普通であるということ (今月のテーマ 無為自然)
2016 JUN 2 0:00:58 am by 西 牟呂雄
僕は動物ドキュメントが大好きで「アニマル・プラネット」をズーッと流していたり、NHKの「ダーウィンが来た」は欠かさず見ている。古くは「生き物バンザイ」なんてのもあったな。
時に可愛らしかったり(ワニのようなものでも)いじらしかったり(ゴリラでも)。
そして自然と言うものはよくできており、そのバランスを専ら人間が破戒・蹂躙しているという思いを深くする。
ところで、サブ・タイトルでよく使われるフレーズに気が付いた。『過酷な自然の中で懸命に生きる』『極寒の環境を耐えて生きる』といったパターンが多用されている。
画像は物凄い乾いた土地、極北の凍土、恐怖を感じる岩山、といった ”人間にとって” 厳しい場所を映している。そりゃ撮影している人は『過酷な』環境だろうが、被写体の動物はそれで死ぬわけではない。無論、不慮の事故・天敵によるアタックはあるだろうが、それは映していないときも普段から起きている事象にすぎない。それはそれで『過酷』ではあるが、自然現象として当然のことでもある。動物達はその環境に合うように進化し、独自にその環境で生き抜く術を身に付けていると言えよう。
撮影者・視聴者には耐えられない寒さや渇きもその生き物にとっては『普通で』あると見立ててみる。
いきなり話が飛ぶが、その感じで混迷を極める中東を俯瞰してみるとどうなるだろうか。残酷行為を我々は嫌悪するが、石打の刑罰を平気でやり銃刀法も何も無い武装勢力が入り乱れる砂漠の民。民主政権なんぞは頼まれても欲しくもない、とアラブの春を葬り去った。〇〇派と◎◎派がいがみあい、それとは別のイスラエルが実際には核武装して対峙している。サウジはイランと断交してロシアに原発を発注。アメリカがイラクを潰してしまったらゾンビのようにISが跋扈し出して、あれは元バース党だと見当がつく。ロシアはISたたきを口実にミサイルを撃ち込み戦闘機を飛ばしたところ、トルコが撃墜。
かつていくつかの大帝国が誕生したこのエリアはもう一つにまとまれない。ここまできたらいくつかの勢力がISを潰した上でシリアを分割統治するまで殺し合いを止めないのではないだろうか。
大国が手出しをして収まるポスト・モダンが冷戦終了により新秩序に脱皮する過程とでもいうのか。
一般の人々があの戦乱の最中に傷つこうとも宗教間の差別に苦しみながらも戦線は瓦解しないのは、戦士は生きがいを感じ神の愛を自覚するからなのか。
それで本当に食う事もできなくなった難民は大変な苦労を強いられながら移動せざるを得なくなる。
好ましくないことであるが、現時点の戦乱はあのエリアの『普通の』状態なのかもしれない(これは上記、シリアを分割統治するまで殺し合いをやめない、の意)。強烈な専制政治の元でゆるやかな部族社会を営んでいた方が自然だったかも知れない。
翻ってこの平和な日本の『普通の』状態とは何をすることなか。
日本の凋落、失われた20年、この間は筆者の現役時代とまる被りする。バブルがはじけてジタバタした挙句、その多くを失敗した後の視点からみると良く分かる。その頃から日本中が大して働かなくなってきていることが。
本当は必死に働くことではないのか。巷間言われている”ブラック企業”は大して働かないその皺寄せを弱い部分が受けている状態を現していないか。
通信機器がこれだけ発達して且つコストも安くなり、更に日本人がいきなりバカになったとも考えられないのに、ホワイト・スタッフの生産性が上がっているようには見えない。このグラフは10年前のデータだが、その後アメリカとの差は開く一方なのだ。
可処分所得が上がらないのに休日ばかりが増えて、生産性を落としていれば消費が上がるはずもない。
これはどういうことか。筆者の仮説ではもっとも稼ぐポジションの企業がムダな会議ばかりやったり、インチキをやったりしては何度もバレているからじゃないかと疑っている。これでは『一億総活躍』どころではない。
それでは何かを造らなければならんのか、と野菜を去年から育ててみた。しかしキュウリと大根は失敗したし、茄子・ピーマンも結果として買ったほうが安かった。
無為自然とはどういうことか考えたくて書き始めたら、例によってバカなオチになってしまった。普通にセッセと働く事にしよう。
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
Categories:潮目が変わった