一昨年には (今月のテーマ 振り返り)
2015 DEC 11 7:07:06 am by 西 牟呂雄
『振り返り』で過去のブログを見ていたら、2013年にはこんなことを書いて遊んでます。日付に注目。
実際には2015年の夏、上海の株価がガクンと来てヒヤリとしましたが、中国も踏みとどまっています。しかし任期僅かのオバマ大統領が『航海の自由作戦』を始めてしまい、ASEAN会合でもG20でも習近平のひどい仏頂面が目立ちました。G20の方はテロの後だったので各国首脳も話すどころじゃなかったかも知れませんが。それにしても大国のトップたる者、あんなに不貞腐れた顔で壇上に立つもんじゃないと思うのですが。
そして3年前よりも遥かに悲惨な形でテロが横行するようになりました。EUが揺らいでいます。
作家の佐藤優さんが積極的に発言している『新帝国の時代』に突入しているかのようです。日本も安保関連法案を成立させましたが、治安に関しては未だ未整備の部分があるでしょう。特に対工作員関連のスパイ防止法は常に問題にされつつ何故か反対に合います。国家が機能しなくなって全く統制が効かなくなればシリアみたいになるに決まっています。ああなっても地続きの国境がない日本は難民になることもできません。管理されるのはあまり良い気持ちでないのは当然ですがある程度は仕方が無い。
中国は統制を強めています。年間数万件あった暴動のニュースはさっぱり報道されなくなっていますが、私のインテリジェンスでは減っているという話はありません。経済は現実に破綻しているでしょう。政府が必死に取り繕いの金を掻き集め(AIIB等)来年は表向き現状の状態を維持するはずです。しかし7%成長と言っていた頃も実態は3~4%だと噂されていました。そんな所かと思います。
しかし中国にとってISのテロは遠い中東のことではありません(日本も名指しされていますが)。キルギス・タジク・アフガンは国境を接していてあのあたりの出入国管理は実に甘い。イスラム過激派が逆輸入され(事実ウィグル族がISの戦闘員になっている)パリやイスタンブールでやったようにドカンドカンと始めたら大変なことになるでしょう。治安というものは金のかかるものなのです。中国では今ですら防衛費を上回っているのです。
どうやらそれなりの中産階級が形成され、ニセモノにあきたらなくなった消費者は日本での爆買いをするのですが、2~3億人の農民工という漂流組は不満が高まっている事でしょう。
爆買いが出来る層は、どうやら中国で買うと同じブランドでもあまりに贋物が混じっている事に気づいています。更には輸入した場合には関税・流通時の消費税(付加価値税)が掛かって値段は高くなってしまいます。一人当たり数万円の安い旅費で日本にやって来て、化粧品をガンガン買って使い切れずに闇に流せば元が取れるどころじゃない。当分続くでしょう。さすがに一部の輸入関税を下げ、カードの海外使用の上限を設けるようです。キャピタル・フライトの防止ですね。
しかし一方で『一帯一路』と称して防衛費を増大させ、治安にも多大なコストを掛け続けることは強い経済基盤がなければなりません。南シナ海の埋め立てにしてもタダではできません。
そこで気になるのは3兆5千億ドルと言われる外貨準備高は本当に米国債といった流動性の高い資産なんでしょうね、という疑問です。これが南シナ海の埋め立てやらアフリカのリスクの高い資源開発になってしまっていたとすれば。そしてアフリカ現地のテロ横行により治安悪化で全てがダメになったら。『航行の自由作戦』で埋め立てた所が無価値になってしまったら・・・。
この文脈でAIIBの設立などを見るとあまり筋がよろしくないように見えるのですが。
昨年の初め(約2年前)にこうも書いています。中国はどこへ行くか (5本の柱) 実際昨今の中国は、さながら幾つかの勢力により国内を植民地化して統治している(農民工や少数民族を)と考えると分かりやすい。
ロシアも腰を上げてISを空爆したからには、相当注意をしておかないと危ないでしょう。モスクワもチェチェン人のテロを經驗していますからガンガン締め上げるでしょうが、こちらの経済も一段と悪い。資源安・ルーブル安・経済制裁の三重苦です。
更にマズいことに、天然ガスのパイプ・ラインをトルコ経由ギリシャ・ヨーロッパと引く計画が撃墜騒ぎでパァになるでしょう。ロシアがクリミアを押さえた時点で、アッ危ない、近づきすぎる、と思ったのですがこうなってしまった。このあたりで両国は何度も戦っています。
ロシアが苦境に立てば、伝統的に中国との結びつきを志向します。現に経済制裁後にはいくつかの協定が結ばれました。そして苦境に立つ両国が最もカモにし易いのは他でもない我が国なのです。
難しい2016年の舵取り。安部総理お願いしますよ。
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中国はどこへ行くか (5本の柱)
2014 JAN 2 18:18:46 pm by 西 牟呂雄
