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韓(から)色の風

2018 SEP 9 14:14:19 pm by 西 牟呂雄

 7月の末、かれこれ20年振りだろうか。夜半の仁川空港に降り立つと、この地もやはり暑い。
 この厄介な国にまた来るとはね。
 空港では「客」だと思わばこその愛想のいい親切な対応は昔と変わらず。タクシーの運転手が声をかけてくれる。
『オゲンキデスカ』『オツカレサマデス』
 今はあまり経済が良くないので尚更なのだろうか。こういう普通の人達が、頭に血が上るととんでもない反日家になり、自国の権力者を引きずり下ろし、セクハラ・パワハラどころではないモンスターになるのを以前から不思議な思いで見て来たのだ。
 ビジネス・マンの時は危険予知でいつも褒め殺しにし、大体うまくやったつもりだが決して油断はするまいと思っていた。これは時として効きすぎて、例の韓国式の宴会などをやった日には『トムセン(あにき)!』と舞い上がられてハグされ、これからどう付き合おうかビビったこともある。こう極端だとそもそも信用していいのかどうか、悪気はないのは分かっている。
 ヒステリックな激しさとややもすれば理不尽な要求はニュースでいやというほど見聞きさせられたから、個人的には『付き合わないのが一番』な国だと思っているが、ヤボ用でチョイと行ってきた。
 今回会った人は、事前に聞いていた話では日本語が喋れるという触れ込み。挨拶した時に名詞に『기시무로 겐』と書き込んでドーダというつもりで渡すと、彼はニコニコしながらホウッと見入っていたが『ニシムロサン、コレデハ 「きしむろ」デス』と言うではないか。『기』を消して『니』と書きなおしてくれた。しまった。昔よく練習していたのだが、使っていなかったせいでいつのまにか間違えて記憶している。ドーダのつもりが恥ずかしい。
 ちなみに、この人の日本語はこれまたひどく難しいのだ。実践で覚えた発音と翻訳ソフトを駆使しているようだが、結果的にうまくコミュニケートできず時間がかかる。
 車で移動すると、渋滞は20年前よりは少しは改善されたかもしれないが相変わらずひどい。ただ運転マナーは随分柔らかくなったように感じた。
 さて、話はスムースに進みお互いに納得感が醸成された。
 だが、コリア・ネゴシエーションはここから始まるのである。
 経験則からだが、この場はこの場で収まっても帰国してからが本番だ。
 そのため、初めから夕食の約束はしなかった。これは私の方の問題だが、飲み潰されてそこで調子に乗って喋った事を忘れる恐れがある。相手はメチャクチャ強い、無論例外はあるが。その場合向こうの記憶には残り始末に負えない。
 ところで先方はキムさんだ。そこで『どこの本貫のキムさんですか』と訊ねると『キメッキム(金海金)です』。この系統は先祖はキム・シュロ(金首露)ということになっている。その話に振ると『良く知ってますね』と相好を崩す、シメシメ。
 金首露は金の卵から生まれたという神話上の王だが王墓もある。治めていたエリアは南部で魏志倭人伝にある狗邪韓国(くやかんこく)とされている。確か直系の宗家も現代まで続いていたのではないか、記憶が定かでない。最近ではこの首露王が応神天皇だというトンデモっぽい本も上梓された。
 そんな訳でサッサと帰国したが、例によって次の日から『話が違う』が始まった。
 今回の場合は原因ははっきりしていて相手の日本語がテキトーすぎたから、従って充分予想ができ、そうこなくっちゃ面白くない。
 更に話の元をたどって行くと、どうやら先方の内部での足の引っ張り合いも絡んでいる、ということが分かってきた。それならこっちはサッサと手を引くか、思案のしどころである。
 韓国は異常な輸出型経済が格差の拡大を広げたところに、現政権の反大企業政策と最低賃金引き上げが悪い方に作用したのか、消費が落ち込み設備投資もはかばかしくないと言う。
 そこへ持って来て米中貿易戦争は、韓国最大の部品輸出先の中国を危うくし、また既に中国に生産工場を移転した企業を直撃する。某韓国メーカーの中国にある大工場に行ったことがあるが、ああいうところは大変になるだろう。

 僕は旅先では花の写メを撮るのが好きなんだが、偶然なのか咲いている花に全く気が付かなかった。この国にもたくさん花が咲いているだろうに。鮮やかなムクゲの花を期待していたが、残念だ。
 で、訪問してから一ヶ月以上モメ続けたまま。今度は先方が話し合いに来日することになってしまった。キムさんは凄くいい奴なので焼肉でも食べに行こう。

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