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『ソサエティ5.0』とは

2018 MAR 17 16:16:09 pm by 西 牟呂雄

 閣議決定され内閣府が発表している『科学技術基本計画』のことである。

ソサエティ5.0(クリックして下さい)

 内容はネットで閲覧できます。狩猟時代・農耕時代・工業時代・情報時代に次いでやってくる超スマート社会を目指す、という構想だ。
 先日、さる講演を聞いたところ大量データ処理やデジタル経済の周辺技術は全地球規模で加速度的に発達していることに驚いた。アメリカばかりじゃなく至るところで開発が進む。インドのIT産業の凄さはたびたび現地入りして肌で感じているが、そのほかにもロシア・ベラルーシといったところからホットなイノベーションが次々に起きている。
 それらが、ヴェンチャーを通じ更に機能・付加価値を増やす事は誠に結構であるが、それを社会インフラとして発展させるのは我が国が最適な社会なのではないだろうか。
 第1にこれからの高齢化社会が「超スマート」社会を欲している。これから高齢者になり将来の衰えが目前にせまっている身としては切実にわかる。体は効かない目も悪くなる耳も遠くなる、の状況でも最低限の生活をする際には、このコンセプトの便利さは必要だ。
 昨年さる知り合いが長期に入院をされたが、看護師さんたちの猛烈な忙しさと入院患者の要望の多様さのギャップを目の当たりにした。こういうところに集中して投資することで社会コストが大幅に下がるだろう。
 第2に、この「ソサエティ5.0」社会では既存の農産物・工業製品の在庫が減るだろう。いらないものは作らないで済む、ビッグ・データにより消費の予測精度がはるかに上がる、また産物・製品の歩留まり向上する。従って無駄が著しく減らせるはずだ。しかもこれは日本人が一般的に持っている「もったいない」の精神にピッタリと平仄が合う。そしてコスト削減に効く。
 すでに十分安くなっている通信費をはじめ、あらゆるモノ・サーヴィスの価格が一段と破戒される。在庫の削減はそれぐらい大きいのだ。
 第3には、これらのデータを充分に活用し得る社会インフラがほぼ整っている。サーヴィスを受けるにはその公平性が必ず問われることになるが、都市部と過疎地の利便性の差はよほど極端な例を除けばそう大きくない。山の中や離島でドミノ・ピザが30分以内に来ない、と怒ってもしょうがないたぐいである。
 むしろ「ソサエティ5.0」社会においては、最近見られる田舎への移住や働き方改革によって東京への一曲集中が緩和されていくものと思われる。普通のサラリーマンが日本中どこででも仕事が見つけられ、通勤を伴わずに執務できるようなイメージが湧く。性差・年齢差もなくなっていくだろう。
 第4に現状様々な非効率を引き起こしている現象が避けられるようになる。卑近な例では災害の対処、救助手段、被災者の病院への搬送、交通事故対応、犯罪の予防、治安の安定といった諸問題の解決スピードが飛躍的に上がるはずだ(犯罪予防は難しいか)。
 それだけではない。役所の手続きや病院の待ち時間なども短縮される。或いは渋滞が減る、混雑が緩和される、といった日常の利便性にまで影響がある。
 そういった事象は今後労働人口が減り続ける我が国にとって経済的にも大きく貢献するはずだ。
 最期に、実現時点では確実にヘロヘロの老人になる筆者にとって有難いのは、その超スマート社会が極めて安心感をもたらすだろうことである。
 後顧に憂いが無くなるとでも言うのだろうか。
 あらゆるコストが劇的に下がれば、もうそんなに長くもない将来に思い悩むことはなくなる。
 一方でその頃の若者は、無償化した教育によってかえって多様化していくだろう。勉強しない奴は昔からしないが「ソサエティ5.0」には落ちこぼれは存在しない。妙な話だが、行きたくもない学校だったら行かなくて済むのでだ。
 AIのおかげで外国語が喋れなくともグローバルに活動もできる。

 ところで、オカミはこういう資料を丁寧に書くと『仕事』が終わったと思ってしまいがちだ。あとは予算を付けてオシマイ、民間でどうぞ、ってそうじゃないだろう。
 こういう社会が実現するには継続的な政策の後押しと、さらにその時点での政治にも十分な透明性・正統性があり、広く国民の声を聴き周知徹底する体制がなければ。単なるノリのポピュリズムや極端に偏ったものでないことも求められる。
 現時点ではいささか観念先行なのは仕方がない。ここで一旦地に足をつけなければ、単なる『儲け話のエサ』になりかねない。
 「ソサエティ5.0」は社会も変動させる。
 昨今の世界情勢をみるにつけ近未来でグローバリズムはそんなに普遍的な概念ではなくなるかもしれないのだ。EUの末路を見極めたい。
 考えても見て欲しい、自由だグローバルだと言っても国境が無くなった途端にデモクラシーそのものが霞んでしまうだろう。
 更に高齢者(近未来の私達)は本当は何を望むのか。誰がどうやって各種のそういった意見を掬い上げられるのか。
 又、技術的には達成されるとしても、高齢者が使いこなせるシステムでなければ我々は奴隷化する。
 そしてその前提として高度な安全保障体制が緻密に組まれた平和が確保されなければならない。 
 
 そうなってこそモラルの高い「ソサエティ5.0」社会が実現するだろう。

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