前回ブログ以降多くの意見が寄せられたが、その時点ではまだ分裂論を捨てきれなかった。しかし、SMCのバーチャル視点に立ってみると、ひょっとしたらすでに分裂してしまっているのではないか、と思い当たった。私も書いていたが、例えば一国二制度で中国になった香港、遙か南でチャイナであり続けるシンガポール、そして東 大兄の詳述を読むにつけその感を強くした。そもそも『日本からの目』でも私自身が、チャイナというのはそのありようが普遍的概念であると記しており、そうであるならば単純な分裂という形は取りようがないのだ。元々柵封体制にせよ朝貢体制にせよ、そこには明確なボーダーはなかった。現代に於いてはポリティカルに、社会的に国境として引かれている区分であるが、民族的、文化的には概念の交じり合うドロドロとしたせめぎ合いの接点である。この辺陸続きの国境を経験したことのない我々はピンとこないのではなかろうか。
しかし、一端グローバル化が進んでしまうとそれを飛び越えて(あくまで平和的に)マネーにしろマテリアルにしろ凄まじいスピードで行き交ってしまい、本来食い扶持を稼ぐという意味での『領土』は(エネルギーと国家としての正当性といったものを除き)意味を成さなくなるはずである。その点から言えば、エリアとしての分裂ではなく社会構造が層別化することは避けられない。少数の超富裕層と圧倒的な貧困層、これは中国とアメリカの姿が重なって見えないか。違いは前者は構造的な汚職のケタが違っていて、後者はアメリカン・ドリームの資産の桁が違う。前者は都市戸籍の者が農民戸籍の者を虐める、異民族から搾り取る。後者は富裕層が後から後からやってくる移民をコキ使う、ウォール街は新興国から巻き上げる・・・・。
中国は共産党ヒエラルキーをベースに、いくつかの柱があると筆者は考える。まずは共産党。大きな柱ではあるが中身には巷間言われる共青団・太子党・上海閥、さらには地方組織と色々ある。次に人民解放軍。各軍区ごとに別れていて、はじめの頃は自活可能なそれぞれ巨大なコングロマリットを形成している。嘗ては人民公社と呼ばれていた国営企業群。これも規模の大きな所では社員10万人を越えるものもある大集団で、例えて言えば分割民営化前の日本国有鉄道がいくつもあるような物だ。それから忘れてならないのは在外華僑。どうやら一つにまとまるというものではなさそうだが、北京オリンピックの聖火リレーで世界中で国旗を振ったチャイニーズ集団は、私の見たところ一大勢力だった。最後に実態については良くわからないが伝統的なアンダー・グラウンドな社会も複数存在していることが確認されている。以上5本の柱が人民の海にそそり立っているのが今日のチャイナと仮説を立ててみた。この仮説では政府は共産党が担っているが、エリアを分割して統治するのではなく、それぞれの利権を互いに侵さないで並列して住み分けられる。事実いささか旧聞に属するが、林彪直系の第四野戦軍が江青夫人の言うことを全く聞かなかったことは良く知られている。行政上の分裂といった巨大なエネルギーを使わずに、即ちソ連崩壊の道をたどらずにチャイナでありつづけられることになる。旧ソ連崩壊の際には莫大な国家資産のブン取り合戦が繰り広げられたことは有名な話だが、チャイナではとっくに5本の柱に分けられているのだ。もっとも何れにせよムシり採られるばかりの人民ピープルの方は救われないのだが。
これを書いている時にSMCメンバーの神山道元先生から、周恩来没後30年にあたり周恩来夫人の日記が公開されたと聞いた。これは実に第一級資料で内容の分析が待たれる。察するに人気のあった周恩来に対し、毛沢東が様々な手を使っていじめをしていたことが明らかになるのではないか。すると実際は醜い権力闘争による混乱でしかなかった文化大革命を否定するものになりかねない。共産党内の権力闘争が激しくなる前兆ではないか。
大気、水を中心にかなりの汚染が現に進行し、尚且つ衛生観念の欠如による食材が国中に出回るどころか、毒餃子、毒ペット・フードのように世界中に輸出される。先日上海で豚の死骸が大量に流れ着いて問題になったが、あれは豚の肉を赤く見せるためにヒ素を使うのが、飲ませすぎて死んだために処理に困って川に投棄したそうだ。ところが共産党トップが使うことで知られる釣魚台国賓館で出される食材などは作っているところからして、一般からは隔絶されている。どんなに汚染が進んでも幹部が食べるものだけは確保する。異形の大国の現実は深い闇に覆われている。
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中国はどこへ行くか (日本からの目 )
2013 DEC 19 17:17:33 pm by 西 牟呂雄
些か重いテーマであるが、東 大兄のブログに刺激されてのものである。ここでは目下の『航空識別圏』『尖閣列島』といった問題とは別の視点から考えてみたい。無論国家主権を引っ込めるつもりは全く無いが、それでは話が終わってしまう。実際少し前のブログ『オリンピックへの道』の中で、2020年に中国分裂と書いたところが、ブログの冗談にせよ中国サーバーからのヒットが激減した。それはそれで構わないが、だからどうだとなるとSMCの趣旨に鑑みテーマには上げられなくなってしまう。
