Pカンパニーの『虎よ、虎よ』観て来ました
2016 AUG 28 21:21:55 pm by 西 牟呂雄
司馬遼太郎の『国盗り物語』で有名な〝美濃の蝮”斉藤道三と、その子にして父を討ち取った義龍を題材にした舞台を観に行きました。SMC仲間の早野さんが出演していて、義龍の母親・深芳野を演じます。
息子義龍の実父は土岐頼芸という説は司馬遼太郎がネタにして通説のようになりましたが信憑性はないそうです。むしろ父親殺しの汚名を着るのをいやがった義龍が自分でそういう噂をバラまいたのではないかと疑っています。
実は斉藤道三は嫌われ者だったりして、旧家臣団は殆どが義龍につくのですよ。
さて、話は戦国のリア王のような父子の葛藤でしょうか、はたまた復讐劇か。
義龍は記録によれば六尺五寸、2m近い大男なのだが、役者さんはそうもいかない。
現代のテレビ・クルーが謎の案内人に導かれて結界の中で斎藤道三・義龍親子と会う、という斬新な設定。
後半の盛り上がりが素晴らしい演出で、笛・太鼓も効果的です。
特に感心したのは義龍が仏典にのめり込み、釈迦の前世で飢えた虎に身を与える挿話の際に虎を表す踊り。狂った深芳野が凄味のある演技をする後ろで般若の面を付けた女優さんの踊り。バックに土岐家の紋を映し、それがのちに斎藤道三の紋に変わる映像。
この辺の舞台芸術の進化は見事に尽きます。
ただ、この演出に至るまでがやや冗長に感じられるのが惜しまれる。前半のテレビ・クルーのいかにも業界的なノリ(いわゆるビーテレ)も残念ながら笑いを取れませんでした。
もう一つ、終わりのあたりで準主役が60年安保を目撃したことが語られますがこれも余計かと。作者もしくは演出家の経験が盛り込まれたのでしょうが、物語のテンポを悪くしています。
舞台と思想は切り離せませんね。
挿話は事実で、デモ隊に恐れをなした政府は一時は自衛隊の治安出動も考え踏みとどまります。その代り補完勢力として右翼行動派に手を回すのです。この間は非常に事情が複雑に入り組んでいて簡単ではない。その右翼の暴力を警察が傍観したと語られますが、それも確認されている事実です。しかし実際には警察は手が出せなかった。なにしろデモ隊の統制が取れなくなり警備以外はできませんでした。その渦の中で樺美智子さんが痛ましい犠牲者となったことは広く知られていますね。
オット長くなりました。本題に戻って芝居は。
仲間の演技は特に目が行きます。
早野さん、狂気の場面凄かったですね。目がイッテました。こういうの得意なんですよ、彼女。そして終わりに歌って踊ります。元々シャンソン歌手なので上手いに決まってますし、踊りは妖艶。華がありました。
まだ見に行けますよ、チケットは大分売れているそうですが。
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Categories:言葉
阿曾 靖子
8/30/2016 | Permalink
早野さん、昨日で無事に千秋楽おめでとうございます。
重要な大役、お疲れさまでした。
西室さんの上記感想で、かなり想像していただけるのではと思いますが、昔も今も人の世の常として「戦(いくさ)」に対する視点、巻き込まれる人々の哀れとそして覚醒の喚起を軸に強烈な野心、男と女、母と息子、父と息子、時代劇ならではのダイナミックなパワーが感じられました。
ただ、やはり現代の部分の描き方、人物描写等、少し類型的に感じられてしまうのは少し詰め込みすぎの感がありました。
安保の部分は、それだけで別の1本のドラマの濃厚さがほしかった気がします。
余談ですが、このカンパニーの前進である「木山事務所」に昔2年半研究生として舞台にも何度か立ち、さらにその後正式所属した「レ・キャンズ」現「ハーフムーンシアター」主宰の恩師にロビーで24年ぶりにまさかの再会!
早野さんをはじめ、過去に共演した5名の方々の今を見られて別な意味でも感無量の2時間半でした。
東 賢太郎
8/30/2016 | Permalink
今回は日にちがあわずに残念でした。ずいぶん楽しかったようですね、次回は楽しみしてますのでよろしくお願いします。