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山の魔神

2015 JAN 4 13:13:08 pm by 西 牟呂雄

 「山の神」と言われていた東洋大学時代の柏原選手は強烈な印象が残っている。毎年毎年襷を受けると鬼神の快走で先行ランナーが何人いようがヒタヒタと追いつき、チラリと一瞥するとサッと抜いてしまう。後は無人の境地を行くが如く記録と共に芦ノ湖に現れる。スゲー選手だと感心した。
 ところがやはり箱根駅伝は学生スポーツで、かの柏原選手も実業団入りした後はケガにも悩まされあのスーパースターの輝きには至らない。マラソンともなるとこれは更に難しい。あの角張った、その割にかわいげのある表情の彼にはもっと活躍してほしいものだ。
 と、一日の実業団駅伝を見た後の箱根で更に凄い選手が出現した。青山学院の5区を走った神野選手である。華奢な体に少年のような表情のランナーがアッと言う間に箱根路を駆け上がってしまった。コースは少し距離が変わっているが天晴れ堂々の新記録だ。
 名前も神野(かみの)だから、もう山の神どころではない。山の魔神とでもいうのだろうか。
 この箱根駅伝もなかなかドラマチックな競技で駆け引きあり、アクシデントあり。今回も小田原でトップの襷を受けた駒沢の馬場選手が低体温症で芦ノ湖に来た頃フラフラになり、手をついたり歩いたり、大声援でやっとゴールできた。この時後ろから監督の指示が飛んでいたが『よーし、大丈夫だ。立ち上がって。行けるぞ。そーだ。ゆーっくり行け。』と言ったような。降りて表情とか見なくていいんだろうか。あのまま泡でも吹いて死んでしまったら何かの過失致死で罪に問われないのか。
 駅伝は日本独特の競技だそうで、一説によると早飛脚の伝統があったため日本でのみ行われる。翻訳しようが無くて海外でもリレーでは通用せず『EKIDEN』。フォア・ザ・チームの精神とか襷をを繋ぐ名誉といった競技成績とはチョット関係ないような要素が要求されている。我々はそれを見て選手との一体感を感じているのかも知れない。競っている選手や大きく遅れた選手が中継所で次のランナーを見たりすると猛烈にスパートを掛けてほぼ例外なく倒れこんで歩けなくなる、そして観客はそれに大きく拍手する。話は変わるが帝国陸軍の用語に『最後の5分間』というのがあって、敵の攻撃に耐えに耐えて最後の5分に突貫突撃することを意味している。大陸の戦闘の初期には功を奏して連戦連勝だった頃に言われたそうだ。その『最後の5分』の語感はあの選手の倒れこみを連想させる(こういう話に不愉快になる人もいるだろうが)。ともあれ日本的な競技である、というオチです。来年ももう一度あの『山の大魔神』見たいものだ。

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Categories:死闘十番勝負

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