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ケタ外れの資産と自由

2024 MAY 26 8:08:42 am by 西 牟呂雄

 今日のコンピューターの進化と通信技術の爆発的革新によってビジネス・チャンスが生まれるのであろうが、その果実を十分に味わえるのは一部の限られた天才達、GAFAの創業者や昨今のイーロン・マスク、サム・アルトマン、正体不明のサトシ・ナカモトといった人々だ。こういった天才の頭脳構造は計り知れない。
 つらつら思うのだが、彼等は数学の問題を『解く』のではなく、問題を『造る』ような思考をするのではないか。そうなると無限に思考は進化し続け、おかげで我々は便利に暮らせ、彼等は益々富栄える。天才もここまで来るとかなり危なくて、彼らの子供達には自閉症が多いことが知られている。
 特にマスクは次々とターゲットを変え、ものすごい能力と集中力でもって成し遂げていく。そのために超多額の投資を厭わず、周囲と軋轢を起こし、極限とも思われるリスクを取り続ける。最終的には人類の火星植民を考えていると言うから驚きである。怖いのは本当にそうなりそうな気がしてくるからだが。
 同じような天才、ピーター・ティールは不死の研究に投資するだけでなく、将来の技術により蘇生を期待し遺体を冷凍保存する計画だそうだ。
 そして、彼等のような超天才+超富豪が等しく求めるのは何か、というとこれが『自由』なのだ。ただ、単純に好き勝手に暮らすというような我々の考える自由ではない。
 既に彼らの事業領域は国境を越えてしまい、国家というものは彼等の仕事をむしろ拘束しがちな機構である。したがって無政府主義のアナキストになるかというとむしろその逆を目指す。マスクやティールがそうであるように、一般的なポリ・コレとかフェミニズム系の言説には激しく反発する。ツイッターを買収して凍結されていたドランプ元大統領のアカウントを復活させた。更に自身がCEOを辞任すべきかどうかツイッター上で投票まで行って辞任している。
 一方で、自分のプライバシーには非常に敏感で、それが守られなければ完全なる自由は得られないと考えている。もっと極論すれば政府の干渉からプライバシーを守るためなら民主主義など無用の長物に違いない。そもそも極端に高い知能の彼等から見れば、バカにしか見えない連中の投票行動なんぞはアテにならないと考えるはずだ。
 どうもビル・ゲイツとかスティーヴ・ジョブズといった当初のIT長者といわれた人々と、マスク・アルトマン等の次世代とではこのあたりの考えは違う。彼等は伝統を愛するなどという気質はサラサラなく、既存の右翼・左翼といった分類などに当てはまらない。
 こういった天才たちの末裔に至っては一般人とは共存できなくなるのだろう。
 かれらが夢中になるようなプロジェクトも、例えば火星に移住するとか遺体を保存して将来蘇生するというのにも莫大なコストがかかり、彼ら以外にその恩恵を享受できるような者はいない。
 そうなると、ただでさえ大富豪なのだから、核戦争に備えた広大なシェルターやら例えば南極に快適な住空間を造り、その中でいかなる制約も受けずに自由に暮らし始め、仮想通貨で外界からモノを調達し、ハッキング技術によりいかなる攻撃も阻止し、人工の食事をし、仮想空間で遊びながら、好き放題研究開発に明け暮れる。これは楽しみというか怖いもの見たさというか、そのような生活をしているところに見学に行きたくなるような興味が湧く。だが一緒に住めるはずもない。

 ところでアメリカ以外の国はどうであろう。彼らに匹敵するような天才がいるに違いないが、今どこで何をしているのだろうか。アジアには孫正義や盟友のテリー・ゴウやジャック・マーもいいセンをいっていた。ただ、孫正義は借入金が大きすぎるし、テリー・ゴウは政治に興味を持ちすぎ、ジャック・マーは共産党に潰されそうだ。まぁ彼らは日本人ではないが。
 ホリエモンがそうなりそうな芽はあったのだが、ちょっと乱暴すぎて叩かれた。筆者はアレはもったいないと思うのだ。今はロケットに関わっているようだが、再びチャレンジ復活するところを見たい。
 どうも日本国内に留まっていてはいくら天才でもとほうもない資産を築くような方向にはいかない。更に言えば、やたらとIQの高い人間のいる確率が同じだとしても、日本の暮らしが居心地が良くて、そこまで孤独に自由を求めるという感覚は生まれない.むしろ侘び・寂びの方に行くのではないかな。
 規格外の天才児である大谷翔平がメジャーで成功しているのを見ても、ズーッと日本にいたらあそこまでブレイクしなかった。
 天才が一生かかっても使いきれない資産を築き上げ。自由を求める気分を醸成するインセンティヴは風土と密接な関係があるに違いない。筆者自身はアンチ・グローバルであるから少しも困らないし、外国に住みたいとも思わない。大谷の活躍を見ているだけで充分である。
 無論、そうでない人がアメリカに移住するのは構わない。それこそ自由なのである。 

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