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真夏のドームの華

2026 AUG 29 0:00:53 am by 西 牟呂雄

 都市対抗野球は、プロ野球発足以前に日本一を決めようと昭和2年に開催された歴史ある大会である。大正時代から始まった全国中等学校優勝野球大会(現在の甲子園大会)、東京六大学リーグに次ぐ伝統を誇る。第一回大会は鉄道会社5チーム、クラブ7チームのトーナメントで優勝は大連市・満洲倶楽部だった。都市名・チーム名の独特の表記なのは今でも同じで、発足時にフランチャイズ・システムを手本にしたからだ。
 当時の東京日日新聞の島崎記者が発案し、島崎と早稲田の同期だった橋戸を中心に企画されたせいか、応援スタイルは六大学形式のエールの交換が行われ、大団旗を寝かせて受ける。今でも毎日新聞はスポーツ欄で大きく取り上げるから、毎日の読者にはおなじみかと思う。
 この大会は企業の士気高揚の効果が絶大なため結構金をかけてチーム造りをする。すると、出場チームをみると産業の盛衰が見えてくる。かつては炭鉱・製鉄・民営前の国鉄・民営前の電電公社・ガス会社といったところが何チームも出ていた。今でもメーカー、それも重厚長大系が多い。この業界で知らぬ者のない鷺宮製作所という強豪チームがあるが、何をしている会社なのか筆者は知らない。
 かつて勤務していたチームの応援にしばしば後楽園球場・東京ドームへと足を運んだ。実は応援での入場は企業が負担するのでタダなのだ。そして頑なにアマチュア精神を堅持しているので選手は皆サラリーマン、従って筆者の同僚も選手として出ていたし、同期の一人は法政の4番であの江川卓のチーム・メイトだった。
 高校卒業後、まだ体ができていないので社会人で鍛えてからプロを目指す選手もいる。有名どころでは阪急のエース山田久志(新日鉄釜石)やメジャーにも行った野茂英雄(新日鉄堺)、彼らこの大会で活躍後にプロ入りしたが、さすがに突出した選手だったと聞く。更に特筆すべきは某チームと我が日本ハムファイターズは大変に相性が良く、目下リーグ最多勝の加藤(貴)や中継ぎ玉井の両投手がそうである。その某チームの試合を見にドームに行った(タダで)。

ドームの華

 久しぶりの東京ドームはやや広く感じられる。ファイターズ主催ゲームと雰囲気が違うのは、それぞれの応援客が内野にぎっしりいてダグアウトの上には華のチア・ガールが陣取っているところ。これも昔は女子社員が同好会的にやっていたのだが、どうもプロポーションといい足の上げ方の高さといい、あれは外部のプロに委託しているのではなかろうか。
 そして一般客はほとんどいないので、内野はギッシリ、外野は無人、内野スタンド最上部には人を入れていない。双方攻撃中はブラスバンドに応援コールで会話もままならない。嬉しいことに我がチームの応援歌はアニメ・タイガーマスクのメロディーで『タイガー』の所を『ファイヤー』に変えて歌う。『行け、行け、タイガー、タイガーマスク』のところを『行け、行け、ファイヤー、ファイヤー〇〇〇(都市名)』だから当然声に力が入る。
 すると元々社員が観客だから異常に応援に熱がこもり(平日昼間なのに)ビールがバカ売れし、お次はハイ・ボールかチューハイ。昔の同僚や部下には出くわす、世話になっている関係先とバッタリ会う、挙句の果てに元上司がウロウロしている。これじゃ飲み会と変わらん。
 都市対抗ではあるが、本社が東京にある企業の大応援団は盛り上がりまくる。大きな声では言えないが某企業は六大学の某国立大応援部OB並びに某私大応援指導部OBを積極的に採用しているという都市伝説がある(筆者の同期にもいた)。これは地方の企業が応援バスを仕立てて苦労してドームに送り込む手間に比べて遙かに効率がいいことは確か。
 そもそも平日昼間に幹部が先頭に立って酔っぱらって応援しているのだからサボりと言えなくもないが文句が上がったという話は聞いたこともない。
 大体ピッチャーの球速は130キロくらいなのでホームランも良く出るし、トーナメントだから一発勝負の本塁突入、走塁妨害のラフ・プレイと臨場感満載。きょうも担架が使われた。
 都市対抗独特のルールに補強枠というのがある。一応地方代表なので、地方決勝で戦った相手のエースなり4番バッターなりの調子のよかった選手を借りてこられる。だがその一方でその借りてきた選手は1イニングなり代打で絶対に使わなければならないという不文律もある。今回の我が軍はよりにもよって同業の最大のライバル会社から補強していた。
 接戦だったが、その補強のエースがボカスカ打たれて負けてしまった。日本ハムファイターズが現在主力を欠いて苦戦を強いられているので、せめてドームで溜飲を下げたかったが、夏の夢と散ってしまった。試合終了後に相手を称えるエールの交換まで余韻を楽しんだ。フレーッ!フレーッ!
 この雰囲気を味わいたい方、来年はお誘いしますよ(タダだし)。

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Categories:日本ハム ファイターズ

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