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ロシアは悪い!

2023 DEC 11 20:20:23 pm by 西 牟呂雄

 そりゃ攻め込んだロシアが悪いに決まってます。これを最初に書かないと、アイツは親露派だと思い込むバカがいるので悪しからず。
 いささか旧聞に属するが、ソ連が崩壊した時に旧ソ連が配置していた核はロシア以外にウクライナ・ベラルーシ・カザフスタンと別れていた。ベラルーシとカザフはソ連継承国家であるロシアに返還したのだが、その時点でウクライナはしなかった。
 手嶋龍一が2007年に上梓した『ウルトラ・ダラー』は、その混乱の中からウクライナの核技術が北朝鮮に流出し、その際に北朝鮮製の精巧な偽ドルが介在したというフィクションである。今から十数年前の作品だ。
 また、1995年時点で建造中だった空母『ヴァリャーグ』は同じようなドサクサの中ロシアからウクライナに引き渡された。ウクライナは引き継いだ途端に売却の方針を固める。すると海洋進出を目指した中国があの手この手で接近し、1998年マカオの怪しげなペーパー・カンパニーがカジノを含む五つ星ホテルにするという名目で落札した。この動力装置も未完成の空母はその後漂流・曳航を繰り返しながら3年後にマカオではなく大連に入港し、途端にペーパー・カンパニーは雲散霧消する。2005年から改造が始まり2012年に人民解放海軍に引き渡され空母『遼寧』となる。その間、ウクライナから多くの技術者が高給で雇われ、旨い汁を啜ったのだ。
 他にもロケット技術の北朝鮮への供与(無論有償)はかねてより指摘されていて、2000年代を通じて世界の混乱の要因となっていた。要するに迷惑な国だった。
 内政はその間混乱状態が続く。オレンジ革命やらその反動やら、選挙をやれば不正だなんだといつもモメ。出てくる政治指導者は親ロだろうが反露だろうが例外なく蓄財に励む有様で、そんな中ネオコンは露骨に手を突っ込んでいたに違いない。
 もちろんロシアも工作する。2004年の大統領選挙に親露派のヤヌコーヴィチと対立したユシチェンコは突如痘瘡だらけになったが、ダイオキシンによるロシア得意の暗殺未遂だと主張している。

 プーチンはしきりとキエフ大公国をロシアのルーツにしたがるが、ウクライナ・エリアがロシア・ロマノフ家に従属した歴史はそう古くなく、以前はポーランドの影響下にあった。その頃は、ほとんどのロシア人が貴族以外は農奴として売り買いされていた一方、軍事組織であるウクライナ・コサックが社会を構成していた(エカチェリーナ二世の強硬改革時に逃亡した農奴がウクライナに流れ込み農奴制が蔓延したが)。ウクライナ・コサックの矜持は自由と平等であり、意思決定はリーダーとして選出されたヘーチマンの元で全会一致が原則である。
 また、先の大戦時にはナチに協力しユダヤ人を迫害し、連合国側が勝利した際には大量の移民がカナダに渡った。マイダン革命時に根絶やしになったはずのネオ・ナチが突如現れたのはその根が残っていたことを物語る。かのアゾフ大隊のことだ。
 一方ではクリミア半島に根を張っていたタタール人という勢力もあり、黒海の対岸は強国トルコに代表されるようなイスラムの北上圧力に常に晒された。強国に挟まれた国の生き残りノウハウはいいとこどりの二枚舌外交と決まっている。
 そこにネオ・コンが目を付けたのだろう。
 
 しかし、そのネオ・コンも中東ハマスの暴発は読めなかったのだろうか。更にウルトラ強硬派のネタニヤフを抑えられると考えただろうか。実に致命的な読み違いに見える。
 一方で欧米の足腰を読み切ったプーチンが大陸と北の国をけしかけているのはミエミエ。アメリカは日韓に防衛の一翼を担わせようとするだろう。
 筆者はそれをチャンスだと思っている。憲法改正は難しい、解釈改憲には限界がある。台湾有事こそがチャンスなのだ。究極の防衛策は核武装だが、世論がそれを阻むであろうからシェアリング、それをアメリカに求めても承知してくれないだろう。本命は英国と見た。
 落ち目の大国同士で秘密条約を結び核シェアリングをする。膨大なコストのかかる核搭載型原子力潜水艦のメンテナンスを日本が負担し日本海に配置する。実は英国は原潜「オーディシャス」を修理できない状態なのだ。核戦力を担うヴァンガード級原子力潜水艦を一隻借りてくるだけ。しかも中国は日本海に面していないのがミソで、ロシア並びに北の国への牽制ができれば安いもの、核を使う訳はないから、これぞ非核2・5原則ではないか。
 英国はTPPにも入りたがっているからタイミングもいい。日英同盟復活でアメリカと天秤にかけるくらいのダイナミックな技を期待したい。

 で、ウクライナはどうなるかって?あと十年は続くんじゃないの。

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Categories:陰謀

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