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現代ロシア社会 後編

2015 NOV 10 1:01:48 am by 西牟呂 憲

現代ロシア社会

レジメ6ページから

・大陸国家であるロシアが国境を接しているのは16カ国+1地域(東トルキスタン)。軍事都市でもあったカリーニングラードはバルト3国の一番西側リトアニアの南、ポーランドの北にある飛び地。当然国境問題を多く抱えている。
・しかし極東・北方4島在住者は別として内陸部の対日感情は驚くほど良い。日本との領土問題の経緯などを知る人は皆無に近い。
・アニメが多く放送されていて、セリフは全て吹き替えだが主題歌はそのまま流れるので簡単な単語(カワイイとかドラエモン)を知っている若いロシア人は多い。日本語の教育環境はそれほど整っていないにもかかわらず。
・2008年に中国とのウスリー川の中州を面積等分方式で国境画定し、2010年にはノルウェーとの大陸棚の国境を同じく等分方式で解決している。北方領土についてもプーチン大統領が「ヒキワケ」を口にしたことから俄に面積等分方式が現実味を帯びた。しかし、択捉・国後両島にはロシア極東軍の軍事施設が建設されており、この扱いは譲らないと思われる。

ロシアの言い分とは何か
・ゴルバチョフ時代とは重い軍事費の負担に耐え切れず『帝国』を放棄せざるを得ない苦汁の選択の連続だった。当時は共産党一党独裁であったのでその勢力は強く、一方台頭する民族主義にも悩まされた。当時はサッチャー英首相・レーガン米大統領と役者が揃っており、ゴルバチョフはそれらに対してそれなりに対応したことで国際的には評価が高かった。
 若い人は知らないだろうが東西に分裂していたドイツが統一することにGoサインを出したのも彼である。筆者はこの時にNATOとの住み分けを決めた秘密条約が在ったのではないかと見立てている。
 ところが一連の改革に反発した守旧派によるクーデターに遭いクリミアの別荘に軟禁されてしまう。
・この時この守旧派に対抗したのが選挙によってロシア(あくまでソ連の構成国としてのロシア)大統領となって復活していたエリツィンである。戦車の上に乗って拳を振り上げる映像が有名だが、実態は軍の大半と治安機関が支持しなかったのでクーデターは潰れる。そしてソヴィエト連邦も崩壊することになった。
 そのままロシア初代大統領となったエリツィンは、市場主義経済導入を急激に勧めたが結果は無残なものだった。前年比2510%ものハイパーインフレとなりGDPは前年比マイナス14.5%。そして国営資産の不透明なブン取り合いが起こり1998年にロシアそのものがデフォルトする。この次期国民は大変な困窮生活を強いられた。
 個人的には日本の橋本総理とはウマが合ったようで、領土問題もそれなりに進展するかと思われたがエリツィンの力が落ちていく過程でオジャンに。
・翌1999年の12月31日というドン詰まりにテレビで辞任演説をし、後継者を首相だったプーチンに指名。プーチンは困難な次期に選挙の洗礼を受けず大統領になった。それ以来憲法の定める3期連続に当たるの2008~2012を除いた期間ずっと最高権力者であり続けている。前記のインフレから石油製品の根下がりで当初は大変な苦労をした。現在も尚、経済的に厳しい状況であるのは報道にあるとおり。
 「灰色の枢機卿」「ツァーリ」「ラス・プーチン」等と呼ばれ、チェチェン対応・テロ対応(或いは敵対するジャーナリストの相次ぐ不振死、ロンドンでのポロニュウム暗殺もある)で見せた強い大統領のイメージ通り「栄光のロシア」の復活を望んでいる。
 それが露骨に出たのがクリミア併合・ウクライナ東部侵攻である。ウクイナは歴代大統領の腐敗が酷く(あの美人過ぎる大統領も含め)大国にもかかわらず難治の国だった。プーチンも天然ガスの供給ストップ等の強権をしばしば発動したが、反ロシアのキエフの革命騒ぎによりEUにより近づきそうな動きになってついに切れた。
 ロシアとしては、NATO勢力がロシアと国境を接する事は耐え難い。筆者の見立ての”NATOとロシアは国境を接しない”といった密約をEUが破ったと感じたのではないか。
 無論力による国境の変更など現代において許される事ではなく、国際的な制裁を受けてしかるべきである。
 一方のキエフの革命政権側も、現ポロシェンコ大統領は選挙の洗礼を受けた正当性はあるが、暴動の主体となった武装勢力にはあまりスジのよろしからぬ一団もいた。西ウクライナは東部三州とは多少宗教の違いもあり、実は先の大戦の時点で枢軸国に協力者もいた地域で反ロシア気質が濃厚にある。最初の発砲はこの一団と言われている。
 但し、東部側も義勇兵の体裁を取っているものの実態はロシア軍であり、ブークによるマレーシア機の撃墜の疑い等、多くの問題を抱えている。

大国の目指すもの
・国家というものは重くのしかかってくるイメージで捉えられがちであるが、統制力を失った途端にそれに代わって出て来るのは制御し難い暴力的陣取り合戦になる。歴史的にも末期清国から中華民国、アフガニスタン、ISの跋扈するシリア・イラクを見れば明らかである。或いは分断された国家を見てもよい。評価は別にして、我が国の戦国時代もそうだった。
 広大な領土を維持する、しかも経済や議会機能が安定しないロシアで、プーチンが強権的になるのはある意味当然なのだ。

 しかしながら国家の無限の領土拡張など有り得ない。筆者は大国たる矜持は域内防衛と安定と考えている。
 その文脈で考えればウクライナ問題の落としどころは自ずと見えて来るはずだ。既に血は流されている。
(注 本稿執筆時点でロシア航空機の事故が起こり、プーチン大統領のシリア政策は対ISを軸に大きく変わりそうなことを記しておく)
 IS対策が試金石となるだろう。即ち対テロ、あるいは国境を越えたバンデミック等にどう対応していくか。
 
・大国同士の全面戦争などは地球規模ではありえない。しかし中東情勢や勃興する民族主義を見れば当面地上戦が無くなることも在り得ない。しかるに大国レヴェルが調停に当たることになるのだが、そういった場合万が一の偶発が起こり得る。その際どうやって寸止めにできるか、いくつものシナリオを準備しておくべきと考える。
 これは目下の南シナ海で米中が対峙していること、そして自衛隊がレーダー照射を中国軍から受けた現実を踏まえ重要な点である。
・そして利害が一致しないとしても、なるべく直接ぶつからないように糊代・遊びの部分を構築する。例えばTPP等は経済的枠組みではあるが雛形としては将来的に進化する可能性はある。実際戦乱に明け暮れたヨーロッパの中での戦争はEUがある現時点では考えられない(ドイツの一人勝ちではあるが)。ロシアCISにもユーラシア関税同盟が一部には動き出している。

 そして最後に、ロシアを題材に色々と材料を提供したが、学生諸君には『それではこの国と付き合うのに日本としてはどうあるべきか』を自分の頭で考えて頂きたい。一国平和主義などは既に成り立たなくなっているのだから。

 北富士総合大学において
 尚、数字を提示した表・グラフについては量が膨大なため割愛した。

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現代ロシア社会 前編


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ロシア東方シフトは本物か

Categories:国境

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