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棚橋弘至の『パパはわるものチャンピォン』

2018 SEP 28 18:18:46 pm by 西 牟呂雄

 久しぶりに棚橋の試合をテレビで見た。実際には5月4日の試合だったようだ、BSの夜中に放映された。IWGPのチャンピォン、オカダカズチカへの挑戦だったがアングル(プロレス特有の筋書き)としてはオカダの防衛に決まっている。だが私のようなプロは見方が違う。どこかで必ずあれっとなるポイントがあるはずで、そこを探り当てるように観賞する。

オカダカズチカ

 試合はオカダがヒール扱いで、棚橋が圧倒的な声援を受けながら始まった。
 ちょっと中村獅童に似た表情で棚橋がオカダの膝を責める、いい攻撃だ。
 それに対してオカダは首を狙う。そして場外でのツーム・ストーン・パイルドライバーを落とした。棚橋はカウント15でリング・イン。
 僕はこの場外でのパイルドライバーについては嫌いだ。場外攻撃はこれがないとプロレスではなくなってしまうので有りの立場だが、パイルドライバーはいけない。危険すぎる。実はオカダはこのテの『危険すぎる』といった指摘に対し『プロレスラーは超人です』と言い放ったことがあって、バカじゃないかと腹立たしかった。レスラーがハッタリをカマすのは営業行為だが、この時はどうも本気でそう思っているのが見えてしまいヤバい感じを持った。
 オカダはメキシコで修行したルチャドールで、インタヴューなんかを聞くと実にいい奴なんだがもうちょっと重みが欲しい。
 試合の方はフラフラになった棚橋に向かってオカダが不敵にもニタリと笑って見せる。そこへ張り手が入ったところがこの試合のキモだった。全部で5~6発入ったと思うがこれはかなり効いてオカダの目が少し泳いだ。
 しかしまぁ、アングル通り棚橋のフライング・ボディ・プレスが不発に終わったあと、オカダのレイン・メーカー(名前の由来は不明だがただのラリアット)が決まって負けた。
 そしてマイク・パフォーマンス。何と次の挑戦者に『片翼の天使(複雑な肩車式パイルドライバー)』のケニー・オメガを指名したのだ。ケニーはカナダ人で日本式インディーズ系のプロレスに馴染んでもう10年。つらつら思うに見る方も感覚が麻痺してきたのか、昔であれば十分に必殺だった技をカウント2.8くらいで跳ね返すことを選手が余儀なくされている。ケニーは好んで危険すぎる技を繰り出すが、私としてはプロレスは見たいものの殺し合いは見たくもない。

 ところで、この棚橋が「パパはわるものチャンピォン」という映画に主演している。原作は絵本のようだが、やさしいお父さんが嫌われ者のゴキブリ・マスクであることが子供にバレて苦悩する心温まるストーリー。そしてオカダカズチカ以下、新日本プロレスの面々が出演していて、これは見に行かねば。棚橋の演技力は海老蔵の番組にゲストで出た時に折り紙をつけた。

堪えられない 市川海老蔵


 行って来ましたね。これが面白いの何の。リング・ネームからして相棒はギンバエ・マスク、チャンピォンはドラゴン・ジョージ、他にスィート・ゴリラ・丸山(敢てレスラー名は記さない)。必殺技に至ってはホイホイ・ブレードとはエグいではないか!しかも実際のリング・サイドの目線よりも近いカメラで迫力満点。

ゴキブリ・マスク

 ただ子供が主人公で、ストーリー及びシナリオがベタなのがイタい。低予算映画で撮影時間の制約もあるだろうから仕方がなかろう。それに複雑な大人のビジネスであるプロレスに(夢中になっているのはガキではあるが)子供をからませるのはどうしても無理が生じる。棚橋も上手いしゴキブリ・マスクがリングを這い回るところなんかは見事とは言え、主演を張るほどの演技はもう少し修行がいるだろう。
 それにしてもあの子役たちはどういった育成をされたのか、演技としてはやけに完成度が高い。あんなに上手いと返って自然さがなくなるのではないかと余計な心配までした。
 それはともかく、膝を痛めているために医者から『一度だけしか飛べないぞ』と念を押されたフライ・ハイを決めるためゴキブリ・マスクはコーナー・ポストに登っていく、飛ばなきゃならないのだ。
 最後には私のようなスネたオヤジも・・・。

 参考までに、冒頭の試合の一か月後の防衛戦でオカダはケニーに敗れ王座を失った。
 
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Categories:プロレス

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