架空ライヴ 矢沢永吉 VS 謎の大物 Ⅱ
2016 FEB 21 20:20:34 pm by 西 牟呂雄

武道館はエーチャンの登場前から既に熱狂していた。
30年前から通いつめているらしい貫禄のあるオヤジも大勢来て『エーチャン!エーチャン!』と声を涸らす。
照明スポットがステージの両側を照らし出した。いよいよイントロだ。
だが、多くの観客はリズムの取り方が違うことに気が付いた。スポットの先に見えたのは和太鼓なのだ。そう、エイト・ビートの裏打ちでなく、頭で拍子を取る『エンヤートット』のノリである。
いよいよエーチャンが登場すると観客はアッと驚き、すぐに大歓声を上げた。何と羽織袴で背中にE・YAZAWAの染め抜き。そして歌いだした時点で更にたまげる。
男は~ まつりを~ そうさ かついで生きて来た~
山の神 海の神 今年も 本当にありがとう~
演歌じゃないか。アレンジがまるで違ったので気付かなかったが、歌詞を聞いてブッ飛んだ。しかしすぐに観客は手拍子を取り大ノリ。ロックじゃ考えられない頭打ちの手拍子が広がった。
倅 その手が たからもの~
ワン・コーラスの後は、エーチャンのステージ独特のギターとの掛け合いだ。ギタリストがステージの前に出て来てエーチャンの隣りに立つ。兜こそ被っていないが武者装束の出で立ち。一体何物かと良く見ると。
あれは布袋だ!アクションたっぷりに布袋ワールドを紡ぎ出す。
二番が始まる前に照明がステージの上の上部に当てられた。何かがせり上がってくる。
何とバックスクリーンに映し出されて視認されたのは北島三郎!金をあしらった袴で、左右の紅白の蓮獅子を従えているではないか。サブチャン御大がマイクを取る。
男は~ まつりで~ そうさ 男をみがくんだ~
山の神 海の神 命を 本当にありがとう~
もう何がなんだか分からないうちに、エーチャン・サブチャンのダブル・ボーカルが決めた。
も~えろよ 涙と 汗こそ 男のロマン~
オレも ドンとまた 生きてやる
これが 日本の 祭り だよ~
観客はビッグ・ツーのトーンが被るのにも驚いてもいた。
ここで北島御大のMCとなった。エーチャンが姿を消す。
「あのよー、みんなありがとう!」
凄い盛り上がりに -サブチャン サブチャン サブチャン サブチャンー
御大も元々ガラは悪いからヤザワ語が良く似合う。
「あのよー、いや初めにエーチャンから丁寧なオファーが来たときゃ冗談かと思ったがよ。オレの目を見て『先生、本気でいきます』っつーんだよ。だからオレも言っちまった『よーし、そっちがエーチャンならオレもサブチャンだ。』ってな。」
突如布袋のギターが バトル・ウィズアウト・オナー・オア・ヒューマニティー を奏でる。その曲に合わせて御大が歌うのは
与作は 木 を 切る~
ヘイヘイホー ヘイヘイホー
サビの部分のコード変更も布袋は自由自在。武道館は『ウォ~!』という異様な歓声に溢れかえり、最後は物凄いチョーキングのギターがピタリとあって終わった。
『オッケー、セーンキュ・ソウ・マッチ、ビッグ・ボス・エンド・ホテー!』
エーチャンが登場してホーンが鳴り出す。御大と布袋は袖に下がっていった。
それからは例によってのバリバリ・ロックンロールと自らギターを奏でてのバラードを挟んでステージは進行する。
フィナーレのアイ・ラヴ・ユー・オーケーを終えた後も、観客はエーチャン・コールを続けて止まることを知らない。何故かその中に「サブチャン」も混じっていた。
アンコールにスポットを浴び、遂に布袋が出てギターを奏ではじめた。ドラムが来る、ベースが来る、ホーン・セクションが来る、コーラスが揃ったところで照明が落ちた。
『ルイジアナ(バーン)テネシー(バーン)』
トラベリング・バスだ、みんな一斉にタオルを投げ上げる。
二番まで歌い切って布袋が観客を乗せる。
その頃から後方の観客が異変に気づいたが、エーチャンは構わず呼びかけた。
「Hey !」
『(ヘイ!)』
「Hey・Hey!」
『(ヘイ・ヘイ!)』
「Hey・Hey!」
『(ヘイ・ヘイ!)』
「Hey・Hey・Hey!」
『(ヘイ・ヘイ・ヘイ!)』
「Hey・Hey・Hey・Hey!」『(ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ!)』「Hey・Hey・Hey・Hey!」『(ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ!)』
その日暮らしが どんなものなのか
分かっているのかい
この声は!観客席後方からクレーン型の移動ステージに乗って移動してくるサブチャン御大ではないか。
ルイジアナ モンタナ アラバマ 遥か南のキャロライナ
ルイジアナ シンシナ インディアナ きつい旅だぜニューオリンズ
ルイジアナ テネシー シカゴ 遥か ロスアンジェルスまで
一説によるとワン・ステージで御大のギャラは1,200万円だったという。
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