに具体的な内容を書け、と言う。時間が無いから日本から出す(この時点でもう頭に血が上っていた)と席を立った。何も持っていない旅人はどうも目立ってしょうがない。こうなったら少しでもメキシコ国から取り返すつもりで、ラウンジでも機中でもサーヴィスのビールとテキーラをガブ飲みし、勿論ベロベロになった。
 結果ダラスで入国する時に、税関が『何で何も持っていないのか。』と不審そうな目で聞いてきた。無理も無い、酔っ払ってフラフラになった東洋人が手ぶらで入国するのだ。
『Good question! Please listen to me!』
から始まって、いかに酷い目に合ったかをまくし立てた。審査官は『こいつアホか。』という目つきで僕を追っ払った後、後ろの奴等に僕の口調を真似てバカにしていた。
 何しろ一銭も持っていないのだ。この恐怖感はなかなか味わえるものじゃない。どこか知っている日本人のいる所にたどり着かねば、と一路シリコンバレーを目指した。全てカード決済の効く交通手段でセミコン・ウェストという半導体関連の展示会場にたどり着いた。するとある商社の顔見知りがいたので、拝み倒して200$借りた。
 難行苦行はまだまだ続く。どうしても一泊しなければならなくなって、最寄のヒルトンに宿を取りチェック・インしようとした。僕の名前を見てフロントマンが不審そうな顔になる。
「ミスター・ニシムロはご夫妻でロイアル・スイートに泊まって既にチェックアウトされた。」
等と言うではないか。僕はニシムラと良く間違えられているので
「それはニシムラの間違いだ。私はニシム『ロ』だ。K・Nishimuro。」
と書いてやった。ところが、である。フロントマンは益々怪しむばかりで、押し問答の挙句にガードマンを呼んだ。ビビった僕は大慌てでパスポートを示し、フロントマンが覗いているディスプレイの画面を見た。そこには何故かT・Nishimuroという名前が表示されていた。要するにある人物の名前を騙ったホテルサギだと思われた様だった。その名前に思い当たる人物が、実はいる。ようやくチェックイン出来て東京に電話したら、その人物はやはりアメリカに出張していた。ふざけやがって。

 手ぶらでサンフランシスコから帰国したが、ラウンジで又知り合いに会ったので今度は円を借りた。ん?クレームはどうしたかって?実際の被害額の10倍位を弁償しろと書いて送ったら丁寧な返事が来て、一言で言えば『あなたのトラブルを参考にして空港のセキュリティ向上に努力します。どうもありがとうございました。』だけであった。

僕の地球放浪記 Ⅱ 

フィリピン侵攻作戦 上 

フィリピン侵攻作戦 下 


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