中国という言い方そのものが実は非常に新しく、国民党が中華民国を名乗る前は清であり支那だった。一方中華という呼称は北宗時代からの歴史だが、思想としての『中華』はそれこそ四千年前からと考えられる。即ちチャイナは存在そのものが宇宙であり文明でありという訳で、我等倭人は”にんべん”が付いているからまだいいが、”にんげん”だと思っていたかどうか。漢字に代表されるチャイナ・カルチャーは半島経由で輸入されたというが、私は海路入ったルートも見逃せないとい考えている。呉音読みが入ったルートのことである。国語学者の大野晋の説は、日本語の起源は従来のウラルーアルタイ語系統ではなく南インドのタミル語だと主張している。それはともかく、海のシルク・ロードがあるとすれば、上海と九州なんかは誤差の範囲であろうから、両者の交流は古代と雖も十分考えられる。
一方自身宇宙である、と思っているチャイナと我国は上記半島ルート・海路ルートを通じ交流が当然あった訳だが、その時々の政治情勢によって様々に形を変えてきた歴史がある。魏志倭人伝でやっと登場し、その後半島経由でこちらから行ったのが数回(但し長城の内側には一度も及ばず)、向こうから来たのが元寇。他は専ら海路で交流した。その動きはさながらグローバル化と鎖国が交互に現れるように距離を取ってきた様に思える。一端切れるのが遣唐使の終了。それから二度に渡る元寇をはさんで暫くは交流は細り、我国は独自の文化を育む。足利義満が高らかに「日本国王」と称して明国と大っぴらに貿易し、終いには豊臣秀吉が明国に攻め入るという妄想を抱くまでに至る。この間、こちらの方の中央の統制が緩かったことも含め、盛んに倭寇が出没した時期と重なっていて、特に後期倭寇ともなるとチャイナ南岸が活動の場となっていく。大陸の方で清が代わって出てくると物凄い人口移動が起きて、一般に東南アジアに行ったチャイニーズは華僑として現地に溶け込まず独自文化を保っているが日本にも大勢来た。九州は言うに及ばず関西圏にまで流入は及んでおり、土地を持たない人口の流入は当時のGDPを考えると食い扶持が危ない状況にまでなり、それやこれやで徳川の鎖国になり200年程続く。キリシタン禁教などは鎖国の理屈の一つにしか過ぎないと考える。明治以降はこちらから出張っていって結果はご承知の通り。この繰り返しを考えると、あと何年かで又つきあわなくなるかもしれないが、グローバル時代の鎖国とはさすがにイメージが湧かない。ひょっとして現在の安倍政権のスタンスからして、半島・大陸とは既に鎖国モードに入っているとは言えないか。個人的には相互不干渉の原則で首脳会談など暫くなくても困るのは出番を失って出世しない外務官僚くらいかも知れないと思っているが。
我国からはそうした距離感があるのだが、一方中国自体はというと、これが未来永劫チャイナでは有り続けるだろう。異民族が来ようが官僚が腐敗しようがお構いなしで存在し続けるだろう。異民族でもマルクス・レーニン主義でも底なし沼のように飲み込んで、中央集権・汚職・腐敗を繰り返す。チャイナという概念の普遍性はここにあるのでは。遠く離れたシンガポールでも、人民行動党のほぼ一党独裁は変らない。もっとも小豆島くらいの大きさだから政治的効率と言う面では理想に近いのか。因みにシンガポール島の土地は2/3が私有地で、オーナーはタイガー・バームで有名なタン一族である(陳を広東読みにしてタン)。もう一つ加えるならば、考え方として個人主義・拝金主義が抜きがたくあり、その部分は日本とは極端に違っていてむしろアメリカに近い。アメリカにはかなり力を持ったチャイナ・ロビィもあり両者は意外とウマが合う。もっとも戦前の両者の付き合いは日本を挟んでとは言え、国民党への大幅な持ち出しだったと言えなくもないが(我国ほどではないにせよ)。
大体選挙システムは全くチャイナには似合わず、仮にやったとすれば買収の温床が生み出されて機能しないと思われる。だがあれだけ大々的に選挙をやったアメリカの大統領と、熾烈な権力闘争を勝ち抜いたチャイナの主席は結果として同程度の人材と考えても差し支えないのではないか。洗練された選挙のはずが我国のしばしばバカみたいな当選者の顔をみれば大したことはない。アメリカだって民主党の下院議員クラスになれば相当なタマもいる。ネット時代に、いくら統制の効く一党独裁情報と言えどもどうしても民意の圧力は感じざるを得ないので結果は同じだ。筆者は12億人の国家が一つに納まることは相当のコストになり結果として分裂する、という仮説を立てたが、それもチャイナ風のアッと驚くような形態が出現するのではないだろうか。一国二制度という離れ業をやったくらいだ。そしてその鍵は人民解放軍の動きだろうと思っている。この辺の考察は次回に続ける。
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