架空ライヴ 矢沢永吉 VS 謎の大物
2015 FEB 7 8:08:11 am by 西 牟呂雄

武道館のステージにレーザーライトが交錯する。先ほどからドラムとベースの大音量がエイト・ビートを刻んでいる。客は既に『エーチャン!エーチャン』のコールに酔いしれている。いつものヤ・ザ・ワのオープニングだ。客席にはオッサンもネーチャンもタオルを持って今か今かともうタテ乗りになっていた。無論エーチャンのステージにはいつも来る白いスーツにリーゼントのオヤジの一団もいる。
パッとライトが消える。
「ルイジアナ(バーン!)テネシー(バーン!)」
いつもはアンコールに使われるトラベリング・バスだ。
ライトアップされたエーチャンは帽子を目深に被っていて何故かステージ後方に向かって歌う。両脇には抜群のプロポーションの外人コーラスの女性がやはりバックを向いている。この曲は上記(バーン)のところで一斉にタオルを投げるのが作法とされていて、客席はそのたびに沸騰したようになる。
ステージのエーチャンは2番まで歌い、いつものホーン・セクションとの掛け合いになってバックのコーラス・ガールとともにくるりと客席に向いた。帽子はまだ被ったままだ。
この頃になるといつものエーチャンより声が野太いのが客席が気が付き出した。だがノリは止まらない。突然音楽と照明が消える。間が空くと以前にも増して『エーチャン!エーチャン』のコールが大きくなってきた。
「ワン・トゥ・ワントゥスリ!(ダッダッダッ) その日暮らしが どんなものなのか」
照明が上がるとエーチャンがハンド・マイクを握っている。その隣に帽子を投げ捨てたさっきまでのエーチャンが顔をハッキリ見せた。なんと和田アキコではないか。
客は大騒ぎになった。アッコは白いスーツにシャツの胸を大きく開けて黒いブラジャーがチラチラ見えている。大音量の中トラベリング・バスが終わる。
ネクストが直ぐ始まるが新しいアレンジで一体何の曲かわからない。エーチャンがホワイト・マイクの前で歌いだした。
「あのころは(ハァ!)ふたりとも(ハァ!)」
この”ハァ!”はアッコ御大と観客である。斬新なアレンジの『古い日記』だった。武道館は興奮の坩堝と化す。
二曲終わったところで二人はガッチリとハグした後にエーチャンがマイクを持った。
「あのよー。みんな驚いたろ。ミスター武道館ヤザワも色々新機軸考えたわけよ!それで芸能界の大物に声掛けてみたけど、みーんなビビッて返事もない。オレも参って天国に行ったユーヤさんに相談したらこう言うんだ。『おい、ヤザワ。どうせやるんなら一番オッカナイのオレがヨロシクで口説いてやるけど逃げるなよ』ツーわけよ。オレもオトコだ後にゃー引けねーベィベェ。みんな!紹介するぜ。日本一のソウル・シンガー。アーッコー!ワーダー!」
ウォー!という客席の歓声と同時にフル・ホーンが鳴りだした。『アイラヴユーOK』だ。アッコの声が良く似合う。
その後和田アキ子がバックヤードに姿が消え、エーチャンのバラードとなる。
次に現れたときは真紅のイヴニング・ドレスだった。客席が少し収まるのを待って語りだした。
「サンキュー!みんなアリガトウ。アタシの長年の夢だったんだよ、エーチャンのステージに上がるのが。ユーヤさんからの天の声をもらって初めてエーチャンと会った時は正直あがっちゃってさ。アタシがあがるってみんな笑うけどホント。それで何歌うんですかってモウ敬語よ。そしたらエーチャンが(モノマネで)『全部決めてやるよ』って言ってくれたの。」
スローなベース・ランニングが始まる。『ドック・オブ・ザ・ウェイ』を情感タップリと歌い上げた。
拍手が起こった、武道館のロックでは珍しい。
再び大音量のR&Bが始まる。ツウならば直ぐ分かるサム&デイヴの『ホールド・オン・アイム・カミング』だ。エーチャンが出てくる。二人のデュエットは息もピッタリ合っていた。
次にエーチャンの新曲に変わると和田アキ子は姿を消した。
フィナーレになるとエーチャンが再び喋った。
「アッコにゃ悪いんだけど、随分あるヒット曲は一曲しか使わなかった。だけどヤザワからアッコと皆にビッグなプレゼントを用意したぜ。まだ誰も聞いてない書下ろしの新曲!『ア・ビッグ・ガール・フロム・オーサカ』よろしくゥ。ロックンロール!」
今度はギター・イントロで入る。アッコが勢いよく飛び出してきたが、皮の上下のパンク・スタイルにまたも胸元を開けて、しかも顔には隈取のような化粧で登場!ロックンロールで乗りまくる。同じような格好の女性ダンサーを5人従えていた。
アンコールを呼ぶ観客のコールは『エーチャン、アッコ、エーチャン、アッコ』になっていった。
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