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近未来 無犯罪都市 TOKYO

2015 NOV 12 19:19:26 pm by 西 牟呂雄

 2020年には多くの国民の理解が得られたマイナンバー制度が根付いた。オリンピックに大量の選手・応援団・観光客がやってきたが、入国の時にパスポートナンバーが控えられ、外国人にも仮の番号があたえられるようにさえなった。
 学者・ジャーナリズムの多くは『自由の侵害だ』『人権無視だ』と大騒ぎしたが、使っている国民のほとんどはこれによって手間が省け、便利になったと助かっていたのだ。施行されてから目に見えて犯罪が減ったのも大きい。
 国民は気が付いていないが国家による管理はとっくに極限にまで進んでいたのだ。
 2015年あたりからスマホ・メールの普及に伴って通話盗聴・メール閲覧・データ抜き取り技術が飛躍的に開発され、秘密裡に監視するとともに蓄積され、一方で防犯カメラで捕えられる映像がビックデータとして保管されたため、犯罪検挙率、スピードが飛躍的に上がる。gmail.com、 ne.jp 、co.jp
といったアドレスは例外なく閲覧されていると言っていい。
 防犯カメラは全国津々浦々に張り巡らされて、通り魔的犯罪は直ぐに挙げられる。
 好調安倍政権は下手に警察機構が動くと目立つと読んで、公安調査庁に膨大な秘密予算をつぎ込んだ。集中的に追い詰めたのは『振り込め詐欺』と『性的変質者』だ。危険度・常習度別にソートされた再犯候補者・犯罪予備軍を囲い込み、予防どころか若干の囮まがいの捜査で片っ端から検挙した。
 更にスマホ一つ部屋に置いて有ればオフにしたところで全て見ることも可能なのである。
 一見日本は治安において楽園のような社会になるかと思われた。
 肝心なことがもう一つ。脱税はマイナンバーを使うとほぼ不可能になり、どんな職業でもサラリーマン並みにふんだくられることが常態化した。

 2018年以降に安部政権を引き継いだ石破総理ー野田副総理コンビはオリンピックに向けた好況感と共に順調に船出した。
 しかしである。世の中のイリーガルな部分や怨念・憎悪が相対的に減るようなはずがない。しかも管理のレヴェルが上がると同時に抜け道を模索する技術も上がった。折りしも警察の暴力団壊滅作戦が効いたお陰で組織は壊滅したが、闇の勢力は一斉に地価にもぐってマフィア化してますます一般社会と乖離してしまった。
 一般国民にとってウッスラと管理されているのは苦痛でも何でもない。そうで無ければ北〇〇も〇国も人が生活できるはずはない。
 
 とは言え、政府への隠し金・ヘソクリをチョロまかすのは資本主義の基本だ。闇が目を付けないはずがない。まず始まったのがマイナンバー・詐欺だ。偽造マイナンバーでパスワードを盗み銀行口座から引き落とす。偽造マイナンバーを持ち掛け後ろ暗い連中から金を巻き上げる。更に適当なマイナンバーを入力したオレオレナンバー詐欺まで出現した。
 金持ちは電磁波シールド・ガーデンを造ったりして情報漏えいに気を使うムキもあったが、これらの犯罪は後を絶たない。2020年段階では、各警察公安部に設置されたサイバー・セキュリティー部隊と生活安全部の詐欺対策部隊は治安が良くなるに反比例するように多忙を極めて闇の勢力と戦っていた。
 闇とは言っても別に本当に地面の下に住んでいるわけじゃない。かつてのヤクザのように看板を出した事務所が無く、普段は普通の市民生活を営んでいるらしい。特殊なネットワークで連絡を取っているようで組織としての実態が皆目分からないのだ。仮にメール・携帯等で連絡していれば公安調査庁が把握できるはずなのだが、警察サイドから再三申し入れても梨の礫で、どうやら彼らの防諜でも分からないようだった。

 一部の犯罪集団はどうやらマイナンバーを拒否しているらしく、ナンバーの検索には引っ掛からない上、表面上はただの市民を装って自らは手を下さない。ナイショのヘソクリを造りたいような後ろ暗い堅気をカモにして詐欺を繰り返し急成長産業となっていた。
 表面的な安定社会と裏腹に、格差は益々広がり底辺貧困層ははっきりと隔絶された階層が形成されているようだった。
 即ち、マイナンバーが管理し切れない不法滞在者・ナンバー拒否組が表に出ないネットワークをひそかに形成していて、普通の市民を装いつつ社会の底辺にしっかり根を張ったようだ。

つづく

近未来 無犯罪都市 TOKYO Ⅱ

近未来 無犯罪都市 TOKYO Ⅲ

近未来 無犯罪都市 TOKYO Ⅳ


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