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2025年 AIを国民の手に

2017 NOV 16 22:22:16 pm by 西室 建

 2025年、不況のドン底の中で発足した小泉進次郎内閣は新しい政策を発表した。『AIを国民の手に』である。
 2017年の選挙の際に希望の党がベーシック・インカムを提唱したが、全く世間から無視された。ベーシック・インカムは単にバラ巻きを助長すると誤解され、その後続いた自公連立政権の中では顧みられなかった政策だった。しかし理論的には逆進性・格差の解消の切り札として、秘かに政府系シンク・タンクであるSMC(スーパー・メタリック・クラブ)にて研究されたのだった。
 そしてそのSMCから小泉総理に秘かに伝えられたのが上記スローガンとベーシック・アセットなる概念だった。
 少子化が極限にまで進み、経済的にも文化的にも停滞が始まった2020年代に発表されたベーシック・アセット理論は簡単に言えばこうだ。
 赤ん坊が生まれると一人頭数千万円のアセットを持つ権利を与え、国民はそのアセットを元手に生活を設計し高い税金を納める。この時点ではほとんどの単純労働はカセット型のAIをロボットに装着することで置き換えられており、一時は大量の失業問題になった。そこでこのアセットをAIとして支給し、その生み出す付加価値から一定額の納税をする。納税額はその年の予算に応じて国民頭割りとなる。この時点で性別・年齢・知能に拘わらず全員が労働し納税するためGDPは跳ね上がり財政はプライマリー・バランスを回復することとなる。おまけに全ての労働は同一賃金の前提であるから収入格差もなくなる。
 この案を肉付けしたベーシック・アセット政策を引っ下げて小泉進次郎自民党総裁は東京オリンピックの翌年に総裁になってから全ての選挙に圧勝した。

 そして2025年からの新生児にはアセットとしてのAIカセットの支給が始まる。但し、15才の元服(成人式は既に無くなった)までは本人はAIをどの分野で使うか判断能力がないため、国家で一元管理することとして細則が各官庁で検討され国会での討論が始まった。名付けてAIアセット国会論争である。
 しかしこの国会討議は全く盛り上がりを欠くものとなった。
 既に大部分の農作業・製造業・サービス業のカセット型AI装着のロボット化が可能なのだ。例えば農業にではビッグ・データ処理によって各作物の最適作付け時期が判断されると、機械化された農具にAIを装着するだけで収穫まで人手はいらない。天候等の自然要因でさえもAIが判断する。或いは大規模製造業などはほとんどの工程が無人化し、製造管理もAIに任せておけば効率よく無駄なく歩留まりも上がる。そこで生み出される付加価値は全て企業側の収益の源泉となりうるし、一部は既にそうなっていた。
 この法案はそれを露骨に個人に還元する事であり、収益の圧迫が見込まれた。
 しかし実施時点での試算によれば、仮に各AIのオーナーにある程度の支払いをしてもその他の物流・通信コストが限りなく安くなっており、企業の国際コスト競争力は充分に担保される。また、付加価値分の課税に関しても公平性・逆進性が一段と改善されることが明らかになった。
 まるでいいことづくめで野党も反論するネタを全く持たないのである。

 しかしここで思いもよらない所から問題が提起された。ベーシック・アセット理論の提唱元であるSMCからだった。
 SMCニシムロ社長が発表した『ベーシック・アセットAIの一般的展開』というレポートがネットに出回り論争を呼んだのだ。
 このレポートで指摘されたのは、高度に洗練されたAI所有者による消費行動が国民生活を分断してしまう、という衝撃的な未来予測である。
 即ち日本人の消費行動は以下の七つのグループに分かれるという。
① 権力志向型 (7~10%)
 どうしても集団のトップまたはそれに順ずるポジションを得たくなる。2018年時点では政治家・官僚・ヤクザの職にある人達。野心家と言われるタイプ。但し本人の能力はバラついている。思い込みと能力が大きく乖離していると挫折を繰り返し転落する。
② 権力否定型 (10~15%)
 現状にどうしても不満を持ちたがる。一部上記分類と被る。政治家・マスコミ・運動家になりがちな人達。宗教家も多く、右翼も左翼もいる。
 何かと改革をしたがっていいところまで行く場合もある。しょっちゅうトラブルを起こして暴発する事も多い。
③ 自律的使命感型 (8~12%)
 やはり自分のいる場所を確定して仕事としてキチンとやりたいタイプ。いわゆる秀才だった子がオトナになるケース。2018年頃はエンジニアとして企業にいた理系サラリーマンだった。比較的体制肯定型で政治とか名声には興味が無い。警察官・自衛官もこのゾーン。
④ 自己探求型 (1~5%)
 このベーシック・アセットAI制度の元で生活できるなら、と音楽・美術・絵画・文学といったアート系に耽溺する。或いはアスリートとしてひたすら肉体を鍛え技を磨く。無論プロになれるのは極少数だが、ストイックで真面目。禁欲的になるか快楽的になるかは人による。
⑤ 快楽追求型 A (15~20%)
 かつての中産階級のうち、比較的流行にまどわされやすいゾーン。どちらかと言えば高学歴とは言いがたいが自分は頭はいいと思いがち。マイクを向けられると良く喋るが中身はない。要するに扇動されてしまい、変な潮流に埋没しがち。顕著な特徴に”群れたがる”ことがあげられる。
⑥ 快楽追求型 B (15~20%)
 以前はニートとかオタクと呼ばれた。現状に興味を失っているところにベーシック・アセットAIを支給されるのだから全く働かない。現実味がなく所詮世の中の役には立たない。文句が多い。
⑦ 快楽追求型 C (25~40%)
 犯罪者・変態・アル中・薬物中毒等、現実逃避が著しい。要するにロクでもないクズ。スタートは違っていても(上記別のカテゴリーにかつてはいた)ドロップ・アウトしてきて人口の中でもっとも多いゾーンとなる。犯罪に係る可能性も高く、社会的な危険要素である。

 かくしてこの分けられたゾーンは固定化され、その中でしか群れないのであたかも階級社会が出現したように(政治的に制度化しないにもかかわらず)社会が分断されることになってしまうのだ。
 しかし小泉進次郎総理は、高度な政治的判断と独特の統治理論でこの政策を推し進めようと決断したようである。彼の考えは、ここまで豊かになった日本人を選別してしまい、ベーシック・アセットAIによって半数弱の国民の思考能力は奪っても構わない。上記⑤~⑦にあたる55~80%の国民をアホにしてでも安定社会に見えるような仕組みを導入することなのだ。

 これは幸せな国家と国民と言えるかどうか、これから10年を待たなければ分からないであろう。